ホテルは14:00に着いたけれどもすぐに部屋に入らせてくれ、しかし10分後にはもう出かける。
この日は興福寺と東大寺に行くつもりでいた。
ホテルは興福寺直近で、最大のメリットはそこかと思って決めたロケーション。
興福寺まで300メートルくらいだろうか。ホテルの玄関を出れば興福寺の五重の塔が見える。
猿沢の池から一枚。

うんうん、五重の塔だねえ。興福寺だねえ。奈良だねえ。
奈良と言えばまず、この風景なのではないか。
興福寺は藤原氏の氏寺で、昔はそれはそれは広大な寺域を誇ったはずなのだが……
今はまあ、広いは広いけど普通の広さ。東大寺や春日大社のようなだだっぴろさはない。そこそここじんまり。
……そしてそこには修学旅行生の集団が。ううっ。
まあ昔はわたしも修学旅行生だし、そもそも修学旅行生をこんなところに連れてきて
神妙に観仏をしろといっても、どだい無理な話ですよ。
だが、邪魔くさいことは邪魔くさいので、うへーとは思う。早く通り過ぎて下さい……。

五重の塔。

南円堂。

北円堂。

東金堂。なんか少し胴長の建物ですよね。
若干高いところから撮ってるせいかな。プロポーションに多少難あり。
ここは入場料を払って中の仏像を拝観する。
堂内撮影禁止なので、Wikiから転載。
ひとかたまりに並んでいるが、これらの仏像は制作年代がそれぞれ違う寄せ集め。
複数の仏像がある場合はだいたいそんなもん。三尊像とは別にして。
出来た当時の配置のまま残っているのなんて少数派。
その少数派の中に平泉の中尊寺金色堂なんかはあるけれども。
しかしあれこそ、仏像の配置的にけっこうな寄せ集めに見えるんだよなあ……。
ここの白眉は三尊の左右の日光菩薩、月光菩薩。
これは時代は飛鳥で、山田寺のために造られたらしいと書いてあった。
飛鳥仏は素朴でいいんですよね。いかにも生硬なところが魅力。
が、この日光月光は優雅さを兼ね備え、生硬という感じはしない。光背は後世の補作だろうけれども。
中尊は薬師如来で、室町時代だそうだ。室町時代の仏像といってもあまりイメージはないが、
だいぶ時代は下がるので、普通はもっとこちゃこちゃしていると思う。
しかしこの仏像にはおおらかさを感じた。制作者が古様を意識したのだろう。
興福寺でもう一ヶ所入場料を取るのは国宝館。
今出来の建物で、つい最近出来たものだと思っていたら、国宝館としてはもう1959年から存在してるんだそうだ。
ということは、わたしが来た20年前にも多分あったんだな。
だがリニューアルしたのは2010年。やっぱりつい最近ですね。
ここは国宝館の名に恥じず、ブツ多数。
いろいろいろいろあるうち、一番有名なのは阿修羅像。
だいぶ前に、ドキュメンタリーで誰かが「ずっと見てられる」と言っていたが、まさにしかり。
ずっと見ていられる天平彫刻。こういうのを独り占め出来るんだから贅沢な話だ。
一番長く見たのは五部浄像。
写真では正面から光を当てていて、眼もしっかり写っているが、国宝館の照明では、
眼が全く見えず、眼は黒い穴、虚空なんだよね。
そうなると見る者の印象はまるで違う。眼がない方がずっと良いです。
わたしはこの像の前で仁王立ちになり、彼が何を語っているのか知ろうとした。
――でもわからなかった。
ブツがいろいろいろいろいろいろいろあって、結局国宝館を出た時には16:15。
何しろ客が少ないので、仏像見放題なわけですよ。建物内にわたし一人しかいないんじゃないかと思った
時間帯もあった。なんと贅沢な時間であろう。
そう思うと貧乏性なゆえ、なかなか出られない。3往復くらいしてお気に入りの仏像の前をウロウロ。
良かったですねえ、山田寺の仏頭。完成されたライン。
良かったですねえ、運慶作、釈迦如来像頭部。腕白盛りの少年の風貌。
良かったですねえ、天燈鬼、龍燈鬼。ユーモラスでカワイくて。
どっぷりブツにはまって、ついでにミュージアムショップにもはまって、
お香を3種類と手ぬぐいを衝動買いする。うーむ。先が思いやられる。