イタリアの旅の話/1995

◎黄金の聖マルコ寺院。イタリアの旅の話・その13。

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この旅行の大トリは、聖マルコ寺院。

当時は不思議だったんですよね。なんでキリスト教の教会建築なのにこんなにエキゾティックなのか。キリスト教の教会というよりは、アラビアンナイトのような玉ねぎ型建築。なぜこういうデザインを採用しているのだろう。

その後ヴェネツィアは歴史的に東方世界、なかでもコンスタンティノ―プルと縁が深いことを知りました。なんとなく納得。そう、それに建った年代がだいぶ早いんですよね。西暦1000年代。この頃には東ローマ帝国はだいぶ力が衰えていたはずだけど、建築様式は政治よりもゆるやかに移り変わる。

 

黄金の聖マルコ寺院。

前日までその前を何度となく通った聖マルコ寺院。外側はもう見慣れていました。入口のアーチとドームがいくつも連続してリズムを作る。装飾が豪華で柔らかく、きままに装った貴婦人のイメージ。広場からだといろいろな角度から見ることになるので左右対称の印象は弱いが、真正面から見ると意外にきっちり。

内部は暗い。

中に入ります。

内部は想像以上に暗い。今回ローマの聖ピエトロ大聖堂、フィレンツェのサンタ・マリア・デル・フィオーレと見て、3ヶ所目の大寺院なわけですが、やっぱり場所ごとにかなり雰囲気が違うものです。フィレンツェもかなり暗く感じたけれども、聖マルコ寺院はそれ以上。感覚的にはコンサート前の照明を落とした客席くらいでしょうか。

ここの内部装飾の主役は天井です。天井が全て金色で、そこにキリストや聖人たちのモザイクが描かれている。何十人も。何百人も。よくもこんなにと思うほど。暗い中でこの金色が鈍く光る。内部が暗いのは建物の構造のせいですが、この暗さでも見ごたえがあるのが金モザイク。

これは日本の屏風なんかと共通するものがあると思いますねー。現在、屏風といえば美術館で煌々とした照明の下で見ることしかないので、金=ギラギラというイメージになりますが、本来は暗い中でちょうど良く光るものだったんですよね。それがこういう場所に来るとよくわかる。

こういう手法で天国感(?)を表現していたんだなあ。金は錆びないからいつまでもキラキラ光り、特別感を演出する。それが時代が変わるとともにステンドグラスになったり、たり、……他に思いつきませんが、あ、そうそう、彫刻や絵で法悦を表現したりするようになるわけです。

ただ天井が遠いので、個々のモザイクを注意して見られるわけではない。全体的に見て、ほええ、というしか。

床のモザイク。

上ばっかり見上げて首が疲れるので床に目を落とすと、床は床で見事な大理石モザイク。天井と床のモザイクは種類が違います。天井のモザイクは小さいガラスを並べて人物画を描いているのですが、床のモザイクは色の鮮やかな大理石を型に切り取って幾何学模様を描いています。

こちらは金ではなく、白、赤、黒、ピンク、緑などの大理石。大理石にもいろんな色がありますねえ。フィレンツェだと大理石を使って風景画を描くのが伝統工芸として有名ですが(←これ、すごく欲しい)、ここでは幾何学模様。細かくてきれい。この床面積をモザイクで埋めるところを想像すると、その作業量が……おそろしい。でも実際埋めたんですからね。おそろしい。

どことなく謎な「パラ・ドーロ」。

ここの目玉として「パラ・ドーロ」という工芸品……があります。これが何なのか、説明を読んでも今一つよくわからないまま現在まで来たんですが。これは「背障」といって祭壇の後ろ部分に飾られる衝立らしい。

衝立というにはあまりに派手ですねー。全体が黄金で作られ、そこに聖人の板絵?がはめこまれています。ざっくりと日本でいえば曼荼羅みたいなものですかねえ。その金ぴか具合に気を取られて細かい部分は見ていない。見る機会があったら細部も見ることをお忘れなく。

聖マルコ寺院は聖ピエトロ大聖堂、サンタ・マリア・デル・フィーレと比べて混んでいました。他と比べると実際に狭いのかもしれませんね。あるいは観光客がすごく多かったか。こんなに派手できらびやかだというのに、全体の雰囲気は親しみやすい。地元の人は「私たちの教会」と誇りに思うんだろうな。日本人が地元の神社に親しみを抱くのと同じ。

 

最後の買物、および最後の晩餐。

聖マルコ寺院の後は最後の買物をしてカメオを買ったりお土産のバッグを買ったりしました。

カメオは小さなペンダントトップ兼ブローチで、青みを帯びた黒っぽい地に巻き毛の少女が描かれたもの。貝製ではなく、陶製の(ウェッジウッドのジャスパーウェアみたいな)ものっぽい。貝製よりこちらの方が好きでした。比較的安かったけど、値段は(わたしにしては)そこそこしました。

