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◎東京国立博物館東洋館。日本の中の異国。

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ずっと以前に東京都美術館で行われた「トプカプ宮殿の至宝」展に行ったことがありました。行ってびっくり。印象派やダ・ヴィンチじゃないんだからそれほど混まないだろうという予想に反して、展示物を人垣が3重に取り囲む混雑ぶり。おしくらまんじゅうをしに来たんじゃないんだよ。

しかも混雑レベルの掲示を見るとその日の混み具合は最低レベル。これで最低レベルなら最高レベルの時は一体どういうことになるのかと。「もう東京の特別展は来ない!」と思いました。もう特別展はコワくて行けない。常設展が充実している美術館がいいですね。落ち着いて見られるし。

そういう意味でわたしがご紹介したいのは東京国立博物館=トーハクの東洋館です。

 

 

アジアの美術も見てみませんか?

西洋美術、とりわけ印象派やルネサンス絵画は人気がありますよね。
近年は伊藤若冲が大人気で、そこから日本美術についても興味が広がっているかもしれない。
一部限定的にはなりますが、刀剣もけっこうきてますね。鎧兜も。

しかし日本以外の東洋美術となると、あまり見たことがない人が多いのではないでしょうか。
具体的には、中国。朝鮮。インド。エジプト。東南アジア。
これらのうちにはインドと言ってももやもやっとしたイメージしかないという場合や、東南アジアの美術なんて全然浮かばないという場合もあるでしょう。

今まで興味を持ったことがなかったものを見るのに、トーハク東洋館は良い場所です。

 

なにしろすごく雰囲気がいい。

まず、空いてます。足を踏み入れて、運が良ければワンフロアにあなたしかいないかも。他の人がいるとしてもほんの数人。1人で来ている人が多くて静かです。静寂が美術品とあなたを取り巻く。ごく自然に展示品と対峙出来る。

そういう場所って貴重です。美術館は出来れば全部そうあるべきだと思うのですが、なかなかそうはいきません。あんまり見学者が少ないと経営的にダメになっちゃいますもんね。

入ったフロアの大きな吹き抜けが日本離れしてますねー。居心地が大変いいです。心からくつろぐ。全体は暗めの照明ですが、展示品を鑑賞するのに暗すぎるということはなく、見やすい作りです。すっとその世界に入っていける。

わたしはいい美術館は海の底みたいだと感じています。ここは海の底。

 

めぐりやすい動線・規模です。

こちらが公式の紹介動画です。

……この動画がよく出来ているかというと、あんまり……。全然東洋館の良さが出てない気がする。

外見は建築デザイン的にちょっと地味ですよねー。
正倉院をモチーフにしたデザインだそうだが、現在の感覚では手垢がついてつまらなく見えてしまう。もう20年くらい経ったら一周廻ってまたいい雰囲気になりそうですが、今はあまり訴求する外観とはいいかねる。そのせいでお客さんが少ない。気がする。
一歩中に入ると、おお、と思うんですけどねー。残念だ。

フロアマップ。

地下1階から5階までという風に紹介はされていますが、互い違いというか、中2階のような作りなので、実際の展示スペースは3フロア分といったところでしょうか。この分量はいいと思います。少し多め。物足りないほどではない。ちょっと欲張って1回で全部見ても、1度では疲れるから2回に分けてもいいし、というちょうどいい規模。わたしは間に上手くお昼ご飯を食べて足を休めつつ、ごはんも含めてトータル3時間半をここで過ごしました。

空間を広く繋げることを目指しているようなので、回遊性はとても良いです。1階から2階、2階から3階と展示物を見下ろしながら優雅に登っていける。無粋な階段室で気分が断ち切られることはありません。階段も中2階だから短いしね。歩きやすいです。

 

展示品は多岐に渡ります。

東京国立博物館によれば、東洋館のコンセプトは、

「東洋美術をめぐる旅」をコンセプトに、中国、朝鮮半島、東南アジア、西域、インド、エジプトなどの美術と工芸、考古遺物を展示しています。

だそうです。

多分日本では、この数と範囲はなかなかないのではないでしょうか。大きさはおそらく大阪の国立民族学博物館(行ったことない。行きたい。)の方が大きいかと思われますが、あそこまで物が並んでしまうとかなりぎっしり。だいぶがんばらないとなかなか見終わらない。

東洋館は範囲は広いけれども数はそれほどでもなく。落ち着いて見られます。

1階:中国の仏像
2階:インド・ガンダーラの仏像、西域の美術、西アジア・エジプトの美術
3階:中国の青銅器・陶磁・染織など
4階:中国の書画
5階:中国の工芸・朝鮮の石器・陶磁・仏教美術
地下1階:クメールの彫刻・インドの細密画・東南アジアの陶磁・染織

