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◎モネ三兄弟と名づけよう。――美術を楽しく見るためには、好きなジャンルと出会うのが大切。西洋美術・印象派。

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「睡蓮」の頃のモネを基準とするなら、初期のモネはそれよりだいぶ細かく描いてます。わたしはこの頃の普通な絵が好き。普通の大きさで普通の距離で鑑賞出来る、かなり普通の絵画。おうちに飾りたい。

この普通な頃のモネに画風が似ている(と私が思う)画家が2人います。ピサロとシスレー。

ピサロやシスレーの存在を知らなかった頃は、てっきりモネだろうと思って近づいていって、作者名を確認すると外れて驚いていました。現在でも、似ている時代、似ている画題の絵は見分けがつきません。シスレーはちょっと毛色が違うのでそこまでではないのですが、でも時々見間違う。

わたしは勝手にモネ、ピサロ、シスレーをモネ三兄弟と読んでいます。当然血縁関係はありませんが。より細かく言えば、モネに対して弟であるピサロ、従弟くらいの間柄のシスレー。

 

カミーユ・ピサロ。

ピサロについて何か……と考えて、何も言えることがないことに気づく。モネについては本も出てるしテレビでもやるし、断片的にでもなんとなく知っていることはいくらかありますが、ピサロについて知ってることは?といわれると。

温和な人でみんなの調整役だったというのは覚えているが、それだけ。実年齢はモネよりも10歳ほど上で「印象派の長老」と呼ばれていたそうです。赤瀬川源平さんを思い出す。彼は路上観察学会の長老でした。

わたしはピサロはお金持ちで、売れる前の仲間たちを支えていたと覚えていたのですが、それは大きな勘違いでした。どうもパトロン的な役割を果たした、カイユボットと間違えていたと思われる。ピサロは他の人たちと同じように、貧乏だったようですね。

わたしはピサロが好き。絵だけを単純に比べればモネよりもピサロの方に好きな絵が多いかもしれない。画業の広がりはモネの方が大きいけれども、ピサロの絵は色合いが優しくて、筆致も細かくて丁寧。律義な人柄を感じさせる。

ピサロ「果樹園」

Camille Pissarro, Le verger (The Orchard), 1872.jpg

第1回印象派展に出品された作品。だいぶ薄い絵ですが、一見モネっぽく見えると思う。

ピサロ「マチュランの庭、ポントワーズ」

Camille Pissarro - Le Jardin des Mathurins, Pontoise, propriete des dames Deraismes, 1876 - Nelson-Atkins Museum of Art - 448.jpg

色使いがモネに似ている。モネの方が大胆な塗り方をしたと思いますが。

ピサロ「部屋の窓からの眺め、エラニー」

Camille Pissarro - View from my Window, Eragny-sur-Epte (1888).jpg

ピサロは後年、新印象派である点描主義のスーラの影響を濃く受けたようです。スーラの方が30歳近く年下なことを考えれば、ここまで素直に追随するのはむしろ偉い気がします。なかなかそこまで素直にはなれないものではないでしょうか。

ピサロは「偉大な」という言葉は使えないにしても、「見事な」追随者だったのではないかと思います。技法的にはモネやスーラ、コローの跡を追ったけれども、ピサロの絵には他の画家とはまた違った、温かさ、柔らかさがありました。

ピサロは大抵モネのついでに語られることが多くて、詳しく知ろうと思っても単独の本はすごく少ないみたい。とりあえず図書館にあって概観出来そうなのはこれですかね……


ピサロ:永遠の印象派 (「知の再発見」双書)

 

アルフレッド・シスレー。

ふーん。そうですか。シスレーってイギリス人なんですか。……知らなかったよ。考えてみればシスレーの人生って全然知りませんねえ……

ピサロほどではないけれども、シスレーもモネと似ている画家です。年齢はシスレーの方が1歳上。印象派的な絵を描いたのはモネとシスレーとどっちが早かったんだろう。モネかなー。どうかなー。

シスレー「ヴィルヌーヴ=ラ=ガランヌの橋」

Alfred Sisley 008.jpg

タイトルがわからないんですけど。多分フランス語を、こんな感じに読んで正しいと思います。ギャランヌ?すごくモネっぽいですよねー。見分けがつかない。

モネ「アルジャントゥイユの橋」

Pont Argenteuil Monet 1.jpg

色合いは若干違うけど、同じ橋の左と右を描いたと言われてもそれなりに納得しそうな空気感。といってもこの場合は橋の形が違うので違う場所。

キャンバスを並べて描くこともあったといいます。戸外制作は印象派が好きなスタイルだったし、天気のいい外で友達と同じものを描くというのは単純に楽しそうですね。

それが出来たのも印象派がスケッチ的に書く画風だったから。描くのにかかる時間が短かった。また、対象が風景の場合には、キャンバスを立てる場所をそれほど争わなくても良かったでしょう。これが肖像画だったりしたらベストポジションは限られますからなかなか一緒に描くということは出来なかったに違いない。

シスレー「積みわら」

Alfred Sisley 020.jpg

シスレーも積みわらを描いてますねー。絵になりやすい、光と影の表現を工夫しやすい、魅力的な画題なんだと思います。

モネ「積みわら」

Claude Monet - Graystaks I.JPG

モネの「積みわら」は多数ありますが、たとえばこれ。時刻もだいぶ違いますね。シスレーは穏やかな秋の午後、モネは日没前の光。

シスレー「モレの教会」

Alfred Sisley 038.jpg

これも見覚えがある気がしますねー。モネの「ルーアン大聖堂」を思わせる。でもシスレーの方は風景画の一環として教会の全体を描いているのに対して、モネは大聖堂の正面ファサードを懲りもせずに描き続けました。――考えてみるとモネって並外れて執念深いですね。

シスレー「サン・マメスの眺め」

Alfred Sisley - View of Saint-Mammes - Walters 37355.jpg

タイトルはちょっとアヤシイところです。

結局、こういう絵が好きだなあ。光と風を感じる、見ていると解放される、気持ちのいい絵が。これなんかはピサロなのかシスレーなのか、見分けるのは難しい。

 

血のつながりはありませんが。

絵を見るとなかなか似ている3人。わたしの感覚では長男モネ、次男ピサロ、三男がシスレーですね。実年齢には関係なく。シスレーは三男というより従弟くらいの感じかな。ちょっと関係性が遠いというか。

モネと関連してピサロとシスレーの名前を知っておくと、「あれ?モネじゃないの?」と思った時にいいかも。似ている絵を見てもやもやしてるとなかなか記憶に定着しないし。「モネかな?」と思って外れた場合、ピサロかシスレーかを確認してください。だんだんその兄弟感(?)が癖になります。

 

 

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