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◎一度は行くべき!大塚国際美術館。

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十数年前に初めてここの名前を聞いた時は「徳島県で国際ってどういうこと?」と思ったものだが(失礼)。行ってみたらたしかに国際でした。それも超ド級の国際。

世界中、どこを探したってこれほど名画が集まっている美術館はないでしょう。名画率100%。天下のルーブルだって負けませんよ!なんでもあります。ダ・ヴィンチもモネもドラクロワもラファエロも!

それはなぜかというと、大塚国際美術館というのは世界中の名画を陶板に写真印刷して展示してある美術館だから。

 

 

そこにあるのは複製画。だけれども。

ずっと行ってみたい美術館ではあったのですが、なかなか行けませんでした。何しろわたしの住んでいるところから徳島県はかなり行きにくい……。でもそんなことを言っていたら行かないままで人生が終わりそうだったので、「大塚国際美術館に行く!」ということをメインに旅行の計画を立てました。

でも一抹の不安が。だってあるのは複製画でしょ?

 

 

……という心配は杞憂ですよ!みなさん!

3240円という入場料は、美術館の入場料としてはもしかしたら世界の中でも相当に高い部類じゃないかと思いますが、絵を見るのが好きな人なら間違いなく楽しめる美術館です!やっぱりここはまる一日、見る予定を組むべきじゃないでしょうか。

美術館は、普通であれば長くても2時間くらいですが、ここは有名どころを拾って見るというような見方ではもったいない。というより、半分以上が有名どころなので、絞れって言われてもすごく困ります。

実際に行って思ったんですが、ここの美術館の楽しみ方には2種類あって、

1.見たいと思っていた作品のそっくりさんに会えるよろこび。

2.聞いたこともない作家の、好きになれる作品(のそっくりさん)に出会うよろこび。

この2つ、どちらも大きいのではないでしょうか。1はアコガレ、2はオドロキ。どちらも愉しい。ただ、1の場合はどこに何があるとわかっていて見に行くことが多いですが、2は予期せぬ出会い。大塚国際美術館は粒ぞろいなので、知らない画家のものでも面白いものが多いんですよね。出会いが期待できます。

 

陶板名画。

この美術館にあるのは陶板名画です。わたしが美術館のガイドツアーに参加して理解した限りでいうと、

名画を出来る限りの高精細カメラで撮影→それを陶板に転写→焼付→色合いの修正やたしか加筆→焼付→完成

という流れで作られます。

陶板にでこぼこがあることが多大な効果を生んでいる。これが立体感に繋がります。ぺらーっとした真っ平な板に絵を焼付るのではなく、凹凸のある陶板を選んだことが大成功!これで油絵的に見えるんです!

陶板のでこぼこのことを先に褒めてしまいましたが、第一の売りは現物の色の再現度です。写真も相当に気を使って撮っているし、吟味して出している色は技術として最も見て欲しいところだろうし。大塚オーミ陶業のいい仕事です。

ちなみに、大きな絵の場合の焼付はどうするのでしょう。これは定型の陶板に分割して焼き付けます。何十枚かの陶板が集まって1つの絵が出来上がります。この分割した線が気になるんじゃないかと心配したのですが、ほとんど気になりませんでした。

 

システィーナ礼拝堂、原寸大の展示方法。

大塚国際美術館の見どころは作品全部と、建物の作りと、そのコンセプト……といろいろあるのですが、それらを総合して一番わかりやすい部分は、バチカン・システィーナ礼拝堂の原寸大の展示だと思います。まずはここから。入り口から入ってすぐがこのシスティーナ礼拝堂ですので、見逃すことはないです。

しかし作るかねー。バチカンの大聖堂と比べれば全然小さいとはいえ、礼拝堂としては巨大なシスティーナ礼拝堂をね?ちなみにシスティーナ礼拝堂は横幅約41メートル、奥行き約13メートル、最高部の高さ21メートルという空間。わたしが大塚国際美術館に興味を持ったのも、ニュースでこのことを聞いたのがきっかけでした。あんな大きな礼拝堂と同じ大きさを作るって!どれだけ酔狂なんだ!

こちらが本物の画像。

こちらはミケランジェロ作「最後の審判」の反対側の壁を写した写真なので、大塚国際美術館にはない部分ですが……。大塚国際美術館にあるのは「天地創造」の天井画と、祭壇側の絵「最後の審判」。現地にはそれ以外にも横の壁に壁画があります。

よく作ったものです。作ろうとしたこと自体に感心する。というか、呆れる。

ちなみに大塚国際美術館のシスティーナ礼拝堂が本物に勝っている点があります。それは「天地創造」をベンチに寝転がって見られること。「天地創造」は天井画ですから、本物はずーっと上を見続けているのはなかなかつらい。でもシスティーナ・改では床にベンチが置いてあるので、混んでいる時じゃなければ寝っ転がって見られて楽。

 

これは壁の方の「最後の審判」ですが。

このシスティーナ・改では結婚式が執り行われたりもするそうです。後藤田議員と水野真紀、白鳳がそうだったですね。こないだの紅白では、ここから米津玄師が生中継をしたそうです。米津玄師は徳島県出身なのかー。

