いろいろ徒然

◎「オスマン帝国外伝 ~愛と欲望のハレム~」日本で見られるトルコ発の歴史ドラマ。オスマン帝国の風俗がぎっしり!

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トルコは日本人にも人気の旅行先の一つですが、ドラマはあまりピンと来ないのではないでしょうか。実際にはトルコでのドラマ製作はとても盛んで、世界でも指折りのドラマ大国だそうです。知らなかった!

が、トルコのドラマはイスラム圏で放映されることが多く、今まであまり日本で見られるものはありませんでした。

 

「オスマン帝国外伝 ~愛と欲望のハレム~」は珍しく日本で見られるトルコドラマ。

わたし自身、「へー、トルコのドラマ?めずらしー」という気持ちだけで見始めたのですが、これがかなり面白かったです!


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それが人間だ。

ハレム(後宮)の話だから、ドロドロの愛憎劇なのかなーと思ったんですよね。「大奥」的な。そういうのちょっと苦手だけれど。

でも大奥的ジメジメ感というより、いわば肉食獣同士の争いといった感じでした。ハレムで女たちが相争う構図は変わらないものの、みんなシッカリしてるというか、強いというか、そう簡単には引き下がらない。とってもしたたか。

なので大奥や昼ドラのノリが苦手なわたしでも楽しめました。

特に主人公であるアレクサンドラ(のちのヒュッレム)の強さはすごい。こんな強い主人公見たことない。メンタルも強ければ我も強く、肉体的にもたくましそう。

陰で虐められてよよと泣き伏す、という人物はほとんどいなくて、やられたらやり返す、という強さがある。しかも図式的に対抗するばかりじゃなくて、ちゃんと理性と感情と打算の動きが納得出来るようになっている。なので幼稚という気はしない。

手を結ぶ、取引する、脅迫する、だます……そう。人間とはこういうもの。と納得出来る。誰もが善人ではなく、かといって悪人ではないんですよねー。

日本のドラマって主人公側が善、敵役が悪とはっきり分かれてることが多いですよね。でもこのドラマでは、みんな打算的。ちゃんと頭で考えて、自分の勢力を拡大するために動きます。また時には感情のままに動いて失敗する。

主人公のヒュッレム妃はアンチヒロイン?

たくさんの人々が登場するこのドラマの中で、主人公は、

アレクサンドラ(本来の名前)
→ヒュッレム(スレイマン大帝の寵姫になってから与えられた名前)

です。ストーリーのかなり最初の方でヒュッレムになります。

 

これがヒュッレムの肖像画として広まっているもの。ドラマではもっと豊満な気の強い美女。

 

物語は、故郷ルテニアからオスマン帝国の権力者に買われた、奴隷としてのヒュッレムがイスタンブールへ向かう船から始まります。

このヒュッレムの気性がとにかく激しい……
最初は死んだっていいと自暴自棄になっているから、まるで手負いの雌獅子みたい。あまりにも激しすぎて、なかなか共感出来ない。が、覚悟を決めて皇帝の寵姫になってやろうとしてからのヒュッレムはやり手。ほんとやり手。あの手この手を使います。

が、これがまたストーリーに躍動感を生んでいるのかなーと思います。ヒュッレムの一挙手一投足にハラハラする。「ああっ、またそんなバカなことをして……」とか、「ばれたらどうする!」とか、「こんな人がいたらほんとに迷惑だよなー」と思ったり。けっこうあくどいヒュッレムを見て、競争相手の妃に同情したり。

でも優しいところもあるし、スレイマンのことは(多分)心から愛してるし、子どもたちに対する愛は本物だし。立体的な人間として描かれている。

キャラクター全員の厚み。

それは他のキャラクターの描き方も同じで、みんなちゃんと人間なんですよね。感情的になる部分、それを理性で抑えようという部分、損得を考えて動く部分。これが丁寧に作られている。何人もの思惑が交錯する、その組合せはまるでパズルのよう。

ヒュッレムが出世していくに従って、周りの人々の態度がちょっとずつ微妙に変化するのも面白い。最初は新入りの側女(奴隷)として、宦官長や女官長に怒鳴りつけられていたのが、寵愛を受けるようになってかしずかれるようになり、そうかと思うと裏では昔に戻って「いい加減にしなさい!」と叱られたり。

その関係性の微妙さ。脚本うまいわー、とつくづく思います。

超大河ドラマです。

皇帝スレイマン1世とその寵姫というのは実際にいた歴史上の人物なので、(歴史上はヒュッレムではなくロクセラーナという名前で呼ばれるのが一般的)日本でいえば大河ドラマですね。

大河ドラマ45分×50回でも長いと思うのに、なんとこの話はシーズン4まで続くらしいです。しかも1シーズンの話数がすごい。

シーズン1 48話
シーズン2 79話
シーズン3 92話
シーズン4 80話~90話くらい?
(日本での放映話数。)

現地トルコでは1話90分~150分で作られたそうなので、日本ではそれをだいたい2話(時々3話)として放映しています。トルコってドラマが長いんですね。連続ドラマが150分ってすごいね!

