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◎美術を楽しく見るためには、好きなジャンルと出会うのが大切。西洋美術・北方ルネサンス編。

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ルネサンス美術は主に2ヶ所で花開きました。
1ヶ所はイタリア。とりどりの花がぎっしり植えられた豪華な花壇のような華やかさ。西洋美術史上の最高峰という地位は揺らがない。(←amairo比)

ルネサンス美術がもう1ヶ所花開いたのはヨーロッパ、アルプス以北の地域です。中心は現在のオランダ、ベルギー、ドイツの辺り。イタリアとは違った、どちらかというと静止した印象のみっちりした絵が多い。癖が強い。

 

イタリア以外のルネサンス、「北方ルネサンス」。

北方ルネサンスを広い意味で使った場合、イタリア以外のすべてのヨーロッパ地域の芸術を指すそうなのですが、地域が広すぎるので、それで括るのはあまり意味がないかもしれません。

油絵の技法に関しては北方の方が進んでいたそうです。油絵の方が細かい描写が出来るらしいですが、わたしにはよくわかりません。この頃イタリアで多かったのは卵テンペラなんでしょうか。油絵は油で絵の具を溶くのに対して、卵テンペラは卵黄もしくは卵白で溶くそうです。カビが生えないのだろうかといつも思う……

代表的な画家は、

ヤン・ファン・エイク

ピーテル・ブリューゲル

ルーカス・クラナッハ

アルブレヒト・デューラー

など。

 

ヤン・ファン・エイク。

ヤン・ファン・エイクはダ・ヴィンチより50年ほど前の人。比較すると同時代のイタリアの画家たちよりも一歩進んだ感じがしますねー。遠近法もきっちりしているように見えますし。

わたしは、ヤン・ファン・エイクはベルギーのブルージュでひっそりと地味に活動していた画家だとばかり思っていたのですが、違ったようです。ブルゴーニュ公国の領主に大変気に入られて大金を支給されていたり、外交官としての役割も負っていたそう。絵の雰囲気からてっきり内向的な人だと思っていた。

ヤン・ファン・エイク「ファン・デル・パーレの聖母子」

La Madone au Chanoine Van der Paele.jpg
<a href="https://en.wikipedia.org/wiki/ja:%E3%83%A4%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%83%95%E3%82%A1%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%82%A8%E3%82%A4%E3%82%AF" class="extiw" title="w:ja:ヤン・ファン・エイク">ヤン・ファン・エイク</a> - <a rel="nofollow" class="external autonumber" href="http://fabienneverdier.com/db/video/la-vierge-du-chanoine-van-der-paele">[1]</a>
<a rel="nofollow" class="external text" href="https://zoeken.erfgoedbrugge.be/detail.php?id=942547763&amp;index=5&amp;cmvolgnummer=">Heritage Brugge</a>, パブリック・ドメイン, リンクによる

描かれているのは右側から、聖ゲオルギウス、白い服の人がこの絵の注文主、聖母子に聖ドナルトゥス。注文主を絵の中に描きこむということはよくあります。お金を出してくれる人は今も昔も大切。

というより、昔は注文されて、どのくらいの大きさでどのようなテーマの絵を、場合によっては使う絵具まで指定された上で請け負う、という職人ですから、そういう注文がないと絵が描けないという意味で今よりも大切。

注文主の顔は非常にリアルですね。まさにこういう顔の人だったんでしょう。ということは肖像画としての一面もあるわけですね。

ヤン・ファン・エイク「アルノルフィーニ夫妻の肖像」

Van Eyck - Arnolfini Portrait.jpg
<a href="https://en.wikipedia.org/wiki/ja:%E3%83%A4%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%83%95%E3%82%A1%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%82%A8%E3%82%A4%E3%82%AF" class="extiw" title="w:ja:ヤン・ファン・エイク">ヤン・ファン・エイク</a> - <a rel="nofollow" class="external text" href="http://www.nationalgallery.org.uk/paintings/jan-van-eyck-the-arnolfini-portrait">Web site of National Gallery, London</a>, パブリック・ドメイン, リンクによる