印象に残っているのはやはり入ってすぐのところにある中国の仏像たち。わりあいに大きなものが多いです。石のレリーフもおすすめ。

エジプトものは点数は少ないのですが、そもそもエジプトが東洋というイメージがなかったのでここにあることに驚きました。ちょっと嬉しかった。エジプト物があるとその美術館に箔がつくと感じています。邪道。

ガンダーラの仏像はどこで見てもそれなりの水準を保っています。仏像を見て、西洋っぽい!イケメン!と思えたらそれはガンダーラ仏。

中国の青銅器は地味ですがちょっと面白い。殷時代の青銅器はコッテリしていて、デザインがユーモラスで不気味です。陶磁器もおすすめ。宋時代の白い釉薬のかかった線画でデザインされている陶器がお気に入りです。自宅に欲しい。こういうものの写しはどこにでもありそうなんだけどなあ。

はて、中国の書……。書はわからんなー。わからないものはとりあえず遠くから眺める。気になったら近づいて見てみる。全てをじっくり見ない方がいいです。気に入った・気になるものだけをしっかり見るのがミュージアムの良い見方。

朝鮮美術は石のナイフが気に入りました。きれいな形をしているの。あとは茶の湯の侘び寂びに繋がるらしい雑器の焼き物ですかねえ。朝鮮雑器の美というのは地味で、今一つよくわからないところです。秀吉の時に陶工をたくさん連れて来たとのことですが、それほど朝鮮の陶器は美しかったんだろうか。

最後に地下1階に行くと、東南アジア。ここだけはコッテリしています。毛色が違う。このコッテリを地下1階に置いたのはいい仕事。この頃になると疲れてしっかり見てませんが、銅の太鼓のデザインが気に入りました。

各エリアがそれぞれ独自に3~4ヶ月で展示替えをするようです。これもいい点。
博物館の常として、展示品はその国の最高傑作というわけではないんですよね。やっぱり最高傑作は本国にあるんですよ(除く:大英博物館)。展示品はいわば中粒から小粒といった趣。なので、東洋館でこれを見るべき!というほどのおすすめは、わたしとしてはありません。

でも東洋館は、その空間を楽しめるようになっています。ある程度の質のものを静かな空間で落ち着いて見られる。実はなかなかない環境だと思います。展示品をあるだけ並べずに適度な数に抑えたのも良い印象です。そのおかげでちょうどいい規模になっています。

わたしは見てないですが、ミュージアムシアターなる映像体験場所もあるようです。

Textile exhibits - Tokyo National Museum - Tokyo, Japan - DSC08829.jpg
Daderot - 投稿者自身による作品, パブリック・ドメイン, リンクによる

 

レストラン「ゆりの木」はお昼にぴったり。

この建物の1階に入っている「ゆりの木」は、東洋館へ行った時のお昼ご飯に便利です。レストランかと思いましたが、食べログのジャンルではファミレスなんですね……。

全体的にちょっと高めですが、1000円ちょっとのメニューもいくらかあります。わたしも行った時にはここでお昼を食べました。たしか五目焼きそばかなんかを。お店の人の接客が気持ち良かったです。ホテルオークラがやってるお店のせいか。

食べログの口コミを見ると、平成館を見た、本館に行く、特別展に行った、という内容は山ほどあるのですが、東洋館を見たという方はなかなかいらっしゃいません。もったいないなあ。いいところなのに。

 

「ぐるっとパス」であちこちのミュージアムに。

この記事を書く過程で「ぐるっとパス」という存在を知りました。2か月間有効のパスで、東京の美術館・博物館の入場料が無料になったり割引になったりするらしいです。大雑把に言って、有名どころは企画展が100円200円の割引、マイナーどころが入場無料になるみたいです。

うーん。わたしのように東京以外のところに住んでいて、東京を2、3日で観光したいという場合にはあまり使いでがないパスかもしれませんが、これは東京在住の方にはなかなか使えるんじゃないですかね?

このパスを買って、普段行かないような小さいミュージアムに行ってみる。5ヶ所ほど行けば元が取れると思うので。いつでも行けると思うとなかなか行かずに終わってしまいますからね。
芸術の秋ですし、2ヶ月間を個人的に芸術推進月間にするのもいい考え!

 

まさに旅。外国の博物館に来ている気分が味わえます。

こちらは学芸員の方が東洋館について書いた記事です。

最後の二行、まさにその通りなんですよね。雰囲気が外国の博物館っぽくて、日本にいることを忘れてしまいます。近くにいたら時々行きたい。行って異国を旅している気分を味わいたい。

東京国立博物館東洋館、おすすめです。

 

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