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< 上高地で出会った人 >【prose】
北村薫の「八月の六日間」という本を読んで、昔のことを思い出した。 若い頃に長野県へ行った。善光寺と松本を主目的に、その他に馬籠・妻籠、上高地、帰りに諏訪湖畔に泊まるコース。上高地へ行ったのは諏訪の前、 ...
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< 山は。 >他一篇【prose】
< 山は。>【prose】 畑の畝がまっすぐに伸びる。山に向かってまっすぐに伸びる。 山は十勝岳。夏の空が青く広がる。 麓の人々は山と空を眩しく見上げる。 ◇ 北上川べりでは紅色の萩の花 ...
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< エディンバラ随想 >【prose】
ロンドンでの三ヶ月の滞在後、エディンバラへ向かう夜行バスに乗った。海外で夜行バスに乗るのは初めてなので不安だったが、バスは何事もなく早朝のエディンバラへ到着する。夏でもエディンバラの風は冷たい。駅の片 ...
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< ヴェネツィアの、遠い島 >【prose】
その島へ行くのには本島から船で五十分かかる。途中のブラーノ島で乗り換え。ブラーノ島へ行く人は多いが、そこから船で五分のトルチェッロ島まで足を伸ばす人は少ない。 小さな船から降りたのはわたしを含めて四人 ...
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< 実方中将の墓 >【prose】
名取市北西部に実方中将の墓といわれるものが残っている。里山の麓の小さな碑。前面に水田が広がるのどかな場所。竹林に囲まれひっそりと建っている。 藤原実方はおよそ千年前に生きた人で、陸奥守に任ぜられはるば ...
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< ヒースの野に立つ女 >【prose】
ヒースという植物がある。ツツジ科の低木。高さは、30センチくらいから人の背丈を超えるものまで。白や淡いピンクの2、3ミリのコロコロした可愛い花をつけるものが多い。びっしりと咲きそろった時期は淡いピンク ...
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< 黒い生きものたちのはなし >他3編【prose】
< 黒い生きものたちのはなし > 大きな黒いの と 小さな黒いの が よりそっている。 つやつやした毛並みの。 ふわふわした毛並みの。 小さなのが大きなのの顔を舐める。 ぺろぺろぺろぺろ。 ぺろぺろぺ ...
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< クロ・リュセの館 >【prose】
フランスのアンボワーズの街にクロ・リュセという名前の館がある。はるか昔、そこにはレオナルド・ダ・ヴィンチが住んでいた。 アンボワーズの城からはクロ・リュセまでは徒歩10分。わたしは走った。閉館間際の館 ...
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< 人間型、以外の宇宙人。 >【prose】
宇宙人はいるのだろうか?地球上で何億回も繰り返された問い。繰り返されすぎて、昨今では事改めて問う人もない。 いない、という可能性はあり得ない。広大な空間と時間。無限に等しい数の星。その中で太陽系地球の ...
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< 東は東、西は西。 >【prose】
中東はわたしたちから遠い。そこに長く花開いたイスラム文化について、わたしたちはほとんど知らない。中東。アラブ世界。イスラム社会。そもそもどう呼べばその存在を包括的に指させるのかさえわからないのだ。ヨー ...