イタリアの旅の話/1995

◎シニョーリア広場には歴史が積み重なる。イタリアの旅の話・その6。

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ウフィツィ美術館を出ると、そこがシニョーリア広場です。

シニョーリア広場?シニョリーア広場?

長年の疑問なのですが、ここはシニョーリア広場?シニョリーア広場?
表記はどっちも流通しており、どっちが間違いとも書いてないんです。わたしはちゃんぽんで使ってます。

シニョーラ(ご婦人)、シニョーレ(紳士)を考えるとシニョーリアかなと思うし、シニョリーナ(お嬢さん)だとシニョリーアかと思うし。イタリアの人に発音してもらいたい。

シニョーリア広場は昔からフィレンツェの中心だったところ。細かくいうなら、中心は、シニョーリア広場と、そこから400メートルほど離れたサンタ・マリア・デル・フィオーレとの2か所です。シニョーリア広場は行政府の前の、いわば市民広場。サンタ・マリア・デル・フィオーレは大聖堂前の宗教の中心。

シニョーリア広場に面してロッジア・ディ・ランツィという場所があります。ロッジアとは「回廊」という意味ですが、回廊といってイメージするほど長くはなく、テラスみたいな感じ。そこには彫刻がいくつも飾ってあり、ちょっとした屋外美術館の趣き。待ち合わせしたい時などにぴったりの場所。が、そう考える人が多いせいか、そこそこ混んでいますけれども。

ここでチェリーニの「ペルセウス」、ジャンボローニャの「サビニの女の略奪」が見られるので、ちらっと眺めていきましょう。ルネサンスよりももう少し後の時代に作られたこれらの彫刻は、個人的には若干世俗的だと感じますが見事な彫刻。

そして彫刻といえば、そのそばのヴェッキオ宮殿入口にある「ダヴィデ像」。最初に行ったミケランジェロ広場にあるのも複製、実はこのヴェッキオ宮殿にあるダヴィデ像も複製です。ダヴィデ像は複製が世界中のあちこちにあるらしい。

本物はアカデミア美術館で見られます。アカデミア美術館に行く時間のない今回の旅では、この複製のダヴィデ像をちょっと見て終わり。本物を見たとき思ったのですが、この像は足元から見上げる形で鑑賞するのが正しい形。遠くから見ると頭が大きすぎるんですよね。アカデミア美術館ではちゃんとしたライティングで見られるので、時間がある方はアカデミア美術館で見るのがおすすめです。背中側からの視点も必見。

はるか昔、この広場では「虚飾の焼却」が行なわれました。15世紀後半にフィレンツェで盛り上がった宗教的熱狂、その中心にいたサヴォナローラという修道士が主導したもので、宝飾品や美術品など、贅沢だとみなされるようなものが突然押しかけて来た自警団によって奪い去られ、火にくべられたのです。

サヴォナローラに心酔していたボッティチェリは自ら自分の絵を火に投げ入れたそうです。もしそんなことがなかったら、わたしたちはボッティチェリの絵をもっと何枚も見ることが出来たはずなのに。集団意識は時に暴走することがあり、それは歴史的に繰り返されたことですが、残念でなりません。

しかしその宗教的熱狂は長くは続きませんでした。一時期は人々からまるで皇帝のように扱われたサヴォナローラも、熱狂が去った後ではむしろ憎まれるようになりました。最後はこの広場で火あぶりの刑になります。その跡を示すプレートも広場には残っている。

歴史の重みを感じます。

 

入らずのヴェッキオ宮殿。

先ほども言ったように、シニョーリア広場はフィレンツェの中心であり、歩き回っていればいつか必ず通るところ。その主要建造物がヴェッキオ宮殿。なので当然行ってもいいような気がするのですが、3回行っていまだに一度も入ったことがありません。
500人広間を見てみたいんだけどなあ。

ここは現在も市庁舎として使われている建物だそうで、そう聞くと観光客が見学するところなんてちょっとしかないような気がします。が、今確認したところ、わたしが思っていたよりもはるかに見どころが多い!「何々の間」とか「だれ誰それの書斎」とか、うーん、想像よりもはるかにきらびやか。市庁舎というからウフィツィ程度の地味な造作を考えていたのですが、これはちゃんとした宮殿ですね。

登りたい人は塔にも登れるそうですよ!フィレンツェの「登り系」は、サンタ・マリア・デル・フィオーレの大クーポラ、ジオットの鐘楼、このヴェッキオ宮殿のアルノルフォの塔、と3ヶ所あります。どこへ登るか、事前にご検討下さい。もちろん時間と体力がある方は全部登ってもいいのですが、わたしは後述するようにジオットの鐘楼に登って死んだので、1ヶ所で十分な気がする……

この建物にも血なまぐさい歴史がまつわりついています。フィレンツェの支配者だったメディチ家。それに対立していた貴族、パッツィ家が起こしたパッツィの乱。危ういところを制して勝ったメディチ側は、パッツィ家についた人々に死刑判決を与えます。彼らはこの市庁舎の窓から吊り下げられ、絞首刑にされたそうです。

海賊が縛り首にされるとか、魔女の火あぶりとか、歴史上おどろおどろしい処刑法はいろいろありますが、普段目にしている市庁舎に人が吊るされるのを見るのはなかなかにエグい気がする……。トラウマになるよなー……。

その時の様子をボッティチェリやダ・ヴィンチがスケッチをしているそうです。画家は対象を見る目が大事なんだろうからそのこと自体に驚きはしないけれども、「モナリザ」や「春」などとのギャップがありすぎる。

ヴェッキオ宮殿にはいつか入ってみたい。

 

ショッピングエリア。

シニョーリア広場とサンタ・マリア・デル・フィオーレの間の地域がフィレンツェにおける目抜き通り。ファッションの店なんかが集まっているようです。あとで電車に乗る前のわずかな時間を使って、買い物をしたのはおそらくこの地域だったはずですが……。もうそのあたりの記憶はない。わたしは同行者2人に連れられて、店から店へ回るだけだったと思います。日本未上陸の洋服屋さんとかあったらしいし。

買物をみんなで回るのは、価値観が合っているなら双方楽しいことでしょうが、文房具や革の手袋は物欲が動いたわたしも、お洋服には食指が動かなかった。このエリアで自由行動にして、あとで待ち合わせするのが良かったかもしれませんね、今から考えると。しかし当時、海外で単独行動するという頭はなかった。やっぱり危険だと思っていましたから。

わずか400メートルの距離なのに、なかなかサンタ・マリア・デル・フィオーレまでたどり着かない……。そのくらい密度が濃い。フィレンツェは。

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