ヤン・ファン・エイクはこの1枚。美術の教科書にも載ってますね。

昔から、この男の人が帽子を取ったらどんな感じになるのか、気になって気になって……。黒い帽子のせいで髪が見えなくて、顔色もなまっちろく、まるで宇宙人のように見えるじゃないですか。

死神に連れて行かれるいたいけな乙女。という絵に見えるんだけど、タイトルからするとご夫婦の結婚の証明として、あるいは婚約式の様子を描いたものだそうです。

この絵で特筆すべき最大の点は、中央にある丸いもの――これは鏡だそうですが、この鏡に室内の様子が詳細に描かれていること。部屋の窓も、ベッドも。夫妻の後ろ姿も、夫妻を描いている画家自身の姿も。

壁には、シャンデリアと鏡の間に飾り文字で「ヤン・ファン・エイクここにありき」と書かれています。これをもって、この絵が結婚の証明をした絵で、結婚の立会人としてファン・エイクが署名をしたという意見もあるようです。真偽は現在は不明。

 

ブリューゲル一族。

ブリューゲル家は画家の一族でした。そういう芸術一家は、特に画家が職人だった時代には珍しくありませんが、ブリューゲル家が面倒なのは一族のうちに同名の親子がいるから。しかも2組……

ピーテル・ブリューゲル(父)
→ピーテル・ブリューゲル(子)
→その弟のヤン・ブリューゲル(父)
→その子のヤン・ブリューゲル(子)
→その子のアブラハム・ブリューゲル

このうち有名なのは、ピーテル・ブリューゲル(父)とヤン・ブリューゲル(父)です。単に「ブリューゲル」といった場合にはだいたいピーテル・ブリューゲル(父)。

ピーテル・ブリューゲル「ウィーン美術史美術館のバベルの塔(大バベル)」

Pieter Bruegel the Elder - The Tower of Babel (Vienna) - Google Art Project - edited.jpg
<a href="https://en.wikipedia.org/wiki/ja:%E3%83%94%E3%83%BC%E3%83%86%E3%83%AB%E3%83%BB%E3%83%96%E3%83%AA%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%82%B2%E3%83%AB" class="extiw" title="w:ja:ピーテル・ブリューゲル">ピーテル・ブリューゲル</a> - Levels adjusted from <a href="//commons.wikimedia.org/wiki/File:Pieter_Bruegel_the_Elder_-_The_Tower_of_Babel_(Vienna)_-_Google_Art_Project.jpg" title="File:Pieter Bruegel the Elder - The Tower of Babel (Vienna) - Google Art Project.jpg">File:Pieter_Bruegel_the_Elder_-_The_Tower_of_Babel_(Vienna)_-_Google_Art_Project.jpg</a>, originally from Google Art Project., パブリック・ドメイン, リンクによる

ピーテル・ブリューゲル「ロッテルダムのバベルの塔(小バベル)」

Pieter Bruegel the Elder - The Tower of Babel (Rotterdam) - Google Art Project.jpg
<a href="https://en.wikipedia.org/wiki/ja:%E3%83%94%E3%83%BC%E3%83%86%E3%83%AB%E3%83%BB%E3%83%96%E3%83%AA%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%82%B2%E3%83%AB" class="extiw" title="w:ja:ピーテル・ブリューゲル">ピーテル・ブリューゲル</a> - <a rel="nofollow" class="external text" href="//www.google.com/culturalinstitute/asset-viewer/hQEuBFxb3ZEcLw">hQEuBFxb3ZEcLw at Google Cultural Institute</a> maximum zoom level, パブリック・ドメイン, リンクによる

2枚のバベルの塔。大バベルと小バベルの区別は絵の大きさによるのですが、塔の大きさとしては逆なんですよね。

前に「小バベル」が来日した時、テレビ番組でこの絵を詳細に見ていく……という企画があって、細かく見ていくとこれがすごかった。人間の数!営みの数々!細かい部分は忘れましたが、滑車を使って材料を運ぶ表現もあれば、たしか洗濯物を干しているような部分もあって、その想像力と描く根気に驚きました。

