こんな時ですから、笑えるエッセイをいくつか集めてみました。笑って免疫力を上げましょう!
笑えるエッセイ5選。
檀ふみ・阿川佐和子「ああ言えばこう食う」
檀ふみと阿川佐和子、親友同士の往復書簡風のエッセイ。ひところ相当売れましたね。この内容を一言で言うと、文章によるどつき漫才です。
どうして女優とエッセイストがどつき漫才をしているのか。読みながらどうしても理解できなかったのですが、とにかく面白いです。笑えます。
仲いいんですね。お互いに思いっきり相手を下げて、しかしいいところもちゃんと書いて、普通は単独で書くエッセイが、往復書簡になったことでお互いの姿がより一層くっきりと浮かび上がる気がする。
往復書簡とはいいながら、相手によりかかったものにならず、一編一編がちゃんとしたエッセイになっているのが技だなあと思う。
あとがき替わりに掲載されている五木寛之を加えた鼎談も読みどころです。この鼎談はさらにどつき漫才のどつき度が高くて、「この2人のオンナは本当に親友なのだろうか?」と心配になります。
あとタイトル通りに食べ物の話題が多いのも楽しい。ちょこちょこレシピも出てきます。
三谷幸喜・清水ミチコ共著「むかつく二人」
三谷幸喜の対談はずっと前に「気まずい二人」というのを読んだんですよ。
【中古】 気まずい二人 / 三谷 幸喜 / 角川書店 [単行本]【メール便送料無料】【あす楽対応】
……これが本当に気まずい本で!
こっちは清水ミチコではなく、十三人の女優や女性タレントとの対談集。
これは本来人見知りの三谷幸喜の初対談集で、八木亜希子、十朱幸代、西田ひかる……など、三谷幸喜が「あえて緊張する相手」を招いています。
対談ではありますが、三谷幸喜の本職である脚本の手法も若干入っているため、その場の緊張感が見事に再現されている。もう読んでいるこっちが緊張するわ。
そこから10年経って、対談にもかなり慣れたあと清水ミチコと出したのが「むかつく二人」。
「気まずい二人」とタイトルは似通ってますが関係はありません。
元々は2人でやってたラジオ番組を本に起こしたもので、ですから基本的に話芸ですよね。
この2人は話が合っていて読んでてテンポがいい。友人同士のようですから、三谷幸喜も自由に喋ってます。話があっちこっち飛びまくる。そこをフォローする清水ミチコの頭の良さを感じます。
続編が3冊出てます。「いらつく二人」「かみつく二人」「たてつく二人」。
柳家小三治「ま・く・ら」「もひとつ ま・く・ら」
現在はかなりお年を召していますが、現役噺家の柳家小三治が1998年に出した「まくら」を集めた本。
「話のまくら」っていいますよね。本題に入る前の導入部。本題の落語に入る前に、ちょっとした話でお客さんとの間に空気を作る。柳家小三治はこの名手で、「まくらの小三治」とも言われたそう。このまくらだけを集めて一冊にしたのがこの本です。
まくらですから、内容は書き起こしですね。高座で語った内容をそのまま文にしています。つまり落語っぽい。実際に落語を聞いたことのある方は少ないでしょうが、テレビなんかではたまに見かけますよね。ああいう落語っぽい喋りのまま書いてある文章です。読みやすい。
ニューヨークひとりある記
めりけん留学奮闘記
玉子かけ御飯
駐車場物語
寄席、いま昔
……
けっこう長いものが多いから、これを本題の落語の前にしゃべっていたとするとその落語会はいったいどれくらい長い会になったのだろうと、会場側に立って戦慄せざるを得ません(笑)。
この本を読むと小三治は相当に趣味が広い人のようです。英語もがんばってるしねー。バイクは50歳くらいまで4台持っていたそうだし。俳句もやればオーディオにも凝り、塩にも凝るという多趣味ぶり。
その大好きな趣味のことを、噺の名人が喜んで話しているわけだから、面白くないわけがない。面白いだけではなく含蓄があります。頑固おやじ的含蓄。今どき、少なくなったでしょうね、こんな人は。
読みながら想像で音声再生してお読みください。自分が寄席にいるような気分になりますから。
おまけでついている、弟子の一人が真打になった時の兄弟子一同と小三治の口上というのも面白かったです。ちょっと泣ける。
この本が面白かったら、ついでに落語を字で読むというのはいかがでしょう。
もちろん落語は目で楽しみ耳で楽しむものですが、読んでも楽しめます。江戸時代が舞台なのでちょっとわからない単語もあったりするかもしれませんが、わからない単語があっても当てずっぽうに読んでればだいたい大丈夫。どうしても意味がわからないと通じないキーワードは今の時代パソコンで検索すればすぐですからね。
宮田珠己「ジェットコースターにもほどがある」「だいたい四国八十八ヶ所」他
わたしが現時点で一番笑えるエッセイストが宮田珠己です。宮田珠己については、前に記事も書きました。詳しくはそちらをお読みください。
全部だいたい面白い。脱力系ヘンなヤツ。でもこの人、意外に(失礼)相当本を読んでいるんですよね。読書量に裏打ちされたユル系です。
赤瀬川源平「新解さんの謎」
これもひと頃、けっこうはやった本でした。
辞書というのは単に辞書であって、無味乾燥、読んでも面白くも何ともない……というのが一般的なイメージでしょうが、実はそんなイメージの陰に「謎の男」が隠れていた!という趣旨の本です。
新解さんというのは、=新明解国語辞典の編集者へ赤瀬川さんがつけたあだ名です。三省堂発行の国語辞典ですね。
実は辞書というのは無味乾燥のようで、定義づけや例文に編集者の体臭が現れます。その体臭を薄めよう薄めようとする方向にいくのが普通ですが、新明解国語辞典はその体臭のまま出ているのがミソ。
赤瀬川さん曰く「攻めの辞書」。
例文を選び方ひとつとっても、「なんでこの単語の例文でこれ?」というものが選ばれていたりして、なんだか一筋縄ではいかない男の存在が見え隠れします。
その一筋縄でいかない男の存在を浮き彫りにする赤瀬川さんの慧眼。……とはいえ、赤瀬川さんの文章はかなりのほほんとして、そのツッコミもほのぼのとしたものなのです。
笑える本。
5冊あげてみましたが、5冊中2冊が話芸(ラジオ・落語)であり、1冊が書く方の人だけれどもテレビにも出る女優・タレントの共著、そして残りの2冊も口語的なエッセイであることに我ながら意外な思いをしました。
あー、笑えるとなると話しことばの方がとっつきやすいのかも。
実際のところは書き言葉で爆笑するエッセイもいくつも読んだとは思いますが、手に取りやすいという意味では、口語的なものが気軽かな。……あまりにも気軽すぎて、これを書くにあたってはつい読みふけってしまって時間がかかりました。
面白そうだなと思うものがあったらぜひ手に取ってみてください。
きっと楽しめると思います。
関連記事