この頃になるとようやく晴れて来た。光が水面に反射してまぶしい。
……結局、この時が唯一の貴重な晴れ間だったのだが、この時点ではそんなこと知らない。

Zattere area.
ザッテレ河岸。
ザッテレ河岸はレニエが偏愛し、自らも住んだ辺りらしい。
今回イタリアに来るにあたって読んだ本の中に矢島翠という人の「ヴェネツィア暮し」
という本もあって、これがなかなか良かった。彼女もこの辺りに住んでいたそうだ。
この地区の東の端は昔、税関だったところ。
ここからの眺めはヴェネツィアならではと感じさせる。

S.Giorgio Maggiore from punta della Dogana.
サン・ジョルジョ・マッジョーレ教会。

The bell tower in S.Marco squere.
聖マルコ広場の鐘楼。
旧税関の前のスペース(広場ともいえず、空き地とも言えない空間……)に
現代彫刻が置いてある。等身大以上の大きさで、目の高さに魚をぶら下げた真っ白い少年。
これはどーなんでしょーね。周りとのミスマッチが面白くないこともないが……
微妙な気がする。わざわざここに置かなくても。置くのなら、もう少し別なものがありそうな。
ちなみに夜に行くと、この少年は鍵をかけられたガラスの箱に入っている。
まあ、夜な夜な歩きまわられても困りますしね。
そこから折り返して、今度は北側の岸をアカデミア美術館方向に戻ると、
すぐにサンタマリア・デッラ・サルーテ教会が見えて来る。

S.Maria della Salute.So beautiful archtecture.
美しい教会でしょう?
ここは、過去ヴェネツィアに来る度に行ってみたいと思いながら今まで来られなかった場所。
聖マルコ広場のすぐ対岸にあって、大変目を惹く美しい教会なんだけれども、
歩いて行こうと思えば橋を渡って1キロくらい歩かなければならないし、
船だと1つか2つ目の停留所だが、あまりに近すぎてそこを目当てに行こうという流れにならず。
今回やっと入れる運びに……
……え?入場不可?……12時から15時まで休み?
今12時半ですがな。どうせーっちゅうねん。
教会前の石段に座り込む。よくよくわたしはこの教会に縁がないらしい。
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座り込んでいるのは、入れずにがっかりしたということもあるが、
それよりさらに重大な問題が発生しているからだった。
腰が痛い。ぐきぐきしている。
……これは昨晩の迷宮体験のせいだと思われる。スーツケースを引っ張る体勢は
どうしても腰が変な風にひねられるし、いかに荷物が少なめとはいえスーツケース自体も重い。
さらにヴェネツィアの橋は、下を頻繁に船が通る都合上、みんな階段を上って降りる太鼓橋型。
道と同じ高さの橋はほぼ皆無。そこを速足でスーツケースを引っ張り上げ、
ガラガラガッシャンと(下りは重力に任せるのですごい音がする)下って通るのだから、
そりゃ腰にも響きますわ。
1日目からこんな腰でこの旅行を乗りきれるのだろうか。
しかしここにずっと座り込んでいるわけにも行かないので、ぎっくり腰にならないように
そろそろと立ちあがる。それこそ対岸の聖マルコ広場に船で戻ってホテルで休むという
選択肢もあったのだが、このヴァポレットが、市民の足のわりにかなり高いんですよねえ。
1回6.5ユーロ(≒780円)。他に12時間券とか24時間券とか、
だんだん割安になるチケットもあるんだけど、翌日島へ渡ろうとしていたので、
この時点でチケットを買う気はなかった。
とりあえず歩いてホテルまで帰ることにする。来る時に見たお土産屋さんにも寄りたいし。
結果的に、この時歩いて帰ったのが吉と出る。
それは何故かというと……