実物を見てもここまで細かいところは見られないかもしれません。相当近づかないとわからないような細かさ。

バベルの塔は聖書に記述されており、人間の傲慢さを表す塔と言われていますが、聖書にはもちろん挿絵はありません。いろいろな塔の形が考えられるわけで……

ブリューゲルはローマのコロッセオの形を参考にして描いたそうです。形自体には誇張もあり、建築としてゆがんでいて、実際にこの建物は建てられないらしい。

ピーテル・ブリューゲル「雪中の狩人」

Pieter Bruegel d. A. 106b.jpg
<a href="https://en.wikipedia.org/wiki/ja:%E3%83%94%E3%83%BC%E3%83%86%E3%83%AB%E3%83%BB%E3%83%96%E3%83%AA%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%82%B2%E3%83%AB" class="extiw" title="w:ja:ピーテル・ブリューゲル">ピーテル・ブリューゲル</a> - <span lang="ja">不明</span>, パブリック・ドメイン, リンクによる

わたし自身はすごく好きな絵というわけではないけれども。でも改めて見るとこの風景画はすごいよねー。ついつい手前の人物とか氷の上の人物に目が行くけど、遠景がすてき。木の枝細かいよー。

イタリアで風景画が出て来るのは相当遅いんじゃないかなあ。「モナリザ」の背景に風景があったりするけどあくまで脇役だし。ブリューゲルは農民の絵もたくさん描きました。北方は風俗画が好きなんですよね。

この絵でも凍った池の上でいろいろな遊びが展開されています。アイスホッケーとかこま回しとか多分カーリングとか。また細かいわ。

 

ヤン・ブリューゲル(父)。

ピーテル・ブリューゲル(父)の次男がヤン・ブリューゲル(父)です。ややこしい。
ヤンは「花のブリューゲル」と言われた、花を得意とした画家。

ヤン・ブリューゲル「小さな壺の花束」

Jan Bruegel (I) - Bouquet of Flowers in a Ceramic Vase.jpg
<a href="https://en.wikipedia.org/wiki/ja:%E3%83%A4%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%83%96%E3%83%AA%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%82%B2%E3%83%AB_(%E7%88%B6)" class="extiw" title="w:ja:ヤン・ブリューゲル (父)">ヤン・ブリューゲル</a> - <a rel="nofollow" class="external text" href="http://www.khm.at/de/objektdb/detail/352">Kunsthistorisches Museum</a>, パブリック・ドメイン, リンクによる

色鮮やかな花の数々。単に花の絵というより、図鑑の絵のようですよね。空色のアイリスの花びらの質感が好きです。でも鮮やかすぎてちょっとこわい気もする。

ブリューゲル一族の画業は約150年ほど続くようです。ピーテル(父)はバベルの塔も描けば農民画、風刺画も描きましたが、長男のピーテル(子)は人気があった父の作品を模倣したものが多かったようです。アングルが微妙に違うのが面白い。その弟のヤンは父や兄よりも神話画などの貴族に好まれる絵が多かったみたい。そして花の絵の系譜は子や孫に引き継がれます。

そうなると、日本では狩野派みたいな感じなのかなあ。

 

ルーカス・クラナッハ(父)。

ドイツの画家。この人も親子して同じ名前……。

冷たい官能性と独特のプロポーションが特徴です。冷たい官能性という表現はマニエリスムでも使われますが、地域によって方向性がこれほど違うのだなあと。ブロンズィーノやパルミジャニーノが抽象性が強いのに対して、北方ルネサンスはなんというか、もっと匂いがする。体臭というか。

