イタリア/Italy:2010

10.スクオーラについて。

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14時頃、ホテルの“テンションの下がる部屋”に戻って1時間ほど休む。
まあこのホテルにも今晩ガマンすればいいだけだし。
15時、再度外出。前述の通り腰がアヤシイので近場をまわることにする。

まず向かうのはスクオーラ・ダルマータ・サン・ジョルジョ・デッリ・スキアヴォーニ。
……こんな長ったらしい名前が覚えられるかっちゅうねん!!
ここは直線距離でホテルから300メートルほどなのだが、
それでも迷わずに行こうと思えば、ひたすら地図に鼻をつっこんで歩くしかない。
体感的には1キロ以上に感じられる。実際歩いた距離は600メートルくらいだろうか。

もう少し後のことになるが、この実際の歩行距離と体感距離のギャップがだんだん怖くなってくる。
このくらいで着くという予想が全く裏切られるわけだから、自分が信用出来なくなるんですね。
迷宮の迷宮たる所以。ヴェネツィアはこれで3回目だが、こんな風に感じたことは初めてだ。
過去2回はメジャーな道だけしか通ってなかったんだろう。
(だがメジャーな道でも、やはり幅は大抵3、4メートルしかなく、
しかも折れ曲がりまくっており、メインストリートにはどうしたって見えないんです……)

ところで“スクオーラ”とは何でしょう?
実はわたしもはっきりとはわからない。英語で言えばSCHOOLなので、
「学校」「学派」「集団」というような意味の筈だが、ヴェネツィアのガイドブックに
載っているスクオーラは「同信会」あるいは「信者会」と訳されている。
信仰を同じくするものの集団?……なんか新興宗教団体っぽいけど。

要は教会の類なんでしょ?と思いつつ、スクオーラ・ダルマータ(以下略)へ。

Scuola Dalmata San Giorgio degli Schiavoni.

教会とは微妙に建物の雰囲気が違うような……
だが中に入ると、腑に落ちるものがある。ああ、なるほど。スクオーラってもしかして、

仲間内の集会所。じゃありませんか。

建物の中は意外に狭い。内部の写真が撮れなかったので記憶があまり定かではないが、
10メートル四方……もう少し大きいか。
正面にはキリスト教の祭壇もあるけど、教会と違って祭壇はあまり存在を主張していない。
ベンチ型の椅子が並び、天井も低いせいか、雰囲気は小学校の教室っぽい。
宗教儀式より何かの討論会の方が似合いそうだ。

「ダルマータ」というのは、ダルマツィア地方の、という意味らしい。
小さな島の都市国家であるヴェネツィアは、人口の絶対的な不足を補うために、
交易船の乗組員を外国から多数雇い入れていたそうで、
そういった船乗りはアドリア海沿岸のダルマツィア地方から募集することが多かった。
つまりここは、そういう出稼ぎ者が集まる場所として(宗教を理由としながら)
機能していたのではないですか。ということは言わば、……県人会?
そう思って見るせいか、内部の雰囲気がとても親密な感じだ。

壁の上部をぐるりとカルパッチョの「聖ジョルジョ伝説」の連作が取り巻く。
(ちなみにここのカルパッチョというのは料理名ではなく、画家の名前です。
料理のカルパッチョは画家のカルパッチョから来ているという説もあるらしい。)

いやー、がんばってるねえ。当時の一流画家に連作を描いてもらうとは。
ここに集う人たちは、決して金持ちではなかった(?)ろうに。
自分たちの居場所を美しく飾りたかったのか。

勝手にそんな想像をし、故郷を同じくする人々が日曜ごとにこの場所へ集まる情景を想う。
どれほど長くヴェネツィアに住んだとしても、移植された根はやはり故郷の土を懐かしむ。
母国語を喋れることが救いであることもあったに違いない。
この親密さはおそらくきっと、――そういうことなんだろう。

この建物には2階もあって、2階の方がさらに雰囲気が良い。
しばらくただ座っている。なんか好きだ、ここ。
ここでは今も時々結婚式などが行われているそうだ。まだ生きている場所なんだね。

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スクオーラ・ダルマータを出て、近くの――本来であれば近いはずの
(しかしミルフィーユのヴェネツィアでは実際歩いてみないと近いとは言い切れない)
サンティッシマ・ジョヴァンニ・エ・パオロ教会へ行く。

Santissima Giovanni e Paolo.

地図を見ながら辿りついてみれば、……あ、ここか。
昨晩彷徨っている時に、確かにここの前を通ったわ。
ここから道がわからないままホテルへ行くのは……うん。絶対無理。辿りつけない。

かなり大きな教会だが、あまり思い入れもなく。さくっと見終わる。

The nave.

The ceiling.

天井です。

? Tomb?

うーん、よくわからない……。墓だろうか。

隣接して、ここにもスクオーラがある。スクオーラ・ディ・サン・マルコ。

Scuola di San Marco.

美しい建物で、現在も市民病院として使われているそう。
観光客向けではないようだ。

The relief of lion on the side of entrance.

入口には獅子のだまし絵風レリーフ。
聖マルコはヴェネツィアの守護聖人で、翼を持つ獅子がそのシンボルなんです。

その後やはり近場のサンタ・マリア・デイ・ミラーコリ教会。

Santa Maria dei Miracoli.

ここもあまり思い入れなく……。イタリアはどこもかしこも(?)教会だらけだが、
ヴェネツィアの教会密度はその中でも相当なので、けっこう飽きる……。
ガイドブックに載っている(観光向きの)教会でも、わりと普通の作りなんだよなあ。
絵はわりと有名なものを置いている所が多いようだけど。

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一旦ホテルに帰った後、また出て夕食。ものすごくテキトーな……
場末の英国風パブのような店でキノコのパスタを食べました。
店員さんは東南アジア系で優しげ。味は普通の美味さ。

……その後聖マルコ広場を回って帰った。だが、これがマチガイの元でした。
聖マルコの小広場の方のカフェでバイオリンとピアノの生演奏をしていたので、
食後のデザートでもと思い、席についたらたったケーキ1ピースで11.2ユーロだって!!
約1300円ですよ!サービス料込だろうし、そりゃ場所的に高めだろうとは思ったけれども、
まさかここまでとは。

しかも座った途端に演奏は終わるし、味も全然大したことないし、踏んだり蹴ったり。
黙々とケーキを食べてとっとと席を立つ。
どこの店かというとグラン・カフェ・キ○ッジャ。
不幸な出会いでした。お金と気持ちに余裕がある人が行って下さい。

観光一日目、終了。

なんで写真がこんなにでかいんだろう……。

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