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◎ルノワールを5つのタイプに分けてみました。――美術を楽しく見るためには、好きなジャンルと出会うのが大切。西洋美術・印象派。

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印象派といえばモネとルノワールが双璧。モネは長く印象派の画風で描き続けましたが、ルノワールはずっと印象派の画風で描いていたわけではありませんでした。

1970年頃に「ラ・グルヌイエール」でモネと競作したあたりからが印象派。後年、ルノワール本人が振り返り、1983年頃には印象派の技法での行き詰まりを告白しています。ということはおよそ13年。思ったよりも短いような。55年の画業中、4分の1と思えばやはり長いような。

画題も広ければ画風も多様な人なので、わたしがルノワールはこんな画家、とイメージを掴むまでけっこう長くかかりました。若い頃の絵と晩年の絵は全然違うんですよね……。

ルノワールは通常、時代順に3期に分けるようです。でもこの3つにわけたところで、全然ルノワールがわかるようにならない!さっぱりイメージが定着しないので、amairoの個人的な観点からもう少し細かく分けて並べてみたいと思います。

 

いくつに分けるか。

ルノワールの作品数は4000枚とも6000枚とも言われています。どの程度のものまでを含んでいるのか不明ですが、6000枚とした場合、1年に100枚ペース。画塾に通っている時代の作品やデッサンなども含んでいるとしても、このスピードは驚き。しかも55年という長期間ですから。晩年はペースも落ちただろうし、若い頃は1日に1枚のペース?

スタイルで5つに分けたいと思います。もちろん人間が日々切れ目なく描いていくものなので、何年何月からスパッと切り替わるわけもない。だいたいの緩い分け目です。

1.印象派スタイル
2.青の人物画スタイル
3.線のあるスタイル
4.暖色系の人物画スタイル
5.裸婦スタイル

この5つ。

1.印象派スタイル。

印象派の技法を使った絵を描き始める前の初期作品もそれなりにあるのですが、それは一般的にあまり目に触れないので……割愛。

ルノワールはまず印象派として。

ルノワール「ラ・グルヌイエール」

Auguste Renoir - La Grenouillere - Google Art Project.jpg

モネと並んで同じ景色を描いたこの絵が、ルノワールの印象派への第一歩。わたしにとってはこの絵も混乱の元でした。作者がモネだったりルノワールだったり、その時によって違うと思っていた。2人の画家がこんなに同じ絵を描いているとは知りませんでしたからね。

参考までにモネによる「ラ・グルヌイエール」。

Claude Monet La Grenouillere.jpg

こうやって並べてこそ違いがわかりますが、「あー、この絵見たことがある……」と思いながら見ていて、時にモネの作品だと言われ、時にルノワールの作品だと言われると混乱してしまいます。混乱期にいるみなさん、彼らは同じ場所にイーゼルを立てて、同じアングルで描いているんですよ!だからすごく似てるんですよ!

ルノワール「ヴェネツィアのパラッツオ・ドゥカーレ」

Pierre Auguste Renoir, Vue de Venise (Le Palais des Doges), 1881.jpg

これはルノワールの印象派期の終わりごろの絵です。こんな絵も描いていたんですね。ルノアールはあまり海外に出たイメージがないので画題的にも意外。水面を描くのは印象派の技法が合ってますよねー。しかし遠景の建築物は印象派じゃなくてもいいかも。遠景でも森、木の葉の場合は印象派が映えるよねー。

ルノワール「ムーラン・ド・ラ・ギャレットの舞踏会」

Pierre-Auguste Renoir, Le Moulin de la Galette.jpg

ルノワールの最強の一枚、だとわたしが思っている「ムーラン・ド・ラ・ギャレットの舞踏会」。大好きです。

――大好きなわりにはタイトルを間違って覚えていた。「ムーラン・ド・ラ・ギャレット」だと思っていました。ただの「ムーラン・ド・ラ・ギャレット」だとこの絵に似た、別な絵になるようですね。

清新な青と光がたわむれる絵。青春の絵。ここはダンスホールで、若者たちが集まっていたようですよ。今でいえばクラブ。クラブよく知らんけど。

 

2.青の人物画スタイル。

若い頃のルノワールは青が好きだったようです。肖像画には青い衣装を着た人がとても多い。この頃の絵で青い衣装を着た人が出てきたらルノワールを疑え。いや、それは言い過ぎですか。

この青が美しい。明るくて、軽やかで――青はルノワールにとって幸せの色だったのかもしれません。

ルノワール「イレーヌ・カーン・ダンヴェール嬢」

Mlle Irene Cahen d'Anvers.jpg

この絵は「世界でもっとも美しい肖像画の一つ」と言われるそうです。そこまでいうのには同意できないけど素敵な絵ですよね。ちょっと寂しげではあるかな。肖像画というのは、注文主がいて描くことが多いので、可愛く、きれいに、あるいは立派に描かれることが多い。

モデルのイレーヌ嬢は当時8歳だったそうです。……8歳には見えません。13、4歳ではないのか。彼女はユダヤ人銀行家の娘で、のちの第二次大戦では、娘と2人の孫をアウシュビッツで失うことになります。本人は長生きをするけれども。

ルノワール「すわるジョルジェット・シャルパンティエ嬢」

Pierre-Auguste Renoir - Georgette Charpeitier Seated.jpg

ほんとに可愛らしい。それにしてもルノワールは少女を可愛く描きますよねえ……。これなら注文がたくさん来てもおかしくない。ルノワールはそういう肖像画を楽しんで描けた人なんじゃないかと思います。「お金のためだ」と自ら卑下することなく。肖像画は自由に書けたわけではなかったけど、それはそれとして可愛らしさを素直に目指せた人。

