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◎印象派の前にドガがいたのを忘れていました……。――美術を楽しく見るためには、好きなジャンルと出会うのが大切。西洋美術・印象派前。

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マネがいて、モネがいて、モネに似ているモネの兄弟(嘘)のピサロとシスレーがいて、なぜかカイユボットをわざわざ取り上げ、スーラとシスレー、そしてルノワールまで来て、……大事な人を一人忘れていたことに気がつきました。

ドガ。

まあドガはドガですからねえ……。カイユボットにさえわざわざ立ち寄ったのに、ドガを素通りするわけにはいかない。わたしが素通りしても世界は変わらないだろうけど。

 

ドガです。

しかしわざわざ後戻りしても、わたしドガってあんまり好きじゃないんですよねー。なので言いたいことが特にない。

……画家はまず絵ですね。絵を見ましょう。

ドガ「エトワール」

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ドガといえば踊り子。バレエダンサー。

好きな絵というわけでは全然ない。強いていえばタイトルがちょっと好きなくらい。「エトワール」とはフランス語で「星」という意味。そこからプリマ・バレリーナ、そのバレエ団の主役を踊るような主要ダンサーという意味にもなりました。英語でもスター=星ですよね。

舞台上で踊るバレリーナ、その体のラインを美しく描いています。ライティングも舞台の照明をそのまま写したように見える。この絵ではそこまで感じませんが、ドガの踊り子の絵は総じて動きを感じさせる、躍動的な絵が多いです。これまでの絵画にはなかった視点。

印象派は光を瞬間的に捉えることを大切にしましたが、ドガは動きを追いました。戸外の光はドガには重要なものではなかったみたい。ドガは写真的な志向の画家といってもいいかもしれません。ドガが活躍した時代と、写真が発達した時代は大雑把にいえば同時代で、ドガも写真には興味を持っていたそうです。

この絵ではバレリーナ自体は可愛らしく描かれていますが、左上3分の1が、なんというか悪魔的ですよね……。舞台の脇幕がぐちゃぐちゃと描かれ、まるで地獄の洞窟のように見えます。そこに立つ男性はバレリーナのパトロン。顔が隠れていますが、ふてぶてしい視線を舞台上にそそいでいる気がする。

ドガ「アブサン」

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ドガは社会の影を描いた画家とも言われています。この作品のタイトル「アブサン」は、この頃流行ったアルコール度数の高い強いお酒。中毒性が高く、これでアルコール中毒がたくさん発生したそうです。

この女性が飲んでいるのもアブサンなのでしょう。肩を落とした力のない姿。酒におぼれて身を持ち崩しかけている女性の、人生を切り取った一場面。男性のごつい顔が恐ろしい。

が、これはたまたまカフェにいた客の姿を描いたものではなく、モデルを使って描いたものらしいです。モデルは友人の画家と女優。いわば架空の絵ですが、架空だと聞いて安心する、そんな絵です。……わざわざモデルを使って描くほど、現実にそういう状況があったということだけれど。

 

ドガは癖がある人物だったらしい……

どうもドガという人は、なかなかにつきあいにくい人だったようですね。関係各所で「対立した」「喧嘩した」という記述にぶつかります。

まず印象派内でいろいろな人と衝突したらしいんですよねー。印象派といっても単に仲良しグループというわけではなかった。いや、仲間意識も当然あったでしょうけれども、対世間ということで団結せざるを得なかった、という事情がある。利害関係がないわけでもない仲間たち。戦友というべきでしょうか。

印象派展は1874年の第1回印象派展が最初で、8回まで続きました。4回目くらいから、誰を参加させて誰を参加させないかで大モメ。ドガだけがわがままを言ったわけではないと思うけど、「主張するドガ、それに反対する○○(○○はその時によって違う)」というイメージです。

技法としては印象派ではないのに、ドガの出展回数は他の画家たちより多い。最大は8回とも出展した皆勤賞のピサロですが、7回のドガはそれに次ぐ。モネでさえ5回なのに。

印象派的技法を重視するかしないかは画家によって違いますし、だからこそ参加の顔ぶれで揉めるんですよね。重視しないドガは一方の旗頭になりがちだったということかもしれません。

 

あとドガのケンカで有名なのは、友人だったゾラとの絶交。ゾラは画家ではなく小説家・評論家で、印象派を評価した文章を書き彼らの活動を支えました。しかしある政治的な事件についての見解が対立し、絶交してしまったとか。

政治的な事件で絶交までするなんてどんなんや……と思いますが、このドレフュス事件は、当時世論を真っ二つに割るような注目を浴びた事件だったようです。詳細は知りませんが、読んでる本に時々出て来て、単なるスパイ事件じゃないなと思う。ユダヤ人に対する立場がからんだ、かなり社会的な影響を持つ大事件だったよう。のちのイスラエル建国にも繋がるとか。

ちなみに、ゾラはセザンヌの親友でもありました。ゾラとセザンヌの方もこれまた絶交したと思われていましたが(つまりゾラも穏やかな人格とはいいがたいかと……)、絶交後とされる時期に手紙のやりとりがあったことが近年発見され、仲が修復された可能性が高くなっているそうです。

 

見過ごすことは出来ない画家。

ドガは動きの画家。パステルでガシャガシャ描いた筆致でバレリーナのチュチュ、体の動きなどを上手く表現しています。デッサン力に優れている。たしかに体の動きは好きで描いてそう。風景画はほとんど描かず、彼の作品はほぼ人物画、とりわけ風俗画でした。

多作だったのであちこちの美術館、特別展でちょくちょく見かける画家です。デッサンのような作品も多いですが。覚えると再会が楽しくなるかもしれません。

 

 

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