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◎テート・ブリテンにイギリス絵画を見に行こう。ターナーもラファエル前派も!

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ロンドンには美術館・博物館がひしめいています。

大英博物館、ナショナル・ギャラリー、ヴィクトリア&アルバート美術館がロンドン3大美術館だとすると、4番目か5番目か6番目に位置するのがテート・ブリテン。(←amairo比)

テート・ブリテンはイギリス絵画がメインです。イギリス絵画は日本ではあまり有名じゃないですよね。……amairoも実をいうと、詳しくありません(汗)。

詳しくない人が見たテート・ブリテンの魅力作をご紹介したいと思います!

 

テート・ブリテンはどこにあるの?

地下鉄ヴィクトリアラインのピムリコ駅すぐそば。テムズ川沿いです。

街の中心部からは、ほんの少しだけ離れるイメージ。とはいえピムリコ駅は、交通の大動脈のヴィクトリア駅からほんの一駅です。

行く時は、やはり地下鉄を使うのが一番わかりやすい。地下鉄は世界のたいていの場所で旅行者の味方です。待っていればだいたい来て、確実なところに連れて行ってくれる。

バスは……敵とはいいませんが、どこに連れて行かれるかわからない……

なお、テムズ川には水上バスも運行しています。地下鉄が縦横無尽に発達しているので、なかなか乗る機会もありませんが、川から見たビッグ・ベンやタワー・ブリッジは絵になるので、いつかどこかで乗ってみてもいいかも。

 

テート・ブリテンの開館時間は?

定休日なしの10時~18時。

第一金曜日だけ、18時~21時半も開館しているそうです。(1月除く)

特別展以外入場料無料。

 

テート・ブリテン、絶対の1枚。

ジョン・エヴァレット・ミレー「オフィーリア」

John Everett Millais - Ophelia - Google Art Project.jpg

この絵を「コワイ」という人もいます。まあ、その気持ちはわかる……。

が、わたしは昔々初めて雑誌でこの絵を見た時、そのまま固まってしまったほど惹かれたんですよね。

なんだろうか。その死の表現だろうか。というよりその迫真性だろうか。決して美人とは言えない女性。死に臨んでの何ともいいがたいその表情。

画家はモデルを長時間風呂に浸からせたままデッサンをしたとか。あまりに長くかかったので、お湯がすっかり冷め、水風呂になり、モデルは風邪をひいてしまったそうです。

この絵のテーマは「オフィーリア」、シェイクスピアの「ハムレット」の一場面です。

オフィーリアはハムレットの恋人……恋人未満の娘。双方憎からず思っていたのだが、ハムレットが父の死を真相を知り、復讐に目覚め、その過程で誤ってオフィーリアの父である大臣を殺してしまう。

ハムレットはオフィーリアに理由も告げずに「尼寺へ行け!」と告げてこっぴどく振る。

そんな仕打ちをされたオフィーリアは気が狂い、正気を失ったまま野原をさまよう。とある橋にさしかかり、水辺の花を摘もうと手を伸ばしたところ、川に落ちてしまった。それにも正気づかず、小さく歌いながら流されていくオフィーリア。その姿はまるで自らが花のようであった……

……と、これは実際の戯曲には出て来ない場面で、ハムレットの母が、オフィーリアが死んだ時の様子を語る形で出て来る。

ミレーはこの部分を絵画化したんですね。

わたしはストレートなきれいさが好きで、好む絵画もたいていその美しさに魅力を感じるのだけれども、この絵はそのドラマ性に惹かれました。

テート・ブリテンで初めて実際にこの絵を見られた時にはうれしかった。……が、2回目に行った時はワシントンかどこかに貸し出されており、留守だったので注意。絵画は貸し出されることがあるんです。常にそこにいるわけではない。

実際、日本にも1998年、2008年、2014年に来ているそうです。

 

テート・ブリテンではターナーも見ましょう。

ウィリアム・ターナー。わたしが思うに、イギリスを代表する画家といえばこの人。

……ただ、正直いえば、わたしはこの人の絵、みんな同じに見えます(汗)。嫌いではないんだけれど……

この人は自作をまとめて国に遺贈したので、ここにはターナー作品が数多くあるんですよね。ただし、ターナーの代表作はみんなナショナル・ギャラリーにある。……おい。

中どころの作品をたくさん見るのも面白いと思います。タイミングによりますが、かなり並べてますから。

テートで見られそうな中では、わたしは初期作の「海の漁師たち」がいいと思うな。

Joseph Mallord William Turner - Fishermen at Sea - Google Art Project.jpg

初期にはこの絵のようにきっちり描いていたターナーですが、中期以降はかなりぼやーっとした作風になります。

たとえば(テートではなくナショナル・ギャラリー蔵)「雨、蒸気、速度――グレート・ウェスタン鉄道」とかですね。

Turner - Rain, Steam and Speed - National Gallery file.jpg

ターナーは印象派の作風にも影響を与えたと言われています。そういわれれば、モネの「印象・日の出」ととても近いところにいる気がする。

 

イギリス絵画3人衆。

わたしが勝手に「イギリス絵画3人衆」と名付けている画家がいます。

レイノルズ

ゲインズボロ(ゲインズバラ)

コンスタブル(カンスタブル)

レイノルズとゲインズボロは主に肖像画。コンスタブルは基本的に風景を多く描いた画家だし、時代的にも他の2人より2世代近く若いので、一緒にするべきではないかもしれません。多分聞く人か聞いたら「なんだそのまとめ方は?」と思うでしょう。

でもわたしがテート・ブリテンに初めて行った時、何とか名前を憶えて来たのがこの3人なんです。

この3人はイギリス絵画らしいイギリス絵画という気がします。この人たちの名前を見たら「イギリス絵画だなあ」と思ってください。

この頃のイギリスの画家は、よくいえば穏やか――悪く言えば地味。レイノルズとゲインズボロなんかは今一つ区別がつきません……

 

テート・ブリテンの最重要ポイント、ラファエル前派。

テート・ブリテンで一番重要なのは「ラファエル前派」かもしれません。

ラファエル前派の画家には、ロセッティ、ハント、前述のミレーなどが挙げられます。

 

ラファエル前派とはなんぞや?

