イタリアの旅の話/1995

◎ヴェネツィアの島々。イタリアの旅の話・その10。

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夜、その後の2日間のヴェネツィア攻略作戦を練りました。……普通の言い方をすれば観光のスケジューリング。その結論に従って翌日は島へ旅立ちます。

 

島へ行きます。

ヴェネツィア自体も島なのですが、この辺りの干潟には他にも島がいっぱい。何十?何百?数え方によるが何百というオーダーではなかろうか。意識にはなかなかのぼらないけれども、ヴェネツィア本島も実は何十という島の集まりなんですよね。それぞれ運河で独立しており、橋でつないだ構造だから。

本島以外の観光としてはムラーノ島とブラーノ島の2つが定番。ムラーノ島はガラス、ブラーノ島はレース(スピードレースじゃなくて服飾の方)の島です。島へは当然ながら船に乗って行きます。ムラーノ島の方が近くて片道15分くらい。ブラーノ島は40分くらい。

片道40分だと往復80分、乗り換えを勘案すると1時間半くらいかかるので、スケジュールを組む時は注意が必要。ちょっと行って帰ってくるつもりでいると、島にいられる時間がほんの少しだけになってしまいます。ムラーノとブラーノ、のんびりと見て回ったら6、7時間が目安でしょうか。朝行って午後の半ばに戻ることになります。意外にかかるんですよね。

ちなみにこれはどちらもヴェネツィア本島北側からの「フォンダメンテ・ヌオヴェ」
という船乗り場からの所要時間です。ここから乗ると時間が短い。サンマルコ広場から船に乗ると片道+30分くらい所要時間が増えます。各駅停車的にあちこちの船着き場に寄って行きますからね。

リアルト橋からフォンダメンテ・ヌオヴェまでは迷わず行っても徒歩15分。ホテルがリアルト橋近辺ならフォンダメンテ・ヌオヴェに行くのもありでしょう。でも道がわかりにくいので、聖マルコ広場から乗った方が安全かも。時間が長くなるけど、遊覧込みだと考えればむしろ格安で船の旅を味わえます。

 

ムラーノ島へ。

船でほんのちょっと行くとすぐムラーノ島。しかし船はムラーノ島の前にサン・ミケーレ島に立ち寄ります。

ここは墓地の島。イタリア辺りの墓地によく見かける糸杉が生えて、そう思って見れば墓地の雰囲気は濃厚に立ち込めています。とはいっても外国の墓地は観光名所という側面もあるので(これは日本でも有名なお墓はそうですね)、ちょっと行ってみたいような気がする。ストラビンスキーなど有名人の墓もあります。……ストラビンスキーの墓にわざわざ行きたいかというとそうでもないが……

ムラーノ島の船着き場は多分乗った船によって違うので、この時どこに着いたのかは不明。船を降りて、お土産屋さんが並ぶメインストリートを何も考えずに歩きます。

島の雰囲気は本島と似ていて、運河ぞいに建物がならぶのも同じ。でも本島だと建物が高くて道が細く、歩いていると閉塞感を感じるのに対し、ムラーノでは建物は低く、道も比較的広いため開放感があります。空が広い。道もまっすぐで見通しが良い。

島の真ん中近くにあるサンティ・マリア・エ・ドナート教会を目指すのがちょうどいい距離みたい。ムラーノの大運河から少し入った運河沿いにあります。

地図を見なくても行けるくらいのシンプルな道筋だった気がします。しかし迷うかもしれないので、心配な向きは地図アプリに従って歩きましょう。とはいえ、ヴェネツィア本島では迷う時はマジで迷いますが、ムラーノ島の規模では迷ってもたかがしれている気がする。その油断が死を招くのかもしれないが。

この日は穏やかに晴れて、後にしてきたヴェネツィア本島が朝日にきらきらと光って美しい。朝早い時間の観光客が珍しいのか、ムラーノの人はすれ違う時に「ブオン・ジョルノ」と声をかけてくれる。気分が上がる。

サンティ・マリア・エ・ドナート教会は島の規模にしては大きくて建築デザインが美しい教会。背面側に飾り柱とアーチが続き、なんと二階部分にはテラスもあります。他ではあまり見たことがないような気がする。運河に面しているのは背面側で、反対側に回ると背面側とは全然違う、まったく飾り気のない正面。