オスマン帝国時代の風俗が楽しめます。

歴史ドラマの醍醐味の一つはその風俗の描き方です。このドラマはそこも大変丁寧!室内装飾も衣装も豪華絢爛で目を奪われます。衣装を見ているだけで満足出来るほど。オスマン帝国時代の宮殿の雰囲気など、このドラマを見なかったら永遠に知ることはなかったなー。

広大な宮殿だが、廊下が意外に狭い。部屋も意外にヒューマンサイズ。食事は床に座ってちゃぶ台のような感じで食べる。

わたしは側女ってお妃ではない性愛対象者で、もうちょっと大きな態度で生活していると思っていたんですけど、思ってたより立場は下だったみたい。

基本的には大部屋で寝起きして、たまたま皇帝のお手がついたら、ちょっとだけ重く扱われて個室をもらい、もっと寵愛されるようになったら妃として扱われる。

またその駆け引きの微妙さといったら……日本のドラマでここまで策謀を細やかに描くドラマはなかなかないのではないでしょうか。

美女揃い!

このドラマはほんと美女揃いです。

ヒュッレムは高慢で豊満な美女、
その敵役のマヒデブランは(最初のうちは)気高い正統派美女、
皇帝の妹のハティジェは可憐な美女、
皇帝の母も貫禄ある美女、
入れ替わり立ち替わりスポットが当たる側女たちも様々なタイプの美女を
取り揃え、ほんとに目の保養です~。

……それに対して男性は、美男揃いとまでは言えない。男性の主要キャラ2人、スレイマン1世と小姓頭のイブラヒムは、わりとおじさん。「トルコではこういうタイプが人気なのだろうか……」と若干疑問。

しかしスレイマン皇帝は味わい深い人物です。今ではかなり好きですねー。

トルコでは「歴史上の偉人であるスレイマン大帝を女のいいなりになる卑小な人物として描いている」という批判もあったようなのですが、わたしから見ると全く卑小な人物には見えず、常に皇帝の威厳を失わず、公正を心がけ、厳しく、優しく、母には敬愛を、ヒュッレムには情熱を。

大変度量の広い人物だと思う。むしろこんなに立派な皇帝がほんとにいたのかと思うレベル。

役者さんもうまいですねー。抑えた演技が求められる立場で、それで300回くらいのドラマをやっているわけですから。

役者のみなさん、表情の演技が巧みです。表情を読ませないということもハレムを駆け引きの大事な要素だったろうから。「その表情はいったいどういう意味なの!?」といいたいところで次回に続く。
くーっ。うまいなあ。

イスラム圏だから女優さんの扱いに何か特別なものがあるかな?という興味もあったのですが、そういうところは特に感じなかった。キスシーンも普通にありました。

律義にテロップを出してくれるので登場人物が多くても大丈夫。

あ、すごく大事なポイントとして、このドラマの大変にいいところは、必ず毎回、その人物の登場の際にテロップでちゃんと紹介がされるところです。登場人物がすごく多いドラマなので、これは地味にありがたい。

もともと馴染みがないイスラム圏の人の名前を覚えるって難しい。しかしこのドラマではちゃんと「皇帝妃 マヒデブラン」とか「皇太子 ムスタファ」「宦官長 スンビュル」とか律義に出し続けてくれるので忘れかけていた人も思い出せます。

これがあるのとないのとじゃ大違い。特に海外歴史物は、初回だけ出して2回目以降出ないことがあり、そうすると誰が誰だかわからなくなってしまいます。わからないまま見てもさっぱり面白くないので、結局見なくなってしまう。

全ての海外ものは、名前と立場を毎回出すようにするといいと思いますね。多分視聴率が若干変わるんじゃないかなー。

「オスマン帝国外伝」は面白いです。歴史ドラマとしても策謀ドラマとしても。

サブタイトルの「愛と欲望のハレム」、ちょっとこれ、良くないと思う。正しくは「愛と策謀のハレム」なのではないでしょうか。しかも愛は20%くらい、ほとんどが策謀。その策謀の駆け引きがギリギリのところで行われるので見ているこっちはハラハラするのです。「ああっ、早くしないと間に合わないよ!」と。

トルコ語なんて普段聞く機会がないけど、このドラマでたくさん聞きました。なので「アネ(ママ)」「ボバ(パパ)」「インギャール(陛下)」「バーディタ(母后)」「スルターナ(妃)」などの単語を覚えました。……ママ、パパはともかく、陛下、母后、妃などは今後の人生で使うことはないでしょうが。

なかなか見られないトルコのドラマでもありますし、歴史好き、美術セット好きなら見逃せないドラマです。こんな折に、ぜひどうぞ。

 

※追記

2020年4月28日からBS日テレ(141)で第3シリーズがスタートするそうです!

 

 

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