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葛飾北斎の「冨嶽三十六景」。ベスト5を選ぶとしたらどれ?

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葛飾北斎の一枚といえば、わたしにとっては「八方睨み鳳凰図」ですが、
やはり「冨嶽三十六景」も欠かせないですよね。

 

46枚の「冨嶽三十六景」。

「冨嶽三十六景」といいつつ、46枚あるそうですよ。
予定ではその名の通り36枚ひと揃えにするはずだったものを、
大好評なので10枚追加したらしい。

今、wikipediaを見たら、当初予定の36枚を「表富士」、追加されたものを
「裏富士」と呼ぶそうです。へー。初めて知った。

表富士は輪郭線が藍で、裏富士は墨で刷られているそうです。
うーん。パソコンで見てると判別に絶対の自信は持てませんが……
いくつかはっきりわかるのもありますね。墨で刷られているものは、
全体的にくっきりした印象が強い。

間違っているとあかんので作品名はあげません。
誰か親切な人が、どれが表富士でどれが裏富士かwikipediaに追加してくれない
ものだろうか……(←他力本願)

パソコン上でですが、今回せっかく46枚をつらつら見たので、
このなかからamairoが思うベスト5を選んでみたいと思います!

1位「神奈川沖浪裏」(かながわおきなみうら)

The Great Wave off Kanagawa.jpg
Unknown Japanese copyists Lua error in Module:Wikidata_label at line 37: Tried to read nil global capitalisation. - 投稿者自身による作品, パブリック・ドメイン, リンクによる

やっぱりどう考えてもこれ!

世の中には「見過ぎて飽きた」という名画も数多く、
実のところ「神奈川沖浪裏」もその類。
しかしじっと見ればやはりすごい絵だと思わずにはいられない。

構図と波頭。ですね。

とにかく目を引くのは大波。まるで海坊主のよう。
波頭を触手のように伸ばして、全てを海に飲み込もうとする。

激しい海とは対照的に、静寂を保つのは富士。
冷たいほどに冷静に存在している。
波頭の延長線にあり、この絵の焦点として機能している。
富士はこの絵には欠かせない。動かない。

 

それに対して動くかどうか検討したい気持ちになるのは以下の3点。

〇船は必要だったか?
〇人は豆でいいのか?
〇落款はこの位置でいいのか?

荒れてる海と遭難しそうな船、という画題は西洋画でもたまにありますよね。

ぱっと思いついたところでは
「メデューズ号の筏」、ターナーの「難破船」「海の漁師たち」……
他にもいろいろあるだろうけど。

でも「神奈川沖浪裏」は船を描いた絵じゃないんですよね。
主役はあくまで大波。

これ、船があるのとないのではどっちが良かったでしょうね?
船がないとのっぺりした画面になっちゃう?
近景のアクセントとしてあった方がいいだろうか。
でも波だけで構成するのもありだったように思う。

というのは、船に乗っている人があまりにも行儀よく並んでいるでしょう。
まるで豆。
この翻弄される船に乗っている人がえんどう豆でいいのかどうか、
えんどう豆のように行儀よく並べて描いた北斎の意図は?というのが
気になるところです。

船の上で「ひょえーっ」とか「ぎゃーっ」とか慌てているポーズは
ナシだっただろうか。そのポーズの方が自然といえば自然。
でもそうすると人が主役になっちゃうかな。

落款は、右上っていう手もあったのではないかと……
むしろその方が落ち着いたんじゃない?
右上の空間を取りたかったということなのか……

このうにょうにょな波頭が(ムーミンの)ニョロニョロを連想させてしょうがない。

 

つい先日テレビで見たんですけど、北斎のこの波頭は
彫刻師の「波の伊八」という人に取材したものである可能性があるらしい。
情報の精度は自信ないけど、北斎が伊八を訪ねたという記録があるとかないとか。

たしかに波の形は相当似ています。
伊八の作品を参考にしたと言われても納得出来る。

伊八は現在の鴨川市出身だそうだから、海の近くということだろうし、
彫刻師だったら、波を立体的にとらえ彫ろうと目をこらしたに違いない。
「波の伊八」がいることで、関西の彫師は関東に行って波を彫るな、と
いましめられたほどの存在だったとか。

波の伊八の波は、柴又帝釈天で見られます。

2位「凱風快晴」(がいふうかいせい)

Red Fuji southern wind clear morning.jpg
葛飾北斎 - http://visipix.dynalias.com/cgi-bin/view?s=5&userid=1025493065&q=red%20fuji&u=2&k=0&l=en&n=1, パブリック・ドメイン, リンクによる