このあたりで写真を撮りまくります。ヴェネツィアでは橋が船を通すために中央が高くなっていますから、高低差でアングルが変えられていろいろな写真が撮れる。

 

この旅では教会の中には入らなかったのですが、ここは入った方がいいところです!時間がある時はぜひ入りましょう。見事なモザイク画が見られます。聖マリアがキリストを抱いて金色の天に浮かぶ。少しぎこちない中世の様式が美しい。聖マルコ寺院のモザイクも同じように金色で見事ですが、それよりももっと古い時代の素朴な美。

この近くにはガラスの美術館もあります。この時は入ってないけれども。――後に入ったらしいのだが、中の記憶は完全に消えている。

ブラーノ島へ行くにはどの船着き場へ行ったらいいのか、お土産屋さんのおじさんに聞いたところ、ちゃんとわかる日本語で教えてくれた。「日本語お上手ですね」と言ったら、「奥サンはー、千葉県シュッシンのー、女の人デース」と言っていた。愛嬌満々。笑ってしまった。

 

ヴェネツィア・レースの島、ブラーノ島。

ムラーノ島からまた船に乗ってブラーノ島へ。ムラーノ島よりももっと小さい。観光客も少ない。特にこの時期は冬でしたから、わたしたち以外に観光客はいないんじゃないかと思うほど。

まずはお昼ごはんを食べようと思います。開いている店もあまりなさそうで不安になりましたが、中心広場まで行くとなんとか一軒、開いてそうな店を見つけました。……が、本当に開いているのかどうか、今一つわからない。恐る恐るドアを開けます。

店の中の奥のテーブルで、4、5人の男の人が固まっていました。いっせいにこっちを見られてびっくりする。え?お店やってるの?休みなの?

一人の人が立ち上がり、テーブルに案内してくれました。彼らの方を見ると、手にはトランプ。ははあ、なるほど。お店はやっているけど暇だから近所のお友達集まってトランプしてたのね。

ツーリストメニュー(観光客向けのおすすめセットメニュー)とエスプレッソを注文します。おじさんはオーナーシェフらしく、注文をとった後、厨房でゴトゴト。彼抜きでお友達のゲームは静かに続きます。

トマトソースのシーフードスパゲッティ
シーフードフライ
サラダ
ビスコッティ

というメニューでした。ブラーノはヴェネツィア・レースの島であると同時に漁業の島でもありますから、おすすめはとにかく魚介類。

素朴な島の素朴な料理。スパゲティは薄味で美味しく(量は日本で普通に出て来る一皿分)、メインのシーフードフライも日本の盛り付けの2倍くらいある。小さいイカ・小さいエビ・ヒラメのような白身魚とサンマのような魚が一口サイズに切られています。軽くあがっていて、スナックのようなサクサク加減。サラダもしっかり野菜。

ビスコッティはイタリアの硬めのクッキーというかビスケット。エスプレッソにひたして食べたりするようです。そのまま食べるとなかなかワイルドな歯ざわり。硬さはかりんとうって感じ?かりんとうの硬さもピンキリですが。

お皿を持ってきてくれるごとに「グラーツェ」というと、おじさんは「プレーゴ」と小さな声で答えてくれる。全部の皿を出し終わると彼は静かにゲームの輪に戻りました。こちらもゆっくり食事をして――帰る時にもう一度「グラーツェ」というと、ゲームをしていたおじさん全員で手を振ってくれました。

 

ヴェネツィア・レース。

その後、すぐそばにあるレース博物館に行きました。小規模で少し侘しげな展示でしたが、レースの作り方の展示が丁寧で、その仕事の大変さがよくわかる。昔作られた細密な作品も展示してありました。今はもう、作る人がいないほど手の込んだ作品らしい。

博物館を出て、近くのレース店へ。たしかガレリアという店だったような……。名前の通り、奥に狭い展示スペースがありこちらにも昔の作品が飾られています。

――ここにあった婚礼衣装がすごかった!総レースのウェディングドレス。さっき見て、作るのに呆れるほど手がかかることを知ったレース。そのレースが全身に使われています。うわー!と思う。製作総時間はどのくらいかかっただろう。1人で作ったのではないのかもしれないけど。

