仙台あちこち

移転問題に揺れる宮城県美術館。このまま決まっちゃっていいの?

更新日:

突然ですが、現在宮城県美術館には移転問題が起こっています。
これねー。大雑把にいえばこういう流れのようです。

 

宮城県美術館の移転方針に関する流れ。

そもそもは現在の宮城県美術館を改修保存することで話は決まっており、
「宮城県美術館リニューアル基本方針策定検討会議」という委員会(こちら名簿)
2018年3月に「宮城県美術館リニューアル基本方針」を策定。

2019年11月、宮城県が突然「国立医療センター跡地(宮城野原)」に
美術館移転の方針を発表。「県有施設再編等の在り方検討懇話会」による示唆。
(か、あるいは県からの提案・指示。)

寝耳に水の知らせに美術関係者と市民の一部が驚愕。

→市民団体「宮城県美術館に関心と期待を寄せる有志グループ」が急遽結成され、
方針の見直しを求める要望書を県に提出。

→併せて一般に向けて美術館移転問題についてのアンケート実施中。
アンケートのサイトはこちら。
(アンケートはどなたでも答えられます。内容は簡単。個人情報は必要ありません。
自己判断でお願いします)

 

トム・オタネス「蛙とロボット」

 

一連の流れにおける、基本であり最大の問題点。

最大の問題点は、やはり議論が十分に尽くされていないということに尽きます。

2018年3月には改修保存の線で進んでいた。基本構想の策定も出した。
それが1年半経つうちにころっと新築移転に変わった。
思い付きで変わったとしか思えません。

そもそも検討する人(県側)がどの程度現状を把握しているのでしょうか。

わたしは現実問題に超絶的に疎いのでよくわからないのですが、
この「県有施設再編等の在り方検討懇話会」という有識者団体は、
どういう立場の団体なんでしょう?

「懇話会」を調べると明治時代の政治的会派の名前としか出て来なくてですね……
懇話会はよく使われる言葉です。懇親の懇、そして話すですから、
委員会よりは柔らかくて使い勝手がいいんでしょう。
そして責任の範囲もはっきりしない。

懇話会=県に選ばれ、県に依頼されて、県の提案内容を吟味する?

そういう立場だったら、

1.宮城県の意見
2.変革の意見

に傾きがちになりますわなあ。

1については「詳しくないから反対するほどの理由もない」
2については「せっかく委員になったのだから現状維持では申し訳ない」
という心理がどうしても働くと思います。
直接の専門分野で詳しい情報があり、正確な判断が出来る場合を除いて。

宮城県有施設の再編の在り方を考える県の有識者懇話会名簿

この中には全く美術館関係者、美術関係者がいないんですよね。
大雑把な総論だけで一番大事なところの話が進む。これは乱暴な話です。

「美術館がどうあるべきか」までは一般論で言えても、現状把握は無理でしょう。
データがあるとしても宮城県側が出した、移転を推進する方向でのデータの筈。

おそらく会議では「美術館がどうあるべきか」という各論まで
辿りつかないですよね。
宮城県有施設全般の再編の在り方を一般的に述べれば、
ゲームの「シムシティ」の域を出ないでしょう。

各論だけでも世の中は回りませんが、総論だけで話を動かすと実用の際に
とんでもなく使いにくい……とかあるんですよねー。(ex.宮城県図書館)
わたしはそれを恐れます。

結論。今回の移転の話は拙速では?

 

フェルナンド・ボテロ「馬に乗る男」

 

最新の状況。

12月12日の定例会において、風向きが若干変わって来た感じです。
記事の書き方の匙加減なので、ちょっと流れが変わったように見せかけて
油断させる作戦ではないとも言い切れないが。

以下は最近の河北記事です。

宮城県有施設再編の基本方針中間案公表 懇話会で有識者「波及効果を示せ」

先月の発表以降の世の中の動きを受けて、
総論だけではダメだと委員の皆さんも思ったようです。
しかし全く安心はできません。
宮城県は仙台市とも連携せずに今回の話を考えているようですから。

宮城県の方針案、仙台市のまちづくり翻弄 県民会館と県美術館集約で都心再生構想に狂い

これはどちらかというと宮城県民会館の話なのかな。
とにかく「まちづくり」などという大事なことは、県も市も水も漏らさぬような仲で
話し合ってくれなきゃ困るんですけど!

宮城県が東側を開発し、仙台市が定禅寺通りから西への集客を目指すのは、
ある意味ではバランスがとれているという言い方も出来るが、
それは全体が総合的に動いた時にこそ言えることであって……
コッチはコッチ、アッチはアッチ、とバラバラに動いていたら
効果的なまちづくりなんて出来ないと思います。

まあ、まちづくりに関しては措きます。美術館のことです。

 

美術館固有の価値も考えてほしい。

総論の立場から見た場合、美術館そのものや利用者の現状は全く視野に入って
来ないでしょう。しかし宮城県美術館固有の価値も考えて欲しいと思います。

環境がいい。

立地の点とも濃密に関連しますが、こちらは地域の美術館利用者としての視点。

美術鑑賞ならば落ち着いて見たい。
この場所は周りが静かな団地・高校・大学で、広瀬川に面した高台にあり、
周りに木がたっぷり植えられています。
視線がかなり抜けるので、浮世離れした優雅な思いにさせてくれます。
特別感。

