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◎江之浦測候所は「測候所」ではない!?じゃあ何なの?その2。

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測候所と名乗りつつ、実は測候所ではない江之浦測候所。ぶらぶら美術・博物館の番組で初めて知って、大変興味を持ちました。

この施設を作ったのは現代美術家の杉本博司。どうしてここに建てたかというと、この土地のまさに真ん前の東海道線の電車から見た海の光景が、子供の頃の「人生最初の記憶」だからだそうです。それが原風景となって「海景シリーズ」などを撮った写真家でもあるのだから、杉本博司にとってはいわば人生の起点と言える場所なのかもしれません。

杉本氏がこの施設を建てる前は、この土地は耕作放棄されたミカン畑の荒れ地で、人がまったく足を踏み入れることが出来ない場所だったそうです。

ぶらぶら美術・博物館の番組に沿って江之浦測候所を見て行きます。いつか行きたい。

以前に「youtubeにアップしても2,3000人しか見てくれない」と山田五郎さんがコボしていた(笑)。

 

 

どんな展示物・作品がある?(その1から続く)

その1の続きです。番号は便宜上わたしが振ったものです。

8.古代ローマ円形劇場写しの観客席。

イタリア・ラツィオ州にあるフェレント円形劇場遺跡の実測値を基にした観客席。体格が良くなった現代人の身長に合わせて座面の奥行きを5センチ増やしたそうです。

9.光学硝子舞台。

そして、この観客席の舞台にあたるのが光学硝子舞台。光学ガラスとは、カメラのレンズの原料になるもの。透明度が高い。

観客席側から見るとあまりよくわからない部分ですが、舞台の下は清水寺などと同じ懸造り。けっこうな斜面にあるので舞台の逆側から見ると意外に高さがあります。観客席側からの視線を計算して、舞台の高さを背後の海に立っているように見えるようにしているとのこと。凝ってますねー。

しかしこの舞台で演じる度胸のある役者はいるんだろうか……。基本的には能などを演じる舞台なんだと思いますが(円形劇場の観客席の地下には、能装束をつける場所である鏡の間が作られている)、高所恐怖症じゃなくてもコワイです。わたしは心配性なので、もし演じるのであれば、ぜひ背後には分厚いマットを敷いておいて欲しい気持ちでイッパイです(汗)。

そしてここも太陽光観測施設です。冬至の朝日が正面から昇るそうなんですね。ここも冬至光遥拝の会開催。予約・抽選、50名。

10.コールテン鋼のトンネル(上部)。

舞台の隣で海へ向かって茶色の鉄骨みたいなものが突き出ていますが、これは四角いトンネルの上の部分で、中も実際に歩けます。上も端っこまで歩ける。あんまり端まではいかないように、止め石も置かれていますが、この辺はあくまで自己責任で行動するようにとのことです。この辺、実際に立ったらウゾウゾしそうだなあ。

ただしそのウゾウゾを克服できれば、見晴らしは最高のはずです。季節には眼下が一面の菜の花。いちめんのなのはな。海近くまでご自分の敷地らしいので、……この菜の花、植えたんだろうなあ、きっと。

ちなみにコールテン鋼というのは、サビてもそのサビがコーティングになる性質の鉄だそうで、船の材質としてよく使われるそうです。石ばかりの静寂の中でこの鉄サビ色はちょっと違和感があるかな……。この辺りは現在美術っぽい違和感でしょうか。

11.生命の樹 石彫大理石レリーフ。

光学硝子舞台から観客席の地下を通って円形劇場の外へ出てふりかえると、その出入口の上には石のレリーフが飾られています。ヴェネツィアの大運河沿いの商館正面に飾りだったレリーフ。12~13世紀。雰囲気としてはギリシャ・ミケーネ遺跡の獅子門のイメージ。

円形劇場がある場所が、一番南側に当たりそうな位置です。そこから100メートルギャラリーを迂回して長い距離をてくてく歩いていくとコールテン鋼のトンネルの逆側の端っこに来ます。

12.コールテン鋼トンネルの入口の礎石。

元々は大名庭園の巨大灯籠の礎石だったそうです。直径2メートル近くあったかも。ここは例によって太陽光観測施設。コールテン鋼トンネルの延長線上にこの礎石は置かれており、冬至の朝日がトンネルの向こう側から一直線に差し込む。これは見たい。が、何しろトンネルの線上ですから何分かしか見られないんだろうなあ。

13.コールテン鋼のトンネル(内部)。

このトンネルは何十メートルという長さなのではないでしょうか。照明設備はたしかなかったようですが、途中で光の井戸というものがあって、その真上に明り取りの空間が開いています。光の井戸はそんなに深くはなく、底に光学ガラスの塊がゴロゴロと入れてあり、雨の日には雨の一粒一粒が見えてとてもきれいなんだとか。

