本を読むこと

森見登美彦は愉快である。最初の1冊は何から読む?

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こないだ、夏目漱石のロマンティスト部分について書きました。

夏目漱石は実はロマンティスト。短編と随筆がおすすめ!

これを書いたら「文章表現が優れている作家って誰だろう」とふと思った。
それからずーっと考えているんですが……

ネットで意見を見ると、挙げられるのは揃いも揃って昔の作家だけなんですよね。
若手で文章表現が優れている作家って誰なんでしょうねー。
それが知りたい。

amairoが近年、ほぼ唯一「表現を感じた」作家は森見登美彦でした。
(とはいっても、近年の作家で読んだ母数が少ないからアレだが……)

森見登美彦の文章は、一度普通に読んで、面白くてちょっと戻ってもう一度読む。
つい「二度見」をしてしまうユーモラスな文章です。
二度読みたくなる文章。これは芸でしょう。

 

森見登美彦といえば京都。

本人が京都で学生生活を送ったこともあり、京都が舞台であることが多いです。
そして等身大ではないか?と思われるような大学生の主人公。
いわゆる「腐れ大学生もの」。これが何作品かあります。

大学生のこじらせ男子ですね。
頭の中ではいろいろ考えているのに、臆病で行動力がなくて、
行動できないがゆえにまたグチグチと思考の深みにはまり、
わが身のふがいなさを天を仰いで嘆息する。

という姿が、非常にバカバカしく、ユーモラスに、可愛らしく書いてあります。

この人の書く作品は相当数が繋がっていて、
あちこちの作品にあちこちの作品のキャラクターや団体がちらっと顔を出します。
それに気づいて、ふふふ、と笑うのも楽しみの一つ。

森見登美彦をどんな順番で読んでいく?

「夜は短し歩けよ乙女」

最初の1冊はこれ!


夜は短し歩けよ乙女 (角川文庫)

腐れ大学生モノでもありながら、珍しく恋愛物としても成立している
(しているか?)さわやかで可愛らしい作品。
一冊目にぴったりです。

「黒髪の乙女」と、彼女に片思いしている「先輩」。
2人の視点で交互に描かれ、その噛み合わなさが面白い!

舞台が京都以外の何ものでもないとはいえ、シュールでファンタスティックな
異世界なので、夢の中を歩いているような不思議感、スピード感があります。

また「黒髪の乙女」が元気いっぱいですごくかわいいです!
ちょっと違うが、たとえれば赤毛のアンのような普通からはちょっとズレた可愛さ。

なお、この作品はアニメ映画にもなりました。
原作小説があるものを映像作品にすると、多々不満が出ることが多いのですが、
これは映像作品としても良質のものに仕上がっていると思います。
色がカラフルなのもアニメのお手柄。

このアニメで、森見登美彦のシュールでファンタスティックな異世界を見ておくと、
今後森見登美彦を読み進んでいくのに役に立つかもしれません。

 


「夜は短し歩けよ乙女」 DVD 通常版

 

「有頂天家族」

2冊目として「腐れ大学生もの」の方向に行くかどうか考えましたが、
「夜は短し歩けよ乙女」で「腐れ大学生もの」を代表させることにして、
別な方向のものを。


有頂天家族 (幻冬舎文庫)

これ、大好きなんですよねー。

下鴨神社の糺の森をねぐらとする狸一家の話。
でも狸といっても普段は人間に化けているし、狸の姿でも人間の姿でも
思考回路や関係性はまったく変わらないし、
そもそも人間側だって実は天狗だったり人間だったのが天狗になったり、
人間のくせに怪物的だったり、
――要はシュール・ファンタスティック・森見ワールド。

主人公は狸一家の三男坊・弥三郎なのですが、
次男坊はカエルになって井戸の底に住んでたり、
お母さんは大の宝塚ファンで人間に化ける時は男役の姿をしていたり、
へ?といいたくなる設定のてんこもり。

この作品は一番声に出して笑えました。思わず噴き出す文が多い。
毛玉に関する言及がちらほら出てきますが、そのあたりのくすぐりが笑える。

続編もあります。


有頂天家族 二代目の帰朝 (幻冬舎文庫)

なお、テレビアニメにもなっていて、なかなか面白かったです。雰囲気のいいアニメ作品。

「恋文の技術」

こんなタイトルですが、これを読んだからといって
恋文が書けるようにはなりませんので、念のため。

 


([も]3-1)恋文の技術 (ポプラ文庫)

これも腐れ大学生ものに入りますかねー。
主人公がいろんな人に手紙を書いてるという設定。

相変わらずこじらせている男子がいろんな人相手に悩みを相談したり、
見栄を張ったり、同じ出来事についていろいろな角度から話しているのを楽しむ。
特にどの作品、というわけではないけど
どれかの作品のスピンオフにしても良かったかも。

「宵山万華鏡」

相変わらず京都、そして相変わらず祭りを書いた作品。
森見登美彦は祭りの夜を描くのが好きな作家です。

 


宵山万華鏡 (集英社文庫)

表紙もかわいいよね。

これも夢というか悪夢というか、どんどん不条理がふくらんでいく
シュール・ファンタジー。
不条理というと不愉快なストーリーになりがちですが、
森見登美彦の作品はかわいい不条理で、不快にはならないのでご安心下さい。

「聖なる怠け者の冒険」

これ、タイトルが秀逸。
「聖なる」と「怠け者」が繋がることも驚きですが、そこにさらに「冒険」ですよ。
完全に三題噺。


聖なる怠け者の冒険 (朝日文庫)

この作品はユーモア要素が高め。
ヘンなキャラクターがスピーディーに動き回る、森見登美彦っぽいストーリーです。

が、これは元々新聞小説として書いたもので、
連載の時はものすご~~~~~~く苦労したようですよ。

新聞連載はものすご~~~~~~く大変だとおもう。
言うたらなんだが、森見登美彦の作風では新聞連載は向かない……

現在の作品は新聞連載したものを単行本化する時に全面改稿し、
それをさらに文庫化する時に大幅に加筆修正したそうです。
相当に手がかかった作品ですね。

 

おすすめの森見登美彦作品、5つ。

森見登美彦作品の中でも、かわいい系統をメインに上げてみました。
全作品がだいたいかわいいというか、ユーモラスなんですけどね。

カラフルでシュールで、ふと日常から離れたところに行ってみたいという時に
ぴったりな作品世界です。
文章のレトロさも魅力。二度見して笑える文章もお楽しみください。

あっ!小説が気に入ったらエッセイも面白いよ!

楽屋ネタっぽいので最初に読むのは小説の方がおすすめです。

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