4日目です。
この日は日程全体で一番激しい移動をする日。まあ激しいけれども過酷というほどではありません。が、多分こういう移動をする人は少数派だろうなと思う。
先にどんなコースだったかお伝えすると、
朝に門司港を出て、船で海を渡り下関・唐津港へ。
下関駅へバスで向かい、そこから電車で新山口駅乗り換え、山口駅へ。
山口駅から徒歩圏内(とはいえ1キロはある)の山口県立美術館で国芳展。
その後、龍福寺を見てから上山口駅へ行き、津和野行きの電車に乗る。
こういう日程になりました。
山口県立美術館でどのくらい時間を使うことになるかわからなかったから、お昼ごはんをどこで食べるのか。上山口駅ってすごく小さい駅みたいだけど、そもそも電車はここに止まってくれるのか。とか気になる点はいくつかありましたが、――大丈夫です。一食くらい抜いても人間死にません。またこれか。
とりあえず下関へ向かう。
前日、門司港を歩きながら、下関へ行く方法をどっちにしようか考えてました。JRか船か。楽なのはむしろJRかもしれない。船で行くと唐戸港に着くので、そこから下関駅まで若干の距離がある。2キロくらい。これを歩きかバスか……。朝早くの話だし、JRの方が安定感はあるよなあ。
でも、この海を渡ってみたいと思う気持ちが勝ちました。
結果を先に言ってしまえば、後日この海を船で渡る機会はあった。しかも往復した。でもこの時点では、ここで渡らないと門司港ー下関間の船を利用することはないはずだった。帰りは関門橋を歩いて渡ろうと思っていたので。
7:00に宿を出て昨日のクルーズの出発地だった桟橋へ向かいます。徒歩10分くらい?門司港はエリアとしては広くはないですから。

下関から海を渡って来る船。
……といっても船は5分くらいで対岸へ着きます。片道400円。もう繋がっていると言ってもいいくらいですよ。海は断絶ではなかった。
何日か経った後に訪れるであろう唐戸市場、海響館の朝の姿を後目にバス停を探します。
ここで細かい話をしておくと、バスがね。船を降りたあとの最寄りバス停は近くて見つかりやすいんですが、2カ所あることが問題です。なぜか海響館の東側で道路が2方向に分かれ、それぞれにバス停があるのよね。なぜこうするのか理解に苦しむ。2方向に分かれる前にバス停を作っておけば全部のバスが通っていくのに、バス停を2つ作ったことで、バスは2本に1本(?)しか乗れないんですよ。
しばらく経ってこの仕組みがわかったので、もう一つ先のバス停まで歩くことにしました。そうすれば全部のバスに乗れるもの。でも2つに分かれても十分なほどバスの本数はあったようだ。

本数がすごい。1時間に20本もあれば、まあ2分の1でもそんなに不便は感じないでしょうね。でも5分くらい待ってもこちら側のバス停にはバスが来なかったのよね。向こうのバス停には2,3本来たのに。一つ手前の海響館前から乗って下関駅へ到着。8:11発でそんなに時間もなかったから、まあ歩いたらぎりぎりだっただろう。下関駅から普通電車に乗る。
ここからはわりと時間がかかりました。下関から山口駅まで、途中で新山口で乗り換えて2時間ほど。
途中、ブラジル人の女性と道連れになった。若者ではない、大人の方。彼女は英語が喋れず、わたしはポルトガル語が喋れない。スマホで翻訳しながらチマチマ喋りました。彼女は世界最大の野外美術館があるミナスジェライス州から来た人。津和野に行きたいそうなので、山口駅で津和野行きの電車まで付き添いました。
元気に、一人で。てくてくと歩いていく彼女は、夢と希望が詰まった後ろ姿。
山口県立美術館の国芳展。
山口県立美術館は山口駅から歩いて行けます。栄えているとも寂れているとも、どっちとも言いがたい商店街を通り、文教地区的なところへたどり着く。亀山公園のふもとに美術館が建っています。ここは宮城県美術館と同じ建築家が設計している。前川国男。熊本県立美術館も彼の設計でした。やはり雰囲気はどこも似ています。

国芳展はね。楽しみにしていたんですよね。
浮世絵といえば、北斎、広重。次点で歌麿、写楽。そしてその次に来るのが、じゃーん!国芳です!(←勝手に盛り上がっているが客観性はない)
でも今までなかなか国芳単独のエキシビはなかった。一度まとめて見たいなーと思っていました。今回、旅行の計画を立てるにあたって山口県立美術館のHPを見たら「国芳展」が。おお!わたしのために!と思った。
……だがその国芳展、わたしが行く時には最終日近くてですね……。ここもスケジュールが難しかったところなんですよねー。
津和野へ行く前に途中下車で行くか?その後すぐ津和野行きのSLに乗るか?
それとも途中下車は同じでも、SLは翌日にして、国芳展を時間を気にせず見るか?
その後の津和野観光も勘案しつつ、相当悩んで決めました。国芳展を心ゆくまで見よう。せっかく出会えたんだし。
たっぷり見ました!