 

さて、どこから回るか。

巨大な大塚国際美術館。どこから回るか、というのは難しいモンダイです。何時間かけるかにもよるし。

一日かける予定だったわたしは、全部見るつもりで本館へ行きました。ちょっとわかりにくいんですが、本館は一棟のように見えるけれども、実は現代アート棟とテーマ展示棟に分かれています。なので、1階はまあ繋がっているといえるが、2階は繋がっていません。ここがちょっとわかりにくい。ホームページのフロアマップもけっこうわかりにくい。このあたりは、たとえば本館A棟とB棟なりなんなり、別に名前をつけておくべきところだと思います。

91室~100室のテーマ展示棟で面白かったのは「フェデリーコ・ダ・モンテフェルトロのストゥディオーロ」。これも室内再現でした。システィーナほど巨大じゃないので、この大きさなら同寸復元を試みるのもわかる。

テーマ展示棟は、たとえば「食卓の風景」や「家族」などといったテーマであちこちの時代から集めてきたアンサンブル。大塚国際美術館は基本は美術史の流れに沿った展示ですが、ここでは持っている数に物を言わせてテーマを揃えて自由に組み合わせています。これは贅沢。これでもか、というほど物を持っている美術館ならでは。

現代アート棟1,2階はピカソからジャガールからクレーから……もっと最近のアーティストまで多数。わたしの大嫌いなポロックとか。名前を全然知らない画家のものでも、楽しめるものがかなりありました。現代アート嫌いでも(←わたしだ)面白いと思います。

しかしここで見た絵は完全に「見た」と記憶されてしまいますね。本物感が半端ない……。そんなに微妙な色合いがわかる玄人でもなく、そしていかにも写真!というようなツルツル感もないので、本物を見たような気分になってしまう。そういう意味では大変に危険です。「これは偽物これは偽物これは偽物……」と呪文のように唱えていても効き目がなかった。

その後は基本的にB1・B2・B3と順番に見て行きました。あ、言い忘れましたが、大塚国際美術館は景観に配慮して地上部分は2階建て、地下3階、メインの展示部分は地下にあります。システィーナ・改は地下3階からの吹き抜け。まあ高さ21メートルの空間ですからね……(呆)

 

 

コース設定の注意点。

自分が行った時のスケジュールを具体的にお知らせした上で反省点を。

10:40 到着。(本当は9:30の開館と同時に行こうとしていた)

入場し、システィーナ・改を見た。そのタイミングでガイドツアーのスタートに行き会ったので、約1時間のガイドツアーに参加。かなりの駆け足で(←時々実際に走る)見て回る。ガイドさんは面白い人でした。「私のツアーはかなりハードなので、途中で無理だと思ったら離脱してください」と言っていました。無料。このガイドツアーの段階では写真は撮りませんでした。あとで全部見ようと思っていたし、落ち着いて撮れないから。

ツアー解散後、本館のテーマ展示棟、現代アート棟の1階2階を見て回る。

12:30 別館1階レストランにてそそくさと昼食。

13:00 一度大塚国際美術館を出て、徒歩で「うずしお汽船」へ向かい、観潮船へ乗り。

14:00 大塚国際美術館に再入場。入場チケットは再入館可です!

B1以降を見て回る。この間、「カフェ・ジヴェルニー」でお茶を2回。

17:00 大塚国際美術館出発。

 

まず、遅刻が良くないですね……。結果的に全部は当然ながら見られなかったので、やはり開館と同時に入るという当初の予定を厳守するべきでした。ただ、紅白の中継にも使われたし、開館時間は入場に時間がかかったりするかな?

ガイドツアーに参加したのはどっちかというと成功だったかと思います。ガイド自体が面白かったのもあるし、知識の少ない現代物についてはためになった。

が、このツアーに参加することで時間と体力が消費されたのも事実。自分で回るのにも体力と時間は必要だから、この辺りをどう考えるかですね。あ、ちなみにわたしの時の解散場所は本館の1階でした。なのでそこから自分の鑑賞を開始しやすかったです。

本館を見終わって昼食、というのはタイミングとしてはぴったりだったと思う。

問題はこの後。鳴門の渦潮を見に行きます。観潮船は大塚国際美術館から徒歩で行けるところにあり、一日美術館を回っていると脳も疲れる、疲れた足も休められる。ここで観潮船を挟むのは我ながらいいアイディアだと思いました。

が、大変な誤算が。

観潮船って、多分座って見るものじゃないんですよね……。それとも通常だと座って見るけど、わたしの行った時がたまたまみんな立っていたんでしょうか。

渦潮っていつもそんなにばっちり見えるものでもないようです。大潮の時は見えやすいと調べていて、なるべく満潮時間を狙っていったのですが、うっすら「渦潮?」という状態。船頭さんが「右側にちょっと出てます!」「あの辺に!」とか教えてくれるのを聞いて、船に乗った二、三十人が右往左往する、といった図。

それはそれでほのぼのして楽しかったのですが、揺れる船の上(台風上陸前でした……)、脚を踏ん張って立っていると……てきめんに足に来ます。船から降りてから気づいたが、船で足休めどころじゃない、むしろダメージを受けている!

