先日ネットで英単語の意味を調べていたら、目を疑うような単語を見つけました。簡単に言えば長大語。
世界一長い英単語は182文字!
Lopadotemachoselachogaleokranioleipsanodrimhypotrimmatosilphioparaomelitokatakechymenokichlepikossyphophattoperisteralektryonoptekephalliokigklopeleiolagoio-siraiobaphetraganopterygon
……いや。これ別にバグっているわけでも目をつぶってタイピングしたわけでもありません。weblio辞書に載っている単語。
ナニコレ?これ本当に単語?
アルファベットで182文字あるそうですよ。
これが何かというと、
アリストパネスの戯曲『女の議会』に登場する架空の料理の名前。だそうです。
アリストパネス(アリストファネス)は紀元前400年前後に活躍したギリシャの詩人。代表作は「女の平和」。この作品自体は読んだことはないですけれども、たまに言及している本を見かける。「女の議会」は「女の平和」の後に書かれた「女シリーズ」の中の1つ。
2400年前の作品を現代日本で読める有難さ。岩波文庫はそういう意味で偉大です。……必ずしも読みやすくはないわけだが。
原語ではひたすら食材名を並べてくっつけた単語のようです。日本語だと意訳になり「ありとあらゆる種類の食材を含んだ料理」。「ありとあらゆる」だとさぞかし無数の食材で出来ているのだろうと想像しますが、
魚の切り身(ボラ)
サメの切り身
サメの頭
シルフィウム(英語版)(オオウイキョウ属の植物)
カニやエビ、ザリガニのような甲殻類
ベラ(またはツグミ)
海水魚、またはクロウタドリ(トップに飾り付ける)
モリバト
ドバト
ニワトリ
カイツブリ
ムスト
酢
蜂蜜
ピクルス
ウーゾ
その戯曲の中で言及される食材としてはこんなところだそうですね。思ったほどではない。
料理としては煮込みだそうです。まさにごった煮。
本来のギリシャ文字だとさらにわけわからない印象。暗号ですね。
λοπαδοτεμαχοσελαχογαλεοκρανιολειψανοδριμυποτριμματοσιλφιοκαραβομελιτοκατακεχυμενοκιχλεπικοσσυφοφαττοπεριστεραλεκτρυονοπτοκεφαλλιοκιγκλοπελειολαγ?οσιραιοβαφητραγανοπτερ?γων
ギリシャ語の発音を聞いてみたかったのですが、youtubeでは探せませんでした。「女の議会」って今でもギリシャで上演されたりするのでしょうか。上演されるとしたら俳優はこの単語を発音しなけれればいけないのでしょうか。気になります。
多分人生で一度も使うことはない単語だろうし、そもそも使いたくても最初の発音からわかりませんが、こういう知識は面白い!
実はもっと長い単語があるそうなんです。
略称チチン(Titin)というたんぱく質の一種らしい。
だが、これが18万文字超……
18万を超えるって単語じゃないだろう!これダメ。認めない。
18万語を見たい方はこちらでご覧ください……。
アホか!
まあこれは多分DNAの塩基配列を全部並べて一単語と称するのと同じ類でしょう。化学、医療の専門用語は一般名詞とは認めません。完全文系として。
「Pneumonoultramicroscopicsilicovolcanoconiosis」。
でもこのyoutubeは面白かったー。
これは「Pneumonoultramicroscopicsilicovolcanoconiosis」で日本語では「超微視的珪質火山塵肺疾患」だそうです。(非常に微視的な珪質の火山塵を吸い込むことによって引き起こされる肺の病気)これが一番長いとする説もある。
自分ではカタカナにすることも出来ないですねー。ニューモノウルトラマイクロスコーピックシリコヴォルケーノコニオシスだそうです。
「Supercalifragilisticexpialidocious」。
こないだ触れた、「メリー・ポピンズ」の中の曲のタイトル、
Supercalifragilisticexpialidocious
スーパーカリフラジリスティックエクスピアリドーシャス
を一番長い英単語として挙げている人は多いですね。一番長いという意味では間違っていると思うけど、普通の人が発音できる単語として、または発音する気になる単語として、という意味ではアリかもしれません。わたしはどうしてもクとエの間でつっかります。
ちなみに最も長い英単語は?という話でけっこう出て来るのが
smiles
一瞬、は?と思うが「最初のSと最後のSの間が1マイル(約1.6キロ)もある!」というなぞなぞらしいですよ。
そしたら、
beleaguer
の方が長いというのもどこかで見ました。リーグという距離の単位もありますね。時代や国でいろいろ変わるのですが、約4.8キロだそう。
日本語で一番長い単語は?
ところで一番長い日本語はなんでしょう。
これは「竜宮の乙姫の元結いの切りはずし」海草の一種でアマモのこと。
でも「の」で繋いでしまうのはちょっとずるい気がする。かといって法律名はなあ……
「日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定及び日本国における国際連合の軍隊の地位に関する協定の実施に伴う道路運送法等の特例に関する法律」
これは全然つまらない。というより誰か疑問に思わなかったのか、この命名……昭和27年制定の法律らしいです。
世界で一番長い地名は?