ルーカス・クラナッハ(父)「ヴィーナス」

Lucas Cranach d. A. 071.jpg
<a href="https://en.wikipedia.org/wiki/ja:%E3%83%AB%E3%83%BC%E3%82%AB%E3%82%B9%E3%83%BB%E3%82%AF%E3%83%A9%E3%83%8A%E3%83%83%E3%83%8F" class="extiw" title="w:ja:ルーカス・クラナッハ">ルーカス・クラナッハ</a> - The Yorck Project (<span style="white-space:nowrap">2002年</span>) 10.000 Meisterwerke der Malerei (DVD-ROM), distributed by <a href="//commons.wikimedia.org/wiki/Commons:10,000_paintings_from_Directmedia" title="Commons:10,000 paintings from Directmedia">DIRECTMEDIA</a> Publishing GmbH. <a href="https://ja.wikipedia.org/wiki/ISBN" class="extiw" title="ja:ISBN">ISBN</a>: <a href="//commons.wikimedia.org/wiki/Special:BookSources/3936122202" title="Special:BookSources/3936122202">3936122202</a>., パブリック・ドメイン, リンクによる

この雰囲気はいかにも北方ルネサンスという気がします。
タイトルは「ヴィーナス」だけど、女性の裸体像を描きたい時はだいたいヴィーナスとつけたものなんです。口実として。そうすれば自由に裸を描くことが出来た。そもそもローマ女神のヴィーナスが髪にこんなネットをつけているわけはないのです。

ルーカス・クラナッハ(父)「ユディト」

Lucas Cranach d.A. - Judith mit dem Haupt des Holofernes (Staatsgalerie Stuttgart).jpg
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けっこうコワイ絵?「ユディト」は旧約聖書の中の登場人物で、絵画の主題になることも多いです。男の首と美女が描かれていれば「ユディト」か「サロメ」。剣を持ってればたいてい「ユディト」。

ユディトは昔、ユダヤの国にいた美しい未亡人。町が敵に攻められた時、敵の将軍のところへ忍んでいって、祖国を裏切ったと見せかけてだまし、首を切り取って殺害し町を救ったという女英雄。

うん。コワイけどね。コワイところが魅力だったりするわけです。

ちなみにクラナッハは「ユディト」を主題とする絵を最低3枚は描いているようです……

そのうちの1枚はなんと2018年、日本の国立西洋美術館によって購入されました!
これは美術館、鼻高々ではないでしょうか。「やったぜ!」というところ。現時点では常設展に展示中。ちなみに国立西洋美術館では「ルカス・クラーナハ」という表記を採用しているようです。

この人、衣装がおしゃれかもしれないですね。当時の衣装なんだろうか?妙にモダンな気がするけど。

 

アルブレヒト・デューラー。

ドイツの巨匠といえばデューラー。版画家でもありました。数学者でもあったと書いてあったけど知らなかった。ほんと?
イタリアには何度も訪れたことがあり、当時の有名作家、ダ・ヴィンチやラファエロと親交を結んでいたそうです。

こんな自画像を描いたもんだから、わたしのなかで彼は完全にナルシシスト。

アルブレヒト・デューラー「自画像」

Albrecht Durer - Selbstbildnis im Pelzrock - Alte Pinakothek.jpg
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<a href="//commons.wikimedia.org/wiki/File:Self-portrait_by_Albrecht_D%C3%BCrer.jpg" class="image"></a>, パブリック・ドメイン, リンクによる

普通描きませんよ!自分をこんないい男には!
真正面から。こんなにアップで。理想化して。これは自分をキリストに模して描いているともっぱらのウワサです。わたしはどう考えてもそれは怖れ多いことだろうと思うのですが、そこを臆面もなく描いちゃう。自信家。しかもこの時代に。

自分をキリストになぞらえて描くことで、神と一体になるとか、深い信仰心を表すとか、いろいろな解釈があるようですが、普通に考えればナイですよね。やっぱり自分をキリストのような形式で描くのは傲慢だと思う。自信過剰のヤなヤツだと思うわー。知らんけれども。

アルブレヒト・デューラー「野うさぎ」

Durer Young Hare.jpg
アルブレヒト・デューラー, パブリック・ドメイン, リンクによる

かわいいのでこれも。とても写実的。うーん、この頃、動物をこんなに主役に据える絵は珍しい気がする。水彩だそうです。こういう風に身近なものを写実的に描いた絵は上手いかどうかはっきりわかりますね。

