ローマ、テルミニ駅からフィレンツェまでは電車で約2時間。日帰りで観光する予定です。電車で2時間は日帰り出来る距離ですけれど、本当はフィレンツェはそんなんでは足りない!1日でも足りない!3日でも足りない!出来れば1週間くらいは滞在して堪能したい素敵な町です。大好き。この時は初めてのフィレンツェでした。
ミケランジェロ広場は必須。
同行者Bは以前にフィレンツェを訪れたことがあり、彼女が強硬に主張したんですよね。「ミケランジェロ広場には絶対行かないと!」
えー、そうかなあ。とわたしは内心思っていた。当時はあまり展望台に興味がなかったんですよね。ミケランジェロ広場って中心部からけっこう遠いし。団体ツアーで黙っていても連れてってくれるならいいけど、街の中心から個人で行こうとするとけっこう大変。駅からバスにのっていくとなると、バスに乗る時もけっこう迷うだろうしなあ。バスの移動も時間もそこそこかかる。その時間で美術館を長めに見た方がいいのではないか。
しかしBがそこまでいうなら特に反対するほどのことはなく、フィレンツェのサンタ・マリア・ノヴェッラ駅に着いて最初に目指したのはミケランジェロ広場でした。案の定、駅前でどのバスに乗ればいいのかちょっと迷う。ようやく乗り込んだバスはフィレンツェの町の道をとっとこ走る。少しずつ少しずつ標高が高くなって……一番高いところ(から少し下った)が目的地。
着いた場所は広場というより、ガランとした駐車場でした。お土産の屋台が1つポツンとあって、Tシャツなんかを売っている。その向こうで観光客がちらほら歩いているのが見える。こんなところかあ、というのが降り立った時の第一印象。わざわざ時間をかけて、着いたのは一見駐車場。ちょっとがっかりしました。
が、駐車場を横切って展望台に近づくと。
手すりの向こうにフィレンツェの町が広がる。赤い屋根の海。そこへ大きな島のように浮かぶ、フィレンツェの大聖堂――サンタ・マリア・デル・フィオーレが見える。
それは遠近感が狂うような不思議な眺め。遠くにある大きな大聖堂がとても近くに見える。他の建物が周りに集まって、サンタ・マリア・デル・フィオーレに向かって頭を垂れているように見える。
大聖堂はフィレンツェの母。町の全ての建物を守り、崇められてそこにある。花の聖母寺という日本語での古い言い方にさてこそと思った。母の中の母、聖マリアに捧げられた母なる大聖堂。
左へ視線を移すとアルノ川にかかる橋、ポンテヴェッキオ。よく見えないけれどその右にはウフィツィ美術館があるはず。ヴェッキオ宮殿の塔は見かけ上、サンタ・マリア・デル・フィオーレの大ドームと同じくらいの高さに見える。フィレンツェの町のスカイラインを描く2つの頂点。
それまであまり俯瞰の風景に興味ありませんでしたが、展望台から見下ろした風景は素晴らしかった。見渡す、一望のもとに収めることにはそれなりの功徳があるのだなあ。この後、遠くから見下ろしたあの場所に行くんだと思うとテンションが上がった。
結論。ミケランジェロ広場は「絶対行かなきゃ!」の場所です。同行者Bは正しかった。
イル・パピロという文具屋さん。
その後、下山して最初に行ったのはピッティ宮。別名パラティーナ美術館というところです。
あ、その前にパラティーナ美術館前にある「イル・パピロ」というお店に行きました。ここはフィレンツェで有名なマーブル紙を使った文具を扱う文具屋さん。紙製品好きのamairoにとっては天国の入口のようなお店です。
ちっちゃな店内はカラフル。質の高いカラフル。良い品質であることが一目瞭然の店内。お店自体も古風で落ち着いていて素敵。多分ダイアゴン横丁にあっても違和感がない。日本的感覚でいうと、とても小さくて、チェーン店ならもっと大きくてもいいのにと思うくらいなんですよね。そんな小さなお店に宝石のような文具がたくさん並べられている。
わたしはここできれいな青い革の、薄い日記帳を買いました。けっこう高かったけど、一目ぼれして諦められなかったんですよねー。表紙はカメオ風の型押しデザイン。内表紙に例のマーブル紙。本体の紙は厚くて質が良く(しかしそこに鉛筆で書くのは書きにくかった。本来はインク用の紙質だと思います)、アイリスの香りがついていて、あの匂いはフィレンツェの香り。
