那須といえば殺生石。
わたしは那須といって最初に思い浮かぶのは殺生石なんですよね。とはいえ殺生石ってなんでしょう。なんだかよくわからん。よくわからんがなんかかっこいい気がする。アニメのアイテムに出て来そう。
殺生石とは何か。
殺生石とは――石です。
この石は妖怪が姿を変えたものだそう。
昔々、年を経て九本の尾をもつに至った狐は妖力を持ち、古代中国で絶世の美女に化け、権力者の寵姫になってわがままを言っては国を傾けて遊んでおりました。殷の紂王の寵姫・妲己や周の幽王の寵姫・褒?はこの九尾の狐だったと言われています。
中国で遊び尽くした狐はいつの頃からか日本に渡り、900年ほど前の天皇・鳥羽天皇の後宮に入りました。玉藻の前と呼ばれます。上皇になって権力を握った鳥羽上皇の寵姫として、以前と同様に勝手気ままにふるまっていましたが、時の陰陽師に正体を見破られ、妖術も敗れて元の狐の姿に戻ってしまいます。
慌てた九尾の狐は都からはるか遠い、那須の地まで逃げました。そこでも人さらいなどの悪行を重ねたため、討伐軍が那須までやってきました。双方戦いましたがなかなか決着がつきません。
しかし最終的には武者たちの弓矢により、九尾の狐は息絶えます。その瞬間たちまち狐は石に姿を変じ、毒気を出して近づくものの命を奪い始めたのだとか。
その正体は硫黄。
たしかに全体的には禍々しい雰囲気が漂うんですよね。
周りが緑もりもりなところに突然こんな荒涼とした岩場が出現したら……やっぱりそれは何か異様なものを感じざるを得ない。
昔の人は賽の河原をイメージしたようです。小さいお地蔵さんがたくさん並んで、曼殊沙華が連なっているような錯覚を覚える。
わたしはそこまで臭いを感じなかったのですが、この付近は硫黄の噴出口があるらしい。そのせいで植物が生えないのですね。古来から温泉があちこちにあった日本、硫黄を知らなかったとは思いませんが、それよりも緑と岩場の差のインパクトが強かったに違いない。
むしろ石としてのインパクトは殺生石そのものよりこっちの石。これけっこうすぐ落っこちそうに見える……
近くには由緒正しい那須温泉神社が。
殺生石から徒歩5分ほどの距離に那須温泉神社がありますよ。せっかくですのでこちらも行ってみましょう。残念ながら殺生石側からアプローチすると参道からではなく裏側から入ることになるのですが。
参道は木漏れ日の道で気持ちがいいです。季節のいい時なら、少し遠くなるけど神社の手前の駐車場に車を停めて参道からアプローチするのがいいかもしれません。今は夏ですのでね。ちょっと暑いですね。
殺生石の最寄りの駐車場は少し狭めだった印象です。そこから殺生石→那須温泉神社→駐車場のルートですと、ゆっくり歩いても15分かからないくらい。温泉神社の参道の一番端まで行くともっとかかりますが、途中に目立たないけれども駐車場へ直接出られる小道があります。
那須温泉神社と殺生石を基点とした「殺生石展望台コース」という遊歩道があるようです。距離2.7キロで平均所要時間が1時間半とのことですが、……かなりアップダウンがありそう。殺生石から展望台までの高低差がすごい。展望台へは車でも行けるので、体力に不安のある向きは車で妥協しましょう。体力に自信のある方はchallenge!
車で茶臼岳へ足を伸ばしても。
車で10分ほどうねうねと登ると那須茶臼岳麓のロープウェイ乗り場まで着きます。気が向いたらロープウェイに乗って上の駅まで登ってみるとよろしい。さらに気が向いたらそこから先の登山道で茶臼岳に昇ってみるとよろしい。元気いっぱいな人ならロープウェイの上の駅から1時間程度で登れるらしいよ。
この茶臼岳は那須の御用邸にも近く、皇太子時代の天皇陛下と雅子妃殿下もたびたび登山に来ているそうです。そういえば、2歳くらいの愛子さまを背負子でおぶったニュース映像を見たなあ。なかなか微笑ましい情景であるのと同時に、これで山道を行くのは大変そうだと思った記憶が。
わたしは体力に自信がないので登りません。しかし上の駅でぶらぶらしている時、突然豪雨が降って来たのは驚いた。わたしと同じロープウェイで山頂駅まで行って、そこから山頂に向かった人はそのまま豪雨に降られたタイミングじゃないですかねえ。戻ることも出来ないほどのあっという間の豪雨。
ギリシャのデルフォイ神殿で突然の豪雨に降られた時を思い出した。あの時は雨が激しすぎて溺れるかと思いましたからね!雨が鼻に入って来て息が出来ないんだもの。幸い木の下で雨宿りが出来ましたが、ほんの30メートルくらい離れた木までたどり着く間も溺死するんじゃないのか、これ?と思っていた。
しかし茶臼岳の雨は30分も経たずに止み。
山の天気の変わりやすさよ。
ここには美味しいソフトクリームがありますよ!
那須に行ったら殺生石にも。
見どころがたくさんある那須で、興味がなければわざわざ行くまでではありませんが、ちょっと時間が余ったらこういう山側もいいですよ。地に足がつくというか。人工物はどこにでも建てられるのに対して、山や神社はそこから動かせないですからね。その場所との地縁が結べる気がします。
出来れば那須与一所縁の何かがあると嬉しい気がするのですが、特にはないみたい。せっかく那須とついているのにねえ。まあ九尾の狐を退治した武者たちの弓矢の音をよすがとして後にすることに致しましょう。
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