イタリア/Italy:2010

9.リュート弾き。The lute player.

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アカデミア橋の方へ歩いていくと、何かの音が聞こえて来る。

何だろう?

音に呼ばれるようにして建物の角を曲がる。
小広場。ここは位置的にはダリオ宮の裏くらいに当たるのかな。
音の源は弦楽器を抱えたストリートミュージシャン。

He is a Hungarian musician.He compose and play the lute.
The music was "serenissima" wind.

静かな、優しい風のような音楽。
チェンバロに少し音色の似た、線の震えがちりちりと微かに華やかさを添える。
古風でどことなく異国的。小広場の古井戸の近くに座り込んで音楽に聴きいる。
周りの石造りの建物がよく音を響かせ、心地よく耳に運ぶ。風が吹きすぎる。

この楽器は何だろう。何曲目かの演奏が終わった後、近づいて行って訊いてみる。
「リュートっていうんだよ」とリュート弾きは教えてくれる。
ああ、これがリュートか。名前は聞いたことはあった。これがそれなんですねえ。
アラビアから何百年も前に伝わった楽器で、中世イタリアでも盛んに使われたらしい。

ここらへんが多分リュート。

ロッソ・フィオレンティーノの「奏楽の天使」

Salvastyleさんよりメロッツォ・ダ・フォルリの「奏楽の天使」

琵琶(biwa:Japanese lute)の面影がある。同じ楽器の、何百年かを経た東と西の姿だろう。

彼が弾いていたのは自分で作曲したルネサンス風音楽だそうだ。
シンプルな旋律を何度も繰り返す、哀調を帯びた曲。
それは、夕暮れの草原に座って草が揺れるのを見ているような曲だったり、
遠くで鳴っている祭りの楽隊の音楽であったりする。

ハンガリー人だと言っていた。Boka Benceさん。
「知ってる?ハンガリー人は日本人と同じで先に苗字がくるんだよ」
この話題でひとしきり盛り上がる。
中央アジアの遊牧民を遠い祖の一つに持つハンガリー人は、東との繋がりを
他のヨーロッパの国の人より強く感じているのかもしれない。

CDを売っていたので、買いました。
2枚あって、ピンクの方は彼の独奏、ブルーの方は他の楽器との合奏だそうだ。
独奏の方だけで、と思ったのだが2枚でお安くしてくれるというので結局どちらも。

ピンクのアルバムタイトルは「Dances」。多分こちらがオリジナル楽曲。
ブルーは16~17世紀のハンガリー音楽。「I take the lute」。
ブルーの方は曲によってボーカルも入る。少しメロディに動きがある。
でも根本の雰囲気は共通している。哀調を帯びた曲。

帰国後CDを聞いたが、わたしのてきとーなAV環境では、現地で聴いた時の
10分の1くらいしか良さが出ない……。湿度とか、石の建物の反響も関係しているのかな。
もちろんライブの方が良いというのは当然のことなんだけれども。
Bokaさん、今後も良い演奏を。

いい出会いだった。

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ちょっと幸せな気分になって、ホテルまで歩いて帰る。
途中お土産屋さんに寄って、お土産の3分の1くらいを買えたし。
若干ほっとする。買物が苦手なので、常にお土産は懸案事項なんです。

……まあ、相変わらず腰はアブナイんですけどね。

Gondolas gathered for song.
Only one singer stood in a gondola,and the others came to listen free.

ゴンドラ集結風景。なぜかというと、1艘のゴンドラに歌い手さんが乗っており、
その歌をタダで聴こうと他のゴンドラが寄ってきているから(~o~)。
多分歌い手は左奥のゴンドラで立っている3人のうち、1人だけオール?を持っていない人。
「サンタルチア」かなんか歌ってたな。
ゴンドリエーレも人によっては歌うんだろうけど、基本的には漕ぐだけみたいです。

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