仙台あちこち

◎カメイ美術館はご存じですか?行ったことおありですか?

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カメイといえば地元では有名企業ですね。そこが美術館を持っていることはご存じですか?五橋にあります。小さいですけどね。

カメイ美術館の場所はこちら。

 

仙台駅からもぶらぶら歩いて行ける距離。最寄は地下鉄五橋駅かもしれませんが、改札からは遠いので、仙台駅からだったらわざわざ地下鉄に乗って移動する意味はない気がします。ただし仙台駅からカメイ美術館までの歩道は、お昼休みはわりあい人通りが多くて(少なくとも今回はそう)少し歩きにくかった。時間をずらした方がいいと思います。

歩くのが嫌だったらバスが一番。バス停は五橋一丁目が最寄り。南方面行のバスにのればだいたいのバスが通ります。

バス停の範囲が広い仙台駅前から乗るより電力前から乗った方がわかりやすい気がするが、……実はわたしもバスはめったに利用しないので自信を持って説明が出来ない。多分仙台駅前からは2つ目の停留所……だと思います。バスって普段使う路線以外はわかりにくいんですよねー。旅先でも使いこなすのはなかなか難しい交通手段。

仙台駅からなら歩きましょう。市役所や電力ビル方面からならバス利用がおすすめ。

 

カメイ美術館とは。

カメイ美術館公式HP

昔からあるわりに地元民でも訪れた人がかなり少ないだろうこの美術館。それは所蔵品のジャンルに理由があります。

カメイ美術館のメインの展示品は蝶の標本です。サブでこけし。
なので、蝶とこけしに興味がない人の網にはひっかからないですよね。

メインは蝶。

でも前回初めて来た時驚いたんですけど、蝶って面白いですね。興味がなくても相当楽しめる展示物でした。

どう面白いかというと、手仕事の精密さを見ているのと同種の面白さ。生き物というよりペーパークラフトのような感じで、……さすがに胴体部分をじっと見るとちょっとコワイけど、羽の部分は丁寧に作られた紙の感触。誰かが息をつめながら、丁寧に丁寧に色を塗って作った繊細な工芸品という趣き。

あと、色がきれい。その鮮やかな色はカラーセラピーのような効果があるように思う。下手な現代アートを見ているよりはるかに心安らぐ。

世界中の様々なエリアの蝶をたくさん展示してあります。量がすごいんですよ。あまりに多すぎるので数えるのは諦めましたが、途中まで概算を出したところを基にすると、400~500箱くらい並んでいるのではないかと思いました。一箱の大きさは40×30センチくらいかなあ。40×50センチなのか。展示数は約14000頭(蝶は「頭」で数えるんです)ですって。

これは「虫屋」(←虫好きの人の自己呼称)としては大変幸せなことだと思いますよ。これだけの量の蝶を採集・購入出来たことはもちろん、それを目に見える形で展示出来るのはなかなか出来ることではない。

そもそもはカメイの社長(3代目らしい)、亀井文蔵の趣味が蝶採集だったらしいですね。情熱があってお金もある「虫屋」さんらしく、海外にも蝶を採りに行ったそう。

ちなみにわたしはここ数年、奥本大三郎のエッセイを愛読しています。彼のエッセイを読んでいると虫屋なるものの一端がわかる。


【中古】 楽しき熱帯 講談社学術文庫/奥本大三郎【著】 【中古】afb

エッセイ面白いですよ。フランス文学の教授だが、出ているエッセイは主に虫についての話で、他に身辺雑記のエッセイもあるが、昆虫採集の旅のエッセイが一番面白い。

近年「ファーブル昆虫記」の全訳を刊行しました。いずれ読んでみようと思います。でも全10巻。

 


完訳 ファーブル昆虫記 第1巻 上

蝶ってそれぞれのエリア・大陸で全然違ったデザインになるのかと思いきや、意外に共通の模様が多い。しかしエリアごとに微妙な違いがあり、そこが蝶マニアの楽しみらしい。我々一般人はけっこう似たように見えるが、しかし似たような蝶を何度眺めても面白いので、やはりある種の芸術だと思う。自然の手による芸術。

昆虫標本が気持ち悪くて無理、という人には薦められませんが、そうじゃない方には一度見てみることをお薦めします。

こけしもあります。

実はわたしがこけしを好きじゃないので、この部分はあまり惹かれないが……

それほど規模は大きくないですが、ある程度の数は揃っているので、好きな人は見てて楽しいと思う。前に来た時にはこけしの専門雑誌(といっても不定期刊)が置いてあって驚いたものだが。雑誌を編集しようと思うほどこけし好きな方も、世にはいらっしゃるんですねえ。