なので14時に大塚国際美術館へ戻っても絵画鑑賞どころではなく、へたり込むようにしてカフェ・ジヴェルニーでお茶をしたのでした。それでも一度限界を超えた足腰はそう簡単に回復するものではなく、あとは足腰の痛みとの闘いになります。

 

 

気分を変えるという意味では観潮船を間に挟むのはとてもいい考えだと思うのですが、この足腰へのダメージをどうするか……。少なくともわたしが行った時の海の状態では、座席にいても渦潮はほとんど見えませんしね。

「旅のコツは疲れる前に休むこと」だと自分でもわかっているし、人にも勧めているのに、実際には欲望のおもむくままに歩き倒して「しまった、超えた……」ということが多いです。やっぱり大塚国際美術館に集中するべきだったでしょうか。

 

大塚国際美術館の見どころ。

全部が見どころであるのは間違いない。なので「これがおすすめ!」というのは違う気がします。しかし一方でみんながここで一日を過ごせるわけではないですよね。矛盾に悩みつつ(?)わたしなりのおすすめ、その考え方を。

一つ目は「他では見られない」もの。

二つ目は「環境展示」。

一つ目の「他では見られない」ものの筆頭は、修復前と修復後のダ・ヴィンチ「最後の晩餐」です。本物はミラノのサンタ・マリア・デッラ・グラツィエ教会にありますが、1999年までに行われた修復作業で以前の色彩を取り戻したそうです。大塚国際美術館にはその修復前と修復後の「最後の晩餐」がどっちもある。

これは、その展示を思いついた人を尊敬しますねー。修復前の絵をわざわざ……とはなかなか思わないじゃないですか。でもこれは向かい合わせに展示されている。ここは左右で見比べられるように並べてくれたら最上だったところ。

 

エル・グレコの「祭壇衝立復元」。これは衝立がいくつかの部分に分かれてしまって、それぞれの美術館に納まっているのを、ここで復元しているという……。これも面白い試み。

 

わたしが「これは見て欲しい!」と思うのは「皇帝ユスティニアヌスと随臣たち」とその対になる「皇妃テオドラと侍女たち」です。

これはモザイク画で、本物はイタリアはラヴェンナのサン・ヴィターレ聖堂にあります。でも、このモザイク画がある位置が聖堂の中でも相当に高いところで……6、7メートル?10メートル?鑑賞者ははるか斜め下から見上げることしか出来ません。見えた、とも思えないほど離れた位置から。まあ聖堂の雰囲気も含めてそのモザイク画があるわけですから、それはそれでいいとして。

しかし現地ではそんな状態でしか見られないものが、ここでは正面から!間近に!見られます。しかもその陶板のでこぼこが、最初にも言ったことですが、立体感となってもう本物としか思えない!

これはぜひ見て来て下さい。ただし、そもそもは遠くから、はるか下から見上げるために作られたということもお忘れなく。近くで見るとけっこうゴツく見えるものですから。

二つ目の「環境展示」は、現地と同じように再現して展示してあるもののこと。システィーナ礼拝堂のように、ですね。

システィーナ礼拝堂よりも規模はだいぶ小さいですが(システィーナ礼拝堂がでかすぎるんや!)スクロヴェーニ礼拝堂も雰囲気のいい空間です。ジオットの壁画ですね。ここでも結婚式をするらしい。

ゴヤの「黒い絵」シリーズは、ゴヤの家の食堂や居間に掛けられていた絵らしい……。これもゴヤの家にかけられていた通りの配置で展示しているそうです。

いくら自分の絵とはいえ、こんな不気味な絵を自宅に飾っとられんわ。悪い夢みる。しかし「我が子を食らうサトゥルヌス」や「砂に埋もれる犬」などは、怖いからこそ目が離せないような、腹の底がむずむずするような引力がありますね。

中庭にはモネの堂々たる「睡蓮」が。モネは「睡蓮」を死ぬほど描いたので、いい睡蓮もあれば悪い睡蓮もある。これはパリのオランジュリー美術館の専用の部屋にある睡蓮だと思います。

こういう風に展示するのはすてきな思いつきだと思うけど、でも絵は屋外に出すと背景になってしまう気がする。特に「睡蓮」のような絵は。しかもこの中庭はその外側に実際にそれっぽい睡蓮の庭が作られていて、ますます一体感というか背景感が。

 

 

 

空間としてはとてもすてき。陶板複製は直射日光にも強いそうですよ。ああ、わたしが10億円当たったら(大きな家を建てて)大塚オーミ陶業さんに何か作ってもらおうかなあ。何をどこに作ってもらおうか、夢が広がる。はっ。物だけじゃなくて使用料も払わなきゃいけないですよね。いくらくらいなんだろう。見当もつかない。

 

一度は行くべき、大塚国際美術館。

……と妄想が入って来たところで、大塚国際美術館について、だいたいのことを語らせていただいたかと思います。まとまりを欠いた文章になりましたが、大塚国際美術館へ行こうと思っている方、わたしの失敗談などを含めてほんのちょっと参考にしてみてください。

良い出会いを!

 

 

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