東京・美術館の巻/2024

1.キュンパスで東京日帰り。前半は根津美術館と大倉集古館。

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去年の春、福島市へ行って以来の旅です!あ、夏に庄内で一泊したか。でも庄内は用事のついでに回ったので、旅という意識は希薄でした。今回も日帰り、目的地は東京、ということで、旅感は少なめでしたが楽しかった。

いや、仙台ー東京間はあっという間ですね。

今まで値段を優先して高速バスを使ったり夜行バスを使ったり青春18きっぷを使ったり……は数十年前か、でも素直に新幹線を使った移動をあまりしたことがなかった。1時間半ってあっという間ですねえ。新幹線も便によって1時間半のものと2時間のものがありますが、体感はずいぶん違います。2倍とまでは言わないけれど1.8倍くらい。1時間半は寝る暇もないほどあっという間な感じ。

 

今回は東京の美術館が目的でした。

東京の美術館がたくさんありすぎて、行きたいところにはとっとと行かないと人生で行ききれないことに先日気づきまして。

◎念のため、行ってみたい東京のミュージアムをピックアップしておきます。前編。

◎念のため、行ってみたい東京のミュージアムをピックアップしておきます。後編。

キュンパスのことを知ったとたんに、「これは東京の美術館に行かなければ!」と思いました。1泊ないし2泊も考えたけど、今回はキュンパスで気分が盛り上がって行きたい気分になったので、最大のお得感が味わえる日帰りで行くことにしました。

予定は、無理して3か所の美術館。悩みに悩んだ末に、根津美術館、パナソニック汐留美術館、東京都美術館に決定。

 

東京へ。美術館に。

その日は暖かい日でした。

朝5時に起きて5時半に家を出られれば、8時過ぎには東京に着けている不思議。朝ごはんは駅のコンビニでおにぎりとサンドイッチを買いました。近年単価が上がってすっかり貴族の食べ物になったと噂のコンビニフード。炭水化物ばかりの組み合わせですが、大学の頃、よくこの組み合わせで食べていたのでなつかしいのよ。

東京駅へ到着。ふた昔ほど前ならば、駅の案内板を熟読するか、持参したガイドブックをわさわさ開くか、という選択肢しかなかっただろうが、現代においてはスマホという存在があります。スマホでグーグルマップを開いて、その通りに歩けばとりあえずどこでも行ける。楽ですねー。

根津美術館は時間指定ありでした。美術館が始まるのは10時からなので、10時から11時までのチケットを買いました。ということはそれまで別なところへ行けます。どこへ行く?

 

明治神宮へ。

明治神宮へ行ってみようか。今まで行ったことないし。根津美術館とまあまあ近いし。

スマホにお伺いを立てると、東京メトロで移動するのが一番おすすめらしい。が、少々ひよって山手線で行きます。わたしは山手線しか土地鑑がないのよね。メトロで行っても山手線で行ってもそんなに変わらないだろうからいいでしょう。JRで移動する分にはキュンパスで行けるし。

へー、JRだと原宿が最寄り駅かー。原宿って、本当に若い頃一度来たなー。当時は原宿が世界一イケてる場所だったはず。世間的、世代的には。

ほほう。明治神宮はこういうところですか。

うん。参道が広い。
ここがお正月には人でぎっしりになるんですね。……人混みが苦手なわたしは、想像しただけで胃がきゅっと締まりますけど。でも今は朝もまあ早く、広い参道に人はちらほら。海外勢が意外に多い。アジア系は日本人なのか海外勢なのかほぼわからない。

大きな神社では奉納された各種酒樽を時々見るけど、明治神宮ではその対面にワイン樽が並んでいた。ちらっと見たところ、ブルゴーニュの各ワイナリーですか?ブルゴーニュに縁ある人(日本人)が奉納したor声掛けしたらしい。珍しい。

そして前方で、神主さんの集団が列をなして歩いているのに気づく。朝御饌?と思ったら、この日は月次祭だったそうだ。浅葱色の袴。物珍しくて写真を撮ったが、周囲でも写真を撮っている海外勢が多い。観光客の視点は国の内外で変わらない。