そしてトンネルの先には海。トンネルの開口部がアングルになるので、やはぎさんが「これは海景そのものですね」と言っていた。海と空の二分割。

14.伽藍の礎石たち。

枯山水風の日本庭園のコーナーがあって、そこにある礎石が1つは奈良は元興寺(天平時代)のもの、もう1つはなんと法隆寺の若草伽藍跡(飛鳥時代)のもの!ほんとですかね!若草伽藍跡の礎石が個人所有になるもんですかね!わたしの知らない骨董の世界。

もうその名前に恐れ入っちゃって、石がどんなのだったのか忘れてしまいました。あ、思い出した。台形の石を頭の方を下にして埋め込んだような形でした。わたしは遺跡が好きなので、あちこちで礎石を見たのですが(しかし礎石そのものを味わうまでの趣味はない)、そんな礎石は見たことがなかった。意外に礎石って大雑把に置かれているもんですよね。あれで水平はとれるのだろうか、ということがいつも気になります……

このコーナーには古井戸の石枠もあり、それが先ほどの光の井戸のところの明り取りになっているそうです。真下に光の井戸がある。こういう部分、凝ってますねー。

15.夏至光遥拝100メートルギャラリー。

この100メートルはどこから来たかというと、この場所の海抜が100メートルであることにちなみ。超細長い建物ですが、柱は一本もないそうです。壁の片側は大谷石、反対側はガラス。ガラスは自立していて、屋根は見た目は完全に屋根だけれども、いわば庇的な、片側だけで支える構造。

ここも太陽光観測施設で、夏至の日の朝日が100メートルギャラリーを貫くのだとか。

ここには「海景シリーズ」が何点か飾ってあります。U2というバンド……自慢になるくらいわたしは洋楽にまったく疎いので、名前を聞いたことがある程度で全然知りませんが、U2のCDのジャケットに使われているらしい。本人と知り合いになったあと、「海景シリーズ」をジャケットに使わせて欲しいと頼まれたそうです。

その使用許可を出すに当たっては、お互い話しあって、写真を使わせるかわりに、杉本氏がU2の曲を使う権利を持つということで物々交換をしたそうです。ストーンエイジディールと言っていた。ここでもか。しかしまだその権利を行使したことはないそう。

16.石造鳥居。

これはたしか杉本氏が「模して作った」と言っていたような……。あんまり典型的な鳥居の形はしておらず、石造りの冠木門と言われればその方が納得できるような気がします。鳥居真下の踏み込みの位置にある石は古墳の石棺の蓋だとか。一体なんでそんなもんを持っているのか。

17.待庵写しの茶室。

石造鳥居の向こう側には茶室があります。鳥居の丈が低いのは、意識的にせよ無意識にせよ、にじり口なのかも。なぜ待庵写しにしたかというと、昔、小田原攻めの頃、一緒にここまで来た利休が天正庵という茶室をこの辺りに建てたから。天正庵は今はなく、しのぶよすがとして利休の待庵を写したと。

この茶室は「雨聴天」という名前で、その由来は、屋根がトタン(!)で、雨が降るとバリバリとうるさいから。雨の音を聴く。

中の床の間に掛けられた書は「日々是口実」。ご本人の書。

「雨聴天」にせよ「日々是口実」にせよ、番組での言動にせよ、……単に駄洒落好きのおじさんではないのか。

沓脱石は光学ガラスの制作過程の失敗作で、横にひび割れが入ってしまったもの。しかしこのひび割れが不思議な曲線で、いい景色になっている。この辺りも面白い。

 

今後も拡張し続ける。

番組はここまでで終わったのですが、その他にも竹林エリアなどがあり、もっと色々あるらしい。化石窟とか。化石も包括する石好き……。ゲストハウスも作る予定があるというし、寿命の続く限り拡張し続ける予定だそうです。

ご本人いわく、「死んでいる暇がない」。長生きしてください。アイディアが尽きるまで。

趣味もここまでいけば究極です。ほんと~に大名庭園で、ご本人は数寄者ですねええええ。うらやましいです。いつかわたしも行ってみたい。「未来の遺跡」を堪能したい。

 

行く時には予約が必要です。

あ、そういえばこちらは予約制で、入れ替え制なんだそうです。そんな広い敷地を入れ替え制で堪能出来るのだろうか。あ、でも午前と午後の3時間ずつですから、3時間あればそれなりにたっぷり見られそうです。

3000円の入場料は美術館の入場料としてはお高いと思うが、某テーマパークなどと比べれば全然安い。(比較する必要があるのか。)

この施設は脳みその微妙なところを刺激してきそうな気がします。現代美術の一番いい部分を持ってきている。金沢21世紀美術館と並んで、面白そうなところですね!みなさんも興味がわきませんか?興味が湧いたらぜひ江之浦測候所を訪れてみてください。現代美術と遺跡の不思議な融合を楽しんで。

 

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