ゴハンを食べた後は、前にはなかった東大寺ミュージアムへ。ここは若干地雷臭が漂わないでもなかった。
入場料取るわりに小物ばっかり、というパターンは往々にしてある。そうでなくても東大寺は、
三月堂や大仏殿、戒壇院にもたっぷり仏像が置いてあるから。それの残りってことでしょ?
そういう邪念を持って入館したところ、――狭いは狭いけど、ラインナップには不満は感じませんでした。
日光・月光菩薩が三月堂から移されていたことが大きいけど。
あれはやっぱり主役級の感じがありますからね。
中国っぽい雰囲気が強い。あれがそのまま中国にあっても驚かない気がする。
ああいう白さの塑像はこの辺りにはあんまりない気がしますけど、どうかね?
そのそばに展示されていた弁天と吉祥天は、日光・月光と大きさ揃ってたし、色も似てるし、
セットかな?と思った。完成度には若干差があると思うが。
わりと長いこと見たし、展示物そのものにはさほど不満はなかったけれども……
建物には不満があった。
建築物というのは、何よりもまず使い勝手が追求されるべきだ。
これはわたしの持論なのだが、けっこうそこから逸脱する建築物ってありますよね。
わたしがとにかく攻撃したいのは宮城県図書館だけれども……それは話が違うから置いといて、
今回この東大寺ミュージアムで思ったのは、
音響き過ぎ。ということ。
建築家はもっと音響に気を使わんかい!くぉらぁ!
巻き舌で凄みたくなるほど、音響に気を使ってない。
メインの展示室にいると、入口から人が入ってくるだけで、その足音がうるさくて仕方がない。
たしかに直線距離ではそれほどじゃないけど、動線としてはけっこう遠い筈なのに。
こんなに響く建物を作って、建築家は何をしたかったのか。
メイン展示室内もひどくてねえ。
そう広いところじゃないから当然とはいえ、誰かが喋ってると声が室内に充満する感じ。
カップルが普通の声で話しながら同じ部屋にいたんだけれど、もう耐えられないほどの音響。
始末が悪いのは、――多分、発話者はその響き具合に気付けないんだと思うんだ。
近い距離にいる当人同士には普通の音量に聞こえる。だが遠ざかるにつれて音量がむしろ大きくなる。
話の内容はごく常識的な話だったので、そこは不幸中の幸いだったけど、とにかくうるさい。
もう「なんでこんな建物を作ったのだ!」と大変に腹立たしかった。
建築家は、(特に公共建築を建てようと思う建築家は)
まず動線と音響と光量を考え、
次に建築コストとランニングコストとメンテナンスのしやすさを考え、
さらに外観を考え、
その上でさらに余力があれば自分の好きに(かっこつけた)基本コンセプトを立てれば良い。
建築家の自己満足に税金を使うな。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
……どうも宮城県図書館のことを考えると血圧が上がる。
心穏やかに、東大寺戒壇院に行きましょう。最近は戒壇堂と呼ぶようにしているようですね。
わたしは戒壇院の方が好き。
戒壇院は――
はるか昔に来た時は、待ち番のおじいさんが「こんなにええ仏さんがいらっしゃるのに大仏様だけ見て、
こっちにはほとんど人が来はらへん。こないだなんか偉い大学の先生も調査に見えたのに……」と
わたしを相手にずっと愚痴をこぼしていて閉口したという、ナツカシイ思い出のある場所。
今回の人にも愚痴られたらどうしよう、と思ったが今回の人は普通でした。
だが相客の人が、……手に持った靴入れのビニールを、ずーっとシャカシャカシャカシャカ言わせてて
すごいイライラした。静かなところでのシャカシャカってけっこう気になるでしょう。神経に障る。
ゆっくり見ているわたしの視界に入って来ないということは、
彼もけっこうじっくりを観仏をしているのであろうと思われるのに、
あのシャカシャカ具合は何なんだろう。
釈迦だけにシャカシャカ?……あ、いかん、大変なことを言ってしまった。
まあとにかくそのシャカシャカに業を煮やして、文句を言う寸前までいったのだが、
何とかその人は先に帰ってくれました。なのでその後はゆっくりと観仏。
どうも東大寺ミュージアムでもここでも、音に悩まされる。
東大寺戒壇院の四天王は。
四天王といえばまずこれ!という有名な彫刻。
シブイおっさんたちですよ。顔だね、彼らは。顔が命。
体はさておき、顔のラインがとても完成されていて……ライン一本動かない、という感じ。
広目天なんかは見ようによっては、――やくざ映画の若頭、というような風貌だがね。
体は、もう少しがっちり体型でもいい気がする。ちょっと細すぎる。
いや、趣味嗜好の話ではなくて彫刻のバランスとして。
ただしここも、やはり一方向からしか眺められないのが不満。
全方位から眺めて、一番好きなアングルを見つけたい。
東大寺ミュージアムで時間をとってしまったので、戒壇院には結局30分弱しかいられなかった。
ぎりぎりまでいて、16:30に戒壇院を出る。階段を降りてしばらく歩き……しまった!傘忘れた!!
