旅あれこれ

◎美しいモザイクの町。黄金に輝くモザイクが見たくなったら、イタリア・ラヴェンナへ。

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イタリア旅行といえば、ローマ、フィレンツェ、ヴェネツィア、ミラノ。しかしその他にも魅力的な町がたくさんあります。
ラヴェンナもその一つ。小さいけれども歴史的建造物が数多く残る味わい深い町です。モザイクだらけの町で、モザイクの海に溺れてしまいそうです。せっかくなので溺れてしまいましょう!もちろん世界遺産です。

 

ラヴェンナの超簡単な歴史。

なぜイタリアの数ある都市の中でそれほど規模の大きくないラヴェンナに、これほど質が良いモザイクが大量に残っているのか。それは西暦402年に西ローマ帝国の首都になったことがきっかけです。

それまでもアドリア海の海港として栄えたラヴェンナでしたが、都となったことでさらに繁栄。公認されて約1世紀経ち、広まって来たキリスト教の美術がこの地で花開きます。その頃制作された教会建築とそこのモザイクがそのまま残り、現在も煌めく黄金の輝きを残しているわけですね。

これを日本で例えると、一時期都が置かれ仏教美術が花開き、現在でも名刹・古刹・名仏像が立ち並ぶ奈良に似た立ち位置かと思います。

西ローマ帝国の首都だった時代は短いですが、その後も東ゴート王国の首都になったり、東ローマ帝国のラヴェンナ総督府が置かれたり。しかしその後、法王領になりました。

どうもそうなった後で、法王が初代神聖ローマ帝国皇帝・カール大帝(在位768~814年)にご褒美として「ラヴェンナから好きなものを持って行っていいよ」と許可したことがあるらしく、カール大帝は持って行けるものは根こそぎ持って行ってしまったそうです。持って行くことの出来なかった大物だけが残っているのだとか。

カール大帝の首都だったドイツ・アーヘンにはラヴェンナから持って行ったレリーフや円柱などがだいぶあるはず。そういえばアーヘン大聖堂はサン・ヴィターレ聖堂に似た建物で、サン・ヴィターレ聖堂を参考にして作られたという説もあるほど。

その後ラヴェンナは中央舞台に出ることはなく、現在まで静かな地方都市の道を歩みます。その絢爛たる宝物を抱えたまま。

 

必見の見どころ6選。

こういった経緯で、ラヴェンナにはキリスト教のモザイクの大作が今に残ります。1日ではとても見切れないほど。観光には最低2日は必要だと思います。小さい町なので、必見6ヶ所のうち5ヶ所は徒歩圏内ですが、サンタポリナーレ・イン・クラッセ大聖堂だけはちょっと離れています。

サン・ヴィターレ聖堂

 

キリスト教の教会としては珍しい八角形。(←八角形の「洗礼堂」はそれほど珍しくない。)
外観は地味ですが、中に入るとまるで別世界。ぎっしりと壁面を埋めた金色のモザイクが出迎えてくれます。うわー、万華鏡の中に入ったみたい!自分がどこにいるのか、方向感覚がなくなるほど。

 

 

こういう絢爛豪華なデザインをビザンティン美術といいます。

ヴェネツィアでもこういう形式の、金色のモザイクが各所に見られます。トルコのアヤ・ソフィアなどの内部と共通するものがあるのは、ビザンティン美術の形式で建てられた建築をのちにモスクとして転用したから。

聖ヴィターレ聖堂には、世界で最も有名なモザイクと言っても過言ではない2つのモザイクがあります。それがこちら。

ユスティニアヌス帝と随身のモザイク

Meister von San Vitale in Ravenna 003.jpg

皇后テオドラと侍女たち

Theodora mosaik ravenna.jpg
パブリック・ドメイン, Link

 

上が「ユスティニアヌス帝と随身たち」、下が「皇后テオドラと侍女たち」。

この皇妃テオドラは踊り子だった人で、皇帝の甥であるユスティニアヌスが一目ぼれしたそうです。当時身分違いの結婚を禁ずる法律があったのにも関わらず、法を改正させてまで結婚したという究極の玉の輿。なかなかたくましく、市民の反乱の時に逃げ腰になった皇帝を叱咤激励し反乱を鎮圧させたという武勇伝を持つ人。

そういわれるとモザイクでも、皇妃テオドラの方がバイタリティがありそうに見えるなあ。

実際のモザイクは相当高いところに位置しているので残念ながら真正面からは見られません。双眼鏡など持って行くといいかも。

なおこのサン・ヴィターレ聖堂と国立博物館が隣接しており、国立博物館に先に入ると裏の方からいつの間にか聖堂内に入ってしまう可能性がありますので、サン・ヴィターレ聖堂から入ることをおすすめします。心の準備をした上であの華やかな内部空間と対面した方が感動出来ますから。

 

ガッラ・プラキディア廟

 

聖ヴィターレの敷地内にはやはりモザイクの名作として有名な、ガッラ・プラキディア廟があるはず……。しかし立て札を見ても、そこにあるのはちっちゃなちっちゃな、普通の家よりも小さく見える質素な建物。まさかこれが……有名なガッラ・プラキディア廟?

