各地でイベントなどが中止・延期になり、予定が空いてしまったみなさん、空いた時間で何をしますか?
そんな時には本です!本ですよ~!
ネットニュースをだらだら見ている時間(←わたしだ)、本を読みましょう!子どもたちも読んでみましょう。絶対その方が楽しいから。
昔、好きだった本を読んでみる。
本となればおすすめしたい本はたくさんあって、そういう記事もいくつか書いているのですが、
正直なところ、古今東西星の数ほどある本のなかでほんの5冊おすすめしたところで、気に入ってもらえる可能性はとても低い。「なんか面白い本ない?」という問いに対する正解は、人の数ほどありすぎて回答は不可能です。
なので、久々に本を読む場合、最初の何冊かは
昔、好きだった本
を読むのが楽しいかもしれません。顔なじみと久々の再会。
わたしが昔、好きだった本。
わたしは字が読めるようになって以来、ずーっと本を読んできました。それなのにあんまり昔読んだ本を覚えていない……これは記憶力の問題なのかもしれない。
なんとか思い出すと、かなり初期の頃好きだった本はこれでした。
ジュール・ヴェルヌ「十五少年漂流記」
上は14歳から下は8歳までの15人の少年たちが乗り込んだ船が誰もしらないうちに港から離れ、大海原に出てしまう。奇跡的に陸地へたどり着くが、そこが大陸のどこかなのか、それとも無人島なのかもわからない。彼らはそこで生き残れるのか。
これ、好きだったですねえ。小さかったので、外国というものの存在をあんまりわかっていなかった。なので登場人物の一人、「ゴードン」という名前が変だと思っていた……
15人は別に仲良しが自分たちだけで冒険をしようと思って船出したわけではなく、大人が引率する2ヶ月間の船旅に出発する予定だったんですよね。しかし思いがけない理由で漂流してしまいます。
えー、例えていえば「ファーストガンダム」の乗組員が全員少年少女のホワイトベースを、ブライトさんがうまくまとめていくことにあたるでしょう。これはもしかしたら誰かがテレビで喋っていたのかもしれないな。
この本に影響されて、小さな頃のわたしは無人島の地図を描くのが好きでした。包装紙(←サイズが大きいから)を広げて、そこに不定形の島を描く。秘密基地の場所を決めて、道を描き、釣りが出来る砂浜や、果物が取れる森、畑の場所などを決めて悦に入ってました。何枚も何枚も書いたなー。
1888年出版。著者・ジュール・ヴェルヌは他に「海底二万里」「月世界旅行」「八十日間世界一周」などを書いています。
「海底二万里」は潜水艦にのって探検する話で、
「月世界旅行」は月へ行く話、
「八十日間世界一周」は飛行機がなかった時代に80日間で世界を一周できるか賭けをする話。
ヴェルヌは冒険・SF小説の草分けなのですね。実際「冒険」という日本語の単語は、「冒険奇譚 15少年」というタイトルのために考え出された造語らしいですよ。そういう意味では「冒険」の始まりといってもいい作品。
江戸川乱歩「少年探偵」シリーズ
([え]2-1)怪人二十面相 江戸川乱歩・少年探偵1 (ポプラ文庫クラシック)
名探偵明智小五郎と、彼の優秀な助手、小林少年。手ごわい敵である怪人二十面相に2人が力を合わせて立ち向かう。ミステリというよりホラー・サスペンスですね。
わたしは今でもコワイものが苦手で、ホラー映画などは絶対に見ませんが、自ら求めてコワイものを読んだ、数少ない作品(シリーズ)の一つです。子どもが活躍する話だったのでがんばって読みました。現在も復刻版で同じ表紙ですが、ほんとこの表紙がコワくて……
江戸川乱歩は日本のミステリー作家の草分け。現代でも読み継がれており、その個性は今なお光るところです。しかし江戸川乱歩は子供向けでも容赦がないというか、子供向けと大人向けにあまり差がないというか。コワイです。
コナン・ドイル「シャーロック・ホームズ」シリーズ
シャーロック・ホームズの冒険 (創元推理文庫) [ アーサー・コナン・ドイル ]
乱歩よりもはるかに安心して読めたのがホームズシリーズ。いくつかを除いてはこわくなかった。コワかったのは「黄色い顔」と「悪魔の足」かな。わたしはホームズの方が好きでした。
作者のコナン・ドイルはホームズシリーズとして、4つの長編と5冊の短編集を出しているそうです。
全体的にわたしは短編集の方が面白い気がするんですが、最初に書かれたのは「緋色の研究」という長編なんですよね。ここでホームズとワトソンが出会う。
でもその出会いさえ別にすれば、どれが最初でもいいような気がするから、短編で読みやすい「シャーロック・ホームズの冒険」から手に取っても問題ないと思います。
残念なのは、原作だとハドソン夫人がほんのちょい役であること。映像作品では魅力的なハドソン夫人が山ほど並ぶだけに、原作でもコナンドイル、もうちょっとがんばってくれていたらと思います。
「大どろぼうホッツェンプロッツ」
大どろぼうホッツェンプロッツVSカスパールとゼッペルの知恵比べ。魔法使いが出て来たり、妖精が出て来たり、冒険とファンタジーのお話。全然身近じゃない外国の話なのに、妙に現実味のあるスリルがあります。
表紙の絵がヘンで最初はあんまり読みたくなかった。でも読んでみれば面白かったのでした!
