いろいろ徒然

◎国語辞典からの挑戦状。突然「もと」で2000字。

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とあるラジオ番組で、突然お題を出されて、そのテーマで10分喋るというコーナーをやっています。それは難しいよなー、というところから、同じことを文字でやってみようと思いました。

お題は国語辞典から。任意のページを開いて、その左上の単語を「お題」とします。お題を出発点としてよしなしごとを延々と書きつらねていくという……。書く内容をインターネットで調べるのは禁止。うろ覚えのことでも、書きあげてから合っているかどうか調べる。

今回のお題を国語辞典で引いて、……なんとまた「かまびすしい」のページを開いてしまいました!

国語辞典からの挑戦状。突然「かまびすしい」で2000字。

小さい国語辞典とはいえ、1502ページもある国語辞典の同じページを開くってどういうこと?すごい確率。750分の1。よっぽどそのページが好きなんだな。
さすがにまた「かまびすしい」で書くのは無理なので、もう一度引き直しました。

 

4回目のお題は「もと」。よーい、どん。

日本語には同音異義語が山ほどあります。多分世界にたくさんある言語のなかでも、かなり多い方なんじゃないかと思う。この理由については……昔から不思議に思っていて、どっかで何かを見たか読んだかしたことがある気がするけれども、忘れました……。

とにかく、日本語は音だけでは完結しない言語らしいですね。これが外国人による日本語学習の大きな壁。日本人はさすがに子どもの頃から使っているだけあって、音だけで聞いていても文脈とイントネーションで意味を汲み取ることはだいたいのところ可能ですが、日本語初心者にとっては難しい。日本人同士が話していても、時々意味の取り違えはありますね。

もと:(元・旧)以前。むかし。はじめ。
――の鞘に収まる:再び以前の関係に戻る。
――の木阿弥:再びもとの状態にもどること。

「もと」も漢字は元・旧の他に「素」もあれば「下」もあるし。意味が違ってきますよね。ここが日本語学習の最大の困難。音を文字で補完する必要があるのに、その漢字がやたらと難しいという。日本語が世界共通語になる未来はなさそうです。

たとえば外国人が、日本語を話せるようになったとしても、書くとなったら「話せる」「離せる」「放せる」で適切な文字を書かなければならない。「日本語を放せるようになったら」と書いたら、文脈でだいたい意味は汲み取ってもらえるだろうけれどもいつも意味が通じるとは限りません。やはり正しい漢字を覚える必要があります。

日本人は小学校の頃から苦労して、何千字何万字の漢字を覚えるわけですから、それはそれはご苦労さまな話。

明治時代には「日本語は非効率的だから廃止して、フランス語を共通語にしよう」という大真面目な議論がされたとのこと。たしか作家の志賀直哉などのその一派だったような……。

わたしはその話を読んだ時に激怒しました。言語は国の宝なのに。その国の、自然、気候、気質その他はその国の言葉でしか表せないのに。一体何を考えていたんだ、当時の人は。

たとえとして方言を考えるとわかりやすいですよね。方言でしか言い表せない感覚ってあります。仙台弁の代表的なところでいうと「いずい」。納まりが悪くて気持ちが悪い、といった意味なのですが「いずい」はどこまでいっても「いずい」で、標準語に翻訳不可能。外国語で全てを表すことは出来ない。

……というと、そもそも漢字は中国から入って来たものではないのか、という根本的な疑問がありますが。

ただ、日本に漢字が入ってきて、……えーとえーと、多分1500年くらいですかね?その1500年の間に漢字は変容したと思うんですよね。

国字も出来ましたし、中国と日本で同じ漢字を書いても意味が違って来た単語も出て来たし、そもそも同じ字を書いたからといって完全に同じものを表しているかというと――微妙なニュアンスの違いまでは一致しないと思う。適切な例えを思いつかないのがなんですが。

それを言えば、微妙なニュアンスは個人個人でも違うんですよね。たとえば「風」といって強風を連想するのか、そよ風を想像するのかで、そこから違ってくるわけで。そこまでしつこく考えると、言葉は人を繋ぐものではなくて断絶の始まりなのかもしれない。

……なんだか哲学的な話になってきました。そもそも「もと」からはだいぶ離れて、日本語の話になっているし。うーん。今回は30点。「もと」で書くのは難しい。

あっ!思い出した!
落語で「もと犬」という話があります。……だからなんだと言われると困りますが。もとは犬だった犬が、神様にお願いすると人間になってしまう話です。しかし何しろもとが犬なもんだから、人間とは思えないふるまいをいろいろやってしまい……という話。この話をすれば良かった。

――あー、全然文字数が足りませんでした。1300字ちょっと。

 

答え合わせ。

日本語は、世界で一番同音異義語が多い言語か?

これは正確なところはわかりませんでした。専門の言語学者でも答えられない質問かもしれませんね。何しろ世界の言葉は何百とあるはずだし、世界一と断言するためには全部の言語を調べなければならないということですから。

でも面白いことに、世界的に「ウチの言葉が一番同音異義語が多い」と思いがちな傾向があるそうです。みんな同音異義語には苦労しているんでしょうか。英語だとrightとwriteがツライなあ……。knowとnoもツライ……。

略称まで含めると、英語も相当に同音異義語が多いそうですね。使うところではCDとかCPとか。なんだったか忘れたけど、AAだったかな?51個の意味があるとか。

日本語で一番同音異義語が多い――その根拠を広辞苑に載っているかどうかにするとして――のは「こうしょう」だそうです。その数48個(49個説あり)。さすがに48個全部が使用頻度の高い単語というわけではないはずですが、5、6個ある単語はざらですよね。

関係ないけど、テロップでよく間違っててイヤなのが「夫人」と「婦人」です。近年のバラエティはテロップを出して「ここ笑うところですよ!」という手法をよく使うから、テロップの量も相当に増え、それに伴って変換ミスも増えるわけですが、「ふじん」は変換ミスにしては不自然に「婦人」と出ていることが多い気がします。もしかしてテレビ局の人は「夫人」という言葉を知らないんじゃないかと思うほど。

でもわたしも近年、変換ミスをすることが増えました……。

あ!つい先日知ってものすごく驚いたのが、関西発信の長寿番組「探偵!ナイトスクープ」(10年くらい前まで好きでよく見てました。今、松本人志が局長なんですか!)が、てっきりnight scoopだと思っていたのに、実はknight scoopだと知ったことです!なぜknight?

