秋保温泉といえば仙台の奥座敷。身近な地域で、よく知っているつもりでいるのですが、実はこまめにアップデートされており、新しいスポットがいつの間にか出来ていて驚きます。今回の「いつの間に!」は佐々木美術館&人形館。
現代アートの美術館です。
佐々木正芳というアーティストの個人美術館とのことです。わたしは全く事前情報なしに行ったので、どんな作品が展示されているのか不明でした。
前もって申し上げますが、……実はわたしは現代アートギライです。ここまでキライなのはアレルギーなのかもしれない。現代アートを見ると憂鬱になる。ごくまれに楽しく感じるものもあるが(ぱっと思いつくのは金沢21世紀美術館のエルリッヒの「スイミング・プール」くらい)、現代アートの不安感を煽る感じがイヤなんです。
正直にいうと、佐々木正芳の画風もわたしは好きではないものでした。が、物は別にして、ここにこの規模でこの密度のアートスペースがあることは大変面白いと思った。そんなにゆっくり見たつもりもなかったのに1時間あっという間に経っていて、少しタイムワープの気分を味わったくらい。
個人美術館というと規模の小さいものを想像しますが、予想よりも大きめの建物。
外から見た印象よりも、内側の方が広く感じました。部屋がゆるく仕切られていて、トータルで8部屋くらいの感じ。1部屋自体は小さいですが、作品数が多いので密度は高く感じます。
常設の佐々木正芳の作品以外にも何人もの作家の作品が展示されていて、小さめのものが多かったので、見るものがたっぷりありました。外部の人の作品は入れ替えがありそうなので、その時その時で雰囲気が変わるのかもしれません。
常設作品で(現代アートギライのわたしにしては)好きかもと思ったのは、佐々木正芳の奥さんの佐々木あゆみの「祭草(月面に咲く)」。
だいぶ暗く写ってしまったので、画家ご本人には申し訳ないのですが、実際の絵はもっとずっと明るいものです。右側の七夕飾りみたいなものは宇宙人でしょうか?ちょっと面白い。
人形のコレクション展示もあります。
人形コレクションは、……正直言うと、全体的にはちょっとコワイ。1人じゃ来れないかもしれない。
大竹京監修 製作スタッフ4名による「森の妖精 第二部」
四谷シモンの人形も一体ありました。衣服を着てないのが怖さを助長する。
怖くない人形(?)もあって助かった。一番気に入ったのはこれ。
石渡いくよ「子宝ひな寿 10人揃」
ちょっと見えにくいですが、子供(子猫?)が3、4人混ざっているんですよね。猫の満面の笑顔が可愛くて、こんなに楽しそうな宴会なら参加したいと思った。名前は知りませんでしたが、この猫のお人形は何度か見た気がします。
世界の人形っぽいコーナー。
企画展示室。
今回この美術館を訪れたのは、日本画の個展をやっていると新聞で見たからでした。
野田陽子の「さんぽびより」。
写真が犯罪的にボケてますが、絵の前に電灯を飾って展示するという画期的な手法。……が、わたしはこういう展示方法は絵そのものの魅力を殺す、あるいは絵自体の力の足りなさを示唆することにならないかと危惧する。
現代アートとして絵画と電灯を組み合わせた作品と言われればそれはそれでいいのですが、じゃあ売る時は電灯もセットにして売って、買い手が飾る時にも当然電灯がセットですよね?といいたくなる。まあわたしは頭がカタイです。
ただし絵自体は好きでした。
野田陽子「金色の花」
これは宮城県美術館所蔵の川端龍子(これでカワバタ・リュウシで男性です。念のため)の「和暖」を思い出させる絵でした。
野田陽子「雨露」
野田陽子「足もとの幸せ」
スケッチブックも飾ってあり、習作・下絵が描いてありました。この色付けが繊細で良かったですー。野の草花を描いたものが多く、茎や葉っぱの複雑な緑色が素敵でした。こういう絵が好き。
隣の部屋はインスタ―レーションや彫刻作品の展示室。
部屋は照明を点けたり消したりして鑑賞出来ます。
あっという間に1時間。
好き嫌いは別として、見るものがたくさんあり、1時間があっという間に経っていました。小さいけれども濃密な内部。温泉街にはよく小さな美術館があり、数の中には内容が薄めな美術館も散見されますけれども、佐々木美術館&人形館は密度が濃い、見ごたえのある場所でした。
わたしとしては、もう少しわたし好みの作品が置いてあればもっとありがたいですけど。まあ好みですからね。これはしょうがない。
世の中には現代美術好きの方もいると思います。論理的に考えれば、古典はこれ以上増えないのに対して、現代美術はこれから増える一方ですから、現代アートを受け入れる感性の方が楽しみが多いと思います。――そう思いつつ、受け入れられないワタシ。
でも最近の現代アートはひと頃と違って、かわいいもの、きれいなものも若干増えてきたような気がします。不安感を煽るだけではない、プラスの感情を引き起こすものも。という言い方も偏見だが。
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