自分の知らない、外国のことが書いてあることも良かったのかな。このお話にはコーヒー挽きが重要な役割を果たしますが、当時コーヒー挽きなんて知らなかった。かぎタバコも知らなかった。今でも知らないので機会があったら見たい。
あと、主人公が魔法使いの召使いにされてしまうところがあるのですが、その主な仕事はじゃがいもの皮むき。
どんだけじゃがいもを食べるんだ!?と不思議でした。さし絵ではジャガイモがバケツに何杯もあるんだもの。誰がどんなふうにして食べるのかな。カレーに入れるにしてもせいぜい5個が限度だろう……
でも今考えてみれば、作者のオトフリート・プロイスラーはドイツの人。ドイツの人はジャガイモ大好きらしいですからね!きっと日本のお米みたいなもんなんだよね!……でもバケツに何杯もはおおげさだと思うけど。
続編として、
大どろぼうホッツェンプロッツふたたびあらわる (偕成社文庫 (2008))
大どろぼうホッツェンプロッツ三たびあらわる (偕成社文庫 (2009))
もあります。これはさすがに順番通りに読んだ方がいいですよ。
サン=テグジュペリ「星の王子様」
これはね。わたし、好きってほどじゃないんですよ。しかし忘れ難い作品。
薄い本だし、タイトルもいかにもだし、絶対子供向けだろうと思って読み始めました。しかしなんか違う。最初のバオバブとうわばみの話なんか、なんでここにこんな話を置くのかわからないよ。王子さまの星の話はまあいいとして、旅してきた小さい星の話も寓意としていいとして、キツネの話もよくわからないし、最後のヘビの話もよくわからない。
よくわからない本でした。
こどもたち!この本はわからなくてもいいんだよ!読んだことのない大人はこの本を子ども向けの本だと思うだろうけど。
この本を読んで、内容がなんとなく理解できたのは中学生になってからでした。しかし今でもよくわかっているとはいいがたい。わかってないがゆえに今でも胸にひっかかる本。
この本は2005年に翻訳出版権が切れて、その頃にものすごく新訳が出ました。それまでは内藤濯(ナイトウ・アロウと読みます)訳一択でした。わたしも内藤濯訳で読みました。
コムズカシイことをいうと、海外文学は訳でだいぶ変わります。内藤濯訳は最初に訳したという功もあり、文学的な香りもありで名訳という評価もある一方で、誤訳箇所もいくつもあるらしい。
そういうのも含めた新訳花盛りの動きだったと思います。しかし14も新訳が出たそうなので、どれがその中での決定版かというと、これがまだ何ともいえないところじゃないでしょうか……
新訳のうちでは、少々馴染みのある池澤夏樹のものを。
星新一作品
星新一はそれはそれはお話を作った人で……書きも書いたり、1001話(以上)。
この人の書く話は短編よりももっと短い、ショートショートと呼ばれる形式でした。長編を書くのも大変だが、短いものをたくさん書くのもたいへん。アイディアをその数だけ生み出さなければならないということだから。
わたしは小学校高学年くらいから中学生くらいまで、他に読むものがなければ星新一を読むという読書生活を送りました。テレビをとりあえずつけておくような感覚で、とりあえず星新一を読む。なので一人の作家として、人生で一番読んだ作家かも。
でも何度も読んだだけに、そしてそのショートショートが粒ぞろいだっただけに、これ1冊!というひいきがない。
印象に残っているのは「進化した猿たち」というエッセイ集かなあ。
これは彼が趣味で集めていたアメリカのヒトコマ漫画を紹介したエッセイ。星新一の中でも毛色が変わったものなので印象が深い。
これは連載が好評だったらしく文庫で上・中・下と3巻になりました。現在は絶版で、古本でしか手に入りません。
2017年にThe Bestとつけられたなんか妙な復刻版が出たようなのですが、そもそもヒトコママンガに対するツッコミを展開するエッセイなのに、その肝心のマンガがほとんど載ってないそうです。それではまったく意味をなさないのでは……。
昔、星新一をよく読んだという方におすすめしたいのがこれ。
星新一(と、ともにお父さんである星一)の伝記です。SF黎明期のことも。著者は最相葉月。力作。
わたしは星新一の作家全盛期以後の姿しか知らず、おっとりした優しい人というイメージだったのですが、前半生こんなに苦労していたとは……
そしてお父さんの星一もなかなか興味深い人だなあ。
アガサ・クリスティ作品
クリスティ2大名作。他も面白いですけど。この2作は繰り返し、ドラマになったり映画になったりしています。
高校の時の図書室にクリスティ作品が文庫で並んでおり、それは全部読みました。でもそれも全作品は揃ってなかった気がする。30冊くらいかなあ。全著作はミステリ長編66作+短編集+その他小説+エッセイなどあるそうですから、全部読もうとすればものすごい読み応え。わたしは最近クリスティが再読したくなっているんですよねー。
自慢じゃないが、読んだ本の内容は全然覚えてないから今でも新鮮な気持ちで読み返せるぞ!
