朝、ホテルを出る前に友ヶ島フェリーに電話して、その日は積み残しも発生しないだろうという見通しも教えてもらい、よし!と思ってホテルを出る。
いや、出ようとしたんです。
エレベーターの前で、同宿の人に話しかけられる。「さっき警報ありましたよね?」……あー。なんか言ってたなあ。町内放送みたいなのが。内容は全然聞き取れなかったので気にしてなかったのだが。「ありましたねえ。なんて言ってました?」「津波が来るって」
……は?
一緒にエレベーターで降りて、その人がフロントに訊いてくれるのを横でわたしも聞いている。その人は警報を聞いて、慌てて荷物をまとめて降りて来た(サラリーマンっぽい)人でした。フロントの人も反応はわたしのように鈍く、「ああ、そういえばありましたねえ」的な。
感じた地震は特になかった。スマホで調べるとたしかに津波警報が出ていて、和歌山沿岸は1メートルの可能性。どこか海外の、遠いところの地震の影響なんだろう。さて。どうするか。
東日本大震災を経験したわたしが感じること。
ロビーまで降りて来てしまったので部屋に戻る気分になれず、とりあえず市駅隣の図書館へ向かいます。そこで座り心地のいい椅子に座って、改めてこの日の予定を考える。この日はこれから加太へ行って、加太港から出るフェリーに乗って友ヶ島へ行くつもりでした。
津波の1メートルというのは、実はけっこう大きいです。堤防などの垂直なところのイメージで1メートルを考えてると大したことないようですが、1メートル上がるということは1メートルの大波が押し寄せてくる、ということです。砂浜の時は上がる水位の分の水量(何百リットル=何百キロ)と対峙することになりますね。数十センチでも押し倒されて、引き波の時に沖へ持って行かれる重さになります。
まあ実際に予想通りの波が押し寄せることは少ないけど。――少ないが、来るものだと思って、それに基づいて行動しなければなりません。そうでなければ、東日本大震災の時に犠牲になった人に申しわけない。命を落とした人の貴重な教訓を我々が活かさなければ申しわけない。
友ヶ島へは、行きたかったけど。この状態では行けない。行くべきではない。
結局、この日の終わりに友ヶ島フェリーの情報を見たら警報に合わせて渡航中止になっていたみたいです。プロとしては当然の判断。でももし何かの間違いで万が一通常通り渡航していたとしても、行かない選択を出来る自分でありたい。
和歌山まちめぐり。
そうすると今日は三社めぐりですかねえ。和歌山電鉄貴志川線と合わせて。それでまるまる一日は難しいだろうから、それにちょこちょこ見ておいた情報を合わせて……まあ細かく回りましょう。こういう、細かいところを拾える日は、実はわたしの旅行パターンでは希少。
30分以上、図書館にいてルートを決めました。
まず、初日に行くのを忘れたフュージョンミュージアムなるところへ行ってみる。名前からは今一つなんのジャンルかわからないが、とりあえず地元の織機産業の博物館らしい。
そしてお菓子屋さん2軒行って、ちょっと戻るけどフレンチのお店で食事して、あとはJR和歌山駅に行って貴志川線。
フュージョンミュージアム。この位置は、なんのことはない、初日に偵察したフォルテの上階でした。実際に行くまでわからなかった。ここはニット織機がたくさん置いてあってそれぞれ稼働している。織機といっても巨大なものではなく、家庭用編み機のせいぜい3、4倍までの大きさくらい。それで洋服一枚分とか、大きくともテーブルクロス程度の大きさのニットを織っているくらい。ニットの企業が作ったミュージアムみたいです。
ワークショップもあって、マフラーとかコースターとか作れるみたいです。何人かの家族連れがいてやっていた。たしか自転車で発電して動かす織機もあったような……?正直、織機自体はよくわからないからアレですけれど、それが稼働して製品を生み出しているので、動きがあって面白かった。さらっと見るにはいいところです。
あと意外に面白かったのが、多分この企業の社長さんが交流した海外の国々からもらった民芸品・美術品の展示ね。まあ美術館とまでは言わないけど、百貨店の美術コーナーくらいのクオリティはあって、各国のデザインが楽しめたのが良かった。
あと、スペースの半分程度は野球関連の展示でした。社長さんが好きなんだろうね。面白く展示を見たんですが、撮った写真がほぼない。撮るまでではなかったのか。東北楽天ゴールデンイーグルスの中島選手と黒川選手が和歌山出身なので、パネルがありました。それは撮って来た。
なかなか面白かった。40分ほど滞在しました。
そこから駿河屋善右衛門本店へ。ここは和菓子屋さんです。
ここ数年で、旅行の時に地元の和菓子屋さんを見かけたら寄るようになりました。その土地の歴史も味も、愛されてきた歴史も詰まっているように思うから。
そうして行ったお店のことはほとんど覚えてないんですけどね。高知のはりまや橋のすぐそばにあった和菓子屋さんで買った「かんざし」、これはその立地から覚えているし、ほんとに直近のところで門司港の湖月堂さんの「栗まんじゅう」、山口の山陰堂さんの「舌鼓」はその美味しさで覚えている。
でも一つ一つを覚えてなくても「地元で長年愛されたお菓子」を味わう経験は心を幸せにするだろう。
……そしてこのとき何を買ったかは忘れました(涙)。老舗らしく、接客が素敵だったことしか覚えてない。キーノの1Fで買った駿河屋さんの羊羹は、今仏壇に上がってます。もう少し経ったら食べる予定。
そこから、数日前も行った「PKiA」へ。その時買ったバターサンドが美味しかったのでもう一つ食べたいと思った。……だが、この日の夜、ホテルに帰ってバッグから取り出すとかなりひどくつぶれてました。まあその可能性は高いと思ったけど。これはわたしが悪い。せめてつぶれない持ち歩き方をしないとねー。
そこから「ラパン」さんへ行きました。特にご当地グルメではないけど、フレンチのランチを1000円以下で食べられるのがうれしかったから。行きやすい場所にあるとはいえ、ホテルからわりと近いせいでここでランチを食べられる可能性はほぼないと思っていたので(観光するとなるとたいていホテルから離れたところに出かけますからね)、ここに来られてうれしかった。
11:30から開店のところ、11:20に着いたわたしに気づいて、お店の人は中に入れてくれました。ありがとう。

鶏もものソテー、はちみつと粒マスタードソースを美味しくいただきました。だが、これにデザートをつけたのは余計だった。
実は朝ごはんが昨日キーノで買った鯛めし弁当で、その量が多かったのよ。鯛めし弁当はできたてを食べたら大変美味しいんだろうなーと十分想像出来る味だったんだけど、まあこの時期だし、一晩冷蔵庫で保存した。冷蔵庫に保存していたものを出してそのまま食べたらそんなに美味しいわけがありません。どこかにはレンジもあったかもしれないが、面倒で。食べ物に申し訳ないことをしてしまった。
フュージョンミュージアム、駿河屋善右衛門、PKiA、ラパンと、この辺りを回れて満足。こういう微妙な距離のところって、行きたいと思っていても行けないことが多いですからねー。友ヶ島へ行けないかわりに、いい午前中になりました。

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