今回福島市までの旅を実行した最大の理由は、福島県立美術館で「大阪市立美術館展 美をつくし」をやっていたから。
福島県立美術館で大阪市立美術館展?……一瞬わからなくなるかと思いますが、他の美術館の所蔵作品をまとめて借りて来て特別展というのはままあることです。海外の美術館の特別展をよく聞きますね。ルーブル美術館展とか大英博物館展とか。遠くへ行かなくてもいい作品が見られるチャンス。
仙台あたりだと良い日本画が見られるところがあんまりないんですよねー。宮城県美術館は元々現代アートをメインに収集していた美術館だし(近年はだいぶジャンルが広がりましたが、日本画はやはり少なめ)、頼みの綱の島川美術館はコロナ禍の影響か、閉館したままなかなか開けてくれないし。久々に日本画!楽しみ。
福島県立美術館。
この建物は美術館と図書館が繋がっている建築物で、福島県立美術館は左翼に位置し、右翼には福島県立図書館が入っている。このデザインは昔から好きだったんですよね。図書館の方の内部も木がメインで落ち着いていて、憧れだった。ウチの宮城県図書館といったらまったくもって……
まあ宮城県図書館の愚痴はヨイ。今回は図書館ではなく美術館。
メインホールはこんな感じです。
わたしはこのホールの雰囲気が好き。宮城県美術館の低くたれこめたような暗さよりも正直好き。神殿っぽいですよね。が、この空間を作ることで展示室スペースが減ることになるのではないかと昔から気になっている。
今回の展示会。
大阪市立美術館は……おやおや、現在改修休業中ですか。休業期間に収蔵作品を巡回してくれるのはいいね。開館中はどうしても目玉はそうそう外に出せないからね。
大阪市立美術館は住友財閥の住友家から敷地の寄贈を受けて建てられた美術館らしい。大阪の建造物は旦那衆がお金を出し合って建てたものが多い印象がありますね。商都という歴史を持つ土地柄を感じる。
混んでいない時を狙おうと思って15時の入りを目指していたんですが、それが15:30になった上に、そもそも思ったより入場者が少なかったのか、その時点でかなり空いていました。展示室一室に何人かしかいない。いいですねー。落ち着いて見られる。
が、今回の展示会は写真撮影可だったんですよ。近年増えましたね。これは大変ありがたいことなのだが、……しかし一面良くない点もありまして。写真を撮るのがメインになってしまって、実際に絵を見る比重が減ってしまう。絵に限らず、景色なんかでもそうですが、写真を撮ると安心してしまって実際に見ることがおろそかになる。
しばらく普通に見ていてこの弊害に気づいたので、最初に良さそうなものの写真を撮ってから、ゆっくりと見て行くことにしました。こういうことが出来るのも人がいなかったおかげ。この見方をすることで多少の改善は出来たが、やっぱりちょっと集中力が削がれます。5分立ち止まって絵を見るより、一枚の写真を撮った方が早い気がしちゃうんですよね。
でも写真は写真でしかないわけだし。どんな絵だったかというのはたしかに写真を見ればわかりますが、あとで写真を見て改めて鑑賞するのは無理。なので現地では出来る限り絵と向き合うことをお勧めします。それが難しいのが問題なわけだが。写真撮影可にはこういう弊害もあります。
その証拠に、写真を撮って来なかった作品のことはまったく覚えてない。……まあ、良さそうと思った作品を撮っているんだから当然といえば当然。
いいと思ったものは、
村山槐多「自画像」
児玉希望「枯野」
上村松園「晩秋」
鎌倉時代「銅製湯瓶」
など。他にもいろいろ気に入ったものがありました。どーん!という大作はなかったけれども(橋本関雪「唐犬」くらいか)、粒ぞろいだったので見ててだいたい楽しかった。最近実作を始めたので、一枚の絵の全体よりは細部が気になってしまった。今まで見ていたように全体を見る見方も忘れないようにしたい。
……とはいえ、時間がない。
しかし思い出して下さい。ここに着いたのは15:30だったんです。
そして展示品は粒ぞろい。写真を撮って、最初に戻って見て、……思ったよりも展示品数が多かったこともあって、時間はどんどんなくなっていく。
あ。特別展の他に常設展もあるんだった!
