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◎美術を楽しく見るためには、好きなジャンルと出会うのが大切。西洋美術・イギリスの絵画・イギリス絵画三人衆。

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イギリス絵画三人衆。(……と、わたしが勝手に呼んでいる)それはレイノルズ、ゲインズバラ、コンスタブルです。

とにかくレイノルズ、ゲインズバラはすごく似ています!同時期の人気肖像画家。たくさん肖像画を描いた2人。わたしはこの2人の絵を見ても区別がつかなくて……レイノルズかな?と思うとゲインズバラだし、ゲインズバラかな?と思うとレイノルズだし。

仕方ないので絵で区別するのは諦めて、とりあえず画家の経歴、立場だけさらっと押さえておくことにします。

 

多作家、レイノルズ。

レイノルズは全体的にはエリートっぽいイメージ。教師の息子として生まれ、画家としての修業後は文学者などとも積極的に交流したらしいです。イタリアへ3年ほど修行に赴くと、そこで古典美術、とりわけルネサンス美術を学び、帰国後はそれを活かしてたちまち人気画家になった。

年間の注文数が100人、150人といった人気だったそうです。それに伴って大規模な工房を構え、絵のほとんどは弟子が描き、大事なところだけをレイノルズが描きました。一枚当たりの値段もどんどん上がっていったとか。

イタリアで学んだレイノルズは、英国人が憧れる「絵画の本場イタリア」の香りを感じさせる絵を描きました。

今までずっと肖像画がメインで来たイギリス絵画ですが、そうならざるを得なかった理由は、絵の格として高い歴史画や神話画は国内の画家に頼まず、イタリアの画家の描いたものが好まれたからだそうです。舶来信仰。そのため、イギリス国内の画家はそれより格の低いとされる肖像画の注文しか来なかったと。

そういう傾向を踏まえて、レイノルズは神話的・歴史的イメージをつけた肖像画を描きました。これが好まれた。

レイノルズ「ケッペル司令官の肖像」

Captain the Honourable Augustus Keppel 1725-86 by Sir Joshua Reynolds.jpg

ケッペルはレイノルズがイタリアに行った時に乗った船の船長。帰国後おそらく最初に描いたのがこの肖像画で、これでレイノルズは評判が高くなったと言われています。

ケッペルのポーズや背景は劇的で、まるで歴史画のようです。古代ローマの有名な彫刻「ベルヴェベーレのアポロン像」のポーズの影響を受けているとも言われており、そんなことから似顔絵として軽く見られて来た肖像画が、知的な、格の高い絵画として扱われるようになったらしい。

のちにイギリスの王立美術院の初代会長にも選ばれたレイノルズは、肖像画の格を上げ、イギリス全体の画家の地位向上にも影響を与えました。

レイノルズ「無垢の時代」

The Age of Innocence - Reynolds.jpg

数多くの貴族の肖像画を描いたレイノルズ。しかし子供を描くとすごくかわいいんですよねえ……。

この絵は画家の晩年に描かれたもの。モデルは親族の子どもだという説があるので、注文されたものではなく画家の描きたい作品だったかもしれないと想像します。これは可愛い。描かずにはいられない可愛さだったのでしょう。

本当は風景画を描きたかった、ゲインズバラ。

ほぼ同じ時代に、同じく貴族階級を相手にした肖像画家だったのがトマス・ゲインズバラです。絵だけでは並べて見てもどっちがどっちかわからないのですが、画家として人間として、かなり対極なところにあったそうです。

まず、ゲインズバラは実は肖像画は好きではなかった。彼が本当に描きたかったのは風景画だったらしいです。

当時の風景画はまだその価値を認められてはいませんでした。現代の我々は人物画だろうと風景画だろうと、どちらが上で下でということもないのですが、歴史画より一段低く見られていた肖像画よりさらに低く見られていた風景画。ゲインズバラは「肖像画は金のために、風景画は自分のために描く」といっていたそうです。

しかしそんなことを言いながら描いた肖像画も素晴らしい。

また、大きな工房を構え、大事な所以外は弟子に描かせたというレイノルズと違って、ゲインズバラは最初から最後まで自分一人で描いたそうです。そう聞くと几帳面な真面目な人柄を想像しますが、どちらかというと陽気な、歯に衣着せぬ飾らない――粗野な――人だったようです。

ゲインズバラ「デヴォンシャー公爵夫人ジョージアナ」

Thomas Gainsborough Lady Georgiana Cavendish.jpg

わたしはこの時代の肖像画はあまり覚えてられませんが、この絵は好きですねー。

皮肉を帯びた目の輝きや口角の曲線に、一筋縄ではいかない女性の性格を感じます。このジョージアナという女性は社交界一番の美人ともてはやされました。しかし夫には自分の親友と不倫をされ、自分も不倫をし、賭け事に熱中し、政治活動も盛んに行なったという波乱万丈の女性。

「ある公爵夫人の生涯」という映画でジョージアナの生涯が描かれています。映画としてそれほど面白かったという印象ではないのですが、キーラ・ナイトレイがジョージアナを演じています。キーラ・ナイトレイは好き。


