別府では、海地獄と大分香りの博物館を見たし。
観光としてはこれでいいんじゃないだろうか。
その他に、もし行くとしたらうみたまご水族館かなあ……。でも入場料2200円。ちょっと高いか。いいや、水族館は鹿児島で見る予定だし。――だがこの決断は、その後の人生に影響を与えることになります。って、大げさ。
9:40、別府駅前発のバスに乗ります。昨日、ゆふりん号ならスーツケースが荷物室に預けられる(路線バスではそもそも荷物室がないですよね)と聞いたので、ゆふりん号で。
ここから湯布院に着くまで1時間強、全く何も記憶がないので、多分ぐっすり眠っていたんだと思う。あ、思い出した。たしかにぐっすり眠っていた。10:50、JR由布院駅前に着いて寝ぼけ眼で降りたもの。
翌日撮影のJR由布院駅。着いた日は曇り時々雨でした。
JR由布院駅は磯崎新設計の建物だそうです。駅舎中央のドーム部分は吹き抜けなんだろうか。まだ頭が完全には覚めてないので、駅舎の中を見て来るのを忘れました……。
磯崎新の建築。……と考えて、ぱっと思い浮かぶものがない。え?そんな筈は。しかしwikiを見てみてもやっぱり「ああ、これね」というものがなく。世界のイソザキなのに。知っているような気になってて、実は全然知らなかった。不覚。この人は大分市の出身だそうです。
坂茂設計の湯布院ツーリスト・インフォメーション。
同じく翌日撮影の湯布院のツーリスト・インフォメーション。
そしてツーリスト・インフォメーションの方の設計は坂茂(ばん・しげる)。この人を知ったのは東日本日本大震災の時。紙管を使った避難所間仕切りの設置のニュースを見て、ああ、うまいことを考えるなーと思ったことから。
紙管っていろんなタイプのものがありますが、日常生活でも、たまにものすごく丈夫なものを見かけますよね。具体的には何の巻き芯だったか覚えてないけど。
直径3センチくらい、厚さ5ミリくらいでも十分頑丈で、片手で持って反対側の手のひらにペチペチやるだけでは全く変型する気配すらない。そのまま捨ててしまうのが惜しいくらいの頑丈さ。
わたしの場合、この頑丈さを「殺人事件の凶器に使えるな……」と思っただけで終わったのですが、これを間仕切りの材料に、建築材料に、と考えるのは発想の飛躍が必要だ。そして発想の飛躍だけで終わらせずに、自分が現地へバーッと行って、組み立てて役に立つようにしてしまうというのは、建築家としてはおそらく相当に特異。
……建築家というのは――わたしはそういう方向の建築家がなるべく少なくなって欲しいと思っているけど――自分の概念の実現化にだけしか興味がない人もいますよ。平ったく言えば使う方の使い勝手を全然考えていない建築。
坂茂は被災現場という「使い勝手」の、ある意味では究極といえる場所に行って問題解決に尽力してくれている、動く建築家。作る方と使う方の幸福な(しかし大きな困難も伴うであろう)出会い。
しばらく前にテレビ東京の「美の巨人たち」で、坂茂が設計したニュージーランドのクライストチャーチ大聖堂の回がありました。この時に救助者ではなく建築家としての坂茂に感銘を受けた。
良いページがいろいろ出て来たので、矢も楯もたまらずいっぱいリンクを貼っておきます。
→坂茂氏が設計したクライストチャーチ「紙の教会」。地震で倒壊した大聖堂を紙で仮設したのは日本人建築家でした
紙管で出来ていると聞いて驚くほど相当に大きな建物。何より素朴な美しさが素晴らしい。テレビで見た時は光の入り具合もなかなかでしたね。歴史を重ねた大聖堂にも通じるような、落ち着きを感じます。ここには行ってみたい気がした。(今のところニュージーランドは行きたい国には入っていませんが……)
→日本人建築家の坂茂氏、 クライストチャーチの中心に 新たな商業ビルをデザイン
この記事の後半にある商業ビルの雰囲気は湯布院ツーリスト・インフォメーションとよく似ている。違いは「木」が外側に出て来ているかどうか。湯布院の方はもう一つ内側に位置している。
傾斜路を基準に撮ってしまったので、写真では残念ながら「木」の造型の良さは出ていませんが。ツーリスト・インフォメーションのサイトを見るとその木の造型がよくわかります。
これはゴシックの大聖堂が石材で木ー森を模しているところ、それを木でやっているんでしょうね。木を石へ、それをまた木へ。逆輸入といった趣。
→坂茂建築設計のサイトを見ると、作品写真が豊富に載ってます。
気持ちのいい、清々しい、温かみのある建築ですよね。まあ個人住宅に関しては、わたしにはちょっと開放的すぎるな。こんなに開口部があると落ち着かないと思う。
→坂茂のインタビュー記事。坂茂の考え方が詳しく載ってます。
熱をこめて色々書いたが、……しかし実は現地ではそんなにじっくり見てない。せっかく行ったのにねえ。空間が広々していて、少しの間椅子に座って、ああ、木の内装はやはり落ち着く。気持ちいい空間だなーと思ったりはしたけれど。もう少しちゃんと見てくれば良かったよー。
ゆふいんチッキは便利。
ところで、湯布院と由布院の漢字の使い分けって難しいですよね?
