amairoの旅日記 西四国・南九州の巻/2019

28.高千穂神楽と刈干切唄。

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民宿に着くと、チェックインの時に「毎日20:00から高千穂神社で観光客向けのお神楽がありますよ」と教えてくれた。おお。それは良い情報。行ってみよう。

 

宿は高千穂峡のそば。目の前の山の手前が渓谷らしい。日当たりがばっちり良い部屋で、それゆえに暑い。エアコンフル稼働。

外出するまでの2時間、部屋でくつろぎつつ今日の晩ごはんと明日の観光の場所を練ります。晩ごはんねー。いろいろあるようだけど、車で行くとなると面倒だし……歩いて行けるところにしようと思い、「喫茶メルヘン」へ行くことに決めました。お神楽が20:00からとのことなので、それに合わせて宿を出ます。

19:05に着いたのですが、ちょうどわたしの前に3人組がオーダーしたところで、わたしもあまり考えずにうっかりカツカレーを頼んでしまい、出て来るまでに時間がかかりました。お店の人1人で、カツを揚げるところから始まるので。急いで食べ終わると、お店の方が「お神楽ですか?楽しんでください」とにっこり笑ってくれたのでうれしくなった。

高千穂神社まではすぐです。

 

 

夜だから写真はこれだけ。鳥居の根元にやたらと人懐こい猫がいて、撫でて撫でて~と言ってくる。しばらく撫でていたが、はっ!そんな場合ではない!と我に返り、神楽殿に急ぐ。

――梅雨のこんな時期にわざわざ高千穂あたりまで観光に来ているのはわたしだけかと思ったら、思ったよりはるかに大勢の人がいて面食らいました。その時点で7、80人くらいか。わたしのあとからもずいぶん入ったから、100人強の感じでしょうか。人数の見積もりは難しいけれども。

 

MCの人(笑)から、最初にお神楽について説明があります。穏やかでひょうきんな感じの方で、それだけでおもてなしをされている気分になりました。その後、その方が「去年から始めたばかりで練習が足りないんですけど……」と言いつつ、刈干切唄を歌いました。

 

刈干切唄。

この刈干切唄を聞いてわたしは涙が出ました。民謡にはあまり馴染みがなく、刈干切唄というタイトルも聞き取れずあとから受付の方に伺いました。これは高千穂地方独特の民謡ということなんでしょうか。

一音一音を息長く歌いきる、どっちかというとバラード系(?)の曲調。短調ではないけれども、どこか物悲しさと温かみが漂います。これは本職の歌手には出せない味だなあ……。夕暮れの残照を感じさせる。夕焼けのような唄です。もうこの歌だけでも来た甲斐があったと思った。

しかし刈干切唄は前座という位置づけ。ここからが高千穂神楽です。

 

高千穂神楽。

正式には夜を徹して33番を舞い納めるという高千穂夜神楽ですが、観光客のために毎日公開されているのは「高千穂神楽」です。演目は以下の4番。

手力雄(たぢからお)の舞
鈿女(うずめ)の舞
戸取(ととり)の舞
御神躰(ごしんたい)の舞・別名国生みの舞

いいとこ取り。

手力雄の舞。まだ天照大御神がどこにいるのかわからず考え中。いわば「志村!うしろ、うしろー!」。(←後ろに天岩戸がある)
動くものを撮るのは難しい……。ちょっとピントが。

 

 

鈿女の舞。背後の岩戸に籠る天照大御神を誘い出すための舞です。

 

戸取の舞。天岩戸を手力雄の神が怪力でこじ開けています。最初の手力雄の神は白い面だったけど、この時赤い面なのはおそらく気合が入っていることを表していると思われる。

手力雄の舞、鈿女の舞、戸取の舞は岩戸隠れ神話のストーリーの一連の流れですが、最後の御神躰の舞というのは別の話。イザナギ・イザナミの夫婦神が酒盛りのあと、だんだん酔っぱらっていい気分になり夫婦和合するという舞ですね。これはコミカルな舞。

 

酒を醸すところから。キスシーンがあったり、性交シーンがあったり「ちょっとエッチな舞です」とのことでした。観客から笑い声が上がります。特筆すべきは観客を巻き込む点。男神・女神がお互いに仲良くやっているうちはいいのですが、そのうちそれぞれが観客にちょっかいを出し始めます。

男神が女性客に抱きつき、女神がやきもちを焼く。そうかと思えば女神は女神で男性客にしなだれかかり……。今度は男神が「その男と離れろ!」と引き離します。
わりとこの部分、長くて激しかったですね(笑)。徹夜の夜神楽の場合はこの舞で観客・演者の目を覚まさせるという効果も狙っているそうですから。

観客に抱きついたりするところが面白いのですが、その写真は他の皆さんがいっぱい写っているので割愛。

約1時間のお神楽です。初穂料700円。初穂料を納めると「一夜氏子」という立場になります。

しかし毎日これをやるのは地元の方は大変でしょうねえ……。今、舞台にいるだけで6人。他に受付の方が3、4人。舞もなかなか長いので体力的にも厳しいでしょうし、生業の後に都合をつけるのもね。演者は複数人いらっしゃるでしょうが、毎日やるものとなると、1週間に2、3回くらいは当番が回ってくるのではないでしょうか。想像ですが。うーん、大変そう。

面白かった。いいものを見た。堪能しました。

高千穂町が、2017年の「高知城秋の夜のお城祭り」に参加した時の動画を見つけました。

(youtubeでのみ再生可能な縛りのある動画だったので、リンクしておきます。)

内容としては、わたしが見た高千穂神楽はこれとほぼ同じものです。うずめちゃんはいなかったけど。御神躰の舞は、わたしが見た時の方がだいぶはっちゃけてました。

後半に高千穂町から高知へ来た経路が語られているけれども、朝4:30にバスで高千穂を発って、臼杵から八幡浜へ渡り、そこから高速で来たんだって……。この時点で「こんばんは」と挨拶しているから、夜。着いたの何時だったんだろう。4:30に出発する必要があったということは相当ですよね……。

そしてゆるキャラであるうずめちゃんは、MCの方によると「皆さん信じていただけないかもしれませんが、うずめちゃんは朝4:30からこの恰好をしています」とのことで……。
ご苦労に泣けてきます(涙)。せめて着替えさせてあげて~。わたし自身が今回高知から愛媛、大分を回って高千穂に来ているから身につまされます……

 

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