チェコ・9月3日

13.マサリク河岸通り。

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この日一日は少々蘊蓄野郎です。鬱陶しいでしょうが、語らせてやって下さい。

プラハには、様々な時代の建築が残っている。とりわけアール・ヌーボー建築に関しては、
パリ、ナンシー、ブリュッセルに並ぶ有名な街だと思う。
街区としてまとまって残っている分、稀少性で言えばどこよりも上かもしれない。

Art-Nouveau buildings area.

国民劇場から南へ向かう、ヴルタヴァ川沿いの一般住宅。
おそらくここがマサリク河岸通りと言われる地区だと思う。この辺りがなかなか良いのだ。
プラハの市街地が膨張したのが、多分およそ百年前だったのだろう。
5、6階建の一般住宅が、その頃流行りの建築様式で北から順に建てられていった。
修復状態にずいぶん差はあるが、1軒1軒にそれぞれ趣向があるので見ていて楽しい。

散策は、ゲーテ協会の建物入口の装飾から始まった。
麦の穂をデザイン化した、まさにヌーボー。
「ゲーテ協会」と書かれたレタリングもそこはかとなくヌーボー。

南へ歩いて行くと、最初の方はデザイン的に控え目で上品な建物。
ヌーボーと言っても、チェコのデザインの基本は一般的な植物ウネウネではないようだ。
むしろウィーンあたりのゼセッションやデコのイメージの方に近い。
漆喰で作られたデザインは、花綱デザインも程度を越さないくらいに整然としている。
適度さが美しい。色合いは淡い緑や黄色、明るいグレイ、アイヴォリー。
漆喰の家は、石造りとは違い、描き割り的でもあるが、
言葉を変えて言えば軽やかで可愛らしい。加工性が高いことがこの街並みを生んでいる。

そういう建物の向い側には、モダニズム的な、真白い壁と真四角の窓が続く建物があり。
その背後には、14世紀頃の建物のように感じられる石積みの小さな塔があり。
塔とモダニズムにそれほどの違和感がないところが面白い。

河岸通りの中間ほどでは、建物の装飾が派手になる。
モザイク――というべきかタイル絵というべきか、建物外壁上部にハープを奏でる女性の絵。
(しかし見る人の視線を考えれば、この位置にこういう絵は効果的か?
対岸からは遠すぎる気がするし。大きいから見えるか?川縁を散歩する人なら丁度いいか?)
この建物はもう少し修理した方がいい。数少ないモザイクなのにもったいない。

ゴシック風が2軒並ぶ。面白いが、少々派手に傾きすぎていて、品の良さは感じない。
地区全部の建物がこの派手さで作られていたら相当にしつこくて、もしかしたら
早々にデザインを変えられていたかもしれないと感じる。
次はバロック風?やはり派手で、でもたまにはこういう建物もアクセントになるかな。

Neo-Gothic?

Neo-baroque?

そしてふと眼を先にやると……思わずにやりと笑ってしまう建物。

The Dancing house.(or Ginger and Astaire building.)

これは見たいと思っていた。
「ダンシング・ハウス」とか「ジンジャー&アステア」などと呼ばれる現代建築。
わたしは現代建築はだいたい警戒しているが、さすがにここまでやられるとね。笑うしかないでしょ。
ヌーボーやゴシックを見てきた目が不意を突かれる。
なんと愛嬌のある建物だろうね。

写真家の浅井慎平がこれを見て「これはイカだ!!」と主張していた。
理由:足が10本ありそうだから。……うーん。まあイカでもいいけど。
中に入ってみたいな。基本的にはオフィスビルらしい。

ここを過ぎるとチェコ特有のキュビズム建築が数軒。

Czech-cubism.

キュビズム建築などというと非常にとんがった建物を想像するが、
わりあいに落ち着いた、普通に住めそうな建物。
多分集合住宅として使われているのだと思う。
インテリアなどがどうなっているのか、気になる。

ベランダのプランターに水やりをしていた人がいた。
「中を見せてくれませんか?」……と叫ぶ自分を想像しつつ、
さすがにそこまでの勇気(というか蛮勇)は持てなかった。研究者でもないわけだし。

雨が降り始める。昨日すごく暑かったので、今日は薄着で来てしまった。寒い。
かろうじて傘は持って来たけど。風が冷たい。大丈夫かな。

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