しかし入ってみて驚いた!
外観がとことん質素なのに、内部はモザイクがぎっしり。この外観と内部の落差。聖ヴィターレ聖堂もいい加減激しかったけど、こっちの方がもっと激しいわー。

 

ラヴェンナを代表するモザイクといえばこの天井かも。

ガッラ・プラキディア廟天井モザイク

ガッラ・プラキディア廟堂 天井モザイク

 

ヤグルマギクっぽいデザインな気がします。ラヴェンナといえばこれ。わたしはこのデザインのハンドミラーを自分用のお土産に買いました。
いろいろなパターンのモザイクを楽しめる場所です。花籠モチーフも好きだし、ラーメン丼模様みたいなのもありました。

ただし外から見た通り、内部は相当に狭いです。出来れば見学者は3人くらいで抑えておきたいところ。しかし狭いのが逆に良く働き、見事なモザイクを近くで見られます。内部はちょっと暗いので、写真を撮るのは難しい。よくキレイに撮れたな、上の写真の人……

ちなみにガッラ・プラキディアというのは5世紀頃の皇帝の娘で、その廟堂だと言われていますが、それが正しいかどうかは定かではないらしい。

 

サンタポリナーレ・ヌオヴォ聖堂。

 

ここも見事なモザイクがある場所で……って、改めて言わなくてもラヴェンナはどこもすごいモザイクだらけです。そしてここも地味な外観に反して、という聖堂。

 

Meister von San Apollinare Nuovo in Ravenna 002.jpg

 

左右の壁に聖者と聖女の大行進。ぎっしり。

これ、下からだとそこまで詳しく見えないのですが、一人一人細かく衣装の柄とか顔とか手に持っている冠のデザインとか細かく変えてるんですねー。どんだけ緻密な仕事かと。呆れます。呆れてどうするか。

 

こちらは東方三博士。下から見るとモザイクか?絵か?と悩むほどの細かさで。6世紀にこの仕事ぶり……。うーん、すごい。現代まで残っててありがたい。

モザイク全体に関しては宗派の違いから後世に改変された部分もあるそうです。そうですよねー、そういうこともありますよねー。オリジナルのままが一番尊いんじゃないかと思いつつも、目の前の異端を見過ごせないという当時の社会状況も想像出来る。

しかし現代社会においてバーミヤンの石仏が爆破されたりするのを見るのは辛すぎる。

サンタポリナーレ・イン・クラッセ聖堂

他の場所が全部ラヴェンナの中心部にあるのに対して、この聖堂だけは徒歩で行くにはちょっと離れています。ラヴェンナ駅から5キロくらい。わたしはバスで行ったのですが、特に難しくなかった気がします。実は帰りに中心部まで戻ってくる時に、降り時を間違えて道に迷ったのですが(汗)。見栄を張らずに運転手さんに「中心部に来たら降ろして」と最初をから伝えておくのがいいですね。

今地図を見ると鉄道でも行けそうですね。ラヴェンナの次の駅のクラッセ駅が最寄の様子。現地のツーリスト・インフォメーションでご確認ください。

ここも長方形の、空間的には大きく開けた建物。

 

 

内陣のモザイクが素晴らしいですね!ラヴェンナのモザイクの中で一番好きかも。なんといっても緑の草原がきれい。全体が金という構成より、緑の方が目に優しいということもあるのかな。

 

 

教会なので、テーマは中央の聖アポリナリスという聖人と、その聖人が教え導くべき衆生が羊として寓意的に描かれているわけですが、もう単に緑の丘に羊がのんびりと草を食むという風景画として見ていいんじゃないかと。日本人としてはそういう和む風景として見たくなりませんか。樹や石や花も可愛らしく描いてあるし、画面の中には鳥もちょこんと立っている。

天国の荘厳を描くモザイクがほとんどの中、のんびりした牧歌的な風景が描かれた稀有なテーマである気がする。ここ良かったなー。夕方で他に誰もおらず、この空間を独り占めしたことをなつかしく思い出します。

ネオニアーノ洗礼堂(大聖堂付属(正統派)洗礼堂)

 

ここの天井画がすごい。細かくて細かくてやっぱり絵なのかモザイクなのか悩みました。だってこれ5世紀の建築ですよ!日本は古墳時代で、ようやく「倭の五王」が中国の歴史書にちらっと登場するくらいの時代。その時代にこの構成力と技術力。緻密さ。
石で作っているのにこの滑らかさには驚嘆する。稚拙なところがどこにもない。