なぜ日本語に同音異義語が多いのか?

わたしは日本語は音の数が少ないので同音異義語が多いのだ、と思い込んでいたのですが、そう単純なものでもないらしい……。同音異義語が多い理由については言語学者さんにおまかせしたいと思います……

わたしが昔から不思議に思っているのは、日本語はひらがな2文字の単語が相当多いこと。この短さでいろいろあらわしすぎだっちゅうねん!

英語のアルファベットは26文字。日本語は50音(51音)音に濁音、半濁音をプラスして76文字?組合せの数としても圧倒的ですが、英語で2文字の単語ってそこまで多くない気がする。英語のボキャブラリーは貧困ですが、ぱっと出て来るのはadとox……
あ、heとかmeも2文字だな。けっこうあるか。

しかしab、ac、ad、aeとかしらみつぶしにあたっていくと、日本語はかなりの数で2文字の言葉が成立するのに対して(あい=愛、あう=会う、あえ=合え、あお=青)、英語はそんなにある気がしない。これは日本語が母音と子音の組合せで成立しているのが理由なの?英語は子音同士で組み合わせても言葉を形成しない?

……この辺に言及するには知識が絶対的に足りません。

「元の木阿弥」とは?

そもそも木阿弥さんとは誰なのか?

これが黙阿弥ならね。河竹黙阿弥は明治初めの頃の歌舞伎狂言作者。代表作は「鼠小僧」 「三人吉三」「白浪五人男」 など。有名な作品を書いています。

一方、木阿弥さんの方は河竹黙阿弥とはまったく関係なく、時代は戦国時代。

筒井順昭(筒井順慶の父)という武将が病気で亡くなる寸前、自分にそっくりな盲人の僧、木阿弥をお城に連れて来て影武者にし、自分の死を隠したそうです。

数年経って(1年~十数年といろいろ説がある)順昭の死を隠す必要がなくなると、木阿弥は今までのお殿さまとしての生活ではなく、「元の木阿弥」として元のつつましい生活に戻らされた……という話。

顔立ちが似ていて、たとえ声が似ていたとしても急に身代わりになれるものだろうか……。ずっと奥の間にひっこんでいたら怪しまれるだろうしなあ。寝たきりという設定だとあまり影武者として意味はない気がするし。このあたりは、ま、フィクションとして。

国語外国語化論。

明治初期に森有礼が英語を国語にしようと主張し、なんと第二次大戦後(およそ70年前)にも尾崎行雄が英語を、志賀直哉がフランス語を国語にしようと言ったそうです。どんな深い考えがあってそうなったのか不明ですが、国際社会でのコミュニケーションを重視したとかだろうか。

志賀直哉のフランス語に至っては、志賀直哉はフランス語はわからなかった(話せなかった)そうですからね。読めはしたのだろうか。
小説の神様といわれた作家のこの意見は、周囲の文人にはあまりにとっぴすぎてまともにとりあげられなかったらしい。

きいただけで「ええ~~~?」っていいたくなる話なんだけど、志賀直哉には何か深い考えがあったのでしょうか。単なる思い付きなんでしょうか。

落語の「もと犬」とは。

あるところにシロと呼ばれる白い野良犬がいました。当時は「白犬は人間に近い」という俗信があり、人々がシロに話して聞かせます。シロも犬ながら信心深く「ぜひ人間に生まれ変わりたい」とお不動さんでお百度を踏みます。

満願の日を迎えると、なんと!シロは人間の若い男になっていました。裸でまごまごしているうちに顔見知りの(しかし人間側はシロが人間になっているとは全く知らない)親方に出会い、着物を貸してもらいます。

その間にも猫を威嚇したり、足をあげておしっこをしたり、ふんどしの締め方がわからなかったり……いろいろ珍騒動が続いたあげく、近所の変わり者のご隠居さんのところへ奉公に行くことに。

「焙じ茶を作るから、ちょっとそこの焙炉(ほいろ)をとってくれ」
「え?」
「その焙炉」
「吠えろってんですか?やれやれ、人になっても吠えるとは思わなかった。うー、わんわん!」
「わっ!びっくりした。なんだよ突然大きな声を出して。しょうがねえなあ、なんだか訳の分からない人が来ちゃった」

この後のオチはどうぞ、落語で。

 

今回のお題は「もと」。……敗北宣言。

今回の国語辞典からの挑戦状は完敗です。なにしろあまりにも普通すぎて無理だった……。でも最初に「もと犬」を思い出していれば、そっちで書けた気がしますね。思いつかなかったのが残念。

次はリベンジをしたいと思います!

国語辞典からの挑戦状。突然「ダウン」で2000字。

◎国語辞典からの挑戦状。「フォービスム」で2000字。

◎有栖川有栖を読むなら「学生アリスシリーズ」!しかし、その注意点。

 

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