走って戻る。閉館時間時間ぎりぎりに出たので、門はもう閉まっている。
――自分で叩くはめになるまで全然気づかなかったけれど、
ああいう厚みが厚い門扉は、普通にノックしても「コン」とも音がしないんですね。
手のひらでけっこうな力を入れてベシベシ叩く。それでも音はほとんどせず。
しかし幸いなことに、待ち番のおじいさんがまだチケット売り場付近で後片付けなどをしていてくれたらしく。
すみませーん、と言うと門を開けてくれた。
近くにいなかったら全然気づいてもらえなかったと思う。ラッキーだった。
「傘、忘れました……」
見ると傘置き場には他にもいくつか傘があった。
「よく忘れたのに気づかれましたな。あれみんな忘れ物ですわ」とおじいさんが笑っている。
再び戒壇院の階段を降りると、そこはもう東大寺の敷地と言うよりは普通の住宅地で。
日除け地もなければ塀もなく、戒壇院とはご近所付き合いが出来るようなところ。
誰もおらず、しかし由緒正しげな家々の佇まい。静か。
宝くじが当たったら、この辺りに住みたい。是非住みたい。
その後は、だいぶバスを待って、ホテルよりもだいぶ先のJR奈良駅まで行って、
奈良駅から三条通りを歩きながらホテルに戻る。お土産の物色をしたかったので。
さらに、今日の夕食は柿の葉寿司にしよう!と思っていて、歩きながら探していると、
6個入り830円の柿の葉寿司がセールで売っている。量は少な目だがデザートも買ってあるし、ちょうどいいか。
鮭と穴子と焼きサバは組み合わせとしてはお得な感じだし。
柿の葉寿司の老舗の「平宗」のお店でした。他にもちょうどいい配り菓子もあったので、まとめてお土産を買う。
ホテルに帰って食べたところ、柿の葉寿司、美味しかったです。焼きサバ初めて食べたかな。
あ、そうそう、しかしホテルに帰ると衝撃の出来事が!
ホテルが見えて来たなーと思ったところ、すーっとバスが近づいて来て、ホテルの前で止まる。
そこから団体客が降りる。ひえええ、団体客!?団体客なのか?
ホテルは安さに応じた壁の薄さしかなく、しかしわたしの部屋は、両サイドが今までは空き部屋だったらしいところで
助かっていたのだが。
しかもホテル内に入ると、彼らが中国人団体客であることがわかる。うわー……
それからしばらくはロビーにいて、(エレベーターは彼らに占有されていて割り込む根性がなかった)
部屋に戻って、聞こえてくる物音に戦々恐々としていたのだが、
……でも結果的には、彼らが部屋まで行く時のお喋りがちょっと大きかっただけで、
その後は全然問題はなかった。多分一般旅行者とはフロアも別にするようにはしてただろうしね。
「今静かなのはみんなで食事にでも行ってるからだろうなー、戻って来たら夜中まで大声で喋ってんのかなー」
と心配していたのだが、夜も帰って来た物音にも気づかないほどだった。
良かった。