イタリア/Italy:2010

4.夜の迷宮。

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空港の建物を出て、船着き場までは5分ちょっとだろうか。
船着き場に向かう人は少なめ。やはりバスの方が安くて早い分、王道なのだろう。

Pier near Marco Polo Airport.I went to Venice main island from here by boat.

船着き場。ここからヴェネツィア本島の中心、聖マルコ広場へ向かう。
所要時間1時間ちょっとの船の旅。

……という予定だったのだが。ここで予定に重大な亀裂が入る。
船の中でオナカが痛くなってきた。ストレス性の腹痛。うーん、困った。どうしよう。
目的地に着くまで1時間……。ちょっと無理かも……。

船のルートは以下の通り。
まずムラーノ島へ向かう。そこから本島の北側のフォンダメンタ・ヌオーヴェ(新運河通り)、
また本島を離れてリド島へ寄ってからわたしが降りる予定のサン・ザッカリアの船着き場。

わたしの内心の葛藤も知らずに船はやたらとゆっくりしか進まない。
もう少し早く進んでくれないか、とココロの中で嘆願しても速度が増すはずはなく。
それでも何とか船は、最初の停留所であるムラーノ島へ着いたらしい。
らしい、というのは船着き場にしては人影も店の灯りも何も見えないから。
……まだ20時ですよ?船着き場ですよ?
コンビニとは言わないが、店の一つや二つ、あるべきではないか。
だが外は真っ暗。うーむ、これはどうなんだ。

次で降りよう、と決断する。
次で降りれば、少なくともそこは本島内だからホテルへは歩いて行ける。
このまま乗っていてリドで降りる羽目になったら、島だけにどうしようもない。
リドもムラーノ島みたいに、船着き場近辺に何もないかもしれないし。

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降りた。

降りたはいいが、フォンダメンタ・ヌオーヴェの船着き場付近も
ムラーノ島と大同小異の人気の無さ。降りる人も少なく、みなさっさと目的地に散って行き、
あっという間に見えなくなる。わたしのような旅行者は一人もいない。
まあでも。ここからホテルまで、直線距離なら1キロ以下のはずだ。
上手く行けば20分くらいでホテルに着けるかもしれない。

適当に歩き始める。
とりあえず聖マルコ広場へ行けばホテルまでの道はわかるんだから、聖マルコ広場へ行けばいい。
ヴェネツィアは道がわかりにくいので有名なところだけれど、
本には「駅」「聖マルコ広場」「リアルト橋」という三箇所へ行く案内表示はあちこちに
出ていると書いてあったし。小さい島だし、大丈夫だろう。

歩き始めてちょっとしたら、ラッキーなことに開いているレストランに遭遇。
迷ったけどそこでトイレを借りました。
お店の人にはちょっと笑われたけど、快く許可してくれて有難かった。
なるほど、こういう時にチップというのは渡したくなるものなのだ、と実感する。
チップを渡そうとしたら「いや、いいよ」と言われたけど、受け取ってもらいました。

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夜のヴェネツィアは、霧。
同じような石造りの建物が夜の中にひっそりと立ち並ぶ。
静かな。誰もいない。細い道を。

……そんな中、わたしは赤いスーツケースを引きずって、石畳をガラガラと進むのだ!
とにかくこの方向に行けばヴェネツィアの中心を流れる運河に突き当たるだろう、と
進んでいくのだが、何しろ道が細くて見通しが全く利かない上に、案内表示も見当たらない。
くそーっ、わたしは一体どこにいるんだ。

最初から地図を見て歩けば良かったのか?
でも読んだ本には「地図は役に立たない町だから、案内表示を見て~云々」とか、
「町に迷いこむ、その感覚を楽しもう」とか書いてあって、
地図という選択肢が最初から、わたしの中からは消えていた。

フォンダメンタ・ヌオーヴェと聖マルコ広場の位置関係がわかりやすく載っている地図が
見当たらなかったので、ヴェネツィア全体の地図をリンクしておきます。
フォンダメンタ・ヌオーヴェが書いてないけど、わたしはPONTE DONA近辺の船着き場
(C-1)で降りて、聖マルコ広場(C-3)へ行きたかったわけ。
正確にはそのちょっと右側にあるサン・ザッカリア(SAN ZACCARIA)が
目的地なわけだけれども。

今、改めて見ても、フォンダメンタ・ヌオーヴェから聖マルコ広場まで地図を見ながら
行くのはきっと無理だったと思う。後日、本島内を地図を見ながら行動したが、
地図で見るより、実際の道の方が数倍難しかったし。
地図ではそれなりの道に見えるけど、だいたいの道が人がすれ違うのがやっとの細さなんですねー。
細さに臆せず歩いていくと、行き止まりになったりするし。

これは何に似ているかというと、……ミルフィーユですな。
ケーキのミルフィーユを横から見たところを想像して下さい。
それにちょっと力を加えて、ぐちゃっと崩してみて下さい。
ミルフィーユの薄い層、それが道。崩れているので通れなくなったりしている。
ヴェネツィアというのはそういう感じの町です。

多分7、8人に道を訊いたのではないだろうか。
みんな親切に教えてくれるが、「右へ行ってまっすぐ行って、左へ行って」という説明に従って
左へ行こうとすると、左への道が2つか3つあったりしてあんまり役に立たない。
ある本には「地元の人の後を付いて行けば必ずメジャーな場所に出る」と書いてあったけど、
そもそもほとんど人通りがなく、自宅へ帰る人の後を尾けるアヤシイ人になりそうになったりして
この戦法も上手くいかない。
途中まで一緒に歩いてくれた人もいたが、彼女の長い脚について行くのが大変苦労だった。

頼みの綱の案内表示も、――たまには見つかるんです。
最初に見つけた時は「よし、これに従って行けば聖マルコ広場」と安心したのだが、
その矢印に従っても……途中で案内が消える。
小広場にさしかかって、ここからどの道へ行けばいいねん?と思っても、
道は5つくらい集まっているし、表示はないし、どうしようもないではないですか。

7人目か8人目の人にサン・ザッカリア教会への道を訊き、
「あ、ここ行って左に曲がってすぐだよ」と言われた。
いかにも近そうに言われたけど、この頃になるとあんまり期待しなかった。
だって今までそういう風に説明されても実際辿りついてないんだもの!

そしたら今回は、ほんとにすぐで「ここを突きあたって左っつったな。すぐ正面だって言ったな」
とぶつぶつ言いながら進むと、ようやく目の前にでかい教会。

San Zaccaria church near my hotel.(I took this photo another day.)

サン・ザッカリア教会。(撮影は後日の昼間)

はー……。ようやく自分の位置がわかった。長かった。へとへと。
今から考えれば、この出来事が今回の山場(?)でした。
気分的には1時間以上さまよっていた感じなんだけど、メモを見ると30分くらいでしたね。

夜の霧の迷宮も雰囲気があって良かったけど、
あの状況でカメラを構えられるほど、肝っ玉が据わっておらず写真は撮れませんでした……

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