気持ちのいい部屋でぐっすり眠って、翌日は快晴。
町の向こうには阿蘇山。肉眼ではうっすら見えてたんだけどね。写真には写ってないね。
ちなみに手前からまっすぐ伸びる細長い敷地がホテルの駐車場で、わたしのレンタカーはあの水色の軽です。
9:30にホテルをチェックアウトした後、車を置いたまま周辺をちょっと散歩します。昨日貰った地図に、近くの明行寺というお寺に夏目漱石の文学碑があると書いてあったの。
昔、夏目漱石が阿蘇内牧温泉に来たことがあったんだって。泊まった旅館に夏目漱石記念館があるそうなんだけど、熊本地震の後は内部は見られなくなっているらしい。――漱石よ、道後温泉に続いて、ここでもニアミスか。
大観峰(だいかんぼう)へ。
前日バスでこの辺りを通った時も似たようなアングルで見下ろしたし、内牧温泉から阿蘇山の方向とは逆になるし、大観峰へは行こうかどうしようか迷っていました。でもこの日は天気が良かったので行ってみた。字から伝わる通り、大観峰は阿蘇山を一望する展望ポイントです。
行って良かった。山はかすんであまり見えなかったけど草の緑がきれい。緑色は目が喜びますね。
こいつが昨日から苦楽?を共にしている相棒。なんか眉毛がない顏っぽいよねー。
では、いよいよ草千里へ。
大観峰から草千里を目指します。大観峰から草千里までは車で1時間。もっと短かったような気がしていましたが、けっこう時間かかっている。ここはさすがに迷わず行ける。
草千里。――というと、三好達治ですねえ。
雨は降つてゐる 蕭蕭と降つてゐる 三好達治「大阿蘇」
中学の教科書に今も載っているのでしょうか。他の部分は忘れたけれど、この「蕭蕭」と、文の繰り返しが印象に残っていました。いや、一番印象に残っているのは、この詩に添えられた写真。そこでは馬が大草原で草を食んでいました。雨の中。静かに。キャプションには「阿蘇 草千里」と書いてあった。
今からその草千里に行くんです。長い時を越えて。
草原がある。山がある。空がある。風が吹く。ああ、いいところだ。
今、ここにいることの幸福。
草の鮮やかな緑と緩やかに連なる丘の稜線が心地よい。雄大ですが、威圧するような雄大さではなく。足元の草が柔らかい。受け入れてもらっている気がする。
――こんな大草原で、運良く家族連れが近くを通りかかったので、まるでアリジゴクのように待ち構えていてシャッターを押してもらいました。その写真では、わたしは腕を大きく左右に広げて「どうだー!」といわんばかりのポーズを取っている。写真を撮られるのが苦手で、普段は大抵直立不動というか仁王立ちなのですが、この時は我慢が出来なかった。高揚感。うれしい。
そしてね。ふふふふ。
馬にも乗ります。
乗馬好きなんですよねー。習うお金は出せませんが(涙)。宝くじに当たったら乗馬を始めます(真顔)。観光地で乗馬コースに行きあたると、時間とお金がゆるす限りで参加します。
ちなみにここの乗馬の金額は、Aコース(5分):1500円、Bコース(20分):4000円。
子どもと大人が一緒に乗る場合は、各々2500円と6000円だそうです。
ちょっと悩んだけど。ここはBコースでしょう。5分なんてあっという間だし。200メートル、行って帰ってくるだけでは全然満足できないに違いない。そして結果としてBコースを選んで正解でした。
わたしを乗せてくれたアイちゃん。大分県出身。
草千里は小外輪山の中のカルデラが草原になっているところで、真ん中には小さな丘があります。Bコースはその周りをぐるっと回ってくれるの。
風景がドラマティックに変わるので楽しいです。わたしは馬に乗っているので写真は撮れないわけですが。馬引きのおにいさんに頼んで、出発地点方向を撮ってもらいました。駐車場のドライブインがはるか遠い。
馬引きのおにいさんのお話です。
・観光客の数にもよるが、万歩計ではかると平均1日1万歩くらい歩く。今までの最高は1日3万8千歩。
・丘の陰、駐車場側からは見えない位置に馬たちのための水飲み場があり、先日水道修理をしたばかり。水道管はドライブインの方からずっと引いており地中に埋めている。埋める工事の際は草もはがしたが、貼りなおしたので違和感なし。
・基本的に馬は臆病なので、少しでも違和感があると、そこから先に絶対行かないということがあるので気を使う。
・馬たちには厩舎があるわけではなく、この草千里浜で飼っている。雨や雪でも平気。
えー!草千里で放牧だとは思わなかった。じゃあアイちゃんにとっては、今は家の中をぽくぽくのんきに歩いている状態なわけですね。荷物(←わたしだ)はだいぶ重いにしても。20分、馬の背中から見下ろす草千里の風景を楽しみました。幸せ。
そんな乗馬の直後ですが……。
ドライブインの前で馬肉串焼を売っていた。500円。
なかなか美味しいもんですね。最初の歯触りはハツのようなシャリシャリ感。後半部分は牛肉と似ている。噛み応えがいい。
しばらくドライブインのベンチに座って草千里を眺めてました。ここは涼しい。日光が燦々とふりそそいでいるのに暑くありません。下界とは違う。別天地。烏帽子岳好きだ。
阿蘇火口へ。しかし入山禁止の日。
行く前に阿蘇火山火口規制情報のチェックは必須です。この日、火口付近は入山禁止。それは知っていたけれども一応駐車場までは行ってみました。あ、そういえば草千里と阿蘇火口共通の駐車券は410円かかります。
がらんとしている。
一番向こうのお土産屋さんで「火山灰ソフト」を買いました。わかりにくいけど色は灰色です。
火山灰が入っているのかと思って訊いたら、別にそういうわけではなく、ゴマか何かで灰色をつけているそう。近くに活火山がないところに住んでいるので、何しろ火山灰というものを知りません。「食べてもいいものなのだろうか」「どうやって集めてくるのだろう」わりと期待していたのですが、ちょっとがっかりしました。だってほら、昨今は炭も食べる時代じゃないですか。
今、気になって調べてみましたが、炭を食べるのはどうも微妙らしいよ。
音声は入ってないと書いてあるけど、風の音は入っているかも。このがさがさいう風の音を聴いていると意外なほど落ち着くということを発見しました。
熊本地震で壊れてしまったロープウェイを新しく建てる工事が、つい5月30日から始まったそうです。火口見物が出来る状態の場合は、現行はシャトルバスで火口まで連れて行ってくれるようだが。そもそも今日は入山禁止。
ここからもしつこく烏帽子岳を撮っています。
12:50、ロープウェイ乗り場の駐車場を出ます。
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