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◎じっくりと描いた画家、奥村土牛。とりわけ「ガーベラ」がすてき。

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奥村土牛は日本画家です。だいぶ前の画家というイメージだったのですが、亡くなったのが1990年。かなり現代の画家だったんだーと驚きました。でも生まれたのが1889年。明治22年だそうです。そう聞くと途端に歴史上の人物のような気がしてきますよね。なんと芥川龍之介よりも3歳年上です。歴史上だ。101歳の長寿でした。

 

奥村土牛の読み方は「おくむら・とぎゅう」です。

「とぎゅう」と「どぎゅう」、読み方が混在しています。これは「とぎゅう」が正解。

土牛と縁の深かった山種美術館が「とぎゅう」と読んでいるので間違いないと思いますが、オンライン上では「どぎゅう」という読みも散見されます。

果てはアルファベットで「dogyu」と書いて出されている書籍もあったりして、読み間違いには注意です。とはいえ、わたしも最初のうちは「どぎゅう」と読んでいたんですけどね。

この雅号は土牛の父がつけたもので、漢籍の一節「土牛石田を耕す」から取ったとのこと。管見では画家の雅号をお父さんがつけてくれるということは珍しい気がする。漢籍の教養があるような人で、なおかつ息子が画家になる道を応援してくれているということですからね。

ちなみに「土牛石田を耕す」について、土牛本人は「石ころだらけの田んぼでも、その場所で辛抱強く努力をすればいつかは豊かな実りを得ることが出来るという意味だと思っている」といっているそうです。

お父さんもそう思ってつけたのでしょうし、そうだとしたらそれはそれで好いのだと思います。しかし出典の寒山詩(←あの寒山拾得の寒山)で言っていることは、土牛が思う意味とは全然違う可能性があるのをどこかで読んだ。ここも若干注意が必要です。

ともあれ、土牛は丑年の生まれ、のちに書いた自伝のタイトルも「牛のあゆみ」。自分のトーテムは牛だ!と思っていたようです。


牛のあゆみ (中公文庫)

土牛は16歳で絵を習い始め、20歳前にはいくつもの展覧会で入選もしています。しかしその後は通信省に勤務し絵やデザインの仕事をする。画家として大きな展覧会に出品し、再度入選を果たすようになるのは30歳を過ぎてから。

画家として広く知られるのが遅く、また代表作の多くが60歳を過ぎてからの作品だといわれ、まさに牛の歩みのように進んだ画家の人生だったといえるでしょう。

 

奥村土牛は「ガーベラ」で出会いました。

はるか昔、わたしは「ガーベラ」という作品で奥村土牛と出会いました。それはカレンダーの絵でした。その頃日本画にはほとんど興味がなかったのですが、なんだか妙に気に入り切りとって画鋲で壁に留めました。寝起きのたびに必ず目にするような位置に。

全体的な優しい色あいと、5輪のガーベラ――赤、オレンジ、黄色、赤、白の色の美しさが好かった。どことなく素人っぽい印象のある描き方なのですが、そこに温かみが感じられます。心のきれいな人が描いたのだろうなと思わせる。

土牛本人も「絵を通して伝わってくるのは作者の人間性である」と考え、作品と作者の人間性を不可分ととらえていた作家だったそうです。そこが山種美術館の創立者である山﨑種二と共通し、親交を深めていたとか。

「ガーベラ」の使える画像が見当たらなかったので画像が見られる山種美術館の記事を貼っておきます。

講演といけばなデモンストレーション「いけばな550年 花をみつめて」が開催されました。(2011年05月05日)

さまざまな画家の作品があるなか、ページの一番下に「ガーベラ」が出てきます。洋風にも和風にも偏らない、朝に晩に見ていても見飽きない、素直な美しさを持った絵だと思いませんか。

 

わたしの好きな奥村土牛の作品。

残念ながら使える画像がないのでタイトルだけ。

「鳴門」。

徳島県の鳴門の渦潮を描いた作品で、渦潮が本来持つ荒々しさよりも色調に魅力を感じます。全体のエメラルドグリーンとほんのり光るような波頭の白が美しい。線を使わない、こういう描き方は土牛には珍しいのかもしれません。

ネット上の画像だと色の再現はまちまちです。
奥村土牛のGoogle画像検索結果。いろいろ並んでいて楽しい。

Pinterestの方が絵のクオリティは高いですね。

ただしどちらのページも画像とタイトルの紐づけが間違っている(土牛作品じゃない)場合があるのでご注意ください。

 

奥村土牛といえばこれ、という一枚は「醍醐」。


奥村土牛展 白寿記念

画像がないので本の表紙で代用。
醍醐寺にある樹齢150年の桜の老木を描いたものだそうです。老木の成熟よりも初々しい華やぎを感じますね。咲く花の歓喜。春は春ごとにみな新しい。

わたしは土牛がまだ若い時代のかっちりとした線で書かれた花の絵が好きです。「花菖蒲」「木蓮」「罌粟」など。なんてきれいな線なんだろうと思う。日本画は色。次に線。

動物の絵もたくさん描いた画家だったようですね。動物の絵についてはわたしはこの一枚、という絵は選べませんが、うさぎ、ねこ、しか、やぎ……と多種。もちろん牛も描いています。

 

奥村土牛の絵を見たい場合は山種美術館へ。

山種美術館は日本画のコレクションで有名な美術館です。でもamairoは行ったことがありません(泣)。東京のミュージアムは実はあんまり行ってない。行きたいんですが、そもそもあまり東京に行かない。

山種美術館はJR恵比寿駅から約1キロ。

実は昔、山種美術館に行ったつもりで松涛美術館に行ったことがありました。なんでそんなことに?……多分松涛美術館の方が日本画っぽいネーミングだったせいでしょう。松涛美術館は松涛美術館で面白かったのでいいんですけれど。

ところで根津美術館にも行ったことがない。根津美術館と山種美術館も若干混同しそうでコワイ。いずれ根津美術館にも行きたいです。

日本画はいいですね。色の美しさ、線の美しさが気持ちいいです。とにかく素直に眺められるのが日本画の良さ。いろいろな日本画を眺めてみてください!オンライン上でもかなり楽しめますよ!

 

他に表紙に絵が大きく載っている本。


現代の日本画 (2)

作品名「城」。姫路城を描いたものだそうです。自然物を多く描いた印象があるので、建築物を描いたのはちょっと珍しい。構図の切り取り方が面白いと思います。

 


百寿記念~奥村土牛展図録

富士はたくさん描いているようですが、これはおそらく作品名「富士宮の富士」。日本画家がみんな富士を描くもんだから、富士山が嫌いだった時期があったなあ……。それは今でもちょっと続いていて、富士山の絵には虚心坦懐には向き合えないところがある。

 

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