平日の15時なので、バスには下校の小学生が乗って来る。
男の子女の子取り交ぜて5,6人だろうか。多分毎日同じバスで帰っているんだろう。
それでも彼らは遠足並みにはしゃいで、運転手さんに「危ないから座りなさい」とアナウンスされる。
バックミラーに映る運転手さんの顔は無愛想。
子供好きって感じでもなさそうだし、仕事とはいえこういう子供たちを毎日相手にするのは
邪魔くさいやろうな。わたしのように通り過ぎるだけの人間にとっては、
子供たちのはしゃぎぶりも多少は微笑ましいものだが。
でも無愛想に見えた運転手さんは、子供たちが下りる時は「気をつけて帰りなさい」と
一人一人に声をかけて。バス停まで迎えに来ているおばーちゃん及びおかーさんには
「お疲れ様です」と声をかける。
バスには他に、特別学校の遠足らしき10人くらいも乗っていたんだけど、
彼らが下りる時も声をかけつつ、引率の先生にも気を使っている。
いいなあ。人間らしい、地に足がついた仕事だ。久々に見た気がする。
また、それをするのが無愛想なだけのおっちゃん(失礼)と見えた人だけに余計に感動的。
じーんとする。
バスは小塚原のバス停を通った。ああ、ここもさっきのマンガの。
「ここがあの」と思える場所がたくさんあった方が旅は楽しい。
あのマンガとの出会いはとても幸運だった。
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名取駅着。15時半くらいだろうか。
もちろんここからJRに乗って帰るつもりでいた。
でも名取駅から長町で降りて、そこから地下鉄に乗り替えて富沢まで行くのちょっと面倒だな。
ここから富沢までだと、そーだなー、……4キロくらいかな?4キロなら歩けるかな。
よし歩いてしまえ。ツラくなったらタクシーに乗ればいいんだし。
――と思ってしまったのが運の尽きだったのだ。
いやー、名取駅から富沢まで、4キロどころじゃありませんね。6キロか7キロある。
まんざら知らない道でもないから、わりとたかをくくっていたのだが、
東京インテリア辺りで、太白大橋までの直線を歩くことを考えて若干青ざめる。
けっこう遠くないか?
タクシーにしよう、タクシーに。
しかしそのタクシーが通らないのであった。
知っている人は知っているだろうが、太白大橋から名取に向かって伸びる道路(長町柳生線?)は
交通量はかなり多い。なのでタクシーもがんがん通るものだと思っていた。
が、歩いていた1時間前後の間にわたしが確認出来たタクシーはわずか3台。
そのうちの1台は確実に実車しており、
他の2台も無情にもわたしには目もくれず走り去っていく……。
だってタクシーを拾う時って、基本、進行方向へ行くタクシーを待つわけでしょう?
でもめったに来ないタクシーだから、ただ立ち止まって待っているよりはやっぱり少しでも
歩いて距離を縮めたくなるわけじゃないですか。
そうすると、わたしは後ろから来るタクシーに気付けず、運転手さんはこちらがタクシーに
乗りたいなんて気づいてくれない。わたしは猛スピードで遠ざかるタクシーのテールランプを
見送るだけ。「行かないで……」言葉に出来ないこの思い。
まあ結局、ひーひー言いながら富沢まで自力で戻って来た!
17時過ぎ。すっかり日が暮れて、カラスも寝床に帰っている。
なんかもう我ながら大冒険だった!たかが市内の移動でなんで行き倒れの心配をせなならんねん!
……でもがんばって、生協で翌日の夕食の買物もして帰った(^^)v。