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◎細密描写もゆる絵も!色鮮やかな伊藤若冲の世界。

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近年だんとつ人気の、若冲です。

伊藤若冲「群鶏図」

Museum of the Imperial Collections 001.jpg
伊藤若冲 - http://img134.imageshack.us/img134/8396/4021hc.jpg, パブリック・ドメイン, リンクによる

若冲といえばニワトリ。

その鮮やかな色彩と細密描写が大人気な画家。今や日本画といえば伊藤若冲!というほどの人気ではないでしょうか。

 

ブームのきっかけは、プライス・コレクション。

おそらく若冲の人気のきっかけはプライス・コレクションだと思います。根拠は、わたしがそうだから。

NHKで「神の手をもつ絵師 若冲」という番組を放映しました。初回放送は2001年。わたしが見たのは多分コレですね。再放送を見たのかもしれないけど。NHKはやはり美術系番組に強い。本気で作ると他局の追随を許さない。これはプライス・コレクションの佳品をじっくりと映す番組でした。

このオーナーのジョー・プライスさんが持ってる!すごくいいのを持ってる!きれいな絵ばっかり!

持つだけではなくて、この人は見る喜びを知っている、存分に享受している。コレクションをするだけではなく、何しろ自邸(豪邸)に日本美術鑑賞室まで作ってしまうくらいですから!

この日本美術鑑賞室の肝はというと、外光を障子ごしに取り入れて鑑賞出来るということ。(しかもただの障子ではなくて、モダンデザインに改造した障子型スクリーン。)こんなこと現代日本の一般人はなかなかできませんよ。だいたい美術館でガラスケースに入った絵を蛍光灯の明かりで見るんですから。

掛け軸物は床の間に飾ってあると遠いから、美術館で見る方がしっかり見られると思います。でも屏風の類はねー。特に金箔の屏風は光によって全然違うと思います。

想像でしかありませんが、金屏風は夜の灯明というか行燈というか、少ない光のなかで渋く光るのが一番美しいんじゃないかと思うんですよね。蛍光灯の下だと、しっかり見えるけど本来の意図からすればギラギラしすぎなんじゃないかなあ。

ジョー・プライスさんは自邸を心遠館となづけ――この名前は若冲の号、心遠館にちなんでいるらしい――およそ600点の日本絵画を集めました。

このおうちの浴室には、若冲の有名な作品「鳥獣花木図屏風」をタイル画にしたものがあるんですよねー。タイル画にぴったりの絵。日本の銭湯のペンキ絵(あの富士山とかのやつ)の流れもそこはかとなく感じさせ、ウマイ!

伊藤若冲名作ポストカードブック: 人気のプライスコレクションから24の名作が登場!

若冲は細密描写が魅力。

若冲の特徴は「顕微鏡で描いたのか!?」といいたい細かさ。

伊藤若冲「老松鳳凰図」

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By Ito Jakuchu - http://search.japantimes.co.jp/cgi-bin/fa20070531a1.html, Public Domain, Link

ネット上だとどこまで細かいところまで見られるかわかりませんが、羽毛の毛一本の線の確かさといったら。背景ではありますけれども、ツタの葉の表現もね。若冲は病葉を好んで取り入れるように思います。

この絵でよく言われることは「裏彩色」という技法を使っていること。日本画は絹に描くそうですが、この絵の鳳凰の白の部分にでは表に白を塗り、裏に黄土色を塗っているそうです。そうするとうっすら金色を帯びて見える。若冲オリジナルの技法というわけではありませんが、この絵ではとりわけ効果を発揮しています。

 

「動植綵絵」(どうしょくさいえ)、30幅。

その細密な絵がずらりと並んだ絵が「動植綵絵」シリーズ。若冲の代表作。これは若冲が30幅を1組として(その他に釈迦三尊図、3幅1組とともに)京都の相国寺に寄進したものです。

寄進してから100年以上経った廃仏毀釈の時、困窮した相国寺は「動植綵絵」を皇室に献上しました。それに対する下賜金1万円で、相国寺は冬の時代を乗り切ったそうです。若冲が相国寺を救ったんですね。

なので現在は皇室御物。皇室御物は門外不出で見られないのかな、とちょっと思いましたが、東京都美術館などで特別展をする際は貸し出してくれるようですね。今後も10年に1、2度くらいは見られるチャンスもありそう。

「群鶏図」も「老松鳳凰図」も「動植綵絵」のうちの絵です。他に、

伊藤若冲「群魚図」

'Fish' from the 'Colorful Realm of Living Beings' by Ito Jakuchu.jpg
伊藤若冲 - Impressions, Number 34, 2013, パブリック・ドメイン, リンクによる