わたしはデューラーの絵をあまり見たことがありません。版画くらいしか。ドイツの美術館にたくさんあるのかな?ドイツの画家ですもんね。

 

おまけで、ハンス・ホルバイン。

この人もドイツの画家です。しかしイギリスで活動した期間が長かったせいか、イギリス絵画史上で取り上げられることが多い画家です。

この人はとても理知的な絵を描く。

ホルバイン「トマス・モアの肖像」

Hans Holbein d. J. 065.jpg
ハンス・ホルバイン, パブリック・ドメイン, リンクによる

肖像画に名作は数々ありますが、最高傑作の一つではないでしょうか。頭脳明晰、意志強固、誠実な人柄を感じさせます。こんな絵を見たら惚れるしかない。トマス・モアのこと、よく知りませんけれども。袖のビロード感がすごいですね。

イギリス国王・ヘンリー8世のお気に入りで、しかし後年、王の離婚について法律家として(カソリックの立場から)反対したことで不興を被り、斬首されてしまったそうです。ヘンリー8世横暴!……と単純に思うのは、きっとトマス・モアの絵がイケメンだからでしょう。これが面妖に描かれていたらあまり感じないに違いない。

ホルバインはヘンリー8世の肖像画を何枚も描いていますが、後に描いたはずのヘンリー8世の方が、画風としては古いように感じます。

ホルバイン「大使たち」

Hans Holbein the Younger - The Ambassadors - Google Art Project.jpg
<a href="https://en.wikipedia.org/wiki/ja:%E3%83%8F%E3%83%B3%E3%82%B9%E3%83%BB%E3%83%9B%E3%83%AB%E3%83%90%E3%82%A4%E3%83%B3" class="extiw" title="w:ja:ハンス・ホルバイン">ハンス・ホルバイン</a> - <a rel="nofollow" class="external text" href="//www.google.com/culturalinstitute/asset-viewer/bQEWbLB26MG1LA">bQEWbLB26MG1LA at Google Cultural Institute</a>, zoom level maximum, パブリック・ドメイン, リンクによる

この絵の面白いところは大使たちの足元に描かれている謎の図形。これ、なんだと思います?

これは頭蓋骨らしいんですねー。絵を正面から見ずにかなり横の方から見ると、こんな風に見えるらしい。

Holbein Skull.jpg
<a href="//commons.wikimedia.org/w/index.php?title=User:Opoterser&amp;action=edit&amp;redlink=1" class="new" title="User:Opoterser (page does not exist)">Thomas Shahan</a> - Hans Holbein's "The Ambassadors", パブリック・ドメイン, リンクによる

実際現地で見ても、こんな風にはっきりとは見えなかった気がするが……。こういうものは肉眼で見るよりもレンズを通した方がわかりやすいのかもしれません。

こんなところに頭蓋骨を描いたのは、西洋絵画でたまに描かれる「メメント・モリ」(=人はいつかは死んでしまうことを忘れるな)の象徴として、ですね。しかしこれをこのようなだまし絵のような方法で描いたことに興味を感じます。普通に棚の上に頭蓋骨をさりげなく描いておけばそれでよかったのに。

この絵はヘンリー8世の注文で描かれたそうですが、このアイディアを出したのは誰なんだろう。画家なんだろうか。モデルの遊び心なんだろうか。けっこう手間がかかったと思います。一見すると頭蓋骨に見えないようにまで極端化しているのだから余計。

 

北方ルネサンス。

北方ルネサンスの代表的な画家として、

ヤン・ファン・エイク

ピーテル・ブリューゲル

ルーカス・クラナッハ

アルブレヒト・デューラー

おまけでハンス・ホルバイン

の絵を見て来ました。時代も違えば地域も違うので、緊密な影響を与え合った一本の流れということではなく、それぞれがルネサンスをどう咀嚼したか、ということになりそうです。

北方ルネサンスもその気で見ればかなり面白い。特にオランダ・ベルギー地方にはこの後、バロック美術の花が咲きほこります。

 

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