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江之浦測候所は「測候所」ではない!?じゃあ何なの?その1。

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江之浦測候所。そういう名前の建物だったら、普通はどう考えても測候所です。

測候所とは。

測候所って言われても具体的にはあまりわからないけど、「測」で「候」な「所」なんだから、気候に関する数値を測る場所だと思うじゃないですか。(ところで今驚いたんだけど、測候所って今は全国で2ヶ所しかないんだって!前は109ヶ所もあったのに。)

でも、江之浦測候所は測候所じゃないんです。

 

江之浦測候所とは何か。

これがなんと驚くことに美術館。なんでこの名前で美術館!?と本当に不思議なのですが、説明を聞いたあとだと、納得できないこともない……?

わたしは「ぶらぶら美術・博物館」の番組でこの場所を知ったので(そしてあまりに驚いたので)、番組に沿って、この美術館を書いていきたいと思います。いつか行きたいなあ。ちなみに予約制で、かなり人数を絞っているような感触です。

あ、先走ってしまった。予約のことより、どんなところか順番に書きますね。

2017年に開館した、まだ新しい美術館です。

 

江之浦測候所のホームページはこちら

画像が豊富な江之浦測候所についての記事はこちらこちら

 

わたしの記事には江之浦測候所の画像はありません。ちなみに実際に行った時に写真撮影は許可だそうですが、商業利用は不可だそうです。この場所は風景でもあるけれど、現代アートでもあるので、それは仕方ないでしょうね。

 

「ぶらぶら美術・博物館」について。

BS朝日で2010年から放送している美術番組です。もう9年ですか。長いですね。

出演者は山田五郎・おぎやはぎ・現在は高橋マリ子。「素人目線でアートを見よう!」という姿勢全開の番組です。美術番組というと、専門家が一般人に向けて説明するというじっくりとした、……悪い言い方をすればしんねりむっつりとした番組になることが多いですが、これはおぎやはぎがツッコミながらアートを見る、それに山田五郎がノッたり逆ツッコミをしたりするのが面白いです。

でもおぎやはぎも9年も美術を見ているので、近年目が肥えて来て、完全な素人じゃなくなってるのが……番組のコンセプト的にはちょっとずれてる?

かといって、今さら顔ぶれを変えて欲しいわけではありませんが。山田五郎とおぎやはぎの組合せだからこそ、こんなぐだぐだでもやっていけるもんだと思いますし。

 

江之浦測候所の位置。

小田原市、JR東海道線、根府川駅。ちっちゃな駅(無人)らしいですが、関東の駅百選に選ばれているらしいですよ。目の前が海で、天気のいい日はきらきら。

そこから送迎バスで10分走った丘の上に小田原文化財団・江之浦測候所はあります。

 

江之浦測候所は誰が作った?

杉本博司わたしは現代美術には全く疎いので全然知らなかったのですが、現代美術家で写真家で(「海景シリーズ」で有名らしい)、建築家で元古美術商。という幅広く色々やる人のようです。

現代美術というのは、まずコンセプトありきで苦手だ。でもテレビで喋っていた杉本氏は近所の物腰柔らかなおじさん、という感じであまりとんがっていないです。書いた文章やwikiの写真で見た限りだと、だいぶ気難しい人に見えるのですが。山田五郎さんとのユーモアのある掛け合いも楽しく見ました。

普段はニューヨーク在住だそうです。しかしこの番組に出るために自費で帰ってきました、と笑っていました。江之浦測候所は、五郎さんも言っていた通り「現代の大名庭園」と言えるものなので、それを作った本人が案内するのは(本人も)大変楽しかろうと思います。「持ってる現金はみんなここで使っちゃおう」という勢いで作ったとか。

ほんと、大名庭園という言い方がぴったりですね。贅を尽くして、趣味を尽くして作っている。金を持ってて趣味がいいのは世の中で最強です。うらやましいなあ。

 

なぜ「測候所」と名付けた?

ところで、なぜ「測候所」なのか。ご本人によると「美術館と名の付く建物もいっぱいあるから、特徴を出すため」だそうです。そんなんかい!でも実際ここには太陽の運行を測るための施設(作品)がたくさんあるのです。

一例を挙げれば、100メートルギャラリーという建物があり、そこは名の通り100メートルの直線の細長いガラス張りの建物。そこには夏至の日だけ、朝日がギャラリーを貫通して差すのだそうです。そういう仕掛けのある建物・作品がいっぱい。あとで順番に見て行きましょう。

そこから、古代人がどのように自然を見ていたかに思いを馳せることを企図しているそうです。そういう雄大なコンセプトも、実際の作品がショボいとちぐはぐになってしまうものですが、わたしはここの部分に感銘を受けたんですよね。

コンセプト負けしてない。そしてコンセプトに頼りすぎてもいない。雄大なテーマを、うまくヒューマンスケールにして(大層広大だとはいえ、人間の所有地に)持ってきている。極端に言えば、腕の中に納まる宇宙。実際の作品は、建築と言ったものの方がサイズ的には多いので腕の中には入らないけど、気持ち的にはマクロコスモスをミクロコスモスに。というのがぴったりです。

これはもしかして茶の湯と通じる精神ではないのか、と今、ふと思いました。わたしはお茶お花は全然わからず、お茶は美味しく飲めればそれでいいのではないかと常々思っている不心得者ですが、2畳の茶室なんかをわざわざ作るのも、単にもったいぶっているわけではなく、宇宙界を身近に感じるための手段だったかもしれません。

 

どんな展示物・作品がある?