全体的にユーモラスですが、タコの足の先にコダコがくっついてるのがものすごくかわいい!若冲はいったいどんな顔して描いたんだろうなーと思う。

魚たちもみんな目を見開いているのがおかしい。まさに「ギョギョギョ!」。……えー、この場合わたしは一体どの方面に向かって謝ればいいのでしょうか。
みんな揃ってどこに行くんだろうなあ。

伊藤若冲「池辺群虫図」

'Pond and Insects' from the 'Colorful Realm of Living Beings' by Ito Jakuchu.jpg
伊藤若冲 - Impressions, Number 34, 2013, パブリック・ドメイン, リンクによる

色彩は地味だけどよーく見るとなかなか可愛いです。蛙がほぼ同じ格好で横向いているのがかわいい。じーっと見て行くと一見したよりもずっと虫の種類が多くて、間違い探しのようになります。虫はちょっと苦手だが。

伊藤若冲「芦雁図」

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伊藤若冲 - Anthology of Fine-Arts, HIkarimura, Tokyo, Japan ACE1927-1929, パブリック・ドメイン, リンクによる

色使いが鮮やかで細密という若冲のイメージからは少し離れますが、これも「動植綵絵」のなかの一つ。日本画はリアリティを追求しないので、鳥は飛んでいるように見えないし魚は泳いでいるように見えませんが、構図の大胆さがあると思うなあ。この角度だと地面に頭をぶつけそうだが……

羽毛の端正さも、黒の美しさも。雪の表現も独特ですよね。……雪に若干、練乳感があって美味しそう。

 

ゆるい絵もあります。

凄絶なほど細密に、鮮やかに描く画家……という印象があると思います。でもゆる絵も描くんですよ、若冲は。

伊藤若冲「福禄寿図」

Ito Jakuchu, Japanese, Fukurojin (Fukurokuju), the God of Longevity and Wisdom, c. 1790, Japan, Edo period (1617?1868), Hanging scroll; ink and light colors on paper, Kimbell Art Museum.jpg
伊藤若冲 - Kimbell Art Museum, パブリック・ドメイン, リンクによる

ゆる絵の代表としてこれを挙げるのは少々物足りないが……。こういうタッチの絵も描くんですよね。

これ、ぱっと見は何が描いてあるのかわからないと思います。福禄寿は七福神の中の一人で、頭がすごく長い神様。この絵では真ん中の、でっかい「つ」の字が頭頂部です。「つ」の左に横顔が繋がり、手前の鶴が描いてある丸い三角形が袖。

日本画は本番一発勝負というところがコワイですね。この絵も顔の輪郭を一筆で描いているはず。この線を描くために何千本、何万本と線を描く練習をするんだろうなあ。

伊藤若冲のゆる絵の代表として挙げたいのは「果蔬涅槃図」ですが、ひっぱってこられる絵がないのでこちらへリンク。

果蔬というのは果物と野菜のこと。若冲の生家がもともと青物問屋(野菜・果物の卸)であることから、特に果物と野菜を取り上げたものだと思われます。こう見るとかわいいですよね。

涅槃図というのは、お釈迦様御臨終の時の絵。これは数限りなく描かれている画題です。たとえばこういうのがスタンダード。

Buddha's Nirvana.jpg
不明 - Koyasan Reihokan, パブリック・ドメイン, リンクによる

生きとし生けるもの全てがお釈迦様の死を悲しみ集まって来ます。通常だと弟子がとりまき、鳥獣がその外側を取り囲むという図柄ですが、若冲の絵ではみんな野菜になっています。大根がお釈迦さまですね。

現代の我々からするとユーモラスなパロディに見えてしまうような絵ですが、若冲はお寺との関係も深かったそうです。わたしは出家したイメージがあったんですけれども、在俗のままだったんですね。深い信仰心に基づいた絵だと思います。野菜たちを供養する意識もあったのかも。

 

若冲の絵が見られる場所。

これがけっこう難しいんです……。日本画が西洋画とくらべてだいぶ不利な点が、なかなかずーっと展示し続けることが出来ないこと。光に弱いんですよね。褪色しやすい。なので作品をローテーションで短期間で替えていきます。

「動植綵絵」は宮内庁三の丸尚蔵館が持っているはずですが……

皇室御物はいいものが揃っているのでしょうが、それでたくさん入場者数を稼いでお金を集めよう、という方向にはならないと思います。そのための人員もいないしね。なのでおそらく三の丸尚蔵館で若冲を大々的に見せるということは難しいし、恒常的に飾っておくかというとそれもなかなか難しいと思われます。

三の丸尚蔵館

ネット上の情報がとても乏しい……。とうていホームページといえる情報ではなく、残念な感じですねえ。

出光美術館

ジョー・プライスさんは収集品600点のうち、200点を2019年に出光美術館に売却したそうです。つい数か月前に知りました。これはけっこう驚いた。

この200点の質がどの程度のものなのかは現在未知数だけれども、小粒ばかりということでなければ、なかなか楽しいコレクションになるはずです。今後、出光美術館の目玉になるのではないでしょうか。