特別展を何とか見終わったことにしたのが16:45。常設展の展示室へ急ぐ。この時は広いホールがうらめしい。1階の特別展会場から2階の常設展まで遠いんだもの。
まあそれでもちゃちゃっと見終わって。前にも一度来たことがあるけど、常設展ってこんな小規模だっけ?まあ時間がないところで助かる。でも出ようとすると、入口の案内の人に声をかけられる。
「常設展はこの奥にもございまして、全部で4室……」
ふええ。ここだけじゃなかったのか!あと3室も!ほとんど走る感じで部屋の奥へ逆戻り。たしかに奥にも部屋が続いていて、作品が。
――見る余裕はありませんよ。単にその前を通りすぎただけ。何があったかは全く覚えていない。ワイエスの何かが最後の方にあったことしか。だが全体的にそんなにわたし好みのラインナップではなかったような気がするから、ある意味助かった。
常設展を出たところでほとんど17:00。1階へ降りて、ミュージアムショップが閉まっているのを多少残念に見やり、建物の外へ出る。やはり30分遅れて着いたのが敗因だ。まあ特別展は多少押し気味でありつつも満足出来るくらいは見たからそれほど心残りはない。でもあと30分あればもう少し余裕があっただろうけど。
建物の外へ出ると夕暮れの光が斜めから差し込み、しかしまだ暑さが残る。敷地内の広い芝生のところに犬とその飼い主が何組も集まっていて、ここは近所の犬たちのお散歩コースなんだろう。一頭の柴犬がこちらをじっと見ている。スマホを操作しながら立ち尽くしているわたしが不審なようだ。近づいて撫でたいけれど、コロナ禍では犬を撫でることも遠慮しなければならない。
それから30分ほど美術館と図書館の前の広場で座ってました。犬たちを見ながら。彼らは新しく到着した犬にじゃれついたり、帰ろうとした飼い主に、帰りたくない!と抵抗したりしている。可愛いね。
さて。ではそろそろ福島駅に戻ろうか。あとは早めの夜ご飯を食べて帰るだけ。
福島名物、餃子を食べる。
午前中、福島駅に着いた時に観光案内所で訊いたところ、餃子が名物だそうだ。正直餃子はわざわざお金を出して食べるほど好んではいないんだけど、せっかくだから食べてみましょう。観光案内所で「一人でも入りやすいですよ」とオススメされたのは駅構内の「餃子の照井」さん。
店内はなかなか混んでいました。早めにと思って18:00に入ったんですけどね。でもウェイティングリストに名前を書いて待とうとしたら、カウンターが一席空いていて、すぐに名前を呼ばれました。
うん。餃子だ。揚げ餃子ですね、多分これ。
観光案内所の人が言っていた通り、メニューにはラーメンもあり、餃子とラーメンだったらラーメンの方が好きなんだけど、そこは餃子を食べないと義理が悪いでしょう。せっかくあんなに元気よく「餃子です!」と教えてくれたのに。
当然メニューの一番上は餃子。円盤餃子と呼ばれるスタイルが基本で22個の餃子を丸く並べたものらしい。さすがに22個は食べないよ。その他に半分の11個の設定もあり、11個でチャレンジですね。どのくらいの大きさの餃子が出てくるかわからないから、ご飯、味噌汁セットはつけず。餃子のみでチャレンジします。
出て来た円盤餃子半分がこちら。730円。
うん。なかなか見た目のボリュームがいい。とはいえ、そこまで大量ではなく、大鳥城でお団子を食べた後の18:00のお腹で腹七分目くらい。福島名物餃子を食べたという満足感と共にお店を後にする。
福島のお土産たち。
そして今回の最終目的、福島名物のお土産を買います。ネットで「衝撃的に美味しかったもの」を見て、ぜひ食べたい!と思ったものがいくつかあったの。午前中の段階でどこに売っているか探しておいて、帰りの電車に乗る直前のこのタイミングでいくつもの店を廻ってたくさん買う。
○柏屋 薄皮まんじゅうの抹茶味
○柏屋 檸檬(←レモン味のチーズケーキタルト)
○かんのや ゆべし(季節限定の桜あん)
昼間に買った「花見山」という名前の桜あんのお団子もあるから計4つ。ちなみに写真はありません。
味の感想は、総合的に、
普通に美味しかった。
という感じですかな。みんな美味しかったです。衝撃までは感じなかったが買いたいものを買えて大変満足。
全てを堪能して、帰ります。
もう少し後の電車で帰ろうかと思っていましたが、買い物もちゃっちゃと出来たので、その時に乗れた一番早い電車に乗りました。
福島駅18:47発。
梁川駅乗り換え。やはり梁川駅までの阿武隈急行はベルベットのように滑らか。
19:20発。
槻木着20:08。阿武隈急行乗り終わり。東北本線乗り換え、20:16発。
長町駅、20:40着。
槻木駅-長町駅の電車代330円と、長町駅前に停めた駐車場、24時間700円を払って21:00帰着。
梁川駅くらいまではそれなりの乗客がいたけれども、梁川駅から槻木駅までの乗客はかなり少なく、車両に2、3人しかいない。
でもこの侘しさが旅情を生む。
日帰りの福島は「旅」でした。
日帰りで隣県に行く。実はそんなに心躍る体験にはならないんじゃないかと思っていましたが、実際にやってみるとこれは立派な「旅」でした。知らない土地を歩く心躍り。わたしの大好きなもの。いやー、行って良かった。
これには電車での移動が大いに貢献していると思います。やっぱり電車での移動はいいですね。だいたい片道2時間乗っていることになるわけですが、もっと乗っていてもいいくらい。退屈かもしれないけど、その退屈な時間が旅だと感じます。
そして福島駅周辺のぶらぶら歩きも楽しかったですね。文化通りがやはり心に残る……。もっと時間があったら他に行くべきところもあったはずなので、また行きたい気がしますね。美味しいスープの店にも出会えたしね。
大鳥城の時間のなさも、わたしの旅らしくていい。旅にはハプニングがあった方がいいでしょう。大鳥城本丸にいられた時間が短かったけど、ほかりと開いた空間は気持ちが良く。行って良かった。
「美をつくし」も良かったし。久々に特別展遠征で満足しました。……まあもうちょっと時間があったらね。ミュージアムショップを見たかった。最近飾ることを覚えたので買うことを解禁した、クリアファイルのいいのとかあったら欲しかった。
餃子を食べられたこと自体は満足だけれど、出来ればもう少しどストライクのB級グルメがあるとうれしい。わがままですか。お土産も買えてうれしかった。
総合的に大変満足でしたっ!
これで(計算が間違ってなければ)お土産代も含めて8500円でした。まあ普通にバスツアーの金額ですね。でもカスタマイズされてる分、とても満足度が高い。
近県日帰り、あるいは1泊ツアーなど今後も試みたいと思いました。大満足です。
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