が、その気になればいくらでもいられるこんなお店も、心せわしく切り上げなければなりません。もう時刻はお昼近い。これから美術館を2か所行き、大聖堂に行って買い物もしなければなりませんから。
ピッティ宮殿。
ピッティ宮殿は宮殿と言い条、外見的にかなりごつい建物で、一見したところ要塞に見えます。あまり飾り気はない。アプローチが緩い坂道を登り、建物を見上げる形になるため威圧感が増します。
ピッティ宮殿の中には美術館が大小6つ入っています。また広大な庭園がついていて、本当であれば半日、人によっては1日費やしても足りないところ。しかし我々は1時間でここを見終わらなければなりません。1時間というより出来るだけ短く!せわしくてせわしくて。悲しい。
6つの美術館のうち、必見はルネサンス絵画中心のパラティーナ美術館。ここは邸宅型美術館で、壁一面に絵を飾ってあるタイプなので、もしじっくり見るタイプの人なら、オペラグラスがあった方がいいかも。上の方にある絵は肉眼では作者名が見えないんですよね。だいたいの有名作は見やすい場所にあるからなくていいんだけれども。
ここでラファエッロ「小椅子の聖母」「ヴェールの女」、ティツィアーノ「灰色の眼の男」と巡り合いました。もともと画集などで見ていた絵ですが「小椅子の聖母」は画集よりすごく良かったです!甘くて。マリアの目つきが色っぽくて。キリストが可愛くて。聖ヨハネの表情も――この表情もその意味は長年の謎ですが――切なくていい。
キリスト教を信仰はしてないけれども、こういう美しいものを見ると頭を垂れる気持ちになります。「小椅子の聖母」はむしろ世俗感満載の絵ですが。
ティツィアーノの「灰色の眼の男」は、生き別れた恋人に再会した気分になりました。これがライトノベルならここから異世界転生の物語が始まってしまう。なつかしいような。切ないような。
冷たく見える男性の肖像ですが、近くでよーく見ると、その灰色の眼にうっすらと優しさがある。この絵には「若いイギリス人」という別名もあるので、イギリスからわざわざやってきて肖像画を書いてもらったこの男には、どういう物語があったのだろうと考える。モデルは不明なので、本当にイギリス人だったかは定かではありませんが。
名作がたくさんある美術館で、ここで1時間しかとれないというのは痛恨の極みです。パラティーナ美術館だけではなくて、他の小さい地味な美術館にも行きたかった!庭も見てない。残念。
ミケランジェロ広場は行って良かった、けれども……
ミケランジェロ広場は素晴らしい場所でした。行って良かったのは間違いない。――だが、フィレンツェに着いてミケランジェロ広場に行って、中心部まで戻って来るのにこの時は2時間かかっています。その後行ったパラティーナ美術館に1時間、これから行くウフィツィ美術館で結果的に40分しかとれなかったことを考えると、ミケランジェロ広場に費やした2時間というのはバランスが悪かったかなー。
いや、ミケランジェロ広場には行くべき。でもパラティーナ美術館、ウフィツィ美術館が1時間ずつなんてありえないから、これはやっぱり1日でフィレンツェを観光しようというその根性がそもそも間違っている。フィレンツェは最低3日は必要な町です。ローマから日帰り観光しようなんて、とてもとても。
でもこの時は行って良かったよね。どんなに素敵なところか、そのさわりだけでも味わえたから。
フィレンツェにはその後2回行くことになります。が、いまだに「堪能」出来てないんですよねー。団体旅行の時には添乗員さんつきで自由行動がほんのちょっとだし(ミケランジェロ広場にはスムーズに行けたけど)、3回目、個人で行った時にはたしか3日滞在した気がするけど、それでも堪能出来たかというと……
特に美術館の滞在時間がもっと欲しかったなー。まあ同行者にも行きたいところ、時間配分があるから仕方ないけど。ここらへんは一人旅のアドバンテージですね。ローマは大都市なのでちょっと無理だが、フィレンツェなら単独行動をしても良かった。今さらですが。
10時から17時までのフィレンツェ日帰り観光、前半はパラティーナ美術館までです。後半はウフィツィ美術館から始まります。
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