空いた空間がどこにもないので、日本人としては若干息苦しさを感じる。やはり多少の余白は欲しいというか……。さっきの緑の丘と羊の余白具合の方がほっとするわ。

大司教館付属博物館

ネオニアーノ洗礼堂のそばにちっちゃな博物館があって、ここのモザイクも小規模なものですがおすすめです。博物館としては法具などがあるささやかなところ。しかし大司教館付属の礼拝堂の天井アーチのモザイクが小規模ながら見事。十二使徒の人物を見て来たように描き分けている。根拠はないだろうに、ちゃんとキャラデザしている。

どこだかから移動してきたという1メートルくらいのパネルを目の前で見られるのも価値。オランスのポーズ(祈りのポーズ)を取って、……うん、ここまで近くから見るとさすがに石がごつごつしている。

必見は以上6ヶ所です。他にも、

アリアーニ洗礼堂、ダンテの墓、石のカーペットの家(ドムス・デイ・タッペーティ・ピエトラ)、国立博物館、テオドリック廟などがあります。こちらはお時間がある時にどうぞ。

アリアーニ洗礼堂、石のカーペットの家……時間があれば見るべき。
国立博物館、テオドリック廟、ダンテの墓……時間がある時だけで良さそう。

という優先順位です。

 

共通入場チケットがあるそうです。

代表的な観光地5ヶ所の共通チケットがあるそうです。しかし日本語で公式、あるいは公式に近いページが見当たりませんでした。なので英語ページで。

上記必見6ヶ所のうち、サンタポリナーレ・イン・クラッセ聖堂以外の5ヶ所が含まれています。
これで2019年時点では9.5ユーロらしい。

が、3月1日から6月15日まではガッラ・プラキディア廟に対して2ユーロ追加しますよと書いてあるようだ。これって、その期間以外なら9.5ユーロの共通チケットだけで入れるという意味だよね?
観光シーズンという意味では期間の設定が中途半端な気がして。不思議。

チケットの売り場は聖ヴィターレ聖堂の入口そばの様子です。わからなかったらツーリスト・インフォメーションでご確認をお願いします。

 

ラヴェンナへの行き方は?

ラヴェンナの位置は、イタリアを長靴にたとえるならば膝の裏。膝の裏のちょっと下です。

最寄の大都市がボローニャで、そこから電車で東へ約1時間20分くらいでラヴェンナに行けます。最寄空港もボローニャ。東京からボローニャ空港への経由便はありますが、現時点で調べたところ、往復の場合行きの飛行機の乗り継ぎのアクセスが今一つなので、ヴェネツィアINのボローニャOUT、あるいはフィレンツェINのボローニャOUTの日程の方が便利かもしれません。

わたしは鉄道に詳しくないですが、トレニタリア/Trenitalia(英語版)のサイトでちょっと調べたところ、

ボローニャ-ラヴェンナ間は1時間に1本、乗車時間1時間強、運賃1000円強というところでした。ご参考までに。

ローマからの場合は、ごく大雑把に言って

電車で7~8時間……ローマからアドリア海の方へ抜けてからアドリア海を北上のルート。多分普通列車・現時点のレートでは3000円強・乗り換え複数回。

電車で3時間半……内陸部のルート。ローマ-ボローニャ間は多分特急・8000円強・乗り換え多分1回。

という2方向のようです。目安としてお考え下さい。早期割引はネット購入のみの特典かな?窓口でも2日前までに買えば割引されるのかな?

窓口購入でも早期割引が適応されるなら、ローマで3日間観光してからラヴェンナへ移動という日程を組んで、まず電車のチケットを買うという方法も取れますね。ツーリスト・インフォメーションで訊いてみましょう。

電車に関してはこちらのサイトが参考になります。

イタリア鉄道(トレニタリア/Trenitalia)のチケット予約 徹底解説

これを見ると、早期割引がけっこうある様子。日本で電車のチケットを買って行くというのはなかなかハードルが高いのでやったことがありませんが、長距離を移動する際にはチャレンジしてみる価値はあるかもしれません。

 

ラヴェンナ。1泊2日の旅。

ラヴェンナは小さな町なので、必見6ヶ所を回るとしたら1泊2日がちょうどいいと思います。サンタポリナーレ・イン・クラッセだけ交通機関利用なので、まずはそこを優先的に行った方が他のところが回りやすくなるかもしれません。

わたしが自分で行った時に泊まったのは「ホテルチェントラーレバイロン」でした。ロケーションが抜群で、フロントの人も親切だったのを覚えています。またラヴェンナに来ることがあったらまたここに泊まる、と思えたホテルでした。お薦めです。



この町は散策するのに規模がちょうど良く、何度か同じ道を歩いているうちに町が自分のものになったような気がします。
宝物のようなモザイクが溢れるラヴェンナ。きっと記憶に残る町になると思います。

 

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