そして絵画。

美術館としての規模は小さめですが、それなりの絵画コレクションがあります。近代洋画のジャンルが多い。東北ゆかりの画家の作品も集めているらしい。塩釜出身の杉村惇とか。

今回は企画展で「花の絵画展」というのをやっていました。わたしはこれを見に行った。
やっぱり花の絵はいいですね。多少気に入らない作風でも心はささくれ立たないしね。下手な現代アートを見ているよりずっと……って、よほど現代アートがキライな様子。

40枚、50枚の展示だったけど、このくらいの規模でもいいんじゃないかなあ。気軽に行けてちょうどいい。千住博の桜の絵と、ヴラマンクのごく普通の赤い花の絵が良かったと思います。

――ただし個人美術館に希望することは、企画展ではぜひ作品目録を作って欲しいということ。作者名、タイトル、制作年くらいの。どうしてほとんどの個人美術館で作ってくれないんでしょうかね?エクセルの一覧でいいから。出来れば所有者と画材も書いておいてほしいけど、それだってそんなに難しいことじゃないでしょうに。

ちなみに、入口はこんな感じです。

一応写真は撮ったんですが、絵にならないことおびただしい。あ、兵馬俑の模刻がありますね。

普通の小さめのオフィスビルが入口です。「カメイ五橋ビル」の7階が受付。エレベーターで昇ります。

通常なら入場料300円。今回は企画展もあったので500円。このくらいの金額が気軽ですよねー。6階7階が美術館フロアで、スペース的にじっくり見ても1時間……と言おうとしたのですが、蝶が意外と時間を取ります。一箱を5秒で眺めるとして、もし標本が500箱あれば約40分かかる計算です。

まあね。標本全部眺めなくてもいいからね。40分も根をつめて眺めると本気で疲れますから。まずは蝶以外のところを心行くまで見て、あとは飽きるまで蝶を見て帰るか、最初に軽く(3分の1くらいまで)蝶を見て、次に絵画部分を見、残りの蝶を見るという配分がいいのではないでしょうか。

見終わってエレベーターで降りて来ると、金ぴかに塗られた彫刻作品が見えにくい場所に飾ってある。そんなにいいものとは見えなかったけど、テーマが「蝶をとらえるエロス」。(タイトルを見て来るのを忘れました)

エロスはギリシア神話の愛の女神アフロディーテの息子です。そのエロスが恋をした相手が美女プシュケ(プシケ)。母の反対にも関わらず、いろいろあった末、最終的にはめでたく結ばれました。ちなみにプシケというギリシア語には魂という意味と蝶という意味があるそう。魂が愛(=エロス)と出会って完全体になったという比喩でもあります。

これは蝶好きだった亀井文蔵が欲しくなるだろうと思いました。

 

なお、隣の五橋公園の緑が素晴らしい。

周りをオフィスビルやマンションに囲まれているので気づかぬ人も多いでしょうし、存在を知っている人も実際に見る機会はほとんどないという、いわば秘密の花園のような公園です。わたしも今回何年振りかで通りかかって感動した。

いかがですか、この緑の美しさ!

ちょうどお昼休みの時間帯で、知る人ぞ知るこの場所にも十数人程度の人がいました。学生、勤め人、散歩の人。左下の明るい部分が丸い広場で、ぐるりとベンチが設置されていて、座る人数のキャパシティだけなら30人か40人くらい坐れそう。

これは近くに勤めている人は幸いですねえ。これだけ気持ちいい空間はなかなかない気がします。いいところ。

 

小さなミュージアム、おすすめです。

東京やロンドンには巨大ミュージアムからこじんまりとした美術館まで、順番に回っていたらすぐ1ヶ月くらい経ってしまいそうなほど数多くのミュージアムがありますが、地方都市仙台にはそれほど多くの美術館はない。とはいえ、わたしの知らないところもいくつかあるでしょうが。

そんななかでカメイ美術館は良質な美術館の一つです。絵画コレクションはそこまでではないけど、蝶は思ったよりも面白いから、ぜひ行ってみて。

そしてカメイ美術館に行った際にはぜひ五橋公園にもお立ち寄りください。

 

 

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