シャルパンティエ家を描いた肖像画は他にも何枚かあります。そういう人が買い上げてくれたことで画家の生活は少しずつ楽になっていきました。

 

3.線のあるスタイル。

青い人物画と、その後の暖色系の人物画の間になんともいいかねるスタイルの時期があります。専門的にいえば重要な、古典回帰の時期らしい。印象派から離れて、ラファエロにつながる絵画の主流の技法で描いた時期。アングル期とも呼ばれます。しかしわれわれ素人がパッと見て「ああ、古典期だなあ」と思うはずがないので、呼び方に困る。今までと違うのはなんとなくわかるけれど、どんな呼び方がいいのか。

ちょっと苦しいですが、「線のあるスタイル」と呼びましょう。

ルノワール「大水浴図」

Pierre-Auguste Renoir, French - The Large Bathers - Google Art Project.jpg

「線のあるスタイル」の、もっとも特徴が出ている気がする一枚。写真に例えれば、それまで決してピントが合ったことがなかった(あるいはソフトフォーカスがかかっていた)ルノワールで、唯一この時期だけピントが明確な絵である気がします。

肌も古典絵画技法に近く、陶器で出来たようなつやつやした肌。晴れた屋外であるのにも関わらず、印象派が追い求めた光の要素は見られません。背景や川の流れは印象派的ですが、人物はくっきり。

モデルは一見身近な対象に見えますが、じっと見ていると構図などから神話的な雰囲気も感じます。たとえばタイトルを「アルカディアの水辺の女たち」などとすればそれらしく見えませんか。そういうことでもいいと思う。

ルノワール「都会のダンス」

Pierre-Auguste Renoir 019.jpg

「大水浴図」ほどくっきりはしていませんが、このサテンの光沢が感じられる服の描き方も今までの描き方とは違う。

「都会のダンス」と対になっているのが「田舎のダンス」。

ルノワール「田舎のダンス」

Pierre Auguste Renoir - Country Dance - Google Art Project.jpg

これがまさに印象派と古典主義回帰のボーダー上の作品である気がします。屋外のダンスという画題も、人物の明るい表情も、輪郭の少し甘い線も、印象派スタイルと共通します。でも、光が舞う幸福感はそこにはない。光ではないものを求め始めた画家の絵。

4.暖色系の人物画スタイル。

光ではなく、色で幸福感を表す時代に入りました。

この暖色系も典型的なルノワールとして認識されていると思う。ルノワールはこの暖色系のタイプと、印象派のタイプがすごく乖離しているから、わたしは同じ画家だとは思わなかった。青い絵を見てルノワールってこんな画風かと思い、暖色系の絵を見て、こういう画風だったかと思い。

ルノワール「ピアノに寄る少女たち」

Auguste Renoir - Young Girls at the Piano - Google Art Project.jpg

これも代表作の一つですね。円熟期の入口の作品という気がする。このピアノの前の女性の絵は複数枚あるそうです。

髪のつややかな美しさ。ばら色の頬の少女たち。ここではカーテン?のエメラルドグリーンが効いています。色のバランスをすごく考えているんだろうなと思う。

ルノワール「赤い髪の少女」

Pierre-Auguste Renoir 072.jpg

この女の子もすごく可愛い。櫛けずる乙女というセクシーになりがちな画題ですが、ルノワールはほんのりと上品にまとめる。ただ胴体の細さが変。ルノワールは、いつもじゃないんだけど、時々骨格が変。

 

5.裸婦のスタイル。

画業の終盤は裸婦ばっかり、なイメージですねー。しかもどんどん朦朧というか、うねうねというか、曖昧模糊とした背景に浮かぶもやもやした塊になっていく。正直に言おう。この頃のルノワールはもうキライです。

ルノワール「浴女たち」

Pierre Auguste Renoir - The Bathers - Google Art Project.jpg

この豊満さ、豊かさを愛する人ももちろんいるんだろうけれども……
ちょっとこう……脂肪の塊の体はわが身になぞらえてしまうのでイタイ。太った人が好きだったんだろうか。まあだいたいルノワール、若い頃からモデルはだいたい太めでした。

関係ないけど、昔はルーベンスとルノワールが覚えられなかった。どっちも「ル」がついて、太った裸婦を描いていたから。大人になってからようやく覚えられました。太った裸婦を描かせたらルノワールとルーベンスが双璧です。ちなみに時代は全然違います。

 

ルノワールを5つに分けてみました。

画風が変遷したルノワール、わたしはこの5つに分けて覚えました。もっと違いを立てれば細かく分けられそうですが、あんまり細分化してもさらに訳わからなくなりますしね。

ちなみに美術の専門家が分けるとしたら3つのようです。

1.初期から印象派期
2.アングル期(新古典主義期)
3.円熟期

わたしの「青の人物画」の中には印象派期とアングル期が同居しています。たしかに青い人物だけれども、描き方は違うよね、という。でも青の人物で括ってしまった方がわかりやすい。

だってアングル期って言われても、いうほどアングルっぽくないしさー。「大水浴図」はたしかにアングルに近いところはあると思います。でもルノワールにはアングルのような理知的な冷たさというものはない。彼の絵にはほとんど憂鬱や不幸を感じさせるものはない。わたしの知らない絵でいろいろあるのかもしれないですが。でも一般的なルノワールは、見るものを幸福にさせる絵。

多様な画風のルノワール。いろいろな顔を見せてくれる画家です。

 

 

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