前回と前々回で、塩野七生諸作の前半分を、
「王道歴史コース」
「よりみち歴史コース」
に分けて書いてみました。
◎塩野七生を読むのならまずは「チェーザレ・ボルジア あるいは優雅なる冷酷」からがおすすめ。塩野七生の「王道歴史コース」。
イスラム圏とヨーロッパの戦い。
実はこのコースにまったく乗らない三部作があるのです。これが――特に名前はついてないようだから「東方戦記コース」と名付けますが、地中海の東半分を舞台にした、3つの戦いの物語です。
「コンスタンティノープルの陥落」
オスマン帝国のメフメト2世による東ローマ帝国の滅亡。1453年。
「あの街をください」の台詞がかっこいいんだよな~~~。くーっ。
「ロードス島攻防記」
ロードス島を本拠とする聖ヨハネ騎士団とオスマン帝国スレイマン大帝の戦い。1522年。
「レパントの海戦」
ヴェネツィア+スペインの連合艦隊とオスマン帝国の間で戦われた海戦。1571年。
「東方戦記コース」、読めば面白い。が、あまり馴染みのない東方・イスラム圏との戦いの話で、ヨーロッパ側にも有名な登場人物もいないのが少々とっつきにくいんだよね……。
あのスレイマン大帝の戦いの話です。
が、それは昔の話です。
スレイマン大帝といえば、数年前から(わたしが)ドラマで見ているじゃないですか!
ここに出て来るあのスレイマンですよ!
やはり歴史はある程度人物の目鼻がついていた方が各段に面白い。スポーツを見るのに、どんな選手かある程度わかっていた方が楽しめるのと同じ。
ドラマで見たあの人が出ている小説ならば、「ロードス島攻防記」は昔一度読んだ時よりももっと楽しめるはず!イスラム圏についての知識も微々たるものだが増えているはずだしね。
十字軍にも興味がある。
そして、まだ読んでいない「十字軍物語」もあります。
十字軍物語 第一巻: 神がそれを望んでおられる (新潮文庫)
わたしは十字軍はあまりわかっていません。けっこうややこしいイメージ。第1次から第9次まであるそうだが、初期の頃は宗教的正義を求めてだったとしても、その後はさまざまな利害関係で計画されたものらしい。塩野さんの著作で概説してもらえればありがたいです。
概説は学者の書で、というのが基本姿勢ですが、多分十字軍くらいになると、いろいろあっておそらく小説で読まないと(わたしの)興味が続かないと思われる。
たしか昔、この本も読んだような……
内容はすっかり忘れているけれども、面白かった記憶。イスラム側から見た十字軍というのは貴重です。著者はジャーナリストだそうなので、精度はどうかという部分はあるにせよ、まず面白くないと読めないですからね。
「皇帝フリードリッヒ二世の生涯」は面白かったですよ!
「東方戦記」とは関係ありませんが、わたしが「ローマ人の物語」以降で唯一読んだ塩野さんの本がこれです。わりと最近、ここ数年で読みました。
皇帝フリードリッヒ二世の生涯 上巻 (新潮文庫) [ 塩野 七生 ]
これは塩野さんの著作だから読んだのではなく、皇帝フリードリッヒ2世に興味を持って関連本を検索したら出て来た本。
びっくりしました。わたしの知らない間にイタリア書きだった塩野さんがドイツ書きになってるの!?
が、読んでみるとフリードリッヒ2世というのは元々シチリア王であった人で、イタリア名はフェデリーコ2世。シチリア王を基盤にしつつ、同盟である神聖ローマ帝国の帝位に任命され、ドイツとシチリアとその他の地を行ったり来たり行ったり来たり、ひたすらした人だったらしい。
この人は面白いですよ。
2度も法王から破門されたりね。
とても中世の人とは思えないほど宗教から自由で、科学的な目を持ち、合理的な考え方をした人らしい。塩野さんが書くとほんとにいい男に見えます。
西暦1200年前後の人にしてはあまりにも近代人に書きすぎではないだろうかと思うほど。スーパーマン。
この本で神聖ローマ帝国がうっすらとわかったのも収穫でした。どうわかったかというと、神聖ローマ帝国がヌエのごときとらえどころのないものだということがうっすらわかった。神聖ローマ帝国はややこしい。
「ローマ人の物語」以降を目指して。
いつかは読もうと思っていましたが、昔さんざん読んだことで逆に縁が切れていた塩野七生、今後、残りも読んでしまおうと思いました。
「ローマ人の物語」
「ローマ亡き後の地中海世界」
(もうちょっとキャッチーなタイトルにすべきだったのでは……)
「十字軍物語」
「ギリシア人の物語」
それぞれ長いですが、読み進めるのに努力は要らない作品なので、読もうというとっかかりさえあれば大丈夫です。大丈夫なはずです。
ご一緒に、塩野七生を楽しみましょう。
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