温泉としては元々「由布院」。
→昭和30年に由布院町と湯平村が合併し、新名称が「湯布院町」。
→平成17年に「湯布院町」と庄内町、挾間町が合併し「由布市」。
→ゆえに現在「由布院温泉」の住所は「由布市湯布院町」。
あー、わかりにくいわっ!
まあ湯平村の湯を活かしたかったのもわかるし、音も変わらないし、いい考え!と思ったのかもしれないが、やっぱり混乱するよなー。地元の人はともかく、旅行者が正確に使い分けようとするといちいち調べないと。わたしは湯布院の方が直観的にピンと来ます。最近はひらがなで「ゆふいん」と書くことも増えたそうです。
ツーリスト・インフォメーションでは「ゆふいんチッキ」というサービスがあり便利でした。ここで荷物を預けるとその日に泊まる宿に荷物を運んでくれるの。500円。ただ、まとめて配送するようなので、すぐ宿に行ってすぐ荷物を解きたいという時には不向きです。わたしの今晩の宿まで駅からは1キロくらい。スーツケースをゴロゴロさせて行くのも大変だし、運んでもらえばこのまま観光にも行けるしね。
坂茂の話を長々としたので行数はかさんでますが、実際の時間経過でいえば、湯布院に着いてからまだ30分しか経ってません。これから湯布院観光に向かいます。
しかし湯布院観光は……
時間がたっぷりあるのがわかっていたので、メインストリートである湯の坪街道を細かく見て行こうと思っていたんです。惹かれたお土産屋さんにはみな入り、食べ物屋さんもメニューをじっくりチェックという、気になったところはしらみつぶしにする姿勢で。
――だが、湯布院のお土産屋さんだけで2時間半をかけるのは無理でした。
終点の金鱗湖まで行っても2キロくらいですからねえ。そのうち湯の坪街道はだいたい1キロくらいですか。どんなに丁寧に土産物屋さんを見ても、1時間経たずに金鱗湖まで着いてしまいます。るるぶで予習したポイントはほぼ見たのですが、そういうところはどこも、基本的にお土産屋さんでした。もう少し見るのに時間がかかる施設かと思ったんだけれども。
湯の坪横丁。風情のある店並びを再現。
湯の坪街道は賑わってましたねえ。ノリは京都の三年坂とか哲学の道と似ている。ザ・観光。聞こえるのは9割中国語。別府もそうだったけど、中国からのアクセスがいいんだろうなあ。金鱗湖も混んでいた。金鱗湖は明日ゆっくり見ることにしよう。雨だし。
金鱗湖そばの八百屋さん?で売っていた枇杷があまりにも美味しそうだったので買う。5個で390円。持ち歩きには重いけど我慢できなかった。
時間的にだいぶひっぱった上で13:00にカフェに入り。お昼替わりのクレープを食べながら、今後の予定を練ります。
コミコアートミュージアムには行かなきゃなー。現代アート美術館らしいので、現代アート嫌いのわたしが行って大丈夫なもんかどうか。だがこの状態では行くしかない。他に行くところはない。小さいミュージアムのようですが、ここで1時間過ごせるかなー。何しろ今晩の宿のチェックインが15:00からなので、あと1時間半しないとチェックインできないんです。
だがカフェから出てコミコアートミュージアムに行ったところ。受付で、「観覧はガイドツアーのみで、時間も決まっており次は15:40の回しかない」と告げられます。うー………………。でも他に選択肢はないわけだから、15:40の回を予約します。ミュージアムとは言ってもロビーなどはない小さな美術館なので、またその頃に戻ってくることになります。
ああ、あと1時間以上経たないとチェックイン出来ないよ!どうしよう!
今まで念入りにうろうろしていたのに、さらにうろうろします。
湯の坪街道から一本入ると静かな里の雰囲気ですてき。
この建物、面白いデザイン!旅館なようなんですけどね、ほぼ純和風のど真ん中に大きな洋風窓があって、ものすごく目立っている。うわー、不思議。ぜひ建物の謂れを聞きたかったんだけど、宿泊客でもないわたしがずかずか入って行ってインタビューする勇気はなく。ここは榎屋さんという旅館(のはず)。
しかしがんばって「散策」したのもここまで。湯の坪街道も2往復くらいした。もう見るところがないよ~~~~。
14:20。川沿いのベンチに座ってスマホを取り出す。調べものも残ってないので、仕方ないから英語ゲームをやる。だんだん雨が強くなってくる。横殴り。屋根があるベンチだったからそんなには濡れなかったけど、こんな遠いところまで来て時間を持て余してスマホでゲームをやっている状況に、ほとほとワビシサを感じました……。
ようやく14:50。15:00ちょうどに着くように、今夜の宿のペンションに向かいます。
前のページ:20.大分香りの博物館と別府冷麺。別府冷麺、旨いよ!
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