クリスティが創作した名探偵といえばポアロとミス・マープルが有名ですが、わたしはミス・マープルがとても好き。
これがミス・マープルの登場作品のはず。
ミステリにはコージーミステリというジャンルがあります。日本語でいうところの「日常の謎系」ミステリ。残虐な場面があまり出て来ず、探偵役はその辺の一般人で、殺人や事件などの大きなものというよりは、ふとした疑問を解決するという話。
たまに後味が悪いものもありますが、だいたいはほんわかした話です。わたしはこのジャンルのミステリが好きです。ミス・マープル物はコージーミステリのはしりといえるでしょう。
わたしが大好きで大好きな本。
今まで上げたのは「わたしが好きだった本」でした。以下の2作は大好きで大好きな本です。
佐藤さとる「誰も知らない小さな国 コロボックルシリーズ1」
だれも知らない小さな国―コロボックル物語 1 (講談社青い鳥文庫 18-1)
これは1959年に出版された話です。60年前、本になった話が今でも愛されているってすごいことだと思いませんか!
「ぼく」は小学校の3年生だった。近所の人が近づかない小山は「ぼく」の秘密基地。ある日、そこで赤い靴を履いた不思議な女の子に出会う。
川に流してしまった赤い靴を拾いに行くと、そこにちらりと見えたのは……
大好きでした。いや、大好きです。
今でもわたしはこの作品世界に生きているといっていいほど。あの木の葉っぱのかげに小さな人が隠れていると思えば、どれほど世界は輝くことでしょう。
コロボックルシリーズは本編5巻、外伝的な1巻があります。全6巻。今まで読んだことがない方。良かったですねー、まだこの世には「誰も知らない小さな国」を読むという喜びが残されていました!
そして今はこんなことになっています。
佐藤さとるさんは2017年、88歳でお亡くなりになりました。しかし生前、コロボックルシリーズをひきついでいったんです。まだ短編1作しか出ていないようですが、今後書きついで行けるのか?注目したいところです。
モンゴメリ「赤毛のアン」シリーズ
マシュウとマリラの年老いた兄妹は、農作業の手助けになるような男の子を引き取ることにし、駅に迎えに行く。しかし、そこにいたのは鮮やかな赤い髪をした女の子。兄妹はアンを孤児院へ送り返そうとするが、その後1日を過ごすうち、アンの生き生きとした存在に惹かれ、手放しがたくなる。
改めて兄妹に引き取られたアンの、アヴォンリー村での元気いっぱいの生活が始まる。
まあこんな風に書いても「赤毛のアン」の魅力の万分の一も伝わらないが。
「赤毛のアン」を読んだ方は多いでしょうが、続編があるのもご存じですか?もちろん「赤毛のアン」も魅力的ですが、わたしが好きなのはその続編です。
「赤毛のアン」では風変りな空想好きだった少女が、どんどん成長し、魅力的な女性になっていくのを読むのが楽しかった。
アン・シリーズの候補になる本は一番範囲を広く取った場合には11作あり、シリーズ7作目からはアンの子どもたちが主役になります。
これ、「女の子向け」のお話だと思われがちですが、実は男の子にも――男性にも読んで欲しい作品です。男女関係なく、ハマる人はハマるんですよね。ハマった人は――おめでとうございます。アンの「腹心の友」の世界へようこそ!
子ども向けバージョンもあります。これもあちこちから出てるし、訳によって合う合わないがあるから、とっても難しいんですが……これかな……
ちょっと表紙がマンガっぽすぎるので大人としては手が出しにくいが。完訳版も気になるところですが、いきなり単行本で400ページ超えはきついと思うので……
ひさびさの再会を祝して。
昔読んで好きだった本をいくつかあげてみました。わたしがミステリ好きなので、若干ミステリが多めですが……なつかしい本はありましたか?
読んだことがない本でも、もし面白そうだと思ったら読んでみてください!
上記にあげたのはいつの時代も読み継がれて来た面白い本です。
とはいっても、本は10人が10人とも面白いと思うわけではないので、面白くなかったらそれはそれでしょーがないです。半分読んでも面白くなかったらそれ以上読まなくていい。別な本を読みましょう。
10冊に1冊は、面白い!と思える本に出会うと思います。
絶対いつかは出会うから。
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