先日、今時の10代、20代の若者は「忠臣蔵」を知らない、というコラムを読んでびっくりしました!
忠臣蔵を知っている人は若い世代では3割前後だとか。もちろんひとくくりに若い世代といっても年齢層には寄ると思うのですが、知ってる方が少数派……というのは確実なようです。
言われてみれば、近年忠臣蔵をテーマにしたドラマは記憶にないかもなあ。もうテレビで普通に見かけるコンテンツではなくなっている。
「忠臣蔵」は、かつて日本人なら誰でも知っているお話でした。みんなが知っているということを前提にして話をすることが出来た。近年、こういう存在が消えていってますね。今まで長らく生き延びてきた忠臣蔵が今、忘れられて行くのはそれはそれで淋しい。
――が、それを何とかしようとしてもなかなか……。
まず、大元となる小説がないのがツライところです。有名な話だけにだいぶ数はあるのだが、決定版と言われると。司馬遼太郎が1作がっつり書いておいてくれれば残るのになーと思いますが(笑)、書いてない。
吉川英治が書いているようです。そんなに有名作ではないっぽいが。森村誠一も書いているらしい。この人、歴史小説も書いていたんですね!
吉川英治かなあ。
新編忠臣蔵(1) (吉川英治歴史時代文庫) [ 吉川英治 ]
もともとは人形浄瑠璃→歌舞伎でした。
そもそも忠臣蔵は「赤穂事件」を元ネタにしたフィクションです(中国の三国時代が脚色され「三国志演義」というフィクションになったのと同じ)。歴史上の事件である赤穂浪士の討ち入りに世間が湧き、約半世紀後にまず人形浄瑠璃に、その後当時のテレビともいえる存在だった歌舞伎に取り入れられました。
これが「仮名手本忠臣蔵」。その芝居が大当たりし、末永く世に広まります。そのスピンオフ作品は今でも歌舞伎の演目として残っています。
たとえば東海道四谷怪談。あのお岩さんも実は忠臣蔵のスピンオフ作品なんですよ!
(とはいえ、関連といえばお岩さんの亭主が元赤穂藩士だったということしかないのですが。忠臣蔵の人気にあやかろうとしたのだと思われます)
なので、映像として見るのであれば人形浄瑠璃と歌舞伎が一番原型に近いものです。たまにNHK教育で放送しています。
ただ歌舞伎を見て忠臣蔵の筋を知ろうというのはたしかにちょっと難しいかも……。歌舞伎には独特の話のテンポがありますし、初めて見る時はむしろ話を知った上で見た方がわかりやすい。
そういう意味では、この本が良さそうだと思いました。
これは歌舞伎に沿った本のようです。これを読んでから歌舞伎を見ると、仮名手本忠臣蔵の世界がよくわかりそう。
忠臣蔵の映像作品は?
映像作品は山ほどあるようです。ほとんどが古いものですが。その中で見やすいのはこれですかねー。
中村勘三郎主演 大河ドラマ 元禄繚乱 総集編 DVD 全2枚【NHKスクエア限定商品】
大河ドラマの総集編です。1999年に放映されたものが2014年にDVDになったので、根強い人気があるのでしょう。中村勘三郎が軽妙洒脱な味わいを発揮していたように思います。大真面目に構えた大石内蔵助ではなかった。
2013年に公開されたキアヌ・リーヴス主演の「47RONIN」という映画は忠臣蔵をモチーフにしているそうですね!今初めて知った!忠臣蔵、まさかのハリウッド・デビューですか。
……ただし見た人の感想は今一つのようで、だいぶファンタジーらしいです……(悪い意味で……)。「ラスト・サムライ」もダメだったわたしは、これもダメだろうなあ。
薄れゆく忠臣蔵の存在は残念だけれども。
やっぱり今の価値観とは合わないということで消えていってしまうんでしょうか。「殿中でござる!」って言っても誰もわからない時代が来るんでしょうか。――実生活で「殿中でござる!」という台詞を言うチャンスはないと思うけど。
それともそのうちリバイバルがあって、またいくつか映像作品や小説が創作されることもあるんでしょうか。大河ドラマではある程度の間隔をおいて何度か取り上げられています。それこそ1999年以来やってないので、そろそろ大河でやらないですかね。
あとはどっかのマンガ家さんが質のいいマンガを描いてくれて流行るとかね。描きようによってはいけるとは思うんですよね。
「近年は滅私奉公とか主従関係の構造がなくなっているから時代にそぐわない」とか言われるけど、男の友情をメインに描ける話だと思います。昔と違って、吉良は吉良でそこまで悪役にしなくても書ける。勧善懲悪、判官びいきで人気を博したというのはたしかだけれども、今の時代、双方の立場を冷静に書いた方が共感を得られる気がします。
そんな現代で実は、こないだ映画になりました。
わたしは見に行こうかとどうしようか迷って結局行かなかったんですけどね。これも忠臣蔵としては相当辺縁系で、討ち入り場面はなかったらしいです。討ち入りを、経済的状況から描いた映画。
元ネタは歴史学者が書いたこの本。
著者の山本博文は、著作を読んだことはないのですが、NHKの歴史番組に頻繁に出て来るので親しみを持っている人。歴史一般書を山ほど書いているようですね。知らなかった。ちょっと面白そうですね。いずれ読んでみよう。
あ、こんな本も書いていた。
これが本当の「忠臣蔵」 赤穂浪士討ち入り事件の真相 (小学館101新書 134 江戸検新書) (新書) / 山本博文
これは新書だし、かなり読みやすいことと思われます。
これからの時代劇。
忠臣蔵というコンテンツは生き永らえて欲しいなあ。
同じく、生き永らえて欲しいけれども、忠臣蔵以上に難しいだろうと思うのが「水戸黄門」「遠山の金さん」です。
これこそテレビドラマの中にしか存在しないですもんねー。テキストにしようがない。ノベライズで何とかしようとしても、ノベライズというのはだいたい元ネタよりも面白さ70%減ですから。
呉服屋の楽隠居が突然印籠を出して最強というパターン、
偉いお奉行さまが突然すごんで彫物をさらけ出す、というパターン。
時代劇ドラマの名シーンだったんですけどね。それこそもう小学生はわからないだろうなあ。これが消えて行ってしまうのは惜しい。……正直、そんなに好きではないんですけれども。水戸黄門も遠山の金さんも。
時代劇自体は今後とも決して可能性がないジャンルではないと思うんですけどねー。歴史物じゃなくて時代物なら、話としては相当に自由に作れる。人情ものだけではなく、ユーモアだろうがミステリだろうが、サスペンスだろうがかなり自由に扱える舞台だと思います。
今までの時代劇に縛られず、ちょっと変わったことをするドラマがあってもいいんじゃないでしょうか。
近年だと「ちかえもん」が面白かった気がします。
別に武士が刀を振り回すだけが時代劇の能じゃないんですよね。いろいろな時代劇を目指して欲しいです。
風さそふ 花よりもなほ 我はまた 春の名残を いかにとやせん
浅野内匠頭辞世と伝わるもの。名句ですね。
ちなみに是枝裕和監督、岡田准一主演の「花よりもなほ」のタイトルはここから来ています。
四十七士の一人、寺坂吉右衛門がちらっとした脇役で出て来る。これも忠臣蔵派生作品……とまではいえないけど、関連作品といえましょう。
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