これがわたしは長年の謎でした。今でも正確にはわからない。字面からして想像出来ないんですよね。訳が悪い。訳が難しかったのはわかるけど。

「ラファエル前派」の原語は「Pre-Raphaelite Brotherhood」。忠実に訳すと「ラファエル以前の兄弟・同志」です。

すごく簡単にいうと「(アカデミズムの)長年の理想とされてきたラファエロではなく、その前の素朴な時代まで戻った絵を目指そう」とした人々。

このラファエルはラファエロ・サンツィオのこと。日本ではラファエロといいますが、英語だとラファエルになるんですよね。

ラファエロが完成されすぎて、そこから約300年、西洋美術は彼の影響から抜けられなかった。そういう絵だけが認められていた。その影響を抜け出そうとしたのが「ラファエル前派」です。

……しかしわたしには、彼らの作風にラファエロ以前の形跡が見つけられない……。どういうところがラファエロ以前だったのでしょうか。

wikiで見たところを簡単にまとめると、

・主題に中世の文学や伝説が多い。
・同時代の文学を主題にすることがある。
・キリスト教主題の場合、従来の図像学は無視することが多い。
・明暗の弱い、明るい画面
・色彩は鮮やか
・細密描写

うーん。……やっぱりよくわからない。

 

ロセッティ。

しかし頭で理解できなくても「ラファエル前派」の絵は見ればけっこうわかります。みんな雰囲気が似ているんですよね。モデルが共通でもあったらしい。

ラファエル前派として多分もっとも有名な絵は
ロセッティ「プロセルピナ」。

Proserpina.jpg
ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティ - [1], パブリック・ドメイン, リンクによる

若い頃の木村拓哉に似ていると思う。

ラファエル前派の重要なキーワードは「運命の女」です。こってりした色彩で描かれた、髪が豊かで物憂げな顔の女性像を見たら、「ラファエル前派かな?」と思ってもいいくらい。←乱暴。

これも同じくらい有名な、ロセッティ「ベアタ・ベアトリクス」。

Dante Gabriel Rossetti - Beata Beatrix, 1864-1870.jpg

これは「ラファエロ以前を目指した」と言われればそう見えないこともない……

どちらもテート・ブリテンで見られます。

ハント「良心の目覚め」

有名な絵ですが……ハントの絵は、わたしにはあまり響かない。

この女性は愛人という設定だそうです。この絵の主題はフェルメールを思い出させる。あっちは誘惑に負けつつあるシーンで、こちらはそこから我に返ったところですが。

男といちゃいちゃしていた愛人が「こんなことをしていてはいけない!」と天啓に打たれ、立ち上がろうとしたシーンらしいです。

William Holman Hunt - The Awakening Conscience - Google Art Project.jpg

ウォーターハウス「シャロットの乙女」

ラファエル前派の活動時期からは数十年あとに描かれた作品なのですが、この絵は影響を濃厚に受けています。わたしは今まで、ウォーターハウスもラファエル前派だと思い込んでいた。

John William Waterhouse - The Lady of Shalott - Google Art Project edit.jpg

「オフィーリア」と対になるような、テート・ブリテンの傑作だと申せましょう。これも必見。

「シャロットの乙女」は、ある詩の一場面を絵にしたもの。イギリスの詩人・テニスンがアーサー王伝説を翻案した詩です。

生まれた時から「外の世界を見たら死ぬ」という呪いをかけられ、ずっと部屋に閉じ込められて育った姫が、凛々しい騎士・ランスロット卿の姿を見てしまい、恋に落ちる。

しかし呪いは効力を発し、姫は死なねばならない。
姫は一人小舟に乗り、死ぬとわかった上でランスロットの城を目指す。小舟がランスロットの城に着いた時、人々が見たのは美しい姫の亡骸だった。

場面としては、恋い慕うランスロットに会おうとまさに船出するところ。言い換えれば死を覚悟した旅立ちです。張り詰めた緊張感と優雅さが美しい作品です。

 

テート・ブリテン。イギリス絵画に会いに行きましょう。

印象派やルネサンス絵画はテレビで見る機会も多いですが、日本でマイナーなイギリス絵画は、現地でなければなかなか見られません。

テート・ブリテンはそのイギリス絵画が世界で一番(多分)豊富にそろった美術館です!
初めてのロンドンなら大英博物館とロンドン・ナショナル・ギャラリーでスケジュールが埋まってしまうかもしれませんが、2度目のロンドンなら、テート・ブリテンはぴったりです。

ちなみに、テート・モダンという美術館もあります。テート・モダンとテート・ブリテンは違う美術館ですよ!テート・モダンは現代アートの美術館ですので、間違えないでくださいね。全然ちがうものを見ることになりますから。

 

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