展望台が出来るような見晴らしの良さとは若干違うのですが、
展示品からふと目を離した時に見えるのが人工物ではなく空と樹々というのは、
鑑賞の邪魔にならなくてとてもありがたいです。
他の場所ではこうはいかない。

外部からの訪問者にとって立地がいい。

立地の点で語られるのは、中心部からのアクセス・利便性だけだけれども、
現在地は広瀬川を渡った先にある静かな文教地区です。
「この場所」に美術館が存在する意味は大きい。

わたしは旅行であちこちの町に行きましたが、
旧城下町では城跡に文化施設が集まっていることが多いです。
城跡そばの文教地区というのは、由緒ある町であることの一つの証拠です。
仙台はそうであって欲しいと思う。

また、その場合周遊が期待出来るんですよね。

天守台→仙台市博物館→(荒川静香選手・羽生結弦選手のモニュメントを見つつ)
→宮城県美術館。わたしが旅行者だったらそういうコースをたどると思う。

観光周遊バス「るーぷる仙台」を使うのなら、
仙台市博物館→天守台→宮城県美術館の順番です。
通るのが青葉山・東北大学構内で緑の中。まあまあ景観もいい。

宮城県美術館がなくなってしまえば、一般旅行者が通常訪れるのは
仙台市博物館だけになります。吸引力という点では一気に弱くなる。
施設が2つあるからこそ、目的地として視野に入ってくる。
現実では1つしか行かないかもしれないけれど「どっちかに行こう」と
計画するようになります。

西公園交番付近から大橋を見下ろした眺めと、大橋を越えた後の各施設の繋がりは
仙台の町が誇れるものの一つだと思うのですが、どうでしょうか。

美術館自体の使い勝手。

わたしの美術館利用は基本的には特別展の鑑賞です。
その場合動線としては、玄関→受付→ホール→展示場所→(常設展)→帰り道。
ということになります。

このアプローチがいい。「これから鑑賞するんだ」という気持ちがここで沸き上がります。

パッと入ってすぐ会場というルートでは味わえないところ。

この使い勝手についてについては書ききれないので、
後日、別記事で詳しく書きたいと思います。

宮城県美術館は敷地の広い、回遊性の高い建物。
先日実際に歩きまわってみたのですが、
全く内部の展示物を見ない状態でも楽しめました。
外側に彫刻作品が多数設置してあることと、その設置場所が良いためです。

特にその実力を感じるのは本館と佐藤忠良記念館の間にある「アリスの庭」と、
建物の裏庭である「北庭」に立った時。

アリスの庭の方はタイルづくりの本館と鏡面ガラスの佐藤忠良記念館に挟まれた
非常に面白い場所で、様々な彫刻作品が並んでいます。
ここは建物の建築時期に差があるからこそ生み出せた不思議な空間。
これは最初からではまず設計出来ないだろうなー。
わたしが宮城県美術館で一番好きな場所。

 

アリスの庭。

北庭の方はその存在を知っている人があまりいないのでいつも空いています。
秘密の庭。現代彫刻がひっそりと迎えてくれる。

これらの点は移転したら確実に失われてしまう。
特に、偶然に生まれたようなアリスの庭はあまりにも惜しい。

設計者・前川國男の建築作品として。それ自体が美術品。

宮城県美術館は前川國男の設計です。

前川國男は、……わたしごときの知識では断言は出来ないので
ちょっとエンリョをしながら言っても、日本現代建築史において
主たる建築家10選には必ず入る人。
5本の指に入るかも。入るかな。入るんじゃないかな。

全体的には地味めな建築を建てた人。
写真にした時にパッと目をひくような派手な建築ではなく、
使い勝手を主眼に置いた実用的な建築を目指していたようです。

わたしは、建築はまず何よりも使い勝手だと思っています。
特に公共建築物ならば。
コンセプトがどれほど素晴らしくても、使い勝手が悪ければ税金を使うに値しない。
その点宮城県美術館は、もちろん建設から40年経って全面的な改修は必須だけれど、
使い勝手の良い、質のいい建物だと思います。

前川國男の代表作は東京文化会館と東京都美術館。
設計した建物には美術館や博物館が数多くあります。

このページが面白かった。
近代建築の楽しみ
江武大学というところは検索しても出てこなかったので、
多分このサイトの中のフィクションだと思う。

宮城県美術館、移転・新築の方針固まる。前川國男建築はどうなる?
美術手帖(70年続く隔月刊の美術雑誌)による記事です。

宮城県美術館は建設省(現国交省)の公共建築百選に選ばれています。
BCS賞(日本建設業連合会により国内優秀建築作品に与えられる賞)も受賞。

受賞した全ての建築を残すことは出来ない。
ただ、大きな建築は一度取り壊したら終わりなんです。
そうだとしたら、建築的に意味がある建物を出来るだけ後世に残す努力をする
責任があるのではないでしょうか。

 

まずは慎重に検討して欲しいのです。

約40年前に宮城県美術館を作る当時は、市民・行政・設計の間で
珍しいくらいじっくりと話し合いがもたれたそうです。
意見を出し合って出し合って、時間をかけて建設されたと聞いています。
この40年間、変化もいろいろあるだろうけれどもその建設に込められた思いを
無にして欲しくない。

わたしは基本的に改修保存派ですが、なににせよまずはもっと深いところの検討を。
よろしくお願いします。

 

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