奈良/Nara:2014

7.聖林寺。

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談山神社からバスで降りてきて、聖林寺のバス停で下車。
行きも同じ道を通ったので、ああ、きっとあの寺が聖林寺なんだろうなーと見当はついていた。
里を見下ろす山裾の寺。

なんかこの、バスを降りたあたりの雰囲気が良かった。

川とねー。段々田んぼがねー。
生活感というのか……人間の暮らしがあるなあ、という感じ。
バスの本数の少なさを考えると、普通の勤め人として実際に住むのは不便に感じるだろうが、
こういう里に住みたいというキモチにもふと駆られる。もう少し鄙びててもいい。
宝くじが当たったら里に住もう。(まあ今もけっこうな里に住んでますが)

聖林寺。

下から見上げると、まさに要害的なその立地に、こりゃいい立て籠もり場所だわと思ったが、
実際に戦場になったこともあったと、たしかどこかに書いてあった。うろおぼえだけど。

寺からの眺望も開けている。

右手遠景の美しい稜線が三輪山らしい。
左手遠景のひょっこりひょうたん島は実は箸墓古墳らしい。

そのせいか、こういうのぼりが立っていて、キャラクターの名前が「ひみこちゃん」なんだけれども、
……現段階でこういうキャラクターを作ってしまうと、北九州方面から異議申し立てがありませんか?
それともそろそろ畿内説優勢勝ちな感じ?

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下から見上げた時より、実際の敷地はだいぶ狭かった。
相当にこちゃこちゃした。不快なせせこましさではなく、大伽藍よりも身近に感じる寺。

本尊は子安延命地蔵菩薩。……ですが、まあこれはね。造型的にはね。
造型的観点と信仰的観点は違うからね。

聖林寺には何のために行くかというと、その十一面観音のため。
これはフェノロサが褒め、和辻哲郎が褒め、たしか白洲正子も相当に褒めている記憶のある、
大変な観音様。国宝ですよ。これは昔からずっと見てみたかった。
ヨカッタ、東京で開かれている国宝展に出張してなくて。

本堂横から伸びる、けっこう長い階段を登って行くと宝物庫があり、その中に十一面観音がある。
正直階段は渡り廊下なのでサムい。コンクリートなので足ツメタイ。
宝物庫はコンクリート作りなので、入口の鉄の扉ががっちりと締まりオッカナイ。

……まあ簡単に結論からいいますとね。

期待していたほどの出会いではなかった。
期待値が相当に高かったのは否めない。あまりに高い期待はいい出会いには結びつきにくい。
お見合い、合コン、全てにおいて。(←推定。)

いい仏さまだとは思うが、わたしにはそんなに語らなかった。
なんかボヤッとした感じ。そのボヤッが天平の大らかさと好意的に受けとるのか、弛緩と受け取るのか。
弛緩とまでは感じないが、あんまりピンとこなかった。

だがたった一人でこの仏像と向き合っている時間は非常に贅沢に感じた。
入口の扉の開け具合で仏像に当たる光の量も変わり、印象は変化する。
何度か開け方を変えて見た。が、扉をピッタリ閉めることは、コワくて出来なかった。
扉を閉めた途端、観音様がニタッと笑ったりしたらどうする。

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