ギネスブックで世界一長いと認定されている地名がニュージーランドにあるそうです。
Taumatawhakatangihangakoauauotamateaturipukakapikimaungahoronukupokaiwhenuakitanatahu
タウマタファカタンギハンガコアウアウオタマテアポカイフェヌアキタナタフ
意味は「タマテアという、大きな膝を持ち、山々を登り、陸地を飲み込むように旅歩く男が、愛する者のために鼻笛を吹いた頂」。
マオリ族由来。現地では普通なのかもしれませんが、鼻笛というところで一挙にユーモラスになる。
昔、ウェールズのガイドブックを読んでいた時にとても長い地名に突き当たりました。
Llanfairpwllgwyngyllgogerychwyrndrobwllllantysiliogogogoch
スランヴァイルプールグウインゲルゴウゲールウクウィールンドロブウリスランダスイハオゴゴゴッ
一体ナニゴト?
ウェールズ語で「赤い洞窟の聖ティシリオ教会のそばの激しい渦巻きの近くの白いハシバミの森の泉のほとりにある聖マリア教会」という意味。観光客誘致のために(!)あえて長い名前をつけたそうです。
ウェールズはイギリスの一部で、グレートブリテン島を和服を着て俯くお嬢さんの姿に例えるなら、背中の帯飾りに当たる部分。ウェールズ語はただでさえ発音が難しい。下手に普通のアルファベットなのでよけいに。
ウェールズ地方のカーディフに行った時に、Caerphilly Castleにも足を伸ばしました。バスで行こうと思ってツーリスト・インフォメーションで訊いたところ、このCaerphilly Castleが通じない……!
ガイドブックを指さして意思の疎通をし、行く方法は教えて貰えました。
それから3人くらい集まって発音のレッスン。ケアフェリー?カーフェリー?カフィリー?wikiにはケルフィリーと書いてあるけどそんな悠長な発音じゃなかった気がする……。必死に真似していろんな言い方をしてみても「違う」「違う」と言われる。
ちなみにバスに乗って「カフィリーキャッスルのところで降ろして」と頼んだところ、バスの運転手さんにも発音のレッスンをされる……。……ウェールズ語は難しいです。
世界で一番短い駅名は?
ちなみに世界で一番短い駅名としてギネスに載ろう!と努力中なのが三重県津市。(多分ギネス認定はまだなんじゃないかなあ。「登録されています!」と書いてある記事もちらほらあるんですけど。ニュースで見つからないから。)
日本語で「つ」ですから、この時点では日本一なのですが、世界に通用するためにはアルファベット表記が必須。普通に書くと「TSU」となって3文字。3文字では世界レベルに届きません。
津市は「TSU」ではなくて「Z」と表記して「ツ」と読ませる方法で世界最短を目指しているようです。その発想はなかった。
まあZだけをどんと出されて「ツ」と読めと言われてもキラキラネームの類と思うが、行政のこういう方向のガンバリはちょっと面白い。笑える。
その他に長いといえば……
タイの首都バンコクの正式名称はすごく長いんですよね!
ずっと昔にクイズ番組で出題された時に「バンコクはバンコクだろう」と思ったのですが。正式名称は、
クルンテープ・マハーナコーン・アモーンラッタナコーシン・マヒンタラーユッタヤー・マハーディロック・ポップ・ノッパラット・ラーチャタニーブリーロム・ウドムラーチャニウェートマハーサターン・アモーンピマーン・アワターンサティット・サッカタッティヤウィサヌカムプラシット
(訳)イン神(インドラ、帝釈天)がウィッサヌカム神(ヴィシュヴァカルマン神)に命じてお作りになった、神が権化としてお住みになる、多くの大宮殿を持ち、九宝のように楽しい王の都、最高・偉大な地、イン神の戦争のない平和な、イン神の不滅の宝石のような、偉大な天使の都。
タイに行ったことないですが、現在は敬虔な仏教国ですよね?その美称としてインド神話の神様の名前が出て来るのがちょっと不思議。そしていつも思うが、天使の都の「天使」はどんな天使なのかなあ。西洋的なエンジェルとは違いますよね。豊満な天女っぽい感じだろうか。
ちなみにわが日本国の美称は、
「豊葦原千五百秋水穂国」
(とよあしはらの ちいおあきのみずほのくに)
「古事記」「日本書紀」で使われていたものです。まあ威張れるほどの長さではないですね。
あとはピカソのフルネームが長い。
パブロ・ディエゴ・ホセ・フランシスコ・デ・パウラ・ファン・ネポムセーノ・マリア・デ・ロス・レメディオス・クリスピーン・クリスピアーノ・デ・ラ・サンティシマ・トリニダード・ルイス・イ・ピカソ
この名前で誰が得をするんだ!それなりに由来があってつけられた名前なんだろうが、書類を書く時の本人の苦労を考えたのか、親!
それに対応する日本の名前がこちら。
寿限無寿限無五劫の擦り切れ海砂利水魚の水行末雲来末風来末食う寝る処に住む処やぶら小路の藪柑子パイポパイポパイポのシューリンガンシューリンガンのグーリンダイグーリンダイのポンポコピーのポンポコナーの長久命の長助
落語「寿限無(じゅげむ)」より。
おあとがよろしいようで。
長い。
今回は長い言葉を調べてみました!
まず何よりもアリストパネスの182文字が面白かった。初めて聞いた。よくまあこんな言葉を作って戯曲に盛り込もうと思ったね。役者への嫌がらせだよなあ、これ。
あと18万字の単語というのが……。
これを実際に発音しようとすると3時間以上かかるそうですよ。英単語ですからちょっと無理がありますが、たとえば原稿用紙に換算すると……450枚です。450枚だと文庫本1冊は行くと思う。1つの単語で文庫本1冊使ってたら論文は全100巻あっても足りません。オソロシイ。まあ実際に印刷されて使われたことはおそらくないそうです。誰が使うか。
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