雰囲気が荘厳。
警官がちらほらいるのは、やはり明治神宮に政治的な含みがあるからだろうか。微妙にひっかかりつつ内庭をふらふら見物する。

わたしが途中で抜かした神主たちの列が、歩廊を通って本殿の中に入っていく。――やがて聞こえる雅楽の音。ほう。上手くタイミングが合った。だらっとした姿勢で内垣からの音楽に耳を傾けていると、周りの海外勢はわたしよりもはるかに神妙に聴いていた。

何年か前はこんな感じじゃなかったと思う。以前は単に新規なるものへの好奇心だけ。敬意というほどのものは感じなかった。ここ十数年で海外が日本を見る目にも変化があったのか。

 

表参道を歩く。

8:50に明治神宮に着いてゆっくり見てたら9:40になっていました。さっさと戻ろう。戻ろうというか進もう。根津美術館は10時ー11時入場のチケットを持っている。下手に交通機関に乗るより、地上を歩いたほうが早そう&楽そうなので、スマホのグーグルマップを片手に歩く。

表参道を歩きながらいたく納得していた。
……なるほど。わたしはファッションに興味ないし、物欲もほとんどないけれど、お金を持っていてこういうところに簡単に来られる環境なら、買いまくりという病にかかるのもわからなくはない。と、仲里依紗を頭に浮かべながら思った。多分こういうところで買い物をしたりもするんでしょうね。

東京はデザイン性の高い建物が多い。これは何年代の建築なのかなあ。2000年代?1990年代くらい?

ふと気づくと、こんな建物の前を通っていた。写真を撮った後、看板を見て驚く。

おお。同潤会。こんなところで生き残っていたのか。本当に若い頃、同潤会アパートを見た記憶があるのだが、それはここだったのか?渋谷だったような気がするんだけど、たしか生活の木に行きたくて……。

ああ、生活の木が近くにあるわ。そうすると見たのはここだったのかな。いやあまりにも昔すぎて。

そして東京のコインパーキング、一日の駐車料にビビる。6時間で4100円!ふえー。仙台だと中心部でも半日1000円くらいのところは見つかるのに。

 

根津美術館。

無事、根津美術館到着。

ここの建物は隈研吾。よくテレビで見る竹の植栽のアプローチはやはり見事。しかし同線としてはけっこう徒労感があった。何しろ直線をひたすら歩くわけで。そして自分も含めてこのアプローチの写真を撮りたい人も多いから、なるべく早く通ってしまわないとという意識が働いて早足になる。

今回の特別展は「魅惑の朝鮮陶磁」「謎解き奥高麗茶碗」の二本立て。

陶磁器は、中国の宋時代の磁器が好きだ。色がきれいだから。朝鮮陶器はだいぶ渋いイメージがあって、そこまで興味はないけれども、まあ今回は特別展目当てではないですから。でも並んでいた作品自体は目先を変えていてなかなか面白かった。青磁の姿のいいもの。白に辰砂の赤が映えるもの。

「青花秋草文壺」も良かった。灰色みの強い白、肩の張ったシンプルな花瓶に控えめな沈んだ青で線画の花が描いてある。もう少し描きこんだデザインの壺はいくらでもあるんだろうけど、これはいかにも野の花の風情がそのままデザインされていて、このシンプルさはなかなかいい。

そして「奥高麗茶碗」。高麗の奥の方の茶碗かと思うと大間違いで、朝鮮陶磁を手本にして唐津あたりで焼いたものをいうらしい。名が体を表さないのは迷惑。誤解を生まないネーミングにしてほしい。こちらはわりと似たような作品が多く、押しなべて香ばしいような薄茶色の土っぽい茶碗。詳しい人&好きな人なら面白いのかもしれないが、同じようなのが数多く並んでいて少し飽きた。

その他に「百椿図」という椿の小さい絵を集めたものがあって、それはきれいな日本画だった。赤、桃色、鮮やかな緑ときれいな色彩が見られて気分がいい。でも日本画はこれだけでしたな。

青銅器がある程度揃っていたのが意外だった。青銅器の饕餮文は、遠い殷の頃の祭器ですね。前に東京国立博物館東洋館で一度まとめて見て、面白いと思った。どこが面白いのか我ながら判然としないが。