ほとんどの展示は写真撮影不可だったんですけど、3枚くらい可能だったんですよね。最後の一枚は展示スペース出てからの遊びもの。こんな風にして遊ぶようです。

江戸の昔、小さい子がこの化け猫着せ替えで遊んだだろうと想像するとほっこりしますねえ。浮世絵は安いものだったらしいけど、裏長屋の子供たちも遊べるものだったんだろうか。それとももう少しお金持ちの子の遊び道具だったんだろうか。
国芳は。
1.アイディアの豊富な人。出来るだけ面白いものを目指すという明確な意志を感じる。
2.描きこみがすごい。弟子の手もあるかもしれないけど、「つぎこんでいる」感。
3.色彩感覚がいい。
1は発想力ですねえ。骸骨がドーンと出てくる「相馬の古内裏」でも、人間で顔を作る「見かけハこハゐがとんだいゝ人だ」でも顕著ですけど、発想で勝負してやるという気概がある。よく言われることだが、アルチンボルドと発想は同じで、洋の東西でこんなことをしているのは面白い。
2.着物の柄がバラエティに富んでいた。一枚の絵にこんなに違った柄をがっつり書き込んでいたら、一枚当たりの筆料に見合わないんじゃないかと心配になるよ。わたしが令和の世で心配しても仕方ないが。細かい描写が多く、……これは彫師も大変だったでしょう。
3.「八犬伝」とか弁慶とか「水滸伝」、武将たちをテーマに勇壮に描くことが多かったせいか、色の鮮やかさがすっぱりしている。赤と青を上手く使っている。
1840年~1850年の頃が一番いい時期かと思いながら見ていた。その前も後もすごく落ちるわけじゃないけど、一番脂の乗った時期ということで。イメージになかったけど、美人画も相当描いたようだ。でも美人画は、みんなほんとに同じ顔に見えた。明確にモデルが一人いたんじゃないかという気がする。
今回たっぷり国芳を見て、――国芳ってマンガの基だなあと思った。これでもかという発想でみんなを楽しませる。かっこよさをかっこよく描く。少年マンガの直接の先祖。
国芳展は多分200点ほど(前期・後期入れ替えで合計400点)並べてくれて、ボリュームもあったので2時間くらい見ました。こんなに見るとは思わなかった。だがたっぷり見れて満足。残り30分で、常設展とショップを見る。常設展はわたしがキライな現代アート、雪舟もあったがちょこっとだけという顔ぶれだったので、さらっと見て。
13:00、山口県立美術館を出る。
龍福寺へ。
国芳展をまあまあしっかり見たので、ここからの観光は龍福寺1ヶ所だけにしました。そばにある八坂神社にも行こうかと思っていたんだけど、時間がね。龍福寺は徒歩で20分くらい。
途中、良い佇まいの川。一の坂川。

水も澄んでいていいですね。多分山口市の母なる川。春には桜が咲くそうですよ。
歩いていると、どこからかお囃子が。……どこだろう?と見まわしていると、遠く、200メートルほど先の(建物と建物の間の)道路を横切っていくお祭り行列が見えました。
だがちらっと見えただけ。わたしがその場所へ着くころには行列の最後尾が何十メートル先に進んでおり、カメラのズーム40倍をぎりぎり駆使して撮ったのがこの写真。

んー。あと5分か10分早く歩いていればなあ。お祭りに行き会うなんてめったにないことじゃありませんか。ちょっと残念だった。

龍福寺の敷地はもともと、この地の大名だった大内氏の居館があったところだそうです。グーグルマップで見ると、実に居館っぽい立地。
この、周りの道の四角具合が。きっとこれって堀に囲まれてた跡でしょう。
山口県といえばまずは戦国大名の毛利氏が浮かびますが、大内氏はその少し前の段階の大名だった存在ですね。他国者にはそれほど馴染みはないけれども、最盛期(16世紀半ば)の大内義隆の頃には中国地方・福岡県を支配し、山口市を「西ノ京」と言われるほど栄えせしめたらしいです。
……と、一応大内義隆の関連本を1冊読んだんだけど、中身がサッパリ頭に残らなかったわたしは今Wikiをググりました。

本堂が端正な感じです。多分最近の建物だと思うけど。自由に鐘をついていいシステムだったので(お布施推奨)、ついてきました。

狂い咲きの桜。華やかなる大内文化の、五百年を経たあとの祈り。
この参道の紅葉は有名らしい。全体的に過ぎ加減の山口県の紅葉の中で、一番きれいだったのがここかもしれない。

津和野へ向かいます。
ここであっさり観光を切り上げて、JRの上山口駅へ歩きます。10分くらい。そろそろ津和野へ行かないと今日津和野で何も見られなくなってしまう。
上山口駅は、事前に知っていたけれどもとても小さい駅。当然無人で、電車が止まってくれるのか?と心配になるほどでした。
14時過ぎの電車は無事駅に停まり、津和野へ向かって走ります。実はねー。昼ご飯食べられてないのよねー。この時点でお腹がすいてお腹がすいて。持っていたおせんべいをかじってひもじさをしのぐ。しのぎきれてないわけだが。
15:15、津和野着。

コメント