「LIDIA」というお店にも入りました。当時はとてもスタイリッシュなおばあちゃんがいて、「日本語でこれこれはなんというのか」などたくさん訊かれ、それを彼女がいちいちノートに書き留める。勉強熱心。

「これは“蟻”模様なのよ」というのも教えてもらう。模様自体は忘れたけれども、蟻をちゃんと日本語で「アリ」と言っていたのが記憶に残っています。前に他の観光客に教えてもらったんだろうね。

 

カラフルで可愛い家々と、洗濯物。

ヴェネツィア・レースの島で有名なブラーノ島ですが、それと同じくらい有名なのは島の家のカラフルさ。

普通の家が、まるでテーマパークみたいに鮮やかな色合いに塗り分けられています。赤、青、ピンク、グリーン、オレンジ、紫、黄色。若干の大小はありますが、ほぼ同じ大きさの家々が一軒の例外もなく(と見える)なんらかの色に塗られているのは壮観です。

これは漁師たちが、しばしば発生する霧の中で、自分の家を見分けて船をつけやすいようにという理由があったそうです。ふうん。こんなに家が並んでいるとそういうこともあるのかねー。日本のように家と家との間が離れていると塗分けて確認しようとはなかなか思いませんよね。

あの色はどうやって選んでいるのかな?何年ごとかに塗り替えたりするんだろうけど、その時思い切って別な色にしたりするんだろうか。……現在では色を変更しようとする時はヴェネツィア市の許可が必要らしいです。明度や彩度もある程度揃える必要があるし、別な色にするとして選ぶのが大変でしょうね。

 

ちなみにこの島には隠れた名物があります。それは……洗濯物です!

まあこれはわたしが言っているだけ。でももしここに行ったら洗濯物に注目してみてください。色どりが面白いの!

黄色い家の人が黄色の服ばかり着ているはずもなく、グリーンの家の人が緑の布製品ばかり使っているはずもないのですが、ある2軒の家の洗濯物が黄色と緑で統一されてるのを見た時は目を疑った。素朴な島では洗濯物を元気いっぱい外干ししますが、洗濯物が外壁の色とマッチしている!

マッチしてない場合でも、色合いによって洗濯物の配置を考えているなあと思うことが多く、これはイタリア人のセンスの良さなのか……と感じ入る。日本で干してある洗濯物の色合いに感心することは皆無ですもんね。そもそも真っ赤とか鮮やかな黄色とか、映える色の洗濯物自体が少ないし。南ヨーロッパの光は鮮やかな色が生えるような光になっています。光の質が日本(の本州以北)とは違う。

このカラフルな家(と洗濯物)を見ながら運河沿いを歩くのが楽しい。いっぱい写真を撮っちゃってください!ムラーノ島と比べてもだいぶ小さめな島なので、時間さえあれば足の向くまま歩いても大丈夫。われわれはのんびり歩いて島の北の端まで行きました。遠くにトルチェッロ島を望む、隣の島への長い橋が素敵なところ。ここも写真を撮りたくなるところです。

 

聖マルコ広場の華やかさ。

その後、再び船に乗って聖マルコ広場まで帰りました。ヴェネツィア本島直通ではなくてリド島を経由する船で帰ったので、2時間近くかかったような……。すっかり眠り込んでしまったような気がします。この時、同行者もいたことでわたしは眠ってしまいましたが、海外では居眠り非推奨。ここらへんは日本よりも注意して欲しいところです。

船で近づく聖マルコ広場は劇的でした。今まで素朴なブラーノ島を見て来た目には、聖マルコ広場の辺りの建物がすごくきらびやかに見える。特徴的な建物が連なり……やはりヴェネツィアの表玄関はこちらだなあと思う。昔、東方から来た使節や商人たちがヴェネツィアに来た、という高揚感を持って見たのはこの風景なのではなかろうか。

次の日は最終観光日です。ヴェネツィアを、イタリアを、明日で仕上げます。

 

 

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