根津美術館のロビーには中国由来の仏像が何体かあって落ち着いた雰囲気。建物は良かったと思います。奇をてらうとか人目を驚かすデザインではないけど落ち着いて見られる。

根津見術館、庭もいいのよ。

そして、根津美術館で見るべきは展示物も建物もだけれど、実は庭もですね。

これは全然ノーマークで行っていたので、庭が想像よりも広くて時間が足りなかった。広いんじゃないな。それほど広くない敷地を上手に作って、すごく長いルートにしている。多分30分じゃ足りません。のんびりするなら1時間くらい見ておいてもいいくらい。何しろ茶室が4つもあるんですからね。池も長くて何度も橋を渡ったり戻ったりするし、道の分岐も多いし。

お昼を食べる前に庭を見ようと思って駆け足で見てしまいました。ちょっともったいなかった。
けっこうアップダウンが激しいので、歩く気満々で行くのが吉。

お昼は、周囲にいろいろお店があるらしいけど、結局迷うんだろうと思ったので、素直に根津美術館のカフェで。その名もそのまんまNEZU CAFE。

まあまあ座席数は多く。待っている人はいたけど、その人は庭を見下ろす特等席を待っているそうで、わたしは待たずに座れました。だが食事系のメニューは一つを残して売り切れている。

なので、唯一選べたミートパイ1個(2個は売り切れ)と、モンブランケーキを頼んで食事にしました。まあこれでも950円と750円で立派な一食分の値段……。
ミートパイ、これで950円かー、と思うんだけども正直。でもカフェ価格だから仕方ないね。モンブランは思ったよりずっしりしていて、これでお腹にたまった。美味しかった。

13:20、NEZU CAFE発。

 

 

予定変更します。パナソニック汐留→大倉集古館へ。

あんなに迷って、今回の3ヶ所(根津美術館・パナソニック汐留・東京都美術館)を決めたのに、2ヶ所目をあっさり変更します。パナソニック汐留から大倉集古館へ。

これは何故かというと、日本画成分が足りなかったんですよね。根津美術館には日本画は「百椿図」しかなかった。今回、日本画見たいなーと思っていたから物足りなかった。そこにたまたま大倉集古館のフライヤーが置いてあって。それを見て、あ、こっちに行こ。と思った。

根津美術館から大倉集古館まではまあまあアクセス容易。多分歩いても行けただろうけど、今までもけっこう歩いて腰が疲れたし、その後もひたすら歩く予定だったので、東京メトロに乗りました。

表参道駅から銀座線を使って山王溜池へ行く。「山王溜池」という駅名のダサさに心静かに衝撃を受ける。高輪ゲートウェイ駅がかっこいい駅名だとは全く思わないが、溜池の駅で降りるのは劇的だ。そして降りたところはなかなかの高級住宅街。何しろホテルオークラの麓だもの。

メトロの駅を降りてから大倉集古館に行くまで、東京は意外に坂が多いなあと思っていた。東京が坂が多いことはブラタモリでよく聞くんだけど、それを実感する機会はなかった。理由を考えてみると、東京駅、皇居、銀座、浅草あたりが平地なことと、――それとはまったく違う話で、太秦の映画村でロケをしている時代劇を見てたから。じゃないかねえ。

太秦のセットには坂はほとんど登場しないし(まあ日本橋あたりなら無理ない)、高台に住んでいたのは旗本・御家人で、大きめのお屋敷だっただろうけど、御家人を詳しく書く時代劇ってほとんどなかったのよね。平坦な江戸のイメージ=平坦な東京のイメージなのだろうと思われる。

おお。大倉集古館出現。

どんな建物かは知ってた。伊東忠太だということも。築地本願寺に行ったこともあるし。

……え?伊東忠太って、橿原神宮も平安神宮も作ってるの!?弥彦神社も?……そもそも明治神宮も!?

あらー。変な動物を載せた変わった建物ばっかり作った人だと思っていた。他の神社は大変に正調ではないですか。しかもでかい神社ばかり。すごいな。建築家としてこんな大物を作っているとは思わなかった。伊東忠太のことは藤森さんが度々書いているのに、なんで築地本願寺と大倉集古館しか記憶に残らなかったんだろう。

いや、この中国風なのかなんなのかよくわからないデザインをよく建てたよ。というより建てさせたよ、大倉財閥が。いわば本拠地のド足元に。良かったのか、こういうデザインで。まあオークラが良ければわたしが口を出す問題ではないが。