出光美術館にとってもこの購入は大変にうれしかったことのはずで、満を持して特別展を開催するはずだったのですが……。特別展は来年に延期になってしまいました。その特別展の後に、プライス・コレクションをどういった形で展示するのかは未知数ですね。少数にしろ、常設で展示するんじゃないかなーと予想はしますが……

出光美術館。

まだ、若冲を初めとするプライス・コレクションをサイトにはあげてない様子ですが、これが特別展開催以降にするつもりなのか、通常と違う状況のなかで人手が足りないということなのか。どうでしょう。

承天閣美術館

若冲と縁の深い、相国寺の敷地内にある美術館です。

ここには、おそらくいつでも見られる若冲があるんですよね。「葡萄図」と「月夜芭蕉図」。

……が、やっぱり若冲といえば細密!鮮やか!という絵が見たい。水墨画もいいけど、わたしのような一般人はもうちょっと派手な絵で驚きたい。

ここで、わたしは「動植綵絵」の特別展を見ました。といっても複写。コロタイプ印刷という手法での複写で、詳しくは知りませんがすごく精度の高い複写が出来るそうです。複写の30幅がずらりと並んだ展示室は壮観!複写とはいえ、今時の複写の技術は質が高いですからね!

この複写は承天閣美術館が持っているのかなあ。複写だったら通年展示になったりしないのかなあ。複写でもいいからいつでも若冲が見られる、しかも動植綵絵を、となれば相当に人が入りますよね。

細見美術館

こちらの美術館にも若冲作品があるようです。

細見美術館

若冲グッズが多いらしい。グッズにして映える絵なので、面白そうです。

ロサンゼルス・カウンティ美術館

プライス・コレクション600点のうち200点がロサンゼルス・カウンティ美術館に寄贈され、日本館の展示の中核をなしているそうです。これはだいぶ前の話ですね。この中に若冲が含まれているのかいないのか、ちょっとわかりませんが、ネット上でも顔ぶれは確認出来るようです。こういうのありがたいよね。

ロサンゼルス・カウンティ美術館、日本館の展示物。

美術館とは違いますが、縁の場所もあります。

石峰寺

火事で焼け出された若冲はいくつかの寺を転々とした後、京都の南、石峰寺に落ち着き、晩年をすごします。

石峰寺ホームページ。

ここには若冲がデザインした五百羅漢(石仏)が残っています。竹林のなかにひっそりとパラパラと埋まっています。

雰囲気のいいところ。わたしが伺ったのは夏なのですが「竹林の中は蚊がいるので、よろしかったら団扇をお持ちください」と言われました。蚊よけに団扇貸し出しをしているのは数あるお寺のなかでここだけだったかもしれません。

若冲のお墓もここにあります。縁の深い相国寺にもあるけど。

錦市場

若冲の生家の桝源があったのが錦市場。近年は錦市場をあげて若冲色に染まっているみたいです。

今まで一般的に若冲の人生は、

23歳の時に突然父が亡くなり、いやいや青物問屋を継いで40歳になるまで務めたが、弟が一本立ちできる年齢になるとさっさと家督を譲って隠居し、その後は絵画三昧に暮らした。

と言われていて、それが「奇想の画家」の伝説を補強したわけです。でも近年の発見によると、錦市場の存続をかけて役人と命がけで交渉したという史実があるらしく、今までの仙人のような若冲像とは違い、隠居後も積極的に公けの役割を果たす立場にいたようです。

錦市場は若冲と関係なくても観光名所としてにぎわう場所ですが、若冲の横断幕?が飾ってあって、楽しいです。

閉店後のシャッターにも若冲の絵が写してあるというから、それも見てみたい。が、閉店後ってことは店歩きが楽しめない時間帯ってことなんだよなあ。

 

若冲についての本。


目をみはる 伊藤若冲の『動植綵絵』 (アートセレクション)

わたしが持っているのはこれ。このシリーズはわたしが大好きなシリーズだったんですけれども、十数冊で終わってしまいましたね。もっと長く続いて欲しかったなあ。


別冊太陽227 若冲百図 (別冊太陽 日本のこころ 227)

安定と信頼の「別冊太陽」もおすすめ。

 


もっと知りたい伊藤若冲―生涯と作品 改訂版 (アート・ビギナーズ・コレクション)

アートビギナーズコレクションもサイズ感が良くておすすめ。初めの1冊として一番読みやすいかと思います。

やっぱり図版多数、きれいな本がいいですね。

 

まとめ。

伊藤若冲の絵は特徴的なので親しみやすいと思います。細密画とゆる絵、どちらも面白い。白黒の絵も、線がものすごくかっこいいですよ!

若冲については頻繁にテレビで特番を組みます。特にBSに多いので、興味があったらチェックしてみてください。

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