2位がこれ、というのも動きませんでしょうねー。
これも「見飽きた」たぐいの絵ですが、
改めて見るとやっぱしみじみかっこいいんだよねー。

これはまず山と空の比率。これしかない、という分量。

あと山の頂上の位置が。この雪が残る範囲がばっちりやー。

山の稜線の角度も、ぱっと見だとちょっと急すぎるかなあと思うけど、
一枚でじーっと見るとキマッてますね。

雲の形が面白いよね。
日本画の伝統的な雲というと、フスマの絵でよく描いてあるシンプルなヤツ。
または筋斗雲のようなラーメン模様に近い中国っぽい形。
これはどちらでもありませんね。凱風快晴ならではの形かも。

木版画は一枚一枚刷るから板が磨滅するし、
いくら摺師が一流だとしても色合いは変化するだろうけど、
この赤がやっぱりいいですねえ……

3位「山下白雨」(さんかはくう)

Lightnings below the summit.jpg
葛飾北斎 - http://visipix.com/index.htm, パブリック・ドメイン, リンクによる

2位「凱風快晴」とアングルが似ているから並べちゃうのはちょっとアレですが、
3位は「山下白雨」だと思います。
「白雨」は、にわか雨。

しかしこの3枚を「三大役物」と呼んで区別するというのは今初めて知った。
この絵を「黒富士」と呼ぶのも初めて知った。

「凱風快晴」と比べると、富士山単体では「凱風快晴」が勝ち。

「山下白雨」はやっぱり右下の雷の表現ですねえ。
赤いから、最初溶岩?と思ったけど、雷だそうです。
雷をこう描きますか……。「神奈川沖浪裏」の波頭と同じくらいの独自表現ですね。

雲は筋斗雲型。うん、やっぱり見慣れた分、「凱風快晴」の方に軍配が上がるわ。

4位「甲州石班澤」(こうしゅうかじかさわ)

Kajikazawa in Kai province.jpg
葛飾北斎 - http://visipix.com/index.htm, パブリック・ドメイン, リンクによる

4位以下はほんとに人それぞれだと思います。

わたしは構図の大胆さでこれ。
なかなかこうは描けないと思うなー。人がど真ん中ですよ。
しかもこんな形の岩の上に立たせる。
青がきれいですね。

あっ!これは川なんですね!海だと思ってた!
舞台は山梨県富士川町で、モデルの場所の候補は複数あるそうです。

人物の手から伸びている線は鵜養?と思いますが、投網らしい。
網には見えてないけど、それは網だと線がごちゃごちゃしてうるさいからかもしれない。

2人目の人物は子どもとありますが、子どもですかね?
体の大きさ的には子どもですか。
まったく人物同士が断絶しているところに、いったいどういう意味があるのか……

5位「尾州不二見原」(びしゅうふじみがはら)

Fujimi Fuji view field in the Owari province.jpg
葛飾北斎 - http://visipix.com/index.htm, パブリック・ドメイン, リンクによる

わたしこれ、構図が好きなんですよねー。
どまんなかに真ん丸の樽を置いて。その丸の中に富士を置く。
こういうちょっと狙った構図が好み。

しかしもう少し見た目がいいおじさんでもいいかなあ、といつも思う。
ヒゲ、片方切れてない?もしかして彫師が切り落としちゃった?

舞台は名古屋市の富士見町。
富士見町という名前はついているが、実際にここから富士山は見えないそうな。
別の山のことを富士に見立てて(?)富士見町という名前がついているらしい。

同率5位「駿州江尻」(すんしゅうえじり)

Ejiri in the Suruga province.jpg
葛飾北斎 - http://visipix.com/index.htm, パブリック・ドメイン, リンクによる

同率5位ということで「駿州江尻」。

これはシチュエーションの面白さですね。

風に舞い上がっているのは何でしょう。
この紙、懐紙と書いてあるところがあったんですが、
懐紙にしてはサイズが大きいと感じられる。
遠近法は使っていないでしょうけれど、飛ばされた菅笠と大きさを比較しても。
印象的には瓦版とかの大きさに見える。

無数の葦の細さ。
これをほんとに彫ったんですかねえ。気が遠くなる。

 

46枚、全部はなかなか覚えられないけど。

今回6枚を選び出したことで、今まで名前を知らなかった3位以下の4枚も
タイトルを覚えようと思いました!

 

ちなみにこの滝の絵も面白いと思いませんか。

A Tour of the Waterfalls of the Provinces-Kisoji No Okuami Dagataki.jpg
毎日アート出版株式会社 - http://www.mainichi-art.co.jp/pages/arcadelinks/hokusai-taki/taki.html, パブリック・ドメイン, リンクによる

「木曽路ノ奥阿弥陀ケ滝」 (きそじのおくあみだがたき)。

これは「諸国滝巡り」というシリーズの一つだそうです。

……この滝の表現よ。
もっと普通の滝の絵もかけただろうが、こう描いちゃうんだもんなあ。
ちょっとセザンヌを思い出します。複数からの視点という意味で。

北斎をじっくり見ようとはなかなか思わなかったので、
パソコン上とはいえ一枚として見られたのはなかなか楽しかったです。
小布施の北斎館の他に、すみだ北斎美術館というのもあるようなので、
機会があったら行ってみたいと思います。

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