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ゲインズバラ「ヨハン・クリスティアン・バッハ」

Johann Christian Bach by Thomas Gainsborough.jpg

バッハと聞くとあのバッハか?と思いますが、あのバッハの末息子です。あのバッハはヨハン・セバスティアン・バッハ。

クリスティアンはロンドンで活躍した音楽家です。ドイツ人。やっぱりこの人もイギリスに長く滞在し活躍をしたそうです。ピアノ演奏家の草分けといっていい人らしい。モーツァルトと親交があり、手紙のやりとりの他、ロンドンやフランスで顔を合わせているらしいです。

この肖像画を見てつくづく思うのは、……サンドウィッチマンの富沢に似ている。

ゲインズバラ「イプスウィッチのホリウェルズパーク」

Holywells Park by Thomas Gainsborough.jpg

せっかくなのでゲインズバラの風景画も。タイトルのカタカナ読みがこれでいいのかどうかちょっと自信がありませんが。

イプスウィッチはゲインズバラが生まれた地方の都市。池の形を見ても、ここはおそらく人の手によって整えられた場所なのだと思います。イギリスの風景式庭園が成立したのはこの絵が描かれた時代の前後。

絵が実際の庭園に影響を与えたのか、庭園が画家に意欲を与えたのか……。今に至るまでイギリスの風景は美しい。

ソールズベリー大聖堂の画家、コンスタブル。

ジョン・コンスタブルは筋金入りの風景画家です。多少は他のジャンルも描いたかもしれないけど、基本的にはひたすらに風景画。

わたしが勝手にイギリス絵画三人衆と呼んでいる画家の中で、コンスタブルだけは50歳ほど年下です。それを三人衆とまとめてしまうのは問題がある。……問題がありますが、どうしてもわたしはコンスタブルとゲインズバラは繋がっているような気がするんですよね。まあ日本にも琳派という生きた時代も重ならない絵師の流れがあるのだから、いいでしょう。

レイノルズが肖像画を描きまくり、ゲインズバラが肖像画を描きつつも風景画を志向し、その流れの延長線上にコンスタブルがいるような気がします。一般的には、コンスタブルはむしろターナーとペアにするべきかもしれません。彼らはわずか1歳違い。しかしターナーは巨星すぎるのでコンスタブルとペアにするのはピンと来ない。

コンスタブルが生まれたのはサフォーク州。奇しくもゲインズバラと同じです。彼もまた、故郷の山河を愛し、風景画に力を注いだ人。この2人が同じ地域で身の回りの風景を描くことに打ち込んだのには理由があると思います。

少年時代を過ごしたスタウア川沿いがコンスタブルの主な画題。なかでも田舎家や教会が点在する風景を描くのが好きでした。なんということのない景色が、コンスタブルには何より創作意欲をかきたてるものだったのです。

同時代の画家、フランスのドラクロワはコンスタブルの絵を見て感動し、イギリスではわざわざコンスタブルに会いに来たとか。

コンスタブルの牧草地の緑色が優れているのは、それは数多くの異なった緑色から構成されているからだそうです。また、ひと塗ひと塗、細かく分割された塗り方をすることによって力強さと生気が出るとのこと。

コンスタブル「乾草車」

John Constable The Hay Wain.jpg

コンスタブルの一枚を選ぶのはなかなか難しい。みんな押しなべてきれい。ネット上の絵では緑色のきれいさがベストではないけどなー。

上記の「緑色」についての塗り方がちょっとわかるかなーという絵です。こういう細かい塗り方は後年、モネやピサロが大変丹念にやっているので、コンスタブルから学んだ、とかだったらちょっとうれしい。

コンスタブル「主教の庭から見たソールズベリー大聖堂」

John Constable 017.jpg

コンスタブルの絵といえばわたしは真っ先にソールズベリー大聖堂が浮かびます。本人も気に入ったモチーフだったらしく、ソールズベリー大聖堂を複数枚描いている。

イギリスの教会建築はいいですねー。フランス、イタリアと並んでたくさんの名教会があるところです。なお、ソールズベリーはロンドンから西に約120キロ、近くには有名な世界遺産であるストーンヘンジがあります。ロンドンからの1日観光で人気のコース。

私見ですが、ターナーがイギリス絵画史上最大の画家だとしても、一番イギリスらしい画家はコンスタブルかもしれないなあ。イギリスらしい牧草地を美しく描くという意味で。

 

レイノルズ、ゲインズバラ、コンスタブル。

イギリスらしいイギリスの画家――とわたしが感じる3人の画家を見てみました。
レイノルズとゲインズバラは肖像画という部分で繋がり、ゲインズバラとコンスタブルは風景画という部分で繋がっています。

3人とも西洋絵画史という意味では中央でスポットライトを浴びはしないけれども、イギリス絵画においてはこの3人が背骨ではないかと感じています。

なおゲインズバラとコンスタブルの間には、ウィリアム・ブレイクという画家であり詩人であった人もいまして……。時代順に見ていくなら当然、その間に入るはずなんですけれど、この人の絵はどこにも属さない――よく言えば独自性の高い、正直にいえばかなり変わった――孤高の画家なので、後に回しました。

だからといって一人で取り上げるほどの親しみはブレイクに感じず。仕方ないからターナーとカップリングでしょうか。全く関係ある気はしないんですけど。うん。やっぱり孤高の画家ですね。

 

 

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