館内のサイズは狭め。3階建が羊羹を積んだようにシンプルに上に伸びる。地下1階。

館内撮影は不可でした。最近はフラッシュなしなら撮らせるところも増えているけれども。でもそもそも日本画は光に弱いもんね。20回に1回、うっかりフラッシュを焚いてしまうドジな人がいたとしてもその光の影響は大きいだろう。

ここで見たのは小林古径の「木菟図」。これが良かった。フライヤーにも載っていて、もっと小さいサイズのイメージだったが、まあまあ大きい絵なんですよ。長辺1メートルくらいはあったんじゃないでしょうか。紅梅とミミズクがどっちも可愛かったですねえ。

「扇面流図屏風」は大物。じっと見た。……が、あまり覚えていない(汗)。

横山大観の「夜桜屏風」は大作で、ここの目玉として扱われているのだが、正直あまり……感心はしなかったかなー。
横山大観はたくさん描いた人だから、玉石混交の気味もあり。これは大作で、適当に描いているとは思わないけど、いま一つキッチリ決まっている気がしない。桜の一輪一輪もそこまでは。そしてかがり火から登る煙が濃すぎて、むしろ画面を邪魔しているような気がするのよね。工夫した画面ではあろうけど、それほど効果を上げているかというと。

大物いくつかと、中物、小物という思ったよりもこじんまりとした美術館でしたが、建築の面白さは無類。3階?2階?のバルコニーにいると、歴史的中国にいるような気がする。まあそこにずっと座っているのは寒すぎましたが。

大倉集古館は1時間20分ほどかけました。この時点で15:20。おや、少し時間が押し気味ですね。まあ根津美術館に3時間いたんだから仕方ない。気のすむまでその場所を楽しめる自由が一人旅の何物にも代えがたい魅力。

 

さすが東京、と思ったこと。

ところで、話は戻って大倉集古館に着く前の話です。

歩いてて不思議に思ったんだけど、道路際のマンション敷地のすごく狭いところに警察官が立っているの。誇張していえば1メートル四方くらいの建物とともに。いや、なんでこんなところに?こんな狭い建物を建てて?

そう思ったのですが、何十メートルか行ったところで疑問が氷解する。なんか英語でアメリカレジデンスなんたらかんたらと書いてあった。すみません、正確なところは忘れました。

大倉集古館の隣にはアメリカ大使館があるんですね。なるほどー。敷地のかどっこにもまた別な交番?があって、そこには警察官が2人。

そしてトドメに驚いたのが、アメリカ大使館の塀の横の歩道も「通行止めにご協力ください」と表示されて通行不可になっていること。歩道があるのに通行止めか。そうねえ。そもそも歩道を立ち入り禁止にしていれば、塀に近づいた時点で何らかのアクションが起こせるんだから、一応予防機能はあるのか。

まあそこまで深く考える必要はないし、別に怒りは感じないけど、大使館のせいで日本国民が不利益を被る場合があるんだ、というのが軽くカルチャーショック。小さな不利益とはいえ。こういうの地方にはないから、さすが東京と思った。

 

次はパナソニック汐留美術館に向かいます。

大倉集古館からまた山王溜池駅に戻って銀座線で新橋駅へ。……わたしはスマホを持つようになって5年くらいしか経っていないし、近頃までコロナ禍で旅行は慎んでいたから、旅行の際にスマホを活用する経験が浅いんだけど、

ほんっとうにスマホは便利ですね!!

特にグーグルマップは旅の世界を変えるね。だってグーグルマップがなければ、そこらへんをうろうろして付近の地図を探したり、駅で地図を覚えたり、それが不安なら地図を持って歩かなきゃならないんだもの。

それがスマホ一つで地図は見られるし乗り継ぎはわかるし、ほとんどどこの施設だって営業時間や定休日を確認できるし、お店は探せるし。便利。ほんとーに便利。

だが反面、旅行の醍醐味はちょっと減ったように思う。知らない土地へ行って、知らない景色を見て、道に迷うことまで含めてどきどきすることが旅だったような気がする。そのドキドキ感がなくなることは、やはり旅の思い出を減ずるのではないか。

まあそんなことをいうならグーグルマップを使うなという話ですが、……便利なものは一度使ったら止められないのよー。そこらへんはうまいことやらないとね。自分で。

次はパナソニック汐留です。

 

 

 

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