実際に行ったら地図もあるだろうし、ガイドツアーなんかも、もしかしてあるかもしれません。不明。ここは詳しく聞きながらじゃないと魅力が半減しますよ。わたしは基本的にオーディオガイドは不要派ですが(これについては以前に記事を書きました。)、これは詳細を知って鑑賞したい。知らなければ意味がない。

 

テレビに映った順番に書いて行きます。

1.歩く順路の敷石が、京都の鉄道で使われていた敷石。

何の変哲もない敷石ですが、京都の鉄道駅で使われていたものだそうです。言われなければ絶対にわかりません。

2.明月門。

そもそもは鎌倉の明月院というお寺の正門だった門。

山田「(門を指しながら)これがまたタダモンじゃないんですよ」(門。只者とかけて←ダジャレの説明なんて興趣を削ぐことこの上ないが。汗)

杉本「どんなモンだい」

まったく、おじさん二人がダジャレを言い合って。楽しそう。

……これは明月院の門が関東大震災で壊れ、それを修復した後に移して、根津美術館の正門として長らく使われていたものだそうです。そして先年根津美術館が建て替えをした際に、設計をした隈研吾がこの門を要らないと言ったことから、

「うちに来ることになったんですよ。根津美術館には私の作品を寄贈して、物々交換になりました」

うーん。この自由さ。

門は四つ足門。塀が、普通白壁などが多いところ、これは細い竹を半分に割ってそれを縦に隙間なく並べて釘で打ち付けている。木賊張りというそうです。釘を打たずに作るのが本来の木賊張りだそうですが、これは釘でした。

そして特筆すべきは瓦!屋根の半分しか使える瓦が残っていなかったので、あとの半分は改めて焼いたそうなのですが、それを天平時代と同じ温度で焼いたそうなんです!

こういうところ、わたしだったらそこにオカネはかけませんよー。貧乏性だから。でも高温で焼くと丈夫になる代わりに色がだいぶ違うんだそうですね。たしか銀色になるっていったかな?その色がすごくイヤだったそうで、わざわざ低温で焼いたそうです。でも丈夫じゃなくなると、あとの手入れも多分大変ですよね……

3.明月門をくぐった先の足元の石は藤原京の石橋。

細長い石が敷き詰められていますが、これが藤原京由来のものだそうです。藤原京……。一気に時間を遡りました。この辺でなんかクラっとした。時間感覚に。そういうのって個人が所有できるんですね!見つかったら即、博物館行きかと思っていました。

4.同じく藤原京の大官大寺の瓦。

この見せ方が……。人が通らないいい位置に小さな池(水たまり?直径1メートルあるかないかだと思う)を掘って、そこの真ん中に蓮華文の軒丸瓦を置いている。常時水に浸かっている状態です。ああいうもんはガラスケースの中に入れてしまっては単なる遺物ですが、こうやって見せると風情になるんですね。

 

歩いて行くと、見晴らしのいい広場に出ます。海がきれいに見渡せるので、矢作さんが「先生の海景シリーズはこの場所から撮ったみたい」と言ったところ、杉本氏「お金がなくなったらここからの景色を撮って作品にしようと思ってます」。

この広場は全体をだいたい視野に収められる位置にあるようで、そこでおぎさんは「ギリシャの遺跡っぽい」という感想を言っていました。それに対して杉本氏は「遺跡を目指して、石をメインにしている」と返答していました。

 

5.三角塚。

古墳をモチーフとしている石組みです。イメージとしては、飛鳥にある石舞台古墳をもっと小さくしてパズル的に組み合わせたもの。杉本氏が教えてくれたんですが、上からのぞき込むと穴の中ではミイラがはみ出ちゃってる……!

というのは冗談で、中にあるのは18世紀イギリスのガーゴイルでした。でも転がしてあるようにおいてあるので、たしかにはみ出ちゃってるように見えます。これをこういう風に置く茶目っ気。

6.京都・渡月橋の礎石。室町時代。

白砂の中に礎石が置かれ、周りに枯山水でよく用いられる筋目がつけられています。礎石には橋柱をはめる穴が開いており、ここに水がたまっているので手水鉢の風情。水がたまっているのがミソなのか。常時水があるようにしているのか、干上がったら干上がったままなのか、どっちだろう。

7.石舞台。巨大な一枚岩。

一枚岩といっても実際は縦にひびが入っていて、二枚岩。でもこのひびも景色になっています。何しろ60トンのクレーンを使って据え付けた岩だそうですから巨大。どかんと無造作に置いてあるだけではなくて、平石とか、石垣の野面積みのような部分もあり、やはり組合せの妙を感じる。石自体の曲線や直線の組合せ。

ここはまさに石の舞台で、実際に能が演じられたこともあるのだそう。春分と秋分の日には朝日が石舞台の上に差してくるように設計されています。

構想としては、夜明け前に能が始まり、朝日が昇る時位に後ジテ(死者の霊であることが多い)がその光を受けながら退場(冥界に帰っていく)ということで考えているそうです。能とギリシャ悲劇って細く繋がる部分があるから、ギリシャ遺跡を感じさせる場所で能を演じるのは似つかわしい。

春分と秋分の日には春分光遥拝の会・秋分光遥拝の会が行われるとのこと。しかし現時点でも予約・抽選の50名。今後、その存在が知られていくに従って倍率は増すばかりのような気がしますね。

 

このあたりで番組としては半分くらい。まだまだあるので、この辺で一旦失礼します。その2に続きます。

ところで、骨董の最終地点は「石」だそうですよ。杉本氏は間違いなく石期ですね。

 

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