正直、これはほとんど身に着けなかった。ちょっとした時に使おうと思って小さめサイズにしたけど、カメオは若干古めかしいし少し大ごとなアクセサリーですね。でも時々取り出して眺め、ああ、これヴェネツィアで買ったんだな~と思う時間は懐かしくて幸せ。

最後の晩餐をアンティコ・ピニョーロというお店で食べます。検索してみるとお店がまだある。多分ツーリストメニューだったのかな、ボンゴレ・ビアンコとお魚のトマトソース煮、サラダとアイスでした。少し早めの時間に行ったせいか、店が空いている前半はお店の人もずいぶん相手をしてくれて楽しかった。

 

帰国します。

7日目。帰国の日です。

飛行機の時間がお昼近くだったのでホテルからの出発はゆっくり。ホテルの部屋で最後の名残りの写真を撮り合う。

ツアーは送迎付きだったのでちゃんと迎えに来てくれます。ヴェネツィアだから空港まではなんとボートで!タクシーみたいなものですね。これはうれしかった。リアルト橋をくぐって、大運河に立ち並ぶ左右の美しい建築を見納めに見て。この日は霧だったので、墓地の島、サン・ミケーレ島の糸杉と鐘楼が霧にうっすらと浮かんで見える。

飛行機は行きと同様に国内便サイズ。KLM航空でまたスキポール空港へ向かいます。
飛行機がイタリアの大地を離れる。アディオス、イタリア。……あ、しまった、アディオスはスペイン語だった。アリヴェデルチ、イタリア。

再びスキポール空港で乗り換え。往路で指をくわえて見ていた可愛いお土産の数々を帰りに買い込んだ……かどうかは記憶にない。世界一お土産が充実している空港だと思うので、スキポール空港利用の際は期待して大丈夫。

そして約12時間空を飛んで日本へ。

われわれ3人は帰りの飛行機で、縦に並んだ3席にされました。そして両脇には団体さんが。わたしはそうでもなかったですが、前に座った同行者は何かというと左右のお年寄りに頼られて「スチュワーデスさんはどうやって呼ぶの」「この書類はどうやって書くの」とひっぱりだこでした。添乗員状態。後ろから見ていてなかなか大変だった気がする……。

わたしも寝られなかったので、成田に着いた時は疲労困憊。ぐでっとしているところを同行者に写真に撮られました。なんのかんのいって最初から最後までハードな旅行でしたよー。長距離の飛行機は大変。何度やっても慣れることはありません。ファーストクラスで横になって移動してみたいなあ。

この時は成田空港から成田エクスプレスで東京駅まで出て、そこから地元まで新幹線で帰りましたが、新幹線に乗った途端眠り込み、あっという間に地元の駅に着いていました。10分くらいしか経ってない感覚だったのに。え?2時間どこ行った?と思った。タイムワープでもしたかと。

 

旅の終わりに。

そんな疲れた状態で翌日は仕事でした。旅行の後は一日休んで……とかそういう余裕のある旅はほぼしたことがない。帰って来てから一日休むくらいなら現地にとどまってその一日を使いたいんだ!

お土産をそれなりに持って出社をし「お、ひさしぶりー」なんていわれながら、朝、自分の机に行くと……思いもかけないものが待っていました。

机の上に雑誌が置かれています。富士山が見開きで使われた写真のページが開かれ、それをバックにサソリ人間(←謎)が立っている。サソリ人間は日の丸の旗を持っており、そこには「祝!帰国!おかえり」とメッセージが。立体POPというか、オブジェのごときものが出迎えてくれました。同僚たちが(物好きにも)作ってくれたらしい。

これ、うれしかったなあ。翌日カメラを持っていって写真に撮りました。久しぶりにアルバムを見たら、アルバムの最後はその写真。心が温かくなりました。終わりよければすべて良し。

 

初ヨーロッパ、だった。

特にここ!という意志をもって決めた目的地ではありませんでしたが、イタリアからヨーロッパを始めたのは結果的には良かったと思う。わたしがイタリアで出会った人は(主に店員さんとか観光に関わる人ですが)ほとんどの人が愛想良しで、かまってもらえてうれしかったんですよね。

全然わからないイタリア語と、実戦で使ったことがほとんどない英語と、何よりも役に立ったジェスチャーでたどたどしくコミュニケーションを取るのが楽しかった。繰り返しているうちに挨拶の「ブオン・ジョルノ」だけは上手くなり、「イタリア語喋れるの?」と訊かれたりしました。

最初にヴァチカンに出会ったことも良かったと思う。なんといっても世界の歴史に影響を及ぼしてきたキリスト教の大本山。西欧の精神の少なくとも1つの根っこの部分に触れて、何かがかすかにわかった気がした。天を目指す意志とか。神に捧げる――そして同時に力を誇る華麗な装飾とか。しかしそこにあったピエタの清澄な美しさは、財にも力にも損なわれない、信仰の純粋さを体現しているような気がする。

 

楽しい旅行でした。楽しくなかった旅行なんてないけど。
以上が初めてのヨーロッパ、イタリア旅行でした。

話が長くなった。いつもですけれど。

 

 

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