東京/Tokyo:2013

2.タンポポ・ハウスへ。

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ホテルからJR新宿駅へ歩く。ま、若干遠い……。
でも中央線に乗りたいので、乗換しなければならないことを考えると、地上を歩いた方がいいかと。
知らない場所を歩くのは楽しいしね。

中央線でどこを目指すのかというと、国分寺駅。
実はそのあたりに、私の好きな大学教授が住んでいるんです。
……というと真面目にストーカーっぽいが、いや、そういうわけではなくて。

藤森照信さん。職業:大学教授・建築史家・建築家。
この人はとても面白い(変な)人で……って、実際の人柄がどうか知らんが、著作がとにかく面白い。
大学の頃に読んだ「アール・デコの館」でファンになり(この本はそこそこマジメな本だった)、
その後硬軟とりまぜて、けっこう読んだ。専門が明治~昭和期の擬洋風建築で、
一般向けの本をずいぶん書いてる人なんです。
もちろんテーマに興味があるから読むんだけど、コノヒト、文章も読ませるんですよー。

だからといって、それだけで自宅まで行くとなるとこれはやっぱりストーカーだろうが、
彼の自宅は彼の自作で、まあちょっと変わった建物。
建築関係の本にもたどり着ける程度の地図は載っているので、
これは見に行ってもいいということだろうと。
長年、機会があれば見てみたいと思っていた。
そして今回の目的地である「江戸東京たてもの園」は国分寺駅の隣駅。
これを機会と呼ばずして何としょう。

何しろ、夜行バスで早朝に新宿に着いているので、国分寺駅に着いてもまだ7:00くらい。
営業時間があるようなところはまだ開いていないという意味でもタンポポ・ハウスはちょうど良かった。
……あ、タンポポ・ハウスって、藤森さんの自宅の名前です。

こういうおうち。

建築関係の本にこの家の写真はいくらでも載っているから、載せても大丈夫だろうと思うんだけど……
それとも何かを侵害するだろうか。

この家の何がタンポポかというと、
なんていうかね、……説明がムズカシイんですけど、壁にタンポポを生やしていた。
少なくとも竣工当初は。(今もやっているかどうかは知らない)
壁が横ストライプになっているが、ここは石造りのプランターというかポケットみたいになっていて、
ポケットに土を入れ、タンポポを植えていた。だから春が来れば全面タンポポ。

まあ実際はタンポポってイメージよりもはるかに地味に咲く植物だったらしく、
期待したような“全面タンポポ”ってのは実現しなかったようなんですけどね。
野原一面にタンポポの黄色、というのはよく見かける光景のような気はするけど、
あれはやはり面的に広がる多数のタンポポだからこそのことであって、
プランターに一列に並べたような状態だと、花期が長いことが逆に仇となり、
部分部分で黄色い花がちょこっとずつ見える、という状態になるらしい。

この辺の顛末は、朝日文庫「タンポポ・ハウスのできるまで」に詳しく正確に書かれてますので、
ご興味のある方はどうぞ。ご希望の方にはお貸しします。
ちなみにどうして藤森さんがタンポポを家から生やそうかと思ったかというと、
……単に面白いから。

国分寺駅から、そうねえ、10分ちょっとくらいかねえ。
地図はわりとわかりやすく、間違えないで行く自信があったのに、……少し行きすぎて戻る。
そうか、この道を藤森さんが日々歩いているわけか。と少々感慨深い。
この辺りは昔ながらの住宅地で、気取らず、今はいい感じにひなびている。
探検をする気分で歩く。まあ、若干宝探しみたいなもんですよ。

それだけに、見つけた時は「あった!」と結構気分が盛り上がった。

印象としては、想像よりも小さい。もっと石の量感がドシンと来るもんだと思っていた。
竣工当初は、さすがの藤森さんも(←野蛮人。←いい意味で。by赤瀬川原平)周囲との違和感を
気にしたようだが、わたしが見たこの時は、もう溶け込んでいたね。
家が建てこんでいるのも溶け込んだ理由の一つだと思う。おそらく建てた時より、
周りに家は増えたと思うんだ。

建て増しをした部分の建て増し感がいかにも藤森さん的大雑把。でも特におかしくない。
あまりにも別物なので、一体化して見ないのがむしろ奏功なのかもしれない。
写真で見るとどういう状態かわからないだろうが、右のクリーム色の部分が建て増し部。

まあ実際に見ていたのは5分とかそこらなんですが、わりと満足した。
なんというか、万人向けとは思わないけど、見てほっこりしましたよ。
わたしは建築物は、使い勝手をまず考えるべきだと思っているし、
藤森さんの建築のデザインは(遺憾ながら)好きとは言えない方向のものだけど、
(だいたいのところ、住むには奇抜すぎます……)
「あれがこれか!」的感動があった。

でも彼の近年の建築は全然知らないんだよなー。
というか、wikiを見たところ、知らない建築の方が多い。
なんだよ、「空飛ぶ泥舟」って。
使い勝手無視の建築には怒りまくるわたしだが、ここまで来るともう何も言えません……。
(まあ茶室はね。面白さ優先で許されると思う。少しアマイか。)

あ、タンポポ・ハウスを見つける前にこんなところを通った。

多分造園業の人の畑かな……。
そういえば、全然意識にのぼらなかったけど、もう梅の季節だった。
そういうことにも気づかずに時は経っていく。

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