ここで降りたのは、単にトラムを乗り換えるだけのためだったんだけど。
こんな風景に出会う。
The Vltava and Prague castle.
豊かな水を湛えるヴルタヴァ川。
対岸に連なる建物はプラハ城、てっぺんの教会はプラハ城内の聖ヴィート大聖堂。
こんな風景を素通りするようでは何のためにここまで来たかわからないもの。
予定を変更し、ここから川沿いをカレル橋まで歩くことにする。
ヴルタヴァ川はプラハの母なる川。マザー・リバーは人々の思いによって常に美しい。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
思い出に残る川と言えば――
盛岡の雫石川。
金沢の犀川。
上高地の梓川の水の美しさといったら。ブルートパーズのよう。
名前を呟くだけで風が吹くのはフィレンツェのアルノ川。
お世辞にもきれいとは言えないけど、やはり思い入れの深いテムズ川。
いつかはその川岸に立ってみたい、ナイル。黄河。
川は好きだ。流れがずっと海まで心を運ぶ。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
The Charles Bridge.
カレル橋が見え始める。
カレル橋は有名な観光名所で、日中になればものすごい人出になるような場所なんだけど。
現在工事中で、なんだか無粋な佇まいになっている。
朝早いので、わたしのように勤勉な観光客がちらほらいるだけ。
来たなあ、プラハまで。
カレル橋の頑丈な石の欄干にもたれて、ぼーっとヴルタヴァ川の川面を見つめる。
川風が冷たくて気持ちいい。陽が射して来て、日光が当たる部分は暑いくらい。
その微妙なコントラストを皮膚感覚で楽しむ。
この川風が初めてのプラハ。
Beautiful wind.
カレル橋は全長520メートル、横幅10メートルの大きな橋。
左右の欄干にキリスト教の聖人像が30体並んでいる。
我々に唯一馴染みがある聖人といえば、フランシスコ・ザヴィエルくらいだろう。
歴史の授業で習ったでしょう?肖像画を見れば忘れてても思い出すはずだ。
わたしは、彼がこんなところに飾られるほど有名人であるのは意外だった。
イエズス会の主要メンバーであるとはいえ、極東のちっぽけな島国に布教をしただけの人だと
思っていたのだが、けっこうワールドワイドな人だったんだねえ。
……が、写真は撮ってない。わざわざ探すほどの親近感を彼には抱いていない。
撮ったのはヤン・ネポムツキー像。
John of Nepomuk.
ヤン・ネポムツキーとは……と説明出来るほどの知識がないので、wikiの該当ページへどうぞ。
いや、写真を撮ったからと言って、ネポムツキーに親近感を抱いているわけではなく、
台座部分の彼のレリーフに触れると幸運が訪れるという言い伝えがあることから、
機会があったら触っておこうと思っただけ。
If you touch the John of Nepomuk(the small cross shape of centre),
you can get good fortune.
いつも混んでると書いてあったから、混んでたら無理だなと思ったが、
早起きは三文の得というか、他に誰もいないので触り放題。
が、実はわたしが触ったのは手前の一番大きな人物で……
ホントのネポムツキーは、レリーフの真ん中で橋の上から投げ落とされている小さな部分。
そこには触っていない。……わたしにはどうやら幸運は訪れないようです。
左側のレリーフ。
犬の部分が光っているのは多分言い伝えは関係なく、単に可愛いからだと思う。
ちょっと面白いと思った佇まい。
橋を通る人と同じ視線の高さにある家で、家の2階か3階の外壁にキリストの画像が飾られている。
ヨーロッパの街角では、街路の突き当たりなどにマリア像やキリストの画像がある場合が多いが、
この構造はあまり見ない気がする。
この家に住む人は、橋を通る人にも気軽に祈れる場を提供してくれているのだろうが、
日本で言えば、神棚やお稲荷さんの祠を道路に向けて作っているという状態なわけで。
うーん。面白いが、微妙にナンジャコリャ?だなあ。わざわざ専用のドアもあるしね。
The end of the Charles Bridge(Castle side).
カレル橋を渡りきって、こちらはお城のある側のたもと。
絵描きさんがそろそろ商売道具を広げようとしている。この時で8時半くらい。
これから一日が始まるんだな。