町の中心部から南へ5キロ、とガイドブックには書いてあった。
バスで市街地エリアを抜けた後、開けた平地の向こうに聖堂の塔らしきものが見える。
ただし見通しはいいんだけど、周囲の雰囲気がバイパス沿いのような雑多さなので、
聖堂のロケーションとしては少々残念に感じる。

Santa Apollinare in Classe basilica from behind.
バス停から向かうと後ろから回り込むことになるのでこれは聖堂の背面側。
サンタポッリナーレ・イン・クラッセの営業時間(?)は19:30までと遅いのだが、
16時過ぎのこの時点で「……あのー、まだやってます?」的な閑散ぶり。
地元よりも日の入りが若干早いらしく、すでに夕暮れの雰囲気。
それでもチケット売場に係員はいたからすんなり入れたけど。

Inside.
入って、――おお、と歎声。目の前に見事な空間が広がる。






これでもかというほど写真を並べてしまうけどね。(ボケてるのは許してくれ。暗いのだ。)
静かな夕暮れ。温もりのある静寂が聖堂に満ちる。
シンプルな大空間にほっとする。ヴェネツィアで見て来た建築物は曲線が多すぎた。
淡い色彩で上品に描かれたメダイヨン。
大理石の列柱のリズムが後陣に描かれたモザイクに視線を誘う。
モザイクの鮮やかな緑色が美しい。邪気のない、濁りのない、素朴な緑。
緑がこんなに美しいモザイクは初めて見た気がする。
それに、見よ、子羊の絵のいとけないこと。まるで子供が楽しみながら描いたよう。
ここにあるのは幼子の天国。見れば思わず微笑が浮かぶ、天真爛漫な画。
いいなあ。
見物客は他に一組しかおらず、この大空間を一人占めの気分。
なんというか……幸せだ。ここにこうしていることが。
正面の主役は聖アポリナリス。オランス――祈りのポーズをとって、しかしそのポーズが
稚拙で可愛らしい。キリスト教にしばしば感じる厳しさはここにはほとんどない。
4世紀にキリスト教が公認されて、この聖堂は6世紀に作られた。
――カトリック教会が巨大組織になり、世俗権力を握るようになる前は、
きっと神と人との距離はずっと近しいものだったんだよ。この場所にいるとそう思える。
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聖堂から出ると外は夕闇が迫っている。
帰りのバスを待っていて、ふと近くに八百屋さんがあるのに気付き、
美容と健康のためにリンゴを1個購入する。(旅のビタミン補給にリンゴは有効。)
が、八百屋のおばさん、前のお客さんにかかりっきりでなかなか手が空かない。
個人商店はそんなもんだろうと思っているので別に腹は立たないが、
――バスが来たらどうしようかと気が気でない。
1ユーロを置いて「釣りはいらん!」と言って出て来る。実際の値段はいくらだったか
不明だが、まあ30セントとかせいぜい50セントくらいじゃないかな。
おばさんは「あらまあ、待って」とか言ってたけど、こっちは別に120円が惜しいわけではないし、
そのまま出て来た。おばさんも外まで追って来ようとはしなかった。
こんなことをして無事に乗れたバスも、無事には降りられなかった。
……降りる場所を逃した。バスは街の中をある程度循環するはずなので、
最も近いところで降りようと「ここかなー……もうちょっと行ってみようかなー……」的な
助平心を出したのが敗因。よくやるんです。
市街地を離れて住宅地に向かい始めたので、こりゃあかんと諦めて降りる。
降りたはいいが、いまいち方向に自信がない。適当に歩き始めてもいいが、
何しろ去年のチェコでは適当に歩いて結局1時間彷徨うハメになるというイタイ経験をしている。
ちゃんとお利口にして、道はさっさと人に訊こう。もう夜だし。
人通りのほとんどない道だったが、唯一の通行人であるおばさま二人連れに
「カドゥーティ広場?」と訊いたら「近くまで行くから付いて来なさい」と(多分)言ってくれた。
わたしがひょこひょこ横を歩いているにも関わらず、彼女たちのお喋りはとめどもなく続き……
うーん、さすがイタリア。お喋りの国だ。
おばさまたちと一緒に歩いていたのは、多分500メートルくらいだと思う。何しろ小さい町なので。
ひょいと見るとたしかに見覚えのあるカドゥーティ広場。
「ここでほんとにいいの?大丈夫?」と(多分)訊いてくれている。
ここからなら大丈夫。グラツィエミッレ、などとお礼を言って別れる。
旅ではいつも誰かのお世話になります。その恩返しを、わたしは日本でしないとね。
18:30くらいにホテルに戻り、その後ホテル周辺をうろうろ。
近くの健康食品店?古いタイプのドラッグストア?で紅茶を買った。
日本の番茶や煎茶もあった。海外ではけっこう高いんですよ、日本茶は。
今から思えば、この店はちょっと味のある佇まいだったかな。写真に撮れば良かった。
夕食をどうしようか迷ったが、結局ホテルの向かいの、実に安直なファストフード的ピザ屋で、
ピザと缶紅茶と水を買って帰り、それと例のリンゴで部屋での夕食。
もうちょっと温かいものが食べたい気分だが……。少し食べ物に不満が出始めている。
ちょうどいいくらいの安直な食べ物があまりない。そういう意味では去年のチェコはグレートだった。
ショッピングモール内の中華のファストフードなんて最高でしたよ。
あの値段でこの量で、味もなかなか、しかもお手軽。日本にも欲しい、と思ったくらい。
イタリアでは安直な食事となるとピザかパン。わたしはもう少し水分のあるものが欲しいんだよね。

This is a handmade cutlery bag.My friend gave me.....I didn't make it by myself.
H田I子さんお手製のカトラリー入れ。何ヶ月か前に「旅行に持って行くのに、スプーンとフォークと
ナイフと箸のセットが欲しいんだけど見つからないんだよねー」とコボした所、
「セットじゃなくてもちょっとした布で作れるんじゃない?」とアドバイスをしてもらい。
だが「うーん、作れるかもしれないけど……(わたしには無理(^_^;))」などと言葉を濁していたら、
しばらく経ってH田さん、作って来てくれた\(^o^)/\(^o^)/\(^o^)/。(カトラリー付き!)
すごくびっくりして嬉しかった。
今回が初お目見え。ちゃんとイニシャルも付いてるんだよ\(^o^)/。えへへ。
(……実は、初めて使ったのはヴェネツィアのホテルでピザを中食した時なのだが、
ピザなんつーもんは油だらけで、絵的に美しくなかったので、被写体を考えた